DATE: 2003年6月24日(火) 午前8時35分
パンタ笛吹の帝国現地レポート(12)
こちらボルダーでは、カラッとした夏が続いています。 テレビや新聞では、毎日のように散発的な攻撃にさらされるイラクの米軍のニュース を 流しています。それにしても、米軍による掃討作戦を「砂漠のサソリ作戦」だなんて 、 だれがネーミングしたんでしょう。
昨日、平和活動家の友人・ジェリーと会ってコーヒーを飲んでいたら、こう憤慨して い ました。
「いやあ、ブッシュの詭弁には、もうほとほとあきれてしまうよ。WMD(大量破壊 兵 器)が見つからないんで、それを疑惑施設の略奪のせいにしたり、放火で書類が焼け た からだと言ったり。 戦争前は『フセインはWMDを持っている』と言っていたのに、いまでは、『WMD の 開発計画を持っていた』なんて、論理のすり替えをやっている。 その上、ボクらみたいにWMD批判をしている者たちを、ブッシュは『レビジョニス ト』(歴史修正主義者)と呼んでいるんだぜ。 レビジョニストって、ホロコーストは な かった、なんて主張している連中につけるレッテルなのに、それをボクら戦争反対派 に 向かって呼んでいるのは許せないよ」
★次の戦地は、どこ?
米軍のMー1戦車がバグダッドに乗り込んでサダム・フセインを追い出して以来、一 つ の質問がくり返し問われた。 「米軍が目標とする次の戦地はどこだろう?」という質問だ。 米軍は勢いに乗ってシリアに攻め込むのか? それともブッシュ政権はイランに軍事 的 圧力をかけるのか? ・・・しかし、先週からの状況を見ていると、この質問の答えが出たような気がする 。
米軍の次の戦地は、ここ、「イラク」なのである。
http://truthout.org/docs_03/061503A.shtml
★サダムの罠にはまったアメリカ
いまふりかえってみれば、巨大なイラク軍がいつのまにかどこかに消えてしまったバ グ ダッド陥落は、ある程度計算された策略だったのかもしれない。 アフガニスタンの大都市でも、タリバンは戦わずして逃げ去った。タリバン兵は武器 と 兵力を温存しながらちりぢりに隠れたが、いまでは再結集してゲリラ戦を仕掛けてい る。 サダム・フセインもまた、このタリバンの戦略から学んで、わざと戦わずしてバグダ ッ ドを放棄したのかもしれない。
http://truthout.org/docs_03/062103H.shtml
★なぜ、まだここにいるんだ?
バグダッドの北部に駐留するある米軍曹は、こう不満をぶちまけた。 「俺たちはここで、いったい何に巻き込まれているというんだ? 戦争はすでに終わ っ たはずなのに、毎日のように米兵が殺されている。 サダムが放逐されたあと、イラ ク の住民たちは俺たちに出ていってくれと要求する。 もう俺たちがここで銃弾にさら さ れる価値なんてないはずだ。 なぜ俺たちはまだここにいなくちゃいけないんだ?」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A14492-2003Jun19.html?nav= hptop_tb
★兵士は巡査ではない
21歳のサリヴァン上等兵は、バグダッド市内でM113武装兵站車を乗り回して、 慣 れない警察活動をしている。 「この武装兵站車は、エンジン騒音がすごいから、泥棒は3キロも向こうからこの騒 音 を聞いて逃げ出すさ。その上、図体がでかいんで、バグダッドの細い路地にも入れや し ない。われわれは一人の悪者(サダム)を追い出したけど、何の意味があったんだろ う? いまではこの街は悪者だらけになってしまったからね」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A14492-2003Jun19.html?nav= hptop_tb
★これがアメリカ魂だ!
ラムズフェルド国防長官は、イラクで米兵が毎日殺されている事実に言及し、「米国 民 は米兵犠牲者の増加に、辛抱強く耐えるだろう」と、こう語った。
「米国民は、イラクの民主化が容易な使命ではないことを理解してくれている。米国 民 は、イラクでのわが軍の努力が価値あるものだと感じていると、私は信じている。米 軍 をサポートすることこそ、アメリカ魂の反映なのだ。」
http://truthout.org/docs_03/062103H.shtml
★勝った者の好き勝手
6月22日、湾岸・コソボ戦争でのヒーローだったナッシュ退役将軍は、オブザー バ ー紙にこう語った。
「イラクで毎日米兵への攻撃を仕掛けている勢力は、サダムの残党かもしれないし、 娘 を殺された父親かもしれない。フセイン政権崩壊後の暫定占領当局(CPA)は、失 敗 につぐ失敗を犯してきた。 米駐留軍は、何でもかんでも、やりたいようにやれるとでも思っているようだ。彼ら は、石油省や油田を守りたいと思えば、それらを厳重に守る。いつまでたってもバグ ダ ッド市民に水や電気や医薬品を供給できないのは、それが米軍にとってあまりやりた く もないことか、どうでもいいことだからだ」
http://www.observer.co.uk/iraq/story/0,12239,982654,00.html
★自衛隊をホントに送るの?
