私たちが、こんなことが二度と起こらないようにすることができるのです……
オーストラリア人女性ドナ・マルハーンは、２００３年の春にはイラクで「人間の盾」に参加した。０４年春にはイラクで米軍包囲下のファッルージャに入り、その帰路地元レジスタンスによる拘束を経験し、つぶさにその報告をしてくれた。０４年冬から０５年春にかけてはイラク・パレスチナ「巡礼の旅」を伝えてきた。０５年８月には、シンディ・シーハンのキャンプ・ケーシーに駆けつけ、アメリカからの報告は、ほとんど実況中継だった。０５年１２月にはオーストラリアがイラク戦争に最も貢献してきたパイン・ギャップ秘密基地に侵入し、「市民査察」を強行して逮捕されたが、０８年２月に無罪判決を勝ち取った。０９年末から１０年初頭には、イスラエルによる包囲封鎖に苦しむパレスチナ・ガザ地区に入って援助を届け、現地から報告してきた。１０年２月に、『普通の勇気――わが旅、人間の盾としてバグダードへ』を出版した。１１年３月に、アフガニスタンのカーブルに向かい、地元の「青年平和ボランティア」と共に行動した。
この度、劣化ウラン弾などの有毒兵器の被害に苦しむイラク・ファッルージャの女性や子供の調査に向かい、無事にイラク入りを果たしたドナが、フェイスブックやツイッターにイラク現地から散発的に投稿した文章を、この「巡礼者」メーリングリストで紹介しました。前回のバグダードに関連する投稿文の紹介に続いて、今回はファッルージャに関連する投稿文の紹介です。
（翻訳：福永克紀/TUP）
ファッルージャ経験のスナップ写真的断片――投稿文と写真
ドナ・マルハーン
２０１２年８月３日
お友達の皆さんへ
下記は、私のファッルージャでの経験に焦点を当てたイラク関連投稿文の続編で、ファッルージャの状況詳細を描けていれば嬉しいです。
あいにくこのメールではフェイスブックに投稿したほどたくさんの写真を添付できませんが、できるだけ多く添付するつもりです。
［訳者注：以降は、ファッルージャに関連する７月２４日（火）から８月１日（水）までの投稿文が引用されている］
ファッルージャは、２００４年の米軍による攻撃以来、先天的肢体障碍児の大幅な増加に見舞われてきました――それを説明できるのは、この攻撃に使われた兵器が毒性の遺物を残しているということで、私は調査を行ない、話を収集するためファッルージャに向かいます。
ファッルージャへ向かう道。悪い予感で、気を張り詰めた、埃まみれの運転手が、泥レンガ造りの家や検問所を猛スピードで通り過ごして行きます。イラクで最も危険な町に向かっていて、最も悲しい話に……
米軍によるファッルージャへの攻撃以来８年、この町は未だに再生途上で、未だに緊張をはらんだままで、それには理由があります――下のリンクの記事に書かれていることが、２００４年に私が最後にファッルージャに行った時に起こったことであり、それがこの町を傷ついたままにしているのです。記事を読んでみてください。
http://griffithreview.com/edition-17-staying-alive/the-road-to-fallujah
［訳者注：上記の記事の内容は、訳者が２００４年にドナからのメッセージを翻訳してTUP速報「拘束された豪州女性の手紙」のNo.1からNo.8で配信したものとさほど変わず、多少の加筆・修正があるものの大要は同じです。以下が、当時の速報のアドレスです］
拘束された豪州女性の手紙 No.1 https://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=351
拘束された豪州女性の手紙 No.2 https://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=352
拘束された豪州女性の手紙 No.3 https://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=353
拘束された豪州女性の手紙 No.4 https://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=354
拘束された豪州女性の手紙 No.5 https://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=356
拘束された豪州女性の手紙 No.6 https://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=358
拘束された豪州女性の手紙 No.7 https://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=359
