国連難民高等弁務官事務所の発表(2013年現在)では、すでに100万人以上がシリアを離れ難民となったとされるように、混乱の続くシリアの情勢は昨年、化学兵器の使用で多数の一般市民の犠牲者が出るにいたり、米国をはじめ多くの国々を含めた国際関係を緊張させました。
ピュリッツアー賞を受賞した調査報道記者のシーモア・ハーシュは先月、新しい論説「レッドライン・アンド・ラットライン」を発表し、シリア情勢に大きな影響を与えている力を読み解きました。アメリカの独立系メディア「デモクラシー・ナウ!」のエイミー・グッドマンがシーモア・ハーシュを番組でインタビューし、化学兵器使用とトルコの関係、武器の調達ルートと米政府との関わりなど、シリア情勢に関する彼の新しい論説について尋ねています。
(前書き、翻訳 キム・クンミ/TUP)
「デモクラシー・ナウ!」 2014年4月7日放送
エイミー・グッドマン:
シリアが国連の監視下で化学兵器武器庫の廃棄作業を続けているなか、ピューリッツァー賞受賞のジャーナリスト、シーモア・ハーシュは新しい論説で、昨年シリアのグータ市で化学兵器攻撃により何百人ものシリア人が亡くなった事件に疑問を投げかけています。米国をはじめ、国際社会の多くの国々はアサド政権に忠実な軍を非難し、米国はもう少しでシリアを攻撃するところでした。しかしハーシュによると、オバマ大統領とジョン・ケリー国務長官がアメリカによるシリア攻撃を言い張る一方で、米軍と諜報コミュニティ内部のアナリストは化学兵器攻撃の黒幕は誰だったかについて、内々に米国政府の主張の根幹に関わる疑問を呈していました。
ハーシュによると、米国国防情報局(DIA)は6月19日にシリアの反政府グループ、アル=ヌスラがサリン生産部隊を維持していると述べた5ページにわたる極秘の「論点」ブリーフィングを発行しました。DIAは事件を「同時多発テロ事件以前のアル=カーイダの活動以来、最も先進的なサリン計画」と述べています。DIA文書を引用すると「トルコとサウジに本拠を置く化学ファシリテーターが、シリアでの大規模生産活動を見越して数10キロのまとまった量のサリンの前駆物質を手に入れようとした可能性が高い」。DIAブリーフィングが書かれる一カ月前に10人以上のアル=ヌスラのメンバーがトルコ南部で逮捕され、地元の警察がプレスに話したところによると、彼らは2キロのサリンを所持していたとのことです。
調査報道記者シーモア・ハーシュは今日、ワシントンD.C.から番組に参加します。彼の最新の記事の見出しは『レッドライン・アンド・ラットライン』。ロンドン・レビュー・オブ・ブックスに発表されたばかりです。
セイ (シーモア)・ハーシュ、デモクラシーナウにようこそ、またお会いできましたね。あなたが発見したことを教えてください。
シーモア・ハーシュ:
いまあなたが一部を説明してくれました。DIAのブリーフィング文書で一番重要なのは……。この番組にも出演しましたが、「ロンドン・レビュー」に数カ月前に『サリンは誰のものか』※1――まさにこれが記事のタイトルですが――、を問う記事を書いたのですが、それは、はっきりとはわからない。東グータで何が起こったのかを正確に知っているということではありません。はっきりとわかっていること、軍やペンタゴンやアナリストがわかっていること、という意味ですが、回収されたサリンはシリア政府の兵器庫に存在する種類のものではなかったということです。そのことは、大統領が戦争を起こそうと主張した根本的な要因の1つに深刻な問題を提起します。シェッド文書※2の本当のポイントは、そして何故わたしがこれについてたくさん書いたかといえば、記事を書いた数カ月前の時点で、ホワイトハウスはこの文書について知らないと言っていたし、アル=ヌスラや他の過激派グループ、またはジハード主義グループがサリンを保有しているという情報を持っていなかったと言っていたからです。。
※1 岩波書店の雑誌『世界』2014年5月号で、TUPの宮前ゆかりと荒井雅子による全訳を読むことができます。
※2 シェッドはブリーフィング文書を受け取った国防情報局(DIA)副長官
何が恐ろしいかといえば、軍の内部でも、私が知っているだけでも米国南方軍(SOUTHCOM)などが、この可能 性を懸念していました。ジハード主義グループの一部にとって戦況は不利になりつつあります。明らかに、アル=ヌスラだけでなく他のグループも、トルコの助けを借りて、サリンを製造する技術を持っています。そして恐ろしいのは戦況が悪化すると、このサリン――しかるべく使うと恐ろしいほどのたくさんの人をあっというまに死に至らしめることができるので、「戦略的兵器」と呼べるかもしれない――このサリンが、シリア国外の様々な部隊に送られることになる。言い替えれば、彼らが持っている化学物質が、どこだかわかりませんが、北アフリカ、中東や他の場所に送り出され、我々が直面している対テロ戦争が違った状況になってくるということです。それが現実です。
