TUP BULLETIN

速報984号  「イスラム国」への武力攻撃は誰のため?

投稿日 2014年10月14日
「イスラム国」の所業の残虐さが大きく報道され、米国主導の対「イスラム国」有志連合は40カ国を超え、空爆はイラクからシリアへと拡大し、オバマ大統領はシリアの反政府勢力のうち「穏健派」を反「イスラム国」兵士として訓練すると発表しました。一方、国連人権高等弁務官の発表によると対「イスラム国」作戦の犠牲となって死亡したイラク市民の数は1月から9月末まで9347名にのぼっています(10.2付け朝日新聞)。
米国の世論は空爆支持が多数派だと報道されていますが、UFPJ(平和と正義のための連合)、コード・ピンク、VFP(平和のための退役軍人会)、IVAW(反戦イラク帰還兵の会)、チェルシー・マニングほか、様々な団体や個人が「イスラム国」問題を武力で解決することはできない、としてイラクとシリアへの空爆と「イスラム国」以外の武装勢力への武器供与に抗議しています。
さて日本政府の姿勢は、といえば、直接の関与は非軍事的方法にとどめるとしながらも、「イスラム国」との戦いを支持すると表明しています。この問題は少なくとも、(1)紛争の解決に武力を行使しないとする日本国憲法の定めとの関係、(2)武力で解決できるのか、という有効性の問題、(3)武力行使と武器の拡散の舞台裏で活躍し利益を得ているのは誰なのか、という観点から考え直す必要があります。The Brussels Tribunalに寄稿された著作家ニコラス・デイヴィーズの論説は特にその(2)と(3)の考察に役立つものと思われます。
<>内は訳者による挿入。
前書き、翻訳: 高橋真澄

イスラム過激派との対決はペンタゴン待望の戦争

ニコラス・J・S・デイヴィーズ、2014年9月29日

米国は1990年以降、ある短絡的で傲慢な想定のもとで国策の道具としての戦争を復活させてきた。それは、米国の戦略的な敵<つまりソ連>は崩壊したのだから圧倒的かつ壊滅的な暴力の行使ないしそれによる威嚇という違法な手段を通じて世界を作り直すことが許されるだろうという想定だ。米国は、侵略政策を阻む政治的法的障害物を克服するため、「情報戦争」という高度な戦略を展開して敵を悪魔化し侵略を正当化してきた。ハリウッドや広告産業のテクニックを採用して虚偽の説明や選択肢を作り出し、恐怖感、レイシズム、人間がもっている最も邪悪な性質などに訴えかけ、一方で、進んで祖国に奉仕しようとする米国の若者の最良の衝動を乱用し都合よく操ってきた。虐げられた人々を守ろうとする若者たちの勇気と自由・正義・民主主義に対する信念を悪用しているのだ。

米国政府当局による状況説明が作為的な性質を帯びていることは、プロパガンダの背後を注意深くのぞいてみれば当初から明白であった。米国の空爆作戦が始まるなかで、ドイツ左翼党のウラ・イェルプカ議員は8月11日にロジャヴァ(シリアのクルド人地域)で行われた記者会見で、シンジャー山のヤズィーディー教徒らは米国政府が「テロリスト」としているクルド労働者党(PKK)によって救出されたのだと述べた。避難してきた人々が、米国の空爆によってではなく「神とPKKが」助けてくれたとイェルプカ議員に語ったのだ。

イェルプカ議員は、「イスラム国」およびシリアやイラクのその他の「イスラム」武装勢力との戦いにおける最も効果的な戦力としてPKKを賞賛する一方、武装勢力に対して基地、訓練および支援を提供しているトルコは相手を利する役割を果たしていると非難した。トルコは、国境を開放したままにして武装勢力や武器の大量流入を許しておきながら、何千人ものヤズィーディー教徒の避難所となったロジャヴァへの食料や人道支援物資の輸送に対しては国境を閉ざしている。同議員はこう述べている。「米国政府とその同盟国政府が『イスラム国』に対して本気で戦うつもりなら、まず、トルコや湾岸諸国による武装勢力支援をやめさせなければならない」

