TUP BULLETIN

速報193号 03年10月14日 帝国現地レポート(19)

投稿日 2003年10月14日

DATE: 2003年10月15日(水) 午前0時52分

 パンタ笛吹の帝国現地レポート(19)

ぼくはダライ・ラマのファンで、何度も会って、「聖なる黄色いスカーフ」 を手渡されたこともあるので、以前、「テロに対しては、場合によっては暴力 による戦いも許される」と言ったことにはがっかりしました。

イラク戦争の善し悪しについても、「歴史のみが判断するでしょう」なんて ブレアー首相みたいなことを言っています。今回は、ボストン講演会での、さ らなる「がっかり」を訳してみました。

また、前々回のムーア監督の新刊からの抄訳、「痛烈な皮肉混じりのメッセ ージがとても痛快」と読者のみなさまにも好評のようでしたので、今回はムー ア監督の「9・11、3連発」を巻末に付け加えました。

(バンタ笛吹/TUP)


★ついに、イラクのパレスチナ化が始まった

イラクの米兵は、実のなったナツメヤシやオレンジの木をブルドーザーで、 根こそぎに破壊しまくっている。それは、農民たちがゲリラ情報を与えてくれ ないので、連帯責任の見せしめに、罰を与えているのだ。  農民の一人は、「米兵は、ゲリラ戦士がこの果樹園に隠れているからと言う けど、それはウソです。米兵はゲリラも武器も何も見つけていないのに、果樹 をめちゃくちゃにしてしまったんです」と嘆いた。  もう一人の農夫は、「米兵はブルドーザーに大きなスピーカーを取り付け、 大音響でジャズを鳴らしながら果樹をなぎ倒していきました。ジャズはアメリ カ流のジョークでしょうがね」と言った。

農民の一人、シークは、米軍基地に果樹園の損害を弁償してくれと掛け合い に行ったところ、米係官は、「今日ブルドーザーを使った理由は、地元の農民 がゲリラの居所を知っているのに教えてくれないからだ。米軍に協力しない農 民たちはみな、懲らしめることに決めたんだ」と答えたという。  シークは、「イスラエルがパレスチナ人に連帯責任を押しつけて、ブルドー ザーで家々を壊したように、それと同じことを米軍が始めてしまった」と怒り を隠さなかった。

記者が農夫に、「つぶされた果樹園は、何ドルくらいの価値があったんです か?」と聞くと、農夫は、「それはまるで、誰かがワシの腕を切り落として、 ワシの腕は何ドルくらいの価値があったのかと聞くようなものだ」と答えた。

http://news.independent.co.uk/world/middle_east/story.jsp?story=452375

★問答無用、とにかく撃ち殺せ!

イラクでの米軍の交戦規則が、どんどん残酷なものへと改悪されている。 先週、ティクリートで夜のパトロールに出る米兵士に向かって、上官はこう訓 示した。 「とにかく撃ち殺せ! あとでなぜ撃ったのかは問わないから」

米軍広報官のイザベラ少佐は、この命令を、もう少し手の込んだ言い方で説 明してくれた。 「これは戦争なんです。誰かがビルの窓から撃ってきたら、われわれはそのビ ルに向かって、何百発という銃弾を撃ち返します。誰かの車が検問でストップ しなかったら、われわれはその車に発砲します」

イラク女性、アンマーの兄の車が路上で故障し、パンパンと音をたてていた ら、通りがかりの米兵が機関銃の発砲音と勘違いして、アンマーの兄を射殺し てしまった。 アンマーはこう語る。 「米兵が発砲した銃弾は、車の窓ガラスを破って、兄の首を貫通しました。兄 は即死でした。兄は商店主であり、ただの一般市民です。もちろん銃を持って いませんでした。  わたしは、米兵が一般市民を殺すことで、どれだけの不幸をもたらしている かに気がついてほしいのです。米軍の司令官が、兵士たちに、あわてて見境な しに撃ちまくらないように、注意してほしいものです」

街中をパトロール中のホワイト軍曹はこう言った。 「やつらは昼間はにっこりと笑って、夜はオレたちを襲撃するんだ。イラク人 みたいなのと友人にはなりたくないね。  部隊の通訳に、イラク人たちはオレたちに怒っているのか? って聞いたら 通訳はこう答えたんだ。  『はい、イラク人の90%はアメリカ人を憎んでいます。残りの10%は、 もうすでにイラクから逃げ出しました』ってね」

http://sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?file=/c/a/2003/10/13/MN20680.DTL&type=printable