一方で、ホワイトハウスの立場はまたもや、今回の記事について、彼らが存在しないと主張する文書について、――私がその文書のかなりの部分を記事中に引用しているにも関わらず――私はその文書を読んだのは明らかなのですが――、それでも彼らは依然として「そんな文書は存在しない」と主張しています。この現実から目をそらすやり方は私が記事で書いたことと関係しています。大統領がいったん決定を下したら、変更すること、変更させることはほとんど不可能だと人々が言っていたことを記事に引用しました。シリアがやったと大統領がいえば、皆そう考えること、考え続けることが正当化されてしまい、他に選択肢はなくなる。大統領は現実から目をそらした外交政策を主張してきましたが、一方で、特にシリア政府が(化学兵器を)廃棄している現状で、我々はその化学兵器で深刻な問題を抱えることになる。シリア内部でこれらの兵器を持っているのはいかれた奴だけになる。そういうことになっているわけです。
グッドマン:
「ラット・ライン」とはなんですか?
ハーシュ:
「ラット・ライン」は非公式の呼び名なんです。CIAは…CIAには非常に有能が人が沢山いますよ。私はずいぶん叩いていますけれど、でも、みなさん認めざるを得ないと思いますが、そこには非常に明晰は人々がまだ残っているし、自分の仕事を理解してやっている。イランでの戦闘中、ブッシュとチェイニーはイラン国内に秘密裏の地下核施設があるかどうかを調べることにやっきになっていました。彼らは絶対的に信じていました。パキスタンなどから合同特殊作戦コマンドのおとり捜査チームを、CIAが知っていた密輸と送金ルートを通じて送った。CIAの「ラット・ライン」を使って入り込もうとしていた。
この場合の「ラット・ライン」は2012年初期のことですが、なぜだかわからないけど、たぶん、リビアでカッザーフィ(カダフィ)を追いだせたこと――それはそれで混乱が起こったですが――、勝利したと思っていたことに傲慢になっていて、米国はトルコを通じてシリアの反対勢力に武器を注ぎ込むために極秘作戦を展開しました。送り込んだ相手は世俗主義グループにも、アサド政権に対して正当な不満を持っていた人々にも、そしてシリアに本気でワッハーブ派やサラフィー主義の政府をつくろうと、シリアを乗っ取ろうとしサウジとカタールの資金援助をうけたグループにも。これはまったくの極秘作戦でした。長い時間がかかりました。ベンガジ(リビア)の領事館が制圧されて初めて終了しました。私が書いたように、米国議会にも内緒で行われていた。我々でさえもそれを知ったのは、最近の上院情報委員会からの、数カ月前に安全保障などを問題にして発表されたベンガジについて報告があったからです。共和党が常に話題にしている問題ですが、そこにはこの武器を注ぎ込む課程について説明した秘密の付属書がありました。それは実際にトルコから、サウジやカタールの資金を使って実行された。我々は彼らのカネを使って武器を購入し送り込んだ。CIAはこれに深く関わっていた。
実際には、オバマは彼なりに賢明だったとか見事だったとかいう事ができるでしょう。彼は米国がやりたかったこと、すなわち反対勢力にバシャール・アル=アサドを打倒させるためにサウジアラビアとカタールとトルコを手段として使った。そういうことでした。これは長期の作戦でした。ともあれ、これが終了した、我々がこれをシャットダウンしたのはベンガジが制圧された後でした。我々は突如として、あらゆる種類のとんでもない武器、肩でかつぐ対空ミサイルMANPADSなど、あらゆる武器を目にすることになったのです。シリア内部の様々なジハード主義グループが突然そうした武器を手にするようになった。だから、明らかに、こういった種類の作戦には起こりがちですが、米国が仕掛けた「ラット・ライン」は作戦終了後も独自に生きていたのです。
グッドマン:
シリアの交渉が今年初めにまとまった後、ジョン・ケリー国務長官はあらためて、バシャール・アル=アサドの辞任を支持し、米国は反政府勢力への支援を増強する用意があると述べました。
ジョン・ケリー国務長官:バシャール・アル=アサドほど、テロリストをシリアに引き寄せた者はいない。彼はこの地域の、テロリズムを引き寄せる最大の磁石だ。そして長い間、彼が選んだ武器によって、彼が実行したことによって、あらゆる正当性を失った。・・・私は、反対勢力への支持や反対勢力への支援増強を含め、多く別の道が模索されるだろうと申し上げたい。
グッドマン:ジョン・ケリー国務長官の言葉でした。セイ・ハーシュ、あなたの反応は?