拘束された豪州女性の手紙 No.8 https://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=360
ファッルージャ病院。それぞれの話を聞くまでもなく、その顔に浮かぶ恐怖と目の奥に潜む懸念を見るだけで、いつも私の目に涙が溜まり始めます。
そして実際に話を聞いてみると、小さな命が失われたその痛ましい話は、分かったつもりでいたことよりもっとひどくて……
ファッルージャ病院内を歩くと、あまりに多くの患者を、あまりに多くの不正義を、あまりに多くの嘆きを、その上それに対する充分な責任が取られていないことを、目の当たりにします。
「誰も私たちの言うことを聞かない、誰も耳を傾けない、誰が私たちを助けてくれるのです？ 米国は強すぎる」、疲れ果て、幻滅したファッルージャ病院のＭ産婦人科医。
「私の赤ちゃんは助かりますか？ この子は正常に生まれるでしょうか？ 次の子は助かるでしょうか？ こういった質問を私は毎日受けています。私には、答えようもないのです」、ファッルージャ病院のＳ医師。
「涙を何とかこらえようともがいています、というのも、答えも持ち合わせず、新生児を充分に看護できる施設もなく、本当に頻繁に赤ん坊が死んでいきます、こんな赤ん坊が生き延びるチャンスのある英国や米国とは違うのです」、ファッルージャ病院のＳ医師。
ファッルージャ。礼拝の時を告げる朝の詠唱（アザーン）はいつも希望をもたらすように思えます、それからその一日が始まると、身の回りそこら中に戦争の影響による戦慄が漂っています、９年という年月のあとにさえ……
シリアから帰還するイラク難民の殺到で、イラクでの人道危機が予想される――赤新月社。
爆弾でファッルージャの７人が死亡し、現在は夜間外出禁止令中、このコミュニティには一息つけることがどれほど必要なことか……
ファッルージャ病院で、心臓と手と足に異常を持って生まれた女の赤ちゃん――私にできることは、ごめんなさいと言うことだけで……
ここはファッルージャ・サッカー・スタジアム、現在は共同墓地になっている所、２００４年の米軍攻撃による巨万の死者のために町の墓地が溢れてしまったから――それで、全員のお墓が収まるようにサッカー・スタジアムを掘り起こしたのです……（写真添付http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/attachments/folder/801184222/item/1207534587/view ）
ファッルージャ・サッカー・スタジアム共同墓地に眠るのは、この町に対する２００４年の米軍攻撃に関連する死者だけです。３５００から４０００の墓があり、多くが子供たちのもの。
かつてスタジアムだったここでプレーしたファッルージャ・サッカークラブの選手たちは、今はここに埋葬されています、２００４年の攻撃の時に町から出ることを許されずに殺されて……
ファッルージャ共同墓地にあるこの墓碑銘もないお墓の列は、２００４年の攻撃による毒性遺物が惹き起こした先天的肢体障碍のために死産された赤ん坊や数分しか生きられなかった赤ん坊の墓です。（写真添付http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/attachments/folder/801184222/item/1756856098/view ）
ファッルージャ共同墓地の子供や赤ん坊のお墓、２００４年の攻撃の遺物、自ら目撃することもなかった戦争の傷跡のために亡くなって……
ファッルージャの若いカップル、バシールとマルワーンが、誕生後５分で亡くなったわが子ムハンマドのお墓で私と並んで立っています。この子は二人が亡くした４人目の赤ん坊です。胸が張り裂けるようで――今では子供を持つのをあきらめました、二人の夢だったのに……想像してみてください……（写真添付http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/attachments/folder/801184222/item/1409655918/view ）
昨日と今日、バグダードとその周囲で、さらに爆弾と銃による攻撃が――心身を消耗させられます、四六時中こんな状況に生きなければいけないことを想像してみてください――バグダードの爆発があったのは私の滞在地の近くで、賑やかな町の中心部、所構わず事件が発生するのは誰にとってもまったくストレスで……
「自分たちが命を落としてきたのは、何のためにだった？ イラクは自由になってはいない」、最近のイラク戦争を経験した米兵たちが、この戦争は何の役にも立たなかったのではないかと疑問視する――彼らの声を聞くのは大切なことです……
http://news.yahoo.com/us-vets-mix-regret-detachment-iraq-violence-084643435.html
