TUP BULLETIN

速報953号 ドナより キャンベラからこんにちは――次は何……?

投稿日 2012年10月15日

劣化ウラン兵器に関する国連決議、採決日迫る。11月4日か5日か。


オーストラリア人女性ドナ・マルハーンは、2003年の春にはイラクで「人間の盾」に参加した。04年春にはイラクで米軍包囲下のファッルージャに入り、その帰路地元レジスタンスによる拘束を経験し、つぶさにその報告をしてくれた。04年冬から05年春にかけてはイラク・パレスチナ「巡礼の旅」を伝えてきた。05年8月には、シンディ・シーハンのキャンプ・ケーシーに駆けつけ、アメリカからの報告は、ほとんど実況中継だった。05年12月にはオーストラリアがイラク戦争に最も貢献してきたパイン・ギャップ秘密基地に侵入し、「市民査察」を強行して逮捕されたが、08年2月に無罪判決を勝ち取った。09年末から10年初頭には、イスラエルによる包囲封鎖に苦しむパレスチナ・ガザ地区に入って援助を届け、現地から報告してきた。10年2月に、『普通の勇気――わが旅、人間の盾としてバグダードへ』を出版した。11年3月に、アフガニスタンのカーブルに向かい、地元の「青年平和ボランティア」と共に行動した。12年7月に4度目のイラク訪問を敢行し、劣化ウラン弾などの有毒兵器の被害に苦しむファッルージャの女性や子供の現地調査を終え、無事帰国した。


今年11月に予定される国連総会第一委員会での劣化ウラン兵器使用に関する情報公開を求める新決議について、首都キャンベラに乗り込み、精力的にロビー活動をしているドナからの報告です。

なお、今回は、訳文説明のため、《訳者後記》を最後に書き加えました。ご参照いただければありがたいと思います。
(翻訳:福永克紀/TUP)

キャンベラからこんにちは――次は何……?
ドナ・マルハーン
2012年10月10日

お友達の皆さんへ

こんにちは、キャンベラからです。ここで私たちは国会議員やジャーナリストと会見を重ね、国連での劣化ウラン問題に関するオーストラリアの投票を変えるために背景説明とロビー活動を続けています。

ここ数日は忙しくて実り多い日々でした――私たちが話をした議員全員からは支持を取り付け、チャンネル・テンのレイト・ニュース番組の関心を呼び込み、今夜(10日、水曜日)10時30分からイラクでの私の映像と写真を使った番組が放送される予定です。

私たちは今このキャンペーンの決定的時期を迎えています。投票が3週間後に迫っており、今のところ11月4日か5日に予定されているのです。

先週、私たちは二つの重要な文書を公表して、著しい躍進を遂げました。これは事態の推移を大きく変えるものであり、この問題に対するオーストラリア政府の見解に影響を及ぼす可能性を持っていると思います。

その文書はこれです。『予防措置を実践に。劣化ウラン兵器の容認性に挑戦』(Precaution in Practice, Challenging the Acceptability of Depleted Uranium Weapons)。 http://www.bandepleteduranium.org/en/docs/195.pdf そして、『危険を認識せよ、劣化ウランについて軍隊実戦マニュアルから得られた教訓と、いかに民間人防護基準制定に前進するか』(Hazard Aware, Lessons Learned from Military Field Manuals on Depleted Uranium and how to move forward for civilian protection norm)。 http://www.bandepleteduranium.org/en/docs/197.pdf

『予防措置を実践に』は卓越した報告で、劣化ウランに関して各国に予防措置原則を採用させる説得力のある理性的な論議を提供しています。
[訳者注:予防措置原則 precautionary principle 予防措置原則とは、ある活動や政策が公衆や環境に害をもたらす危険が疑われるときには、その活動や政策が有害であるという科学的合意が存在しなくても、当該行為が有害ではないという証明はその行為者が行わねばならず、それを防ぐためには行為者は事前に予防措置をとる必要がある、という考え方です。Wikiには「予防原則とは、化学物質や遺伝子組換えなどの新技術などに対して、環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす仮説上の恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、規制措置を可能にする制度や考え方のこと」と書かれています。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%88%E9%98%B2%E5%8E%9F%E5%89%87 本速報の一番下の《訳者後記》も参照されたい。]

下記にある記事に、この取り組みのとても素晴らしい概要が記されています。http://www.newleftproject.org/index.php/site/article_comments/depleted_uranium_an_unacceptable_toxic_legacy もし皆さんが前述の報告書の全文を読む時間がなければ、何としてもこの記事を読み、(『予防措置を実践に』の最初の章にある)要約をチェックして、この新しい取り組みをボブ・カー(外務大臣)事務所と折衝する手助けをしていただければありがたいと思います。

