TUP BULLETIN

速報210号 帝国現地レポート(24) 03年11月11日

投稿日 2003年11月11日

DATE: 2003年11月11日(火) 午前11時53分

パンタ笛吹の帝国現地レポート(24) 

アメリカ中を沸かせた戦争ヒロイン・ジェシカ元上等兵の救出劇から、早く も7ヶ月がたちました。ここにきて、彼女がさまざまなメディアのスポットラ イトをあびています。

今回のレポートでは、引き続き、ジェシカをめぐる動きと、イラク戦争にま つわるエピソードをお伝えします。

(パンタ笛吹/TUP)


★聖戦士の街・ファルージャ

バグダッドの西にある人口20万人の街ファルージャでは、米兵がすでに、 36人も殺されている。抵抗運動を続けるゲリラ戦士たちを、地元の人々は、 アフガニスタンで旧ソ連や米軍と闘ったイスラム義勇兵と同じムジャヒディン (聖戦士)と呼んで、応援している。

パトロールするたびに米兵が襲われるので、ここ数週間は、米軍の市内パト ロールは行われていない。しかし、市民がこれだけ抵抗するのは、米軍側に非 があるようだ。

4月28日・・・デモ中のファルージャ市民に米兵が発砲、13人を射殺。 4月29日・・・ファルージャ市民二人が、理由もなしに米兵に射殺される。 9月12日・・・米兵がファルージャ警察官に発砲、12人を射殺。

そして10月には、爆弾攻撃を受けた米兵が、機関銃を乱射して一般市民を 射殺、また、通りすがりの車にロケット弾を発射、運転手もろとも撃破した。  さらに、ガソリンスタンドの販売員に手錠をかけ、店に火をつけ、彼を後ろ から射殺した。 後に、米兵は病院の死体置き場に行き、黒こげになった販売 員を見つけ、死体から手錠を取りもどしたという。

しかし、米軍の犯した最大の間違いは、ファルージャの有力な部族長たちを かたっぱしから逮捕したことだろう。彼らにとって、これ以上の屈辱はない。  最近もまた、尊敬されている部族長アル・サーダンが、自宅で20人の大切 な客人をもてなしている最中に、米兵により逮捕された。

ファルージャの部族の掟では、残された部族民が復讐するのが義務だ。この 日曜日、米軍ヘリコプターが撃墜されて16人が死んだが、墜落地点は、数日 前に逮捕された部族長アル・サーダンの所有地だった。

http://www.liberation.fr/page.php?Article=155970

★にせものラッパでお葬式

22歳の米軍兵士ブラスフィールドは、イラクから母親に手紙を書いた。 「ママ、こちらにチョコレートは送らないでいいよ。送ってくれても、イラク は暑くて、溶けてしまうからね。  ああ、早くミシガンに帰りたいよ。帰ったらトラックを買うんだ。そのうち ミシガンに自分の床屋をひらくからね」

10月24日、彼はティクリートで爆弾攻撃にあい、戦友とともに、戦死し た。彼の妻には名誉負傷勲章が渡され、米軍基地での葬式が、しめやかに催さ れた。葬式ではつきもののラッパ奏者が、ほっぺたを膨らませて、葬送の調べ を奏でた。

しかし、この兵士が本当に葬送ラッパを吹いているのか、そのフリをしてい るだけなのか、誰にも知らされてはいない。  というのは、軍の葬式があまりにも多いので、偽のラッパに録音テープを仕 込み、素人の兵士でも、実際に吹いているように鳴らせる方式が、先月から採 用されているからだ。

偽ラッパについて、国防総省のスポークスマンは、こう説明した。 「前の戦争からの退役軍人も含めて、毎日、1800人もの兵士たちが死んで いるんです。でも、葬送ラッパ奏者は米軍に500人しかいないから、こうい う方法をとるしかないんです」

葬式のあと、ブラスフィールドの伯母ケレンは、「ブッシュ大統領は一日も 早く米軍をイラクから撤退させるべきです。大統領は、『それだけでもういい もうやめろ』と宣言して、若い兵士たちを連れもどす時にきています」と語っ た。

http://www.guardian.co.uk/usa/story/0,12271,1079709,00.html

★81歳のジョーンズお婆ちゃんの遺言

ジョーンズお婆ちゃんは、「自分が死んだら、花束やカードはいりません。 新聞の死亡通告に、『わたしへの香典は、来年、ブッシュ大統領を政権から追 い出せそうな候補者に、選挙資金として寄付してください』と書いておくれ」 と言い残して亡くなった。