同時に、イラクのクルド人地域アルビールでこの5年間地元ジャーナリストの教育訓練に携わってきたジャーナリストのユディット・ノイリンク氏は、ベルギーのドゥ・スタンダールドゥ紙に対して、「イスラム国」による虐殺報道には誇張があり、噂に基づいたものだと述べた。同紙による「米国の空爆は虚偽の前提に基づくものなのか」との問いに彼女はこう答えている。「そうです。米国が空爆しているのは戦闘がアルビールのごく近くまで迫ってきているからで、そこには米国の小さな基地があるのです。ヤズィーディー教徒のことは<作戦に>人道的な意味合いを加えるという点で利用価値があります。もちろんキリスト教徒も避難しています。でもキリスト教徒だけを救出する作戦だと世界の他の宗教者コミュニティから攻撃を受けるでしょう。ちょうどこのヤズィーディー教徒の悲劇は米国の政治的目的にとって有益だったので物語が誇張されたのです。ひどいことが起こりますし、起こってきました。それは事実です。でも数字や詳細はわかっていません」

しかしヤズィーディー教徒は米国のプロパガンダ目的に役立った。一線は越えられ、空爆が始まり、米国はイラクで交戦状態となった...再び。米国の諜報機関がイェルプカ議員やノイリンク氏に劣る情報量しか入手できていなかったはずはない。だが国内向けプロパガンダ作戦は成功し、米国人の大多数が世論調査で空爆に賛成すると回答している。米国は同様にして「有志連合」を結成しつつあり、同盟諸国に米国の政策と同一歩調をとることの政治的利点を信じ込ませようとしている。しかし、米国主導の同盟は「イスラム国」への抵抗と弱体化の取組みにおいて最も有効な三つの勢力―シリア軍、PKK、イラクのスンニ派諸部族―を排除している。

「イスラム国」は、はじめにイラク政府の暗殺部隊を追い出す手助けをしたが、そのあとは、イラク北部、西部のスンニ派諸部族指導者にとってはその役割を終えてしまった。イラクのスンニ派のほとんどはサウジアラビアのようなイスラム原理主義国家の仲間になることを望んではいない。サウジでは8月に、魔術からドラッグ所持までを含む様々な犯罪を理由に19名の人々が斬首された。イラクのスンニ派のほとんどは自国つまりイラクでの市民的政治的権利を求めているだけだ。だが無理からぬことに、彼らはシーア派暗殺部隊が帰ってくることを「イスラム国」以上に怖れている。

9月22日にシーア派武装勢力がディヤラ州にあるスンニ派のモスクで70名の人々を殺害したあと、ディヤラ州の武装勢力に同行したガーディアン紙記者は次のように報じている。「この連中にとっては、『イスラム国』支持者か否かを問わずスンニ全体が敵なのです。」武装勢力のあるメンバーは、ガーディアン紙に対して、女性、子ども、老人は殺さないとし、成人男性はその限りではないことをほのめかしているが、別のメンバーはさらにこう述べている。「『イスラム国』から解放した地域を彼らスンニ派に返す必要などない。消滅させるかシーアを住まわせるかどちらかだ。」また別の者は「自分としては、今日からバグダードの浄化を始めたい」とつけ加える。

「イスラム国」に抵抗するすべての勢力が米国とその同盟国に求めるのは、米国に支援されたイラク政府の暗殺部隊を廃止させ、シリア国内の「イスラム国」同盟勢力に対する米国の資金提供、武器供与および支援を終わらせることだ。ところが米議会はシリアの「イスラム」武装勢力に供与する武器と訓練を増大させる決議をあげた。一方、米国の空爆作戦は「イスラム国」の威信を高めており、8月以降推定6,000名の新兵が集まっている。米国の政策の目標がシリアとイラクの人々にとって状況を一層悪化させることにあるのだとしたら、これ以上うまい方策はないだろう。

米国人にとって、この作戦は冷戦終結以降の米国の軍事的膨張の歴史におけるおなじみのテーマの多くを集約するもので、同じ疑問や問題の多くを提起している。米国政府当局は、明らかに、1991年の第一次湾岸戦争との類似性に気を強くしている。それは米国政府が賞賛しながらも再現はできていない模範的事例なのだ。具体的には、嫌われ者の敵、限定的<軍事>目標、国内の政治的支持、戦争遂行と経済的負担を担う広範囲の国際的連合、そして、極悪な敵に「勝利」して世界の感謝と賛辞を勝ち取るという約束などが存在した。だが、この二つの作戦には我々が立ち止まって考えるべき共通点がほかにもある。

