FROM: Schu Sugawara
DATE: 2003年11月6日(木) 午前0時01分
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■□■ ★彡 星川 淳のピースウォッチ #05(03.11.05) ■ ■■ ■ for TUP ■□ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ………………… 気になる海外ニュース&論考をダイジェストで …………………
イラク情勢が大きく動きはじめる兆しです。衆院選投票日も迫り、こんな中へ 自衛隊を送り込んでいいのか考える材料に、現況を伝える記事を集めてみました。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― > ヘリコプター墜落現場で見たもの ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★彡 11月2日、偶然、米軍の負傷兵輸送用ヘリ(メディバック)に搭乗取材 中、現場に急行したUPI通信記者の報告。上空からは撃墜されたのがヘリコプ ターとは見えないほどの惨状で、着陸とともに重症兵一人が運び込まれるが、同 乗の軍医にも手のほどこしようがない。バグダッドのヘリ基地へ戻って、地対空 ミサイルによる撃墜と知らされる。再度の出動要請で現場へ飛ぶと、興奮した将 校からの取材中止命令で現場を退去させられそうに。遺体を運ばせたい現場と、 生きた兵士を扱う本来の救急医療業務のために死体輸送を拒むヘリチームとの衝 突が、記者への八つ当たりになったもの。空荷で基地へ帰還直後、また別な現場 への出動命令が。こんどは路傍の仕掛け爆弾でひっくり返った多目的装甲車(ハ ンビー)から、重症の兵士をバグダッドの軍病院へ移送する。ヘリの機長に敵の 攻撃か確かめても、「被害の半分は原因不明」との回答。【UPI通信】
First response: View from the Medivac team By P. Mitchell Prothero, United Press International November 2, 2003 http://www.upi.com/view.cfm?StoryID=20031102-103706-1836r
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― > イラクをめざす聖戦志願者たち ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★彡 6か国の対テロ担当高官によると、ヨーロッパと中東で、オサマ・ビンラ ディンその他のイスラム過激組織による聖戦の呼びかけに応え、アメリカ主導の 占領軍と戦おうと若者たちが続々とイラクへ向かっている。この夏以来、シリア とイランの国境からイラクに入った若者は数百人にのぼると見られる。ただし、 アルカイダなど特定組織とのかかわりは明らかでなく、とくに訓練も受けていな い者が多い。9月にイラクで拘束されたのは、シリア、レバノン、イエメン、北 アフリカ諸国からの志願者。同様な動きはフランスやドイツでも観察され、これ までチェチェンをめざしていた血気盛んな貧困層のイスラム青年たちが、イラク へ流れはじめたという。モスクでの募金も、パレスチナやチェチェンから、イラ ク向けに集められるようになった。多くの諜報関係者が、こうしたイラク聖戦志 願者の増加を、なかば自発的な新しい動きと警戒する。イラク国内の米軍指揮官 たちも、ゲリラ攻撃の増加と戦法の洗練を指摘。フセイン政権の高官が国外勢力 の召集にかかわっているとの見方もあるが、真相はわからない。開戦前には認め られなかったアルカイダの関与が疑われはじめ、最大15の民兵組織が活動する といわれるほど、開戦前に危惧されたとおり、イラクがテロリストのメッカになっ た可能性は高い。【ニューヨークタイムズ】
Calls to Jihad Are Said to Lure Hundreds of Militants Into Iraq By DON VAN NATTA Jr. and DESMOND BUTLER, New York Times November 1, 2003 http://www.nytimes.com/2003/11/01/international/middleeast/01RECR.html
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― > 元CIA分析官、米軍撤退の潮時を読む ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★彡 CIA分析官として27年間勤務し、ホワイトハウスへの機密情報説明も 担当したレイ・マクガバンが、イラクの現況について語る。マクガバンは現在、 NGO「正気を求める退役諜報専門家」の運営委員。