民主党大統領候補、ウェスリー・クラークの選挙事務所では、ジョーンズ婆 さんの名前で、すでに15件の寄付を受け取ったという。 事務所の職員は、 「ジョーンズお婆さんの遺言は、とても効果的です。こんなきっかけで、人々 が民主党候補者に寄付をするのなら、それはすばらしいことだと思います」 と語った。

http://www.newsday.com/news/nationworld/nation/ny-usdeth083531426nov08,0,1382149.story?coll=ny-nationalnews-headlines

★チャラビ・ファミリーに金は流れる

国防総省のお気に入りで、イラク統治評議会のメンバーであるチャラビが、 自分の影響力をフルに利用して、莫大なイラク復興の下請けを、近しい友人た ちに優先的にまわしているという。

チャラビと家族同士のつきあいをしている友人、ファルークは、石油施設の 警備を請け負い、8千万ドル(約88億円)を受け取った。  また、イラク国民会議のチャラビの右腕といわれるムダールは、ベクテルや ハリバートン社の下請けや、携帯電話ビジネスで、相当な大金を稼いだ。

イラクのエバディ通信大臣は、チャラビをめぐる縁故ビジネスの腐敗につい て、こう語った。 「いま、イラク復興のお金が不明朗に流れていることを、情けなく感じていま す。わたしの意見では、統治評議会のメンバーは、経済活動に手を出さない方 がいいと思うんです。特に政府が関係する事業にはね」

http://www.newsday.com/news/nationworld/world/la-fg-contracts7nov07,0,4832819.story?coll=ny-worldnews-headlines

(再録)チャラビって、いったいどんな人?

*12歳でイラクを亡命。今年まで一度も帰国したことがなかった。 *ヨルダンで31件にのぼる重大犯罪で起訴され、いまでも逃亡中。 *チェイニー、パール、ウォルフォウィッツ、マケイン、リーバーマンらの  友人でもあり、米議会から9千7百万ドルを自分のグループに拠出させる。 *着ているスーツはアルマーニ、腕時計はローレックス。 *戦争前の大量破壊兵器に関するウソ情報は、ほとんどチャラビの証言。 *1993年にすでに、「いまこそサダムを追い出すときだ!」と発表した。

http://www.commondreams.org/views03/1004-02.htm

★ウソ・ウソ・大統領

CIA分析官として27年間勤務したレイ・マクガバンは、イラク戦争にい たるブッシュ政権のウソについて、こう語った。

「諜報機関からの情報を扱うのは、『処女の純潔』を扱うのに似ています。 一度でも売春婦になってしまったら、『純潔』だという信用は、二度と取り戻 すことができないからです。  過去数ヶ月のあいだに、イラクを巡って起きたできごとを見るのは、自分の 娘がレイプされるのを見るのと同じように辛いものでした。

ベトナム戦争を始めるきっかけとなったトンキン湾事件は、ジョンソン元大 統領がついた一時的なウソでした。でも、イラク戦争を正当化するために喧伝 され続けた18ヶ月間におよぶウソは、計算されつくされたウソです。  人間不信を招くこれらのウソは、ジョンソン政権のウソとは、くらべものに なりません。  歴史上、ブッシュ大統領ほど、明白で悪質なウソを、くり返しくり返し、つ き続けた大統領はいません。もう彼がウソつきだとわたしたちは知っているの で、大統領がいつ、何を言おうとも、それがウソに聞こえてしまうんです」

http://news.independent.co.uk/world/americas/story.jsp?story=461946

★軍事パレードをするにも、主役がたりない

11月11日(火曜日)は、「退役軍人の日」で、米国民の祝日だ。 毎年この日には、全米で軍のパレードがあり、国中が愛国心で盛り上がる。 しかし今年は、多くの地域でパレードが中止されたり縮小されている。

退役軍人会のスポークスマンは、その理由を、こう説明した。 「現役の兵士や予備役兵の多くが、イラク駐留のために召集されたので、パレ ードをしようにも人数が足りないんです。パレードの目玉である戦車や軍用車 も数少なくて、かっこうがつきません」

縮小されたサイズでもパレードを決行する街では、ボーイスカウトや民間人 の行進参加者をつのって、欠落した米兵の替わりにしている。  カリフォルニアの小さな町々では、自分たちの町だけではパレードにならな いので、いくつかの町村が集まって、大都市サンノゼのパレードに合流するこ とにした。