今あなたに何ができるか。
ボブ・カーの事務所に手紙を出して、以下のような認識を持っていると伝えてください。政府が引証している研究は、専門家から時代遅れとみなされていること、短期間の影響に対する机上研究にすぎないこと、劣化ウランに曝された民間人の長期的影響を考察したものは何もないこと、新しい科学と研究にとって代わられていること、それゆえ政府の立場を公にする信頼性のある諸研究ではないこと。そして、政府に予防措置原則を採用するように求めてください。

添付した私の最新の手紙2通が、皆さんが手紙を書くのに必要な情報を提供してくれるでしょう、また上記の記事も素晴らしい資料です。他にも手紙を書く資料がたくさん私たちのウェブサイト acbuw.org にあります。
[訳者注:二つの添付ファイルは、以下のアドレスにあります]
(1)Carr – third letter.docx http://xa.yimg.com/kq/groups/8622025/1893298862/name/Carr+-+third+letter.docx
(2)Second letter to Foreign Minister Oct 2012.docxhttp://xa.yimg.com/kq/groups/8622025/2104975185/name/Second+letter+to+Foreign+Minister+Oct+2012.docx

また、まだの方は下の請願署名に署名をしていただき、友人・同僚間に広めていただきたきますように――ご協力、感謝します!
http://www.communityrun.org/petitions/change-australia-s-vote-on-depleted-uranium-weapons-at-the-un-in-october?time=1347423656

今週末と来週、ノース・コースト(マランビンビーとバイロン・ベイ)で講演を予定しています、詳細は下記に。

願わくば、この問題についての皆さんの思いが多くの人に届きますように、戦争の犠牲者との連帯を願いつつ。

皆さんの巡礼者
ドナより

追伸:ノース・コーストの日取り
10月12日(金)午後6時30分。マランビンビーRSLクラブ
10月14日(日)午後6時、合同礼拝。マランビンビー、スチュアート・ストリート42、聖公会教会、
[訳者注:原文は13日(日)となっているが、正しくは14日(日)]
10月15日(月)午後6時30分。バイロン・ベイRSLクラブ
[訳者注:原文は14日(月)となっているが、正しくは15日(月)]

追追伸:NSWのノース・コーストの皆さん、木曜日午前9時40分、私がABCラジオのインタビューを受けます。

追追追伸:「大切な事象に沈黙する時、われわれの生は終焉に向かう」――マーティン・ルーサー・キング・ジュニア

原文:Greetings from Canberra – what’s next…?
URL: http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/261

《訳者後記》
添付されたドナの手紙からは、ドナが実際にボブ・カー外相と手紙のやり取りをしながらロビー活動を続けていることがわかります。この手紙や訳文中に紹介されている各文書から、ドナたちの大まかな論点を紹介しておきます。

最近の研究では、劣化ウランが発癌性を持ち、DNAを損傷し、先天的肢体障碍児出生を誘発し、土壌や水脈を汚染して環境に影響を与える可能性が高いことが分かっています。しかし問題は、特定の個人の病因を、劣化ウラン弾の使用によるものだと断定することが現実的にはできないことです。ここが、因果関係が直接目で見られる、地雷やクラスター弾などと違うところです。これは、福島原発の放射能被害にも通じる点でしょう。ここに、予防措置原則を取り入れる必要性があります。

実際、英国軍隊のマニュアルでは、劣化ウラン弾を使用した地域では、兵士に劣化ウラン弾に触れるな、被弾車内に入るな、皮膚を覆え、マスクを使用せよ、飲食も喫煙もするな、風下に回るな、50メートル以上離れろ、などと警告しています。しかし、使用各国は、兵士には警告しても、民間人には警告することもなく、民間人被害に対しては因果関係を示す証拠がないと主張します。

イラク、ボスニア、セルビア、コソボ、アフガニスタンなど、米英が劣化ウラン弾を使用したところでは被害が発生していますが、米英は劣化ウラン弾の使用位置情報を開示しないので、実際どこが汚染されているのかもつかめない状態です。そのため、被弾車両の金属が再利用され、広範に社会生活の中に紛れ込んでいる状態です。

このキャンペーンは、まず、使用各国が予防措置原則を兵士に限らず民間人にも採用せよと迫っています。そして、これまでの使用位置情報を明らかにして、汚染除去に責任を持てと要求しています。国連決議は法的拘束力のあるものではありませんが、これを国際的圧力として活用し、最終的にウラン兵器全面禁止条約の成立をめざしています。