イラク新法に基づいて日本の自衛隊が現地に派遣された場合について、元軍人のアヤ ド・イブラヒムさん(31)は「イラク人は外国人を嫌い、占領者とみなす。日本人 に は米軍に加わらないように伝えてほしい。参加すれば彼らが損害を被るだけだ」。 元イラク軍大佐のカーメル・ナジさん(40)も「インドだろうと日本だろうと米軍 指 揮下に入れば、米軍と同じように扱う」と断言する。
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/kokusai/20030622k0000m030009000c.html
★怖がられる世界のガキ大将
ピュウ研究所が行った世界規模の世論調査によると、ロシア人の71%、トルコ人の 7 1%、そしてインドネシア人の74%もの人々が、「アメリカが自国にとって脅威に な りえると非常に心配している」という結果が出た。
世論調査をした21カ国のうち、17カ国の人々は、「問題は一般のアメリカ人にあ る のではなく、ブッシュ政権そのものが脅威の種」なのだと答えている。 ウソを重ねながら今回の戦争を始めたブッシュ政権は、「世界から賞賛されるよりも 、 恐れられる道」を選んだのは間違いない。
http://www.truthout.org/docs_03/061203H.shtml
★地下におり、扉をあけ、廊下の突き当たりに・・・
イラク戦争が始まる前、国連査察団はさまざまな情報を米諜報局から知らされたが、 あ てにならない情報ばかりだったという。 アメリカから渡された大量破壊兵器の隠し場所に関する機密情報は、ときには微にい り 細にわたっていた。
「そのビルの地下に降りていくと、4番扉と記されたドアがあるから、そこを開け中 に 入りなさい。すると、そこには長い廊下が続いているので、その奥の部屋が、化学兵 器 がいっぱいに詰まった秘密倉庫だ・・・」というふうに。 ただ問題は、その部屋には何もそれらしいものがなかったことなのだ。
http://www.thebulletin.org/issues/2003/ja03/ja03rothstein.html
★バグダッドで朝食を
湾岸戦争前、イラク人の友人の家でよばれる朝食は、それはそれは豪勢なものだった 。 香り高い紅茶に焼きたてのパン、それにジャムにナツメヤシ・・・。 しかしいま、バグダッドの人々は、市場に大量に出回っているバスラからのトマトを 食 べようともしない。その理由は、連合軍が使った劣化ウラン弾の残骸で、南部バスラ 産 のトマトが汚染されていると恐れているからだ。
http://electronicIraq.net/news/883.shtml
★平和があなたと共にありますように
リック・マクドゥエル バグダッドにて 6月19日
日中、バグダッドの街にでると、過酷な暑さで、息をするのも苦しくなる。電気が来 な くてエアコンが使えない夜は、暑苦しくて眠れやしない。
人々、特に女性は、夜だけでなく、昼でも危なくて外に出られない。拉致やレイプが 横 行しているからだ。今日、近所で、機関銃のダダダダッ!という音を聞いた。あとで 聞 いてみると、女性ドライバーの運転する車が強盗に襲われたそうだ。
強盗は、その車に銃弾を雨あられのように撃ち込み、女性ドライバーの髪をつかんで 、 引きずりおろしたという。サダムの時代には、こんな暴力はなかった。 親たちは子 供 がさらわれるのが怖くて、学校にもやれないでいる。
それでも、このバグダッドにはいいところもたくさんある。人々は驚くほど親切で、 ど この家に行っても、紅茶やジュースや飴などのもてなしを受ける。いまはそれもない と ころが多いので、そのかわりに水を出してくれる。
イラク人同士があいさつするとき、彼らは必ず手をハートの上にあてる。そして別れ の 言葉「マイアッサルマ」を告げる。これは、「平和があなたと共にありますように」 と いう意味だ。友だちからタクシーの運転手まで、すべての人々の口元から、この「マ イ アッサルマ」という言葉が交わされる。
イラクはこれからどうなるのだろうか? 誰もその答えを知らない。先週、モスルの 医 者が私にこう言った。 「私たちイラク人にとって、サダムの圧政と米軍の占領は、同じことです。以前は、 私 たちは大きな監獄の中にいるも同然でした。いまはそれよりももっと大きな監獄の中 に いるのです」
(抄訳・パンタ笛吹・TUPチーム)
http://electronicIraq.net/news/902.shtml