カンサス州の陸軍基地では、基地周辺の12の町から「パレードのために、 兵士を送ってくれ」と依頼されたが、そのすべてを断ったという。 「基地駐屯の兵士のうち、3分の2がイラクに駐留しています。地元の町々の 要望には答えたいのですが、兵士がいないのです」と、基地のスポークスマン は語った。

http://observer.guardian.co.uk/international/story/0,6903,1080989,00.html

★「イラク占領が、聖戦を引き起こした」とモサド元司令官

イスラエルの諜報機関「モサド」のヤートム元司令官は、ロンドン訪問中、 イラク侵略における米英軍の先見の明のなさを、こう非難した。

「中東アラブ諸国は、イスラエル以外はみなイスラム教徒なんです。イラクの 占領は、彼らイスラム教徒たちに『聖戦』のいいきっかけを与えてしまいまし た。  パウエル国務長官は、以前はいつも、『もし連合軍がイラクに攻め込んだら すばやく撤退すべきだ』と言っていました。でも実際には、占領軍として居座 っています。とにかく、早急にイラクから軍を引き上げることが大事です。  このまま民生が改善しなかったら、レジスタンスの攻撃は、ますます激しく なるでしょう」

http://news.independent.co.uk/world/politics/story.jsp?story=461945

★すべてが作り話で、すべてがペテン

金髪でかわいいジェシカ元上等兵を戦争ヒロインに仕立て上げたのは、国防 総省だったが、彼女は雑誌などのインタビューで、「ブッシュ政権が事実をゆ がめて報道し、自分を『戦争宣伝』のために利用した」と糾弾した。

陸軍はジェシカに、戦争障害者年金を100%給付することにした。しかし 彼女と同じ部隊で、同じくイラク軍の捕虜になり負傷した黒人女性兵士ショシ ョーナ・ジョンソンは、ジェシカの3分の1の給付金しか受け取れなかった。

これは、国防総省による人種差別ではないかと問題になっている。ショショ ーナの父親も、「これは二重基準だ」と怒っている。  ショショーナはいま、月々500ドルで暮らしているが、ジェシカは伝記本 から数百万ドル、そして映画からも数百万ドルもらうはずである。

ジェシカ自身もまた、「自分は一発も発砲していないので、英雄なんかでは ありません。本当の英雄は、戦友であるネィティブ・アメリカンの女性、ロー リーです。彼女は勇敢に戦って、戦死しました。子供二人を持つ母親でもある ローリーこそ、誉め称えられるべきです」と語った。

メディア評論家のマイケル・ウルフは、こう解説した。 「ジェシカが言っていることは結局、『すべてが作り話で、すべてがペテン』 だったということなんです。しかし、彼女がどんな告白をしようとも、メディ アはすでに、彼女を『スター』として祭り上げることに決めています。  戦争がうまくいかないときには、軍部は国民の注意を逸らすために、ヒーロ ーを作りあげます。いまもまた、アメリカは英雄・ジェシカが必要なんです」

http://observer.guardian.co.uk/international/story/0,6903,1081186,00.html

★ヘリを撃墜した地対空ミサイル、一基、3万6千円なり

8歳のイラク少女サラーブは、腕についた深い傷跡を見せながら、「お風呂 で遊んでいるときに銃声が聞こえて、わたしは撃たれたの」と言った。  サラーブの祖父ジャシームは、こう付け加えた。 「米兵は自分たちが攻撃を受けるたびに、見さかいなしに、四方八方に銃を撃 ちまくるので、その流れ弾が孫娘にあたったんです。米国は人権うんぬんとい いながら、やっていることはバカげた人殺しなんです」

数週間前にも、サラーブの2歳の妹と13歳と16歳の姉の3人が、米兵に よって撃ち殺された。サラーブの家族はアルベイシ部族に属しているが、少な くとも同部族の10人以上が米兵に殺されている。

アルベイシ部族の一員カリードは、部族内の友人たちが、ゲリラ戦士として 米兵に攻撃をしかけている理由を、こう語ってくれた。 「もしアメリカ人が一般市民としてイラクに来たのなら、わたしたちは歓迎し ます。米軍がイラクを解放してくれると思ったから、わたしたちは米兵に食べ 物を差し入れしました。でもいまのわたしは、彼らを殺したくてなりません。 もしわたしに子供がいなかったら、明日にでもレジスタンス・ゲリラに参加し たいくらいです。  米兵がイラク人を毎日のように殺しているのに、『ああ、かわいそうな米兵 たち』なんて、わたしに言ってほしいんですか? ヘリコプターが撃墜された けど、ゲリラはこれから、もっと多くのヘリコプターを撃ち落とすでしょう」

カリードの話では、部族ゲリラたちは、数千基にものぼるロシア製の地対空 ミサイルを隠し持っているし、それを購入したければ、一基325ドル(約3 万6千円)で買えるという。

(翻訳・パンタ笛吹/TUPチーム)

http://observer.guardian.co.uk/international/story/0,6903,1080989,00.html