★なんだか、がっかり

ベストセラー作家、ダライ・ラマは、今回の米国ツアーで、ブッシュ大統領 やパウエル国務長官と会談した。  その後、ダライ・ラマはボストンの講演会で、「わたしは懐疑主義者です。 もし誰かが本当に癒しのパワーを持っているのなら、呼んできて、わたしのヒ ザを治してほしいくらいです」と語った。  聴衆から、「イラク戦争についてどう思っていますか?」という質問を受け たダライ・ラマは、「これからイラクで何が起きるのか言うのは早すぎます。 何年か待ちなさい・・・これがわたしの意見です」と答えた。  ちなみに、ダライ・ラマのニューヨークでの勉強会受講料は一人400ドル 高額寄付者が座れるVIP席は、一人1200ドルと3000ドル(約33万 円)だ。

ダライ・ラマはイラク戦争が始まる1週間前の3月11日、こんな意見を発 表している。 「わたしたちにできることは、せいぜい、続けざまに起きる戦争が、じょじょ に終わるように祈ることくらいです。でもいくら祈っても、実際にどれだけの 効果があるのかは、わたしには分かりません」

http://www.timesoftibet.com/artman/publish/index.shtml

★アメリカはお金でトルコ軍を買った

トルコの前政権は無駄遣いに無駄遣いをかさね、借金が膨れあがった。 いまトルコが抱えている対外債務は、1183億ドルにものぼり、その利子支 払だけでも青息吐息の状態だ。  トルコは自力で借金は返せない。しかし、対外債務不履行となると、通貨危 機だけでは済まず、経済全体の破綻にみまわれる。背に腹は代えられない。 お金を出してくれる国の言うことは聞くしか生きのびる道はない。

そこで、アメリカがトルコに86億ドルの貸付を発表、その数日後に、トル コはイラクに1万人の兵士を送ることに合意した。国民の80%が反対してい るのにである。  イラクは第一次大戦後イギリスに占領されるまで、オスマン・トルコによっ て、500年にもわたって統治されていた。イラク人は、トルコ軍がいったん 国境を越えたら、永遠に引き上げないのではないかと恐れている。

http://www.canoe.ca/Columnists/margolis_oct12.html

★赤ちゃんに好きな名前もつけられないなんて

トルコ軍といえば、イラク北部とトルコ内に居住するクルド人との紛争を忘 れてはならない。  日米のメディアに出ることはほとんどないが、それは中東で最も残虐で扱い にくい争いのひとつだ。すでに3万人が殺され、200万人以上の人々が家を 追われ難民になっている。

特にイラク北部の山岳地帯でゲリラ活動を続けるクルド労働党は、トルコに とって頭痛の種であり、できるなら掃討したがっていた。  そこで米軍は、1万人のトルコ兵をイラクに駐留してもらう見返りとして、 「イラク北部のクルド労働党ゲリラ兵5000人はテロリスト集団なので、武 装解除させなくてはならない」と発表した。

実際、先週末、クルド人の民族服をまとったCIA職員が山岳部まで登って 来て、クルド労働党幹部に接触し、「武器を捨てなさい」と告げたという。  ゲリラ兵の一人、ワラードは、「わしらは抑圧されたクルド人の権利を政治 的に得ようとしたけど、トルコはそのチャンスをことごとくつぶしてきた。  だからわしらはこんな山岳部に追いやられ、家族からも離れてキャンプ生活 をしながらも戦っているんだ」

アムネスティーによると、トルコはいまだに、クルド人がクルド音楽を聞く ことを禁じているし、産まれた赤ちゃんにクルド人の名前をつけることも許し てはいないという。また、クルド人による政党も非合法化している。

http://www.newsday.com/news/nationworld/world/ny-wokurd123492349oct12,0,6351344.story?coll=ny-worldnews-headlines

★ところ変われば、ゲリラも変わる

記者は、バグダッドの北の町ラマディで、イラク・レジスタンス戦士と対談 した。  戦士は布で顔をかくしてはいたが、AKー47機関銃とロケット弾と手榴弾 を持っていた。  「われわれは、サダムの残党などではない。できたら米軍が早くサダムを捕 まえて欲しいくらいだ。そしたら、われわれレジスタンス解放運動を『サダム の残党』などと誰も呼ばなくなるからだ。  われわれは、占領軍がわが国で、やりたい放題をしてのさばっているのに抵 抗しているのだ。イラクをイラク人の手に取り戻すのだ」

また記者はティクリートで、毎晩のように米兵を襲っているイラク人たちに 会った。彼らはサダムの信奉者たちだ。  彼らは、「イラクを米兵たちの墓場にするんだ。ヤツらが何千人いようが、 この町で安全にはいさせない」と語った。