ハーシュ:
まあ、この時点で、ホワイトハウスは統合参謀本部から――彼らはイギリスが自国の研究所で分析していたサリンを持ってきていたのを知っていました――米国はポートン・ダウンという場所で化学・生物兵器の問題についての研究室をイギリスと共有しています。それはイギリスの化学兵器施設です。そして、米国は生物化学兵器のことになると、国際的な問題を分析するということでそれを共有します。米国はイギリスの能力に非常に信頼を置いているのです。イギリスがサリンのサンプルを持ってきて、このサンプルからこれが重大な問題になることは明確だった。なぜなら(サンプルは)イギリスも、我々も、ロシアも知っていたシリアの武器庫のなかにあるものと適合しなかったからです。プロの軍隊はサリンを使いやすく、より長く使えるようにするための添加剤を持っています。アマチュアのものは、キッチン・サリンと呼ばれます。気の滅入る言い方ですが。少しの不活性な化学物から非常に簡単にサリンを作ることができますが、そうしたサリンはプロの軍事レベルのサリンに比べて、殺傷力はないし、特定の添加剤もありません。要するに、実際にサリンの中に何が含まれているかを検出することができるわけです。非常に早い段階で、昨年の8月21日のダマスカス近郊で数百人が殺された恐ろしい事件から6日、8日、10日目には、英国がサリンを持ってきた。そして、それは動かぬ証拠だったのです。
だから、中東をカバーする中央軍(USCENTCOM)の司令官を勤めた、ベテランの陸軍将校マーティン・デンプシーが率いる統合参謀本部は、大統領のもとへいって疑問を提起した。問題を知らせたのです。そして軍隊はこれに不満――と言っていいと思いますが――であるという事実も伝えた。軍人は任務が与えられれば遂行するものですが、一方で、文民の政治家よりリスクが見えることがよくあります。最初に、大統領は一連の爆撃を求めていたので軍は標的のリストをつくった。標的は滑走路やなんかが21か31ぐらいだったとおもいます。そして彼らはホワイトハウスに――誰だかはわからないが――バシャールにもっと苦痛を与えたいと言われた。なので、次にきたのはご存じの大規模爆撃です。B-52爆撃機の航空団2つを使って2000ポンドの爆弾を落とし、電力発電所などを攻撃する。民間のインフラへ多大な被害を与える攻撃になります。これは統合参謀本部にも大変なことだった。だから大統領に真剣に問題を提起したのです。
私が書いたように、それ以外にオバマ大統領が突然攻撃を止めた、あのような形で攻撃を止めさせるような問題が他にあるとは思えません。突然、シリアとの化学軍縮協定に立ち返って署名するという事を考えると……。協定はロシアが持ち出していたもので、前年から提起していたのに米国はその時は乗らなかった。ところが、今回大統領は明らかにそれに飛びついた。それにね、みなさん、大統領をほめてあげなくては。あれだけ精一杯話し、あれだけ攻撃を望んでいたのに、現実に直面したとき大統領は引き下がったのです。なぜだかは言わなかった。しかし。私たちは外交政策に関してはあまり多くを期待しないように学んできました。残念ながら、トップから率直な話が聞けないということは、官僚が率直に話さないということです。もしあなたが官僚のなかにいたら、ホワイトハウスが知りたがっていないことは伝えることはできないでしょう。
グッドマン: あの、
ハーシュ:それは、、 はい、続けてください。
グッドマン:セイ、トルコについて少し話したいのですが。
ハーシュ:どうぞ
グッドマン:
あなたは記事のなかでトルコのエルドアン首相と高官が、トルコによるシリアへの軍事介入を正当化するための偽旗作戦※3について話し合った様子をリークしたビデオについて触れていましたね。これはエルドアン首相がリーク映像に反応したものです。
※3 軍事行動の1つ。敵がやったとみせかける行動。
例えば攻撃の口実をつくるために、敵がやったとみせかけて自国の施設を破壊するなど。
レジェップ・タイイップ・エルドアン首相:今日、YouTubeにビデオがポストされました。シリアについて、スレイマン・シャー廟について、トルコ外務省の会議があった。それがYouTubeにリークされた。酷いことだ。不正行為だ。
グッドマン:トルコは映像がリークされたことでYouTubeの閲覧を一時的に禁止しました。セイ・ハーシュ、あなたはエルドアン政権の反政府勢力への支援、トルコの反政府勢力への支援がどのようなものであるか、また米国は今、どのような立場にいるかを説明できますか?
