◎政治家は口先商売とはいうものの
今年11月に大統領選を控えた米国は今、各党の候補者を選出する予備選の真っ最中だ。4月19日には大票田のニューヨーク州の予備選挙が行われた。民主党の予備選はクリントン候補とサンダース候補の一騎打ちとなっていて、予備選に備え14日にはニューヨークで両者の討論会が開かれた。
討論会で2人の立場の違いを際立たせたのはイスラエルに対する立場だった。前国防長官のクリントン候補はイスラエルに寄り添う立場を強調し、サンダース候補はパレスチナに人びとに敬意を払い、その尊厳を尊重しなければならないと言った。
自身もユダヤ人であるサンダース候補がイスラエルに対する立場をはっきりと言及したのは、1988年だった。彼はジェシー・ジャクソン牧師が大統領選に立候補したときに支持を表明したのだが、ジャクソン牧師はパレスチナの独立権を訴えていたため、師を支持したサンダース氏(当時はバーリントン市長)は、第一次インティファーダ(占領に対する蜂起)中のパレスチナに対して尋ねられ「アラブ人の腕や脚を折るイスラエル兵の姿は非難されるべきだ。街を封鎖するイスラエルの考えはとうてい受け入れられない」と言い、イスラエルが話し合いの場をどうしても持たない場合はアメリカが軍事支援を断てばいいと断言したのだ。
しかしその後上院議員になった彼は、アメリカの外交ラインであるイスラエルとパレスチナによる領土分割という「二国家解決」の立場をとるようになった。以前の「軍事支援を断つ」といった言葉とは裏腹に、一度もイスラエルに対する軍事援助に反対票をいれなかったし、2014年のイスラエルによるガザ封鎖攻撃で多くの、無辜の一般市民が犠牲になった時でも同様だった。
2014年8月、バーモント州で開かれたタウンミーティングで、攻撃を受けていたガザへではなく、圧倒的な軍事力を持つイスラエルへのさらなる軍事援助するという議案に、バーニー・サンダース上院議員が賛成票を投じたことを参加者から指摘され意見を求められた。ISISのことを持ち出したりと歯切れの悪いサンダース議員に怒った聴衆に対し「シャラップ!」と怒鳴り、会場にいた6人を警察の手で退出させた。そのサンダース候補が、今回は一歩踏み込んでイスラエルの入植地は違法だと言ったのだ。アメリカの大統領候補者としてのこの発言は重い。
サンダース候補の支持者には若者が多い。選挙の寄付金も平均27ドルでおよそ350万人の個人献金から集めている。ニューヨーク予備選で勝ちをゆずり、民主党の公認候補になるには苦戦を強いられているが、もともとが民主党員ではないため、公認がとれなければ独立候補として出馬するのではないかとも噂されている。そうなれば、民主党の票が割れることは確実でトランプ候補がアメリカ大統領になるという悪夢に現実味が生まれてくる。
しかし、そんな悪夢ではなくて、氏が予備選で示している「社会主義者」としての政策を支持する若い層があるということにアメリカの未来をみたくなる。そういう気持ちをこめて、4月15日に放送されたデモクラシー・ナウ!から、クリントン候補とサンダース候補のイスラエルに関わる言論を紹介したい。
(前書き、翻訳:キム・クンミ/TUP)
バーニー・サンダース:パレスチナの人びとに敬意を払い尊厳をもって遇することが、反イスラエルとはならない
2016年4月15日 デモクラシー・ナウ!
木曜日の討論でバーニー・サンダースは、イスラエルは2014年のガザ攻撃で圧倒的に強大な軍事力でおよそ1500人のパレスチナの民間人を殺害したと繰り返し主張した。サンダースは「私たちがこれから、憎悪に満ち、戦闘が繰り返されたこの地域に平和をもたらそうとするなら、パレスチナの人びとに敬意を払い尊厳をもって遇さなければならない。私は米国と世界の国々は協力してパレスチナの人びとを助けることを信じている。このことは反イスラエルとはならない」と述べた。
ファン・ゴンザレス:私は編集委員会の会議中でしたが、バーニー・サンダースが、このニューヨーク市で、イスラエルとパレスチナ問題を取り上げた勇気に驚きました。彼は一歩も引くことなく、合衆国の視点から、イスラエル―パレスチナ紛争は、また、パレスチナ領土で違法だとサンダースが言う入植地の撤退に対して、より公正で公平な政策であるべきだと言いました。イスラエルとパレスチナの問題となると、アメリカの政治家は勇気をもってはっきりと公言しないのを皆知っているので、彼が自分の立場を保持しているのことに驚いていました。
エイミー・グッドマン:では昨夜のこの問題についてどうぞ。昨夜のカギとなる議題です。司会はウルフ・ブリッツァーです。
バーニー・サンダース議員:さして広くもないガザ地区で、およそ1万人が負傷し、およそ1500人が殺害されました。
聴衆:パレスチナに自由を!
バーニー・サンダース議員:「あの攻撃はやりすぎだったか?」と私に尋ねるのなら、いや、私だけでなく世界中の国に尋ねるのなら、そうだと、私はそう確信していると答えます。長い間にわたって、100%親イスラエルの人間として言わしてもらえるのなら――これは易しいことではありません。神のみぞ知る、ですが――、あれだけの憎悪とあれだけの戦闘をみてきたこの地域に平和をもたらそうとするのなら、我われはパレスチナの人びとを敬い、尊厳を尊重しなければならないでしょう。言及されないことを言うと、たったいまのガザの失業率は40%あたりになっています。地域のほとんどは修復されず、破壊され、家は壊され、医療はつぶされ、学校も壊されてきました。私は、米国と世界の国々は協力してパレスチナの人びとを助けなければならないと信じています。このことで私は、反イスラエルとはならない。それは道を開くのだと思います。
ウルフ・ブリッツァー:ありがとうございます、議員。
バーニー・サンダース議員:中東にはそのようなアプローチが有効だと思います。
ウルフ・ブリッツァー:ありがとうございます。クリントン国務長官、あなたはイスラエルはパレスチナの攻撃に過剰反応し、イスラエルとパレスチナの間に和平をもたらすには、イスラエルは「過剰な反応」をやめるべきだというサンダース議員に同意しますか?
ヒラリー・クリントン:私は2012年11月にイスラエルとハマースの停戦を交渉しました。ラーマッラーに拠点を置くパレスチナ自治政府のアッバース議長との合意でやりました。私はネタニヤフ首相やイスラエル内閣と緊密に協力し、カイロを拠点とする当時のムスリム同胞団のモルシ大統領と交渉しました。25年にさかのぼってイスラエル当局と共に働いてきて、今ここで言えるのは、彼らはこのような攻撃を求めていないということです。彼らはロケットが自分の町や村に雨のように降り注ぐことを招いてはいません。イスラエルが、イランの援助を受けてけしかけられたハマースから恒常的に挑発されるべきだとは思っていません。
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エイミー・グッドマン:ブルックリンで行われた昨夜のヒラリー・クリントンとバーニー・サンダースの議論でした。ニューヨークの予備選前の最後の議論です。
木曜日、サンダースのキャンペーンは一時中断しました。新しくナショナル・ジューイッシュ・アウトリーチ・コーディネーターとして雇ったばかりのシモーヌ・ジマーマンが、雇われて2日後にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相についての批判をフェイスブックに載せていたことが発覚したためでした。
原文:Democracy Now! APRIL 15, 2016
Bernie Sanders: Treating Palestinians with Respect & Dignity Does Not Make Me Anti-Israel
http://www.democracynow.org/