モスルとファルージャでは、ゲリラ集団の抵抗理由がまた違う。彼らは「ム スリム同胞団」など宗教をベースにした兵団だ。最近、ヨルダンでこのグルー プとハマスの幹部が接触したと報道された。ハマスはイスラエルに対する自爆 テロで有名だ。

http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,2763,1061703,00.html

★シュワちゃん、選挙運動は終わったよ

15人の女性からセクハラ行為を訴えられていたシュワルツェネガーは、 選挙の3日前、米NBCテレビのインタビューにこう答えていた。

シュワルツェネガー 「その多くは作り話です。わたしは今まで誰の乳房をつ かんだり、シャツをまくりあげて裸にしたことはありません」

(Q) 「では、あなたは彼女らが体をまさぐられたという訴えのすべてを 否定するのですか?」

シュワルツェネガー 「はい、そんなことはまったくありません。わたしが言 いたいのは、自分はそんな種類の人間じゃないということです」

(Q) 「それであなたは彼女たちの申し立てをぜんぶ否定して、私たちには 詳しく説明してくれないんですね?」

シュワルツェネガー 「この選挙運動が終わりしだい、女性たちの訴えのすべ てに詳しく対応して、実際には何が起こったのか突きつめるつもりです。 でもいまは、選挙のことで手いっぱいで・・・」

・・・さて、選挙運動が終わってすでに1週間がたつが、シュワルツェネガー 知事は、15件のセクハラ疑惑に対して、まだ「詳しく」釈明してはいない。

http://asia.reuters.com/newsArticle.jhtml?type=politicsNews&storyID=3560357

★ムーア監督、9・11でブッシュに質問攻撃(その1)

ビン・ラディンとブッシュ家は、過去25年間にわたってビジネス関係があ ったんだってね。 あなたが経営していたケイター・エアーを持つカーライル グループに、ビン・ラディン家は少なくとも、200万ドルも投資していたし 父ブッシュはカーライルグループのコンサルタントだ。

9・11の翌日、一般の旅客機が飛行禁止になっていたとき、あなたはサウ ジアラビアの私用ジェット機がビン・ラディン家の24人を乗せて、アメリカ の空を飛び回り、海外へ高飛びするのを許可したけど、何故なんだい?  ビン・ラディン家の24人はあなたの友人で、テロの容疑者にはしたくなか ったからかい? あなたもマスコミも、このことには黙り続けているんだ。

もし、もしもだよ、オクラホマ市の連邦ビル爆破で死刑になった主犯、マク ヴェイと当時の大統領クリントンとがビジネス関係にあったとしたらどうだね ? 共和党やメディアが、いまのように黙っていたと思うかい?

★ムーア監督、9・11でブッシュに質問攻撃(その2)

ブッシュ家とサウジ王室とは、どんな密接な関係があるのかい? サウジ王室が米企業の株を、1000000000000ドル分持っていて、 米銀行に 1000000000000ドル預けている。  もしサウジの王様がそのお金を引き上げたら、アメリカは大恐慌に陥る。 でも、だからといって、サウジをかばいすぎるのではないかね?

もし、もしもだよ、同時テロのハイジャッカー19人のうち、15人までが 北朝鮮人だったら、どうだろう? 次の日の朝刊の見出しは、「北朝鮮がアメ リカを攻撃した!」になるだろうよ。 それがキューバ人ならキューバ、イラ ン人なら「イランが攻撃」とね。  実際は、犯人19人のうち、15人がサウジアラビア人なのに、なぜかメデ ィアは、「サウジアラビアがアメリカを攻撃した!」と書かなくて、申し合わ せたように、「テロリストがアメリカを攻撃した!」と発表した。 なぜ?

また、時速800キロの旅客機で、たったの5階建てのペンタゴンに突っ込 めるなんて神業だ。 ハイジャッカーたちは、サウジ空軍で訓練されたのかも しれない。だったら、9・11はテロじゃあなくて、サウジからの軍事攻撃に なるぜ。

★ムーア監督、9・11でブッシュに質問攻撃(その3)

9・11の大量虐殺は、ビン・ラディンという「億万長者」によって決行さ れたという。でも、われわれはいつでも、「テロリストが決行した」とか、 「イスラム原理主義者が決行した」とか言うよね。  どうして新聞の見出しに、「億万長者が3000人を殺した!」と出ないの だろうか?  オサマは少なくとも3千万ドルの財産を持っている。彼は億万長者だ。だか ら、罪のない怪しいアラブ人を検挙しまくるよりも、「億万長者が3000人 も殺したんだから、億万長者が怪しい。億万長者を検挙しろ、億万長者をブタ 箱にぶち込め! 嫌疑なんてどうでもいい、裁判なんていらない、億万長者を 国外追放しろ!」って、どうしてわれわれは言わないんだろうね?

・・・上記は、マイケル・ムーア監督の新刊、「ヘイ、おれの国はどこに ある?」(邦題未定)から、一部を抄訳しました。

(翻訳・パンタ笛吹/TUPチーム)

http://books.guardian.co.uk/extracts/story/0,6761,1056702,00.html