ハーシュ:
さて、我々の今の立場というと、できることはあまりないのです。私の知っていることを話させてください。知っていることは、アル=ヌスラグループがトルコで設備を購入しているということ。彼らは著名なフィダンという男に率いられたトルコ諜報機関から訓練を受けてきたという報告もあります。最近のウォール・ストリート・ジャーナルの素晴らしい報告は、トルコの指導者、エルドアン首相だけでなく過激な部隊とフィダンとの親交について報告しています。そしてエルドアンもそうした部隊と親密なのです。彼らは選択肢があるとしたらシリア内の原理主義色が強いグループをサポートするでしょう。そして訓練を供給していることも私たちは知っている。また、こう呼んでいいと思いますが、もう一つのラット・ラインがあることも知っています。その流れ、混合したらサリンができる化学薬品を送ろうとするその流入ルートはトルコ内部からきている。過激派グループにこうしたものを送り込んでいる責任は国家憲兵(Gendarmerie)として知られる民兵組織とトルコ国家情報機構(Milli ?stihbarat Te?kilat?, M?T)の双方にあります。実際にこうした物質を運ぶトラックの流れがあり、トルコが深く関係している。
この記事に書いたように、多くの諜報コミュニティの結論は、彼らはこれについて報告書を書いていないので、報告ということはできませんが、特に事件の後で私たちが傍受した通信に基づけば、トルコ政府内に東グータで起こった出来事を自分たちの手柄にした小集団がおり、これでオバマ大統領の有名な「レッドライン(超えてはいけない一線)」を超えさせるということが攻撃の最大のポイントだったということです。知っていると思うけれど、オバマは2012年夏に化学薬品を使用したり反対派への弾圧が厳しすぎるなどレッドラインを超えた場合、バシャールを止めるために爆撃すると言った。だからトルコはこの春、死に物狂いで繰り返し――この春、いくつかの攻撃があった証拠が多くあります。国連は、公言することはないけれど、それを知っていた。これについても記事に書きました。そして米諜報関係者もそれを知っていた。それが私が言及した秘密報告書、討議資料が書かれた理由です。過激派組織が使ったこと、ジハード主義グループが神経ガスにアクセスを持っていて、3月と4月にシリア兵士にこれを使用したことを知っていた。我々の政府によって常に相当の確信をもって反対勢力の責任にされてきたそういった事件は、単に反対勢力がやったというだけではなかったのです。そして報告書はそれを明らかにしている。ダマスカス近郊の8月の攻撃の前に大きな問題があった。数カ月まえにこの可能性を知っていた。なんらかの理由で政権が聞きたいと思うような情報ではなかったから、明るみにでることはなかった。そしてその、
グッドマン:その、
ハーシュ:はい。
グッドマン:
EAワールドビューは日曜日、ウェブサイトに「化学兵器の陰謀はない――ハーシュの反政府武装勢力に関する「独占記事」の再検証」(原題:There is No Chemical Weapons Conspiracy—— Dissecting Hersh’s ‘Exclusive’ on Insurgents Once More.)という見出しの記事を発表しました。著者のスコット・ルーカスは、軍事行動の範囲や規模を考えると反政府勢力が昨年8月の化学兵器攻撃に責任があるかもしれないという主張に疑問を呈しています。 彼の記事を引用すると「当日の報告は7から12カ所が同時に化学物質で攻撃されたとしている。つまり、攻撃に責任のあるものは誰であれ、反対勢力が支配するダマスカス近郊の東グータの町々と西グータの一つの町に対し、化学物質を弾頭に乗せた複数の地対地ロケットを発射した。[化学攻撃]に続いて…通常兵器による激しい攻撃が行われた」。著者のスコット・ルーカスはあなたが、政権を別にして誰がこのような大規模なオペレーションを実行する能力を持っているかという疑問に答えを出せていないと言っています。セイ?