現在の空爆作戦と同様、1991年イラクにおける短期的な勝利はー結局それが今日の危機をもたらしたのだがーもう一つの明らかに政治的な目的をもって企図されたものだった。その目的とは、冷戦に対応する米国軍事力の大幅な縮小を回避することである。米国政府は、そもそも防衛を目的とするという名目によって創設が容認された米国軍隊を、あの湾岸戦争を根拠として、監視と兵器技術への大規模な投資によって地球規模の「全面支配」をめざす軍隊へと作り変えた。ところが冷戦後の米国軍隊は、米国指導者が言明するような安定と安全のための軍隊ではなくて、その真逆の事態を引き起こしている。何十もの国々の何百万もの人々から、かつて享受していた安定と安全を根こそぎ奪い取り、その費用として米国納税者には10兆ドルを超える負担を強いているのだ。

1989年12月にベルリンの壁が崩壊したあと、元政府高官のロバート・マクナマラとローレンス・コーブは上院予算委員会で、防衛予算は10年間で問題なく半分に縮小でき、そうするとインフレ補正後の予算規模は2,670億ドル<約26兆円>になるだろうと証言した。1990年の夏、議会で防衛予算の大幅削減を巡る議論が始まった。

その後イラクが、エイプリル・グラスピー駐イラク米国大使から例の悪名高いゴーサインを受け取ってクウェートに侵攻した。グラスピーの指令や意図が何だったにせよ、クウェートが領土紛争、油田、OPECの産油量割当を巡ってイラクに対して強硬姿勢で臨むことについて米国からゴーサインを受け取ったことは確かで、それによってイラクとの戦争が引き起こされた場合は米国が救援するとの保証もあった。案の定、イラクの侵攻が始まって数時間のうちに米国の航空母艦はクウェートとイラクに向かっていた。そして冷戦後の米軍の苦境は、クウェートの危機に劣らず、その後の状況に影響した。クウェートの危機も、ヤズィーディー教徒の悲運と同じように都合よく強調され誇張されたのだ。

おおかたの米国民は冷戦の終結を平和への機会ととらえたが、米国政府当局者の多くは、戦争への新たな機会としてとらえた。ペンタゴン顧問のマイケル・マンデルバウムはニューヨーク・タイムズ紙に「40年ぶりに、第三次世界戦争を引き起こすおそれなしに、中東で軍事作戦を展開することができる」と述べた。戦争計画は省庁間のライバル意識の高揚を通じて形づくられていった。そのことを、ローレンス・コーブはワシントン・ポスト紙にこう語っている。「予備役さえもが派遣を予定された…予備役の圧力団体は自分たちが動員されないと将来の予算獲得が危なくなると認識していた。」そして、クウェートから撤退し戦争ー米国産軍複合体を救うであろう戦争―を回避するとのイラクの提案をブッシュ大統領は拒否した。

ブッシュのお手本どおり、オバマの連合構築によってこの戦争はうわべだけの正当性を与えられる一方、再び米国の兵器産業に新たな市場を開くだろう。1991年、何万人ものイラク人を殺戮し国連報告が「黙示録さながら」と形容した破壊をもたらした空爆作戦のあと、米軍の戦闘機やパイロットはパリ航空見本市に直行派遣されて、米国の兵器製造業者に新規ビジネスの大宣伝を行った。次の2年間、米国兵器輸出は記録的な成果をあげ、その後の米国は世界の兵器輸出市場で40%のシェアを維持している。

冷戦後の米の国防予算は冷戦時の標準レベルである3,900億ドル(インフレ調整後)を下回ったことがない。現在は6,000億ドル(約60兆)で、ベトナム戦争のピーク時やレーガンの軍備増強時代よりも多い。世界の軍事費支出に対する長期的影響をありのままに評価するなら、実は第一次湾岸戦争はこれまでで最も高くついた戦争なのかもしれない。