———————————————————————— 米兵の死者18人、負傷者21人を出した11月2日は、ベトナム戦争中、1 965年2月7日に起きた大規模ゲリラ攻撃を想起させる。それをきっかけにア メリカは北ベトナムに対する本格的な兵力投入をはじめ、68年には50万人を 超えた。当時もCIAは勝利に懐疑的だったが、マクナマラ国防長官が側近を狂 信的な民間イデオローグで固め、軍事的エスカレートを強行。現在のブッシュ政 権が、ラムズフェルド国防長官やチェイニー副大統領を取り巻くネオコンに牛耳 られているのと重なる。イラク開戦前、シンセキ陸軍参謀長が戦後処理に数十万 の兵力が必要と忠告したにもかかわらず、ウォルフォウィッツ国防副長官らの叱 責を受けて退役。「歴史に学ばないものは同じ失敗をくり返す」との金言が重く のしかかる。
ブッシュ政権はベトナム戦の教訓を生かすことなく、強気な姿勢を崩さないが、 すでに本当の課題は撤退のタイミングにある。いま撤退すれば、ベトナム戦のよ うに10年も引きずって、敵味方とも多大な犠牲を出す愚を避けられるだろう。 さすがのラムズフェルドも「ゲリラ戦」状態を認め、情勢の見通しがつかないこ とを嘆きはじめた。いっぽうネオコン強硬派は、いぜん諜報部局や軍制服組の意 見に耳をかさず兵力大増強を主張するものの、もう米軍には兵員の余力がない。 テロ攻撃の原因は米兵がイラクにいることであり、増強は事態を悪化させるだけ だ。小国を押さえきれたローマ帝国の場合、辺境の敵はロケット弾も肩撃ち式ミ サイルも持たなかったし、ゲリラ予備軍の長い列もなかった。
ラムズフェルドはテロ撲滅策を聞かれて、「答えはだれも知らない」という。 答えは難しくない。アメリカ政府に後押しされたイスラエルのシャロン首相が、 パレスチナ人の家をブルドーザーで壊し、パレスチナ自治区に不法なイスラエル 人入植地を建設し、シリアを空爆するのを、世界中のイスラム教徒がテレビで見 ていると、だれかがラムズフェルドに教えてやるだけでいい。しかし、いまのア メリカ政府ではCIA長官さえ政権の風見鶏になってしまった。退職後のラムズ フェルドが、マクナマラのように回顧録で後悔を記したところで、父親に続いて 1期だけの大統領で終わったブッシュ・ジュニアには慰めになるまい。本を読ま ない息子は、父親が回顧録で湾岸戦争を次のように振り返っているのを知るよし もない。「もしわれわれがバグダッドへ攻め入ってサダムを倒していたら、とう てい払いきれない政治的代価を背負い込み、米国は国連決議も国際慣習も踏み外 した侵略者の汚名をかぶりながら、いまだに苦しい占領を続けていたことだろう」。
米兵の無用な犠牲を止める方法はただひとつ、米軍を撤退させ、国連を支えて イラク人による主権回復を早めることだ。多くのアメリカ人が撤退を非現実的と 見るが、もし本当にイラク侵攻が石油のためでも、中東の戦略要衝に米軍基地を 確保するためでもなかったのなら、ベトナムの轍を踏んではならない。撤退後の イラクに混乱が生じる可能性はあるものの、北部をクルド人、中部をスンニ派、 南部をシーア派が固める形で、ゆるやかな連邦制国家が実現しないともかぎらな い。成否は試してみなければわからないし、ほかに取るべき道もないのだから。 【TomPaine.com 特別寄稿】
Helicopter Down Ray McGovern, TomPaine.com Exclusive November 03 2003 http://www.tompaine.com/feature2.cfm/ID/9289
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― > 新生イラクはイスラム国家になる? ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★彡 米国きってのイスラム法学者として暫定占領当局(CPA)の顧問をつと めるノア・フェルドマンによれば、新生イラクはアメリカが望むような政教分離 の西側寄りの国ではなく、イスラムを国教とし、憲法にイスラム法尊重をうたっ たイスラム国家になりそうだという。民主選挙で成立するイラク政府が、親イス ラエルにも親米にもならないとの見通しは、アメリカ政府を戦慄させている。か といって、イスラム政党を禁じて地下に潜らせる事態がもっとも危ない。開戦前 の甘い公式予測では、世俗国家のイラクが中東における自由主義経済のモデルに なるはずだったから、もしいまのような現実的見通しを知っていたら、対イラク 開戦の決定も違ったのではないかと、フェルドマンは見る。32歳のユダヤ人で 民主党支持者という、一見イラク占領当局に場違いなこのイスラム法学者は、開 戦前、民主イラクの最初の外交政策はイスラエル承認だと確言したブッシュ政府 高官について、「麻薬でも吸っていたのでは」と笑い飛ばす。【英テレグラフ紙】