この子はセイフ、ファッルージャの生後１８カ月の赤ん坊です。先週、この子を看取るため家に連れて帰るようにと、医者から両親に話がありました。この子の脳には水が溜まっていて（そのため彼の頭は膨らんでいる）、脊椎と神経系統と泌尿器組織に障碍があり、その上視力を失いかけています。誕生以来、入退院の繰り返しでしたが、両親はあきらめていません。両親の家系には異常はなく、２００４年の米軍ファッルージャ攻撃で使われた兵器による汚染の所為だと言います……どんな対応を望んでいるか尋ねてみました。「この子のために助けを望むばかりです」と、父親が言いました。（写真添付http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/attachments/folder/801184222/item/2144274313/view ）
今回の派遣団への募金にご協力くださった方々へのメッセージ。赤ん坊セイフの家族に大変高価な薬剤の援助にと、いくらかの資金を提供することができました。皆さんもこれに賛同してくださると、人々が気にかけていると示す方法がこれだったと思います。家族は、とても感謝していました、皆さん大変ありがとう……
「ファッルージャの先天的肢体障碍は米国が惹き起こしたのか？」、ファッルージャの状況に関するアル＝ジャジーラ・イングリッシュの素晴らしいドキュメンタリー、ご覧あれ。
http://www.youtube.com/watch?v=V9YQ1GimBDc
ファッルージャ病院で生まれた新生児で、誕生後約１時間の彼女と出会いました。美しい顔をしていますが、背中を見てください。脊椎や神経系統に影響を与えるこのような症状は、今やファッルージャでは日増しに常態化しています。公式名は水頭症、二分脊椎症、髄膜瘤で、彼女にはできるだけ早い手術が必要です。（写真添付 http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/attachments/folder/801184222/item/670168794/view ）
友人の皆さん、ここ何日かの私の投稿文は楽しいものではなかったことを謝りたいと思います。赤ん坊のような無辜の人々に与えた戦争の影響を見るのは、事実への直面を迫られることだというのは分かっています。しかし私たちは、見れば知るわけで（そして、知れば、もう知らない状態には戻れないわけで）、それでその知ったことを変化をもたらすために使えるのです。これは悲しい話ですが、この話の結末を私たちが変えられると信じています。もし変化をもたらすことができると感じていなかったら、私はこんなことをしてはいません。もっとたくさんの写真をこれからも送ることになるでしょう、でも忘れないでください、私たちが、この話の結末を決定できるのです、私たちが、このコミュニティを支えることができるのです、そして私たちが、こんなことが二度と起こらないようにすることができるのです……
皆さんの巡礼者
ドナより
追伸：ファッルージャに関する投稿は他にもまだいくつかあります、でもどこかで止めなければなりませんでした。近いうちにブログを立ち上げ、すべてを一カ所に記録するつもりです……
追追伸：最新ニュースは、私はもうイラクを出国していることです！ この２年間でイラクで最も暴力が吹き荒れた月だったにもかかわらず、無事にあちこち訪ねて回れて大変ありがたく思っています。でもそれは実に疲労困憊させるものです――何週間も眠れなかったように感じていて、肉体的にも精神的にもとても疲れ果てています――想い描いてください、イラクの人々が気の毒にもどんなふうに感じているか！ 月曜日にはオーストラリアに戻って活動態勢に入るつもりで、講演やインタビューを行なって回りたいと思っています。皆さんのグループが興味をお持ちならお知らせください。
追追追伸：イラクの現状について、コメントや写真や書きたい話がもっとたくさんあります。数週間の内にも送り続けるつもりです。
追追追追伸：もっと重要なこと、ファッルージャ／イラクのコミュニティを支えるために人々ができる活動リストを現在取りまとめているので、近い内に送ります。
追伸ｘ５：「誰かに対して復讐や処罰を求めているわけではありません。私たちの望みは私たちの赤ん坊を救うことです、解決なのです……」――ファッルージャの母親
原文：Fallujah snapshot – posts and pics…
URL: http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/256
訳者注記: この訳文中にある画像はすべて、上の URLから見られる画像へのリンクです。