同様の利権が今日もうごめいている。空爆開始以来、米国主要兵器製造会社4社はすべて株式市場でかつてない高値を記録している。4社とは、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、レイセオン、そして忘れてならないのは、バラック・オバマの政治家としてのキャリアを資金面で大きく支えてきたシカゴのクラウン家が経営するゼネラル・ダイナミクスである。

9月13日付けフォーチュン誌のある記事には「対『イスラム国』戦争の勝者はもう決まっている:防衛産業だ」という派手な見出しがついている。同記事が報じるところによれば「…国防アナリストらは、新たな作戦によって確実に収益を得るグループを二組挙げている。当該地域の空に群舞する有人・無人航空機の製造・整備業者とその航空機に装備するためのミサイルや弾薬の製造業者である。」「棚ぼたで最大の利益を確保する」有利な立場にある企業として、ヘルファイア・ミサイルを製造しているロッキード・マーティン、トマホーク巡航ミサイルを製造しているレイセオン、弾薬を製造しているゼネラル・ダイナミクスが挙げられている。

大統領が思うままの舵取りができるなら、第一次湾岸戦争と同様、第三次湾岸戦争によって米国国防予算の大幅な縮小は未然に阻止されるだろう。言い換えれば、一般の米国民の差し迫った必要を満たすために必要な、軍事依存の米国経済のいかなる方向転換も阻害されるだろう。ペンタゴンへの兵器の売上高のわずかな減少も、ハイテク空爆作戦の市場価値で補われ、米国の兵器輸出の増大をもたらすだろう。その結果、1990年代がそうだったように、世界の戦火に油を注ぐことになる。

1990年と2014年のもう一つの不穏な類似点は、サダム・フセインと「イスラム国」は共にCIAの創造物だという点である。これらのモンスターは疑いなく「我々<米国>の」モンスターなのだ。与えられた汚れ仕事をしたあとで餌をくれる手に噛み付く勢力に対して、極めて独善的な怒りをぶつける用意のある我々の指導者らについては何というべきか。この選ばれた集団にはマニュエル・ノリエガやオサマ・ビン=ラーディンも属している。

1959年、 CIAはカシム将軍―1958年に西側の支援を受けた王政を転覆した革命指導者ーを暗殺するために22歳のサダム・フセインを雇った。この企ては失敗し、CIAは、別の暗殺要員によって脚を負傷させられたフセインをベイルートに速やかに逃れさせた。その後彼はカイロに送られたが、そこでは日常的に米国大使館を訪問していた。

CIAの支援で、バース党が1963年にカシムを打倒、殺害し、フセインは頭角を現してイラク大統領となった。米国と他の西側同盟国はサダムに軍事目標確定のために米の国防情報局(DIA)が衛星で収集した情報や化学兵器を含む武力を供与してイランと戦争をさせた。フセインはイラクのクルド人の村に対して化学兵器を使用したが、それから2ヶ月後、ドナルド・ラムズフェルドがバグダードに到着し、より緊密な関係づくりのための交渉を行い、米国大使館の再開を図った。フセインが米国のプロパガンダにおける新たな嫌われ者となったのは、米国の同盟国であるクウェートに侵攻してからのことだ。

米国とその同盟国はシリア政府を転覆するための代理の軍隊の配備と武装化に3年をかけた。その間、NATOの無標航空機でリビアから兵器と武装勢力を空輸し、ヨルダン、トルコ、そして今ではサウジアラビアにも指令部と訓練キャンプを設営し、特殊部隊、武装勢力および武器がトルコ、サウジアラビア、カタール、バルカン半島ほかの各地からシリアになだれ込むことができるよう、トルコとの国境を開放した。こうして、米国は皮肉にも、2012年のアナン国連総長の和平計画を掘り崩してきたし、シリア政府を転覆するためにシリア国民を犠牲にしている米国代理勢力のほうがシリア政府よりも残虐で危険だということを示す数々の証拠をはねつけてきた。オバマ大統領の顔面でプロパガンダのバブルがはじけた今、「イスラム国」は米国の新たな嫌われ者となっている。あるいは、「新たなサダム・フセイン」となったと言うべきか?