New Iraq ‘well on way to becoming Islamic state’ By David Rennie, The Telegraph October 29, 2003 http://www.telegraph.co.uk/core/Content/displayPrintable.jhtml?xml=/news/2003/10/29/wirq129.xml&site=5
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― > 占領当局によるイラク国家資産投げ売りは無効!? ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★彡 10月末にロンドンで開かれたイラクの戦後ビジネスに関する国際会議の 席上、イラクの国家資産を外国企業に売却しようとする暫定占領当局(CPA) の9月19日付け決定は、国際法違反の恐れが強いとの警告が発せられた。抵触 するのは、ハーグ陸戦規定とジュネーブ条約第4議定書で、イラク人による新政 府が樹立された場合、CPAの結んだ契約は失効する可能性があるという。この 問題については、イギリスのゴールドスミス法務長官も英政府に対し、「占領状 態のイラクで大規模な経済構造改革を強行することは国際法上認められない」と 非公式に懸念を表明。被占領国の現行憲法は尊重が義務づけられており、国有財 産の私有も、非アラブ外国人による会社設立も禁じたイラク憲法がいまも効力を 持つ。また国際法上、暫定占領当局と取り交わす契約より、フセイン政権時代に 結ばれた既存契約のほうが効力が強いとも解釈され、治安と並んでイラクでのビ ジネス展開に不安要素を加えている。【英フィナンシャル・タイムズ】
Iraq business deals may be invalid, law experts warn By Thomas Catan, Financial Times October 28 2003 http://news.ft.com/servlet/ContentServer?pagename=FT.com/StoryFT/FullStory&c=StoryFT&cid=1066565442403&p=1012571727179
(要約解説:星川 淳/TUPメンバー)
星川@屋久島より
1か所、ウォルフォウィッツとすべきところがラムズフェルドになってました! これを確定稿としてください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■□■ ★彡 星川 淳のピースウォッチ #05(03.11.05) ■ ■■ ■ for TUP ■□ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ………………… 気になる海外ニュース&論考をダイジェストで …………………
イラク情勢が大きく動きはじめる兆しです。衆院選投票日も迫り、こんな中へ 自衛隊を送り込んでいいのか考える材料に、現況を伝える記事を集めてみました。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― > ヘリコプター墜落現場で見たもの ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★彡 11月2日、偶然、米軍の負傷兵輸送用ヘリ(メディバック)に搭乗取材 中、現場に急行したUPI通信記者の報告。上空からは撃墜されたのがヘリコプ ターとは見えないほどの惨状で、着陸とともに重症兵一人が運び込まれるが、同 乗の軍医にも手のほどこしようがない。バグダッドのヘリ基地へ戻って、地対空 ミサイルによる撃墜と知らされる。再度の出動要請で現場へ飛ぶと、興奮した将 校からの取材中止命令で現場を退去させられそうに。遺体を運ばせたい現場と、 生きた兵士を扱う本来の救急医療業務のために死体輸送を拒むヘリチームとの衝 突が、記者への八つ当たりになったもの。空荷で基地へ帰還直後、また別な現場 への出動命令が。こんどは路傍の仕掛け爆弾でひっくり返った多目的装甲車(ハ ンビー)から、重症の兵士をバグダッドの軍病院へ移送する。ヘリの機長に敵の 攻撃か確かめても、「被害の半分は原因不明」との回答。【UPI通信】
First response: View from the Medivac team By P. Mitchell Prothero, United Press International November 2, 2003 http://www.upi.com/view.cfm?StoryID=20031102-103706-1836r
