イラクで武力を動員した「宗派対立」が深まる中、米国の再度の軍事介入が危惧されています。この危機を承けてIVAW(反戦イラク帰還兵の会)が介入に反対する声明を発しました(メールニュース配信6月18日)。
2003年に開始されたまったく理不尽な戦争で、イラクはすっかり破壊されてしまいました。そのイラク戦争で日本政府は「友人(米国)が血を流しているのに後方支援ぐらいしないわけにはいかない」「自衛隊の駐留するところが非戦闘地域である」などの理屈を動員して共犯者となりました。その後 10年経つも、国会で約束したイラク戦争の検証は、未だ始まっていません。
その一方で今、政府は、国家に対する憲法による縛りを緩めさせ、戦争できる国にするため一歩でも二歩でも前進しようと、日夜汗をかいています。集団的自衛権や集団的安全保障というラベルを貼った、他国民殺戮の「権利」を手に入れようとしています。
今こそイラク戦争の検証を始めるべきではないでしょうか。イラクで今起こっていることは、いったい何に起因するのか明らかにすることなく、武力行使の是非を論議することは過去の罪にもっと大きな罪を重ねることではないでしょうか。
この文脈で、「冬の兵士」を読み直すことも意義があると思います。IVAW主催のイラク・アフガニスタン戦争公聴会の記録をTUPが翻訳し岩波書店から出版されたものです。「米国の若者と共に血を流さなくていいのか」と煽られている日本の若者に、戦争の実相を今一度確認していただきたいと切望します。どの国の若者の血も流させないために。
IVAWの公式声明を紹介します。
前書き・翻訳: 高橋真澄
参考情報: TUP 「冬の兵士–イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実」
https://www.tup-bulletin.org/?post_type=books&p=1162
爆撃は人道に反するーイラクの危機についてのIVAWの公式声明 2014年6月18日配信
反戦イラク帰還兵の会(IVAW:2001年9月11日以降米軍で服務した、あるいは現在も服務している個人からなる団体)は、合衆国議会、大統領および政府に対して、イラクで現在勃発している暴力に対して、暴力や武力に訴えた対応を行わないよう要請します。
IVAW会員の多くは、近年の米国による占領の期間中イラクに配備されていました。現地で服務した者は体験的に、米国の武力による対応策はイラク民衆の利益にならないことを知っています。IVAWは、人民の自決、この場合はイラク民衆自らの意思決定を尊重すべきであると主張します。この危機に対するいかなる解決策も、イラク人民自らがもたらす必要があります。
米国がイラクを侵略・占領したとき、以前は政教分離だった国が荒廃してしまいました。宗教による対立や分断は存在しなかったのに、米国政府および国防総省は意図的にそれを作り出し煽りました。今日の状況はその結果であり、犠牲となっているのはイラクの民衆です。
イラク人民は、2003年3月に始まった戦争に自らの命という代価を支払わされています。米国による10年間の占領の後、イラクの人々には安寧はほとんどありません。経済的インフラは破壊され、それを修復する新規の雇用はイラク人ではなく米国企業と請負業者に与えられてきました。イラクの労働組合はしばしば報復を受け、子どもたちの一世代がまるごと、ハウィジャなどの各地で、深刻な障がいとともに誕生しています。誰もその責任を問われていません。残された廃棄物を片付ける努力も不在です。
「自由の戦士」の武装援助となると、米国は都合のいいときだけの友として振舞いがちです。今日の自由の戦士は明日のテロリストとなり、違法な占領を正当化する材料となります。私たちは混乱をさらに深めるのではなく、眼前にある問題の解決にあたらねばなりません。米国は、新たな傀儡大統領を立てるのではなく、環境汚染の解消や拷問の申し立てについての調査に取り組むべきであり、米国の介入なしに、官民を通じて民主主義が花開くよう見守るべきです。
地元出身の議員にただちに電話をしましょう。
連帯の心で
IVAWスタッフ、ジョイス、マギー、マット、ジュリア
追申
現在の危機が収束したあと、イラクではさらに多くの取り組みが必要となるでしょう。政府やメディアが再び背を向けても、IVAWは引き続きイラクの人々と連帯して責任を追及し、癒される権利を要求していきます。皆さんはIVAWのこの取り組みを支援することができます。IVAWが長期的に活動し続けることができるよう、募金をお願いします。
原文:IVAW STATEMENT ON THE CRISIS IN IRAQ
http://www.ivaw.org/blog/ivaw-statement-crisis-iraq