米国が行っている暴力のツールへの巨額の投資は、ワシントンの政策立案プロセスに危険で不健全な影響をもたらしている。同時に、そのような投資が現実世界にもたらす諸問題への対処となると、大きなコストが伴う。ある米国の将軍の有名な言葉がある。「金槌のほかには道具がないときは、どんな問題でも釘に見えるものだ。」ネオコンの米国対外政策は、本質的に、釘を探し求めている金槌である。しかし、分かりきったことを言うが、問題がすべて釘であるとは限らない。世界には、我々の不健全な軍国主義政府が問題解決のためのモラルも外交的知的資源も欠いているという由々しい問題があり、事態は、金槌で叩けば叩くほど悪化する。

オバマ大統領は、イラクとシリアに米国がもたらした問題に対しては「米国の軍事介入は解決にならない」と自ら断言しておきながら、その後速やかに従来の選択肢、つまり空爆に立ち戻った。道具が一つしかないときは、「何かしろ」との圧力が意味することはただ一つである。爆撃だ。コソボでは民族浄化を防ぐはずが、 実際には民族浄化を引き起こした爆撃。 アフガニスタンでは軍閥をもう一度権力の座に据え、我々の街路にヘロインを溢れさせた爆撃。核武装したパ キスタンを不安定化させる爆撃。「イスラム」武 装勢力を支援してリビアをカオス状態に放り込む爆撃。イエメンを分裂の危機に追いやる爆撃。ソマリアが復興しようとするたびにカオスに放り込む爆撃。そしてイラクに衝撃と畏怖を与え果てしない戦争状態に陥れる爆撃。

2001年に始まった94,000回の空爆により国から国へと混乱と暴力が広がったが、それでも、道徳的、法的、知的に破綻している我々の指導者はまだただ一つの対応しか用意がない。空爆を重ねることだけなのだ。価何十億ドルの爆撃機への中毒を平和と国際協力への米国民の関心に基づく真の対外政策に置き換えようとしても、彼らの道具箱には自らがもたらした被害を修復するための真の道具が入っていない。恥ずかしいほどにおそまつな道具箱の中を引っ掻き回したあげく彼らが取り出すものは、空爆、空爆、また空爆だ。まるでモンティ・パイソンに出てくる、ハムに目がない海賊が「スパム、スパム、スパム…(ハムの商品名)」とわめき立てるごとく。

1928年に、世界の指導者たちが不戦条約(ケロッグ・ブリアン条約)を作成し署名したとき、「国策の道具としての戦争」を放棄した。そして、ドイツの指導者らをこの条約に違反した罪で処刑した。ルーズベルト大統領の不朽の国際理念であり遺産である国連憲章は、平和と国際法の遵守責任を拡大した。

米国は1990年以降、ある短絡的で傲慢な想定のもとで国策の道具としての戦争を復活させてきた。それは、米国の戦略的な敵<つまりソ連>は崩壊したのだから圧倒的かつ壊滅的な暴力の行使ないしそれによる威嚇という違法な手段を通じて世界を作り直すことが許されるだろうという想定だ。米国は、侵略政策を阻む政治的法的障害物を克服するため、「情報戦争」という高度な戦略を展開して敵を悪魔化し侵略を正当化してきた。ハリウッドや広告産業のテクニックを採用して虚偽の説明や選択肢を作り出し、恐怖感、レイシズム、人間がもっている最も邪悪な性質などに訴えかけ、一方で、進んで祖国に奉仕しようとする米国の若者の最良の衝動を乱用し都合よく操ってきた。虐げられた人々を守ろうとする若者たちの勇気と自由・正義・民主主義に対する信念を悪用しているのだ。

我々はどうにかして、権力に対して真実を語る政治的意思を見出し、もう一度、平和、軍縮、外交および法の支配をもたらす歴史的取組みを真剣に行う米国の新たな指導者を選ばなくてはならない。
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ニコラス・J・S・デイヴィーズ氏は、「Blood On Our Hands: The American Invasion and Destruction of Iraq」の著者である。デイヴィーズ氏はまた、「Grading the 44th President: A Report Card on Barack Obama’s First Term as a Progressive Leader.」の「Obama At War」の章も執筆した。
原典:
http://www.brussellstribunal.org/article_view.asp?id=1828#.VCy2s_laDFY