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― > イラクをめざす聖戦志願者たち ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★彡 6か国の対テロ担当高官によると、ヨーロッパと中東で、オサマ・ビンラ ディンその他のイスラム過激組織による聖戦の呼びかけに応え、アメリカ主導の 占領軍と戦おうと若者たちが続々とイラクへ向かっている。この夏以来、シリア とイランの国境からイラクに入った若者は数百人にのぼると見られる。ただし、 アルカイダなど特定組織とのかかわりは明らかでなく、とくに訓練も受けていな い者が多い。9月にイラクで拘束されたのは、シリア、レバノン、イエメン、北 アフリカ諸国からの志願者。同様な動きはフランスやドイツでも観察され、これ までチェチェンをめざしていた血気盛んな貧困層のイスラム青年たちが、イラク へ流れはじめたという。モスクでの募金も、パレスチナやチェチェンから、イラ ク向けに集められるようになった。多くの諜報関係者が、こうしたイラク聖戦志 願者の増加を、なかば自発的な新しい動きと警戒する。イラク国内の米軍指揮官 たちも、ゲリラ攻撃の増加と戦法の洗練を指摘。フセイン政権の高官が国外勢力 の召集にかかわっているとの見方もあるが、真相はわからない。開戦前には認め られなかったアルカイダの関与が疑われはじめ、最大15の民兵組織が活動する といわれるほど、開戦前に危惧されたとおり、イラクがテロリストのメッカになっ た可能性は高い。【ニューヨークタイムズ】
Calls to Jihad Are Said to Lure Hundreds of Militants Into Iraq By DON VAN NATTA Jr. and DESMOND BUTLER, New York Times November 1, 2003 http://www.nytimes.com/2003/11/01/international/middleeast/01RECR.html
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― > 元CIA分析官、米軍撤退の潮時を読む ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★彡 CIA分析官として27年間勤務し、ホワイトハウスへの機密情報説明も 担当したレイ・マクガバンが、イラクの現況について語る。マクガバンは現在、 NGO「正気を求める退役諜報専門家」の運営委員。
———————————————————————— 米兵の死者18人、負傷者21人を出した11月2日は、ベトナム戦争中、1 965年2月7日に起きた大規模ゲリラ攻撃を想起させる。それをきっかけにア メリカは北ベトナムに対する本格的な兵力投入をはじめ、68年には50万人を 超えた。当時もCIAは勝利に懐疑的だったが、マクナマラ国防長官が側近を狂 信的な民間イデオローグで固め、軍事的エスカレートを強行。現在のブッシュ政 権が、ラムズフェルド国防長官やチェイニー副大統領を取り巻くネオコンに牛耳 られているのと重なる。イラク開戦前、シンセキ陸軍参謀長が戦後処理に数十万 の兵力が必要と忠告したにもかかわらず、ウォルフォウィッツ国防副長官らの叱 責を受けて退役。「歴史に学ばないものは同じ失敗をくり返す」との金言が重く のしかかる。
ブッシュ政権はベトナム戦の教訓を生かすことなく、強気な姿勢を崩さないが、 すでに本当の課題は撤退のタイミングにある。いま撤退すれば、ベトナム戦のよ うに10年も引きずって、敵味方とも多大な犠牲を出す愚を避けられるだろう。 さすがのラムズフェルドも「ゲリラ戦」状態を認め、情勢の見通しがつかないこ とを嘆きはじめた。いっぽうネオコン強硬派は、いぜん諜報部局や軍制服組の意 見に耳をかさず兵力大増強を主張するものの、もう米軍には兵員の余力がない。 テロ攻撃の原因は米兵がイラクにいることであり、増強は事態を悪化させるだけ だ。小国を押さえきれたローマ帝国の場合、辺境の敵はロケット弾も肩撃ち式ミ サイルも持たなかったし、ゲリラ予備軍の長い列もなかった。
ラムズフェルドはテロ撲滅策を聞かれて、「答えはだれも知らない」という。 答えは難しくない。アメリカ政府に後押しされたイスラエルのシャロン首相が、 パレスチナ人の家をブルドーザーで壊し、パレスチナ自治区に不法なイスラエル 人入植地を建設し、シリアを空爆するのを、世界中のイスラム教徒がテレビで見 ていると、だれかがラムズフェルドに教えてやるだけでいい。しかし、いまのア メリカ政府ではCIA長官さえ政権の風見鶏になってしまった。退職後のラムズ フェルドが、マクナマラのように回顧録で後悔を記したところで、父親に続いて 1期だけの大統領で終わったブッシュ・ジュニアには慰めになるまい。本を読ま ない息子は、父親が回顧録で湾岸戦争を次のように振り返っているのを知るよし もない。「もしわれわれがバグダッドへ攻め入ってサダムを倒していたら、とう てい払いきれない政治的代価を背負い込み、米国は国連決議も国際慣習も踏み外 した侵略者の汚名をかぶりながら、いまだに苦しい占領を続けていたことだろう」。