ハーシュ:
(聞き取り不能)最初の記事――その話はもう済んでいます。そのことはもうわかっている。実際に、ニューヨーク・タイムズも撤回をしている。撤回のようなもの、ということですが。 まるで「プラウダ」を読んでいるようでした。しかし、注意深く読むとニューヨーク・タイムズは事件後に一連の記事で、被害を与えた問題の弾頭は9キロ=6マイルほど離れたシリアの陸軍基地からのものだと言っていた。それに対して、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームを率いる、元海軍作戦部長の科学顧問だったテッド・ポストルとか、明らかに事件の背景に詳しくて偏見のない、多くのアナリストがいました。彼はチームと一連の研究をし弾頭はおそらくせいぜいキロ2キロ、1.2マイルを超えないと結論づけました。それに今は国連の報告書もある。国連の報告書はアキ・セルストロムが団長として調査をし、彼の結論も同じだった。あのミサイルが発射されたのは1マイル以上離れたところからではなかった。
あれは、映像から見ても自家製だった。知られている武器のどの体系にも適合していなかった。それに我々がシリアの弾頭の非常にいい画像を持っていないと思わないでください。彼らは化学兵器を搭載できる一連の弾頭を持っているし、我々はそのすべての寸法を知っています。あのミサイルはそのどれにも合わない。それに国連の報告書もある。そういった独立した報告書が(ミサイルの発射地点は)1キロか2キロ以上は離れていなかったと言っている。それになぜ多連装ロケットの話をしているのかわからない。あれは自家製の武器ですよ。これは、この問題を詳しく見てきた者のほとんどにとって非常に明らかに思える――今言ったように最終報告書をだした国連のチームでさえです――、国連にはある決まりがあって、誰が何を発射したというようなことは言えません。彼らに言えることは、武器について記述化することだけで決して判断を下すことはできない。しかし、私が引用しているのは、調査団内部の関係者で、発射された武器は自家製であったし、シリア軍のものではなかったというを明確にしている人の話です。これがその議論に対する答えです。それはブログだと思うのですが、そのブログは知りません。
グッドマン:そして――
ハーシュ:しかしこれは―― はい?
グッドマン:
トルコの利益ですが、もしレッド・ラインに圧力をかけアサドの関与とされることになる攻撃をサポートしたのだとしたら、米国がシリアを攻撃することで彼らの得る利益はなんでしょう?
ハーシュ:
もう、それはすごい利益ですよ。トルコのエルドアン首相は膨大な努力、財力、その他を払って、彼の諜報機関も動員して、使い捨ての――彼とバシャールは対立してました。エルドアン首相はバシャールを追放したかった。そして絶えず攻撃していた。最も急進派をサポートして。また、これを言わなければなりませんが、世俗派も支援していた。バシャール政権を転覆したいと真剣に願ってはいても、ジハード主義政権を望んでいない人々です。彼らは一家族に支配されない政府を望んでいるだけでしょう。トルコが深く関与してることに疑問はありません。そして戦況は悪化しつつある。シリア軍が優勢になり、本質的に戦争が終わっていることは非常に明白です。バシャールを追い払うことは、もはや決着がついたことではなくなっています。トルコに近い地域がおそらく、様々な派閥のいくつかの前哨基地になるでしょう。様々なところからシリア軍の圧力がかかるでしょう。しかし、本質的に、これは我々の負けカードです。認めたくはありませんが、そうなのです。バシャールは持ちこたえました。そしてその意味は――
グッドマン:
ワシントンDCから、ピュリッツァー賞受賞者の調査報道記者シーモア・ハーシュでした。ありがとうございました。最新の論説、「ロンドン・レビュー・オブ・ブック」の『ザ・レッドライン・アンド・ラットライン』にリンクをつけています。デモクラシー・ナウ!democracynow.org 「戦争と平和レポート」でした。
原文 Sy Hersh Reveals Potential Turkish Role in Syria Chemical Strike That Almost Sparked U.S. Bombing