米兵の無用な犠牲を止める方法はただひとつ、米軍を撤退させ、国連を支えて イラク人による主権回復を早めることだ。多くのアメリカ人が撤退を非現実的と 見るが、もし本当にイラク侵攻が石油のためでも、中東の戦略要衝に米軍基地を 確保するためでもなかったのなら、ベトナムの轍を踏んではならない。撤退後の イラクに混乱が生じる可能性はあるものの、北部をクルド人、中部をスンニ派、 南部をシーア派が固める形で、ゆるやかな連邦制国家が実現しないともかぎらな い。成否は試してみなければわからないし、ほかに取るべき道もないのだから。 【TomPaine.com 特別寄稿】
Helicopter Down Ray McGovern, TomPaine.com Exclusive November 03 2003 http://www.tompaine.com/feature2.cfm/ID/9289
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― > 新生イラクはイスラム国家になる? ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★彡 米国きってのイスラム法学者として暫定占領当局(CPA)の顧問をつと めるノア・フェルドマンによれば、新生イラクはアメリカが望むような政教分離 の西側寄りの国ではなく、イスラムを国教とし、憲法にイスラム法尊重をうたっ たイスラム国家になりそうだという。民主選挙で成立するイラク政府が、親イス ラエルにも親米にもならないとの見通しは、アメリカ政府を戦慄させている。か といって、イスラム政党を禁じて地下に潜らせる事態がもっとも危ない。開戦前 の甘い公式予測では、世俗国家のイラクが中東における自由主義経済のモデルに なるはずだったから、もしいまのような現実的見通しを知っていたら、対イラク 開戦の決定も違ったのではないかと、フェルドマンは見る。32歳のユダヤ人で 民主党支持者という、一見イラク占領当局に場違いなこのイスラム法学者は、開 戦前、民主イラクの最初の外交政策はイスラエル承認だと確言したブッシュ政府 高官について、「麻薬でも吸っていたのでは」と笑い飛ばす。【英テレグラフ紙】
New Iraq ‘well on way to becoming Islamic state’ By David Rennie, The Telegraph October 29, 2003 http://www.telegraph.co.uk/core/Content/displayPrintable.jhtml?xml=/news/2003/10/29/wirq129.xml&site=5
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― > 占領当局によるイラク国家資産投げ売りは無効!? ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★彡 10月末にロンドンで開かれたイラクの戦後ビジネスに関する国際会議の 席上、イラクの国家資産を外国企業に売却しようとする暫定占領当局(CPA) の9月19日付け決定は、国際法違反の恐れが強いとの警告が発せられた。抵触 するのは、ハーグ陸戦規定とジュネーブ条約第4議定書で、イラク人による新政 府が樹立された場合、CPAの結んだ契約は失効する可能性があるという。この 問題については、イギリスのゴールドスミス法務長官も英政府に対し、「占領状 態のイラクで大規模な経済構造改革を強行することは国際法上認められない」と 非公式に懸念を表明。被占領国の現行憲法は尊重が義務づけられており、国有財 産の私有も、非アラブ外国人による会社設立も禁じたイラク憲法がいまも効力を 持つ。また国際法上、暫定占領当局と取り交わす契約より、フセイン政権時代に 結ばれた既存契約のほうが効力が強いとも解釈され、治安と並んでイラクでのビ ジネス展開に不安要素を加えている。【英フィナンシャル・タイムズ】
Iraq business deals may be invalid, law experts warn By Thomas Catan, Financial Times October 28 2003 http://news.ft.com/servlet/ContentServer?pagename=FT.com/StoryFT/FullStory&c=StoryFT&cid=1066565442403&p=1012571727179
(要約解説:星川 淳/TUPメンバー)