TUP BULLETIN

TUP速報1012号 ICEの背後にいるのは誰? トランプの移民追放を支えるアマゾン、パランティア、マイクロソフトなど巨大テクノロジー企業

投稿日 2018年11月25日

◎ハイテク技術が可能にする移民狩り


トランプ氏が大統領に就任して以来前面に押し出されてきた移民を排除する政策は、氏の選挙公約のひとつでもあるため、選挙があるたびにエスカレートしています。11月6日の中間選挙を前にした今年5月、ジェフ・セッション前司法長官が移民と難民の区別なくビザをもたずに国境を越えようとする人々を刑事裁判にかけると決定したことで、国境を越えた親子が引き裂かれ、親がすでに送還されてしまったり、さまざまな事情から再会できない親子が現在でもいます。

移民の多いニューヨークに住む私の周りにも、永住権を持っている人が数十年前の軽犯罪歴で強制送還されたり、何十年もアメリカで働き税金を納めてきた建築労働者が送還されたりしていて、実際に「移民狩り」はますます厳しくなっていることを実感しています。

先月に公開された報告書「Who’s Behind ICE? The Tech and Data Companies Fueling Deportations(ICE [ 移民関税執行局 ] の背後にいるのは誰?ハイテクおよびデータ企業が強制送還を加速化する)」は、 移民管理を厳重にする技術を提供し、このような現状をおし進め、そこから利益をえている企業が誰なのかを明らかにしています。

テクノロジーの進歩は後戻りができません。だからこそ、企業がどのような技術で国民国家が推し進める政策を可能にするだけなく、どこまで強化しているのかを知ることがますます大切になっています。知ることが国家主権と基本的人権の境界線を描くことにつながると確信します。

米国の独立系番組「デモクラシー・ナウ!」で、この報告書を作成したラテン系政治拠点「ミヘンテ」の代表者から報告書の概要を聞きました。そのインタビューの訳文をお届けします。

報告書全文はここからダウンロードできます。

前文・翻訳  キム・クンミ(TUP)

Democracy Now!

Who’s Behind ICE? How Amazon, Palantir, Microsoft & Tech Giants Are Powering Trump’s Deportations

ICEの背後にいるのは誰? トランプの移民追放を支えるアマゾン、パランティア、マイクロソフトなど巨大テクノロジー企業

2018年10月24日

移民の権利擁護団体による新しい調査により、アマゾン、パランティア、マイクロソフトのような企業が、いかにトランプの移民投獄や強制送還を迅速化し、そこから利益をあげているかという衝撃的な事実が明らかになりました。国土安全保障省の予算440億ドルの約10%がデータ管理に充てられています。政府の監視プロジェクトの新たな文書として公開されたこの報告書では、移民関税執行局(ICE)に動画で配信される人物の顔をスキャンし移民をリアルタイムで識別できる顏認識技術――物議をよんでいるこの技術の採用をアマゾンが要求していることがわかります。ラテン系組織の全国的な政治拠点ミヘンテ(Mijente)の主催者ヤシンタ・ゴンザレスさんに話を聞きます。このグループは、移民弁護プロジェクトと全国弁護士組合の移民プロジェクトと提携して「ICEの背後にいるのは誰?ハイテクおよびデータ企業が強制送還を加速化する」と題した新しい報告を公開しました。

ホアン・ゴンザレス:今日の番組は「ICEの背後にいるのは誰? トランプの移民追放を支えるアマゾン、パランティア、マイクロソフトなど巨大テクノロジー企業」という衝撃的な新
しい報告で締めくくります。全国移民プロジェクトおよび移民弁護プロジェクト「ミヘンテ」による新しい報告はアマゾン、パランティア、マイクロソフトのような企業がトランプ大統領の移民投獄、強制送還オペレーションを迅速化し、そこから利益を得ている方法を詳しく説明しています。現在、国土安全保障省の予算440億ドルの約10%がデータ管理に費やされています。政府監視プロジェクトの新たな文書として公開されたこの報告書では、アマゾンが移民関税執行局に動画で配信される人物の顔をスキャンし移民をリアルタイムで識別できる、物議をかもしている顏認識技術の採用を求めていることがわかります。

エイミー・グッドマン:その詳細について、アリゾナ州フェニックスから報告書『ICEの背後にいるのは誰?』を共同編集したラテン系組織の全国的政治拠点ミヘンテの主催者ヤシンタ・ゴンザレスさんが参加します。
ヤシンタさん、発見したことをお話しください。

ヤシンタ・ゴンザレス:おはようございます、エイミーさん。番組に呼んでいただきありがとうございます。

この報告書で私たちが見つけたのは、ご存じのように、ハイテク産業、シリコンバレーが移民関税執行局を現場から変えているということです。この間に、人々を監視する能力が追加されていること、医療費のような民間の情報源など、個々の企業の別々の記録を含む新しいデータソースを入力できることがわかってきました。例えば電話の請求書までもが記録されているのです。それによって移民管理が一軒ごとに移民を襲撃することが可能になり、地域社会は恐怖に震え、バラバラに引き裂かれる不安に日々打ちのめされる家族に影響を与えているのです。この報告で実際に明らかにされたことはまた、ICEのためにプログラムの作成を手伝っているハイテク産業の民間企業があり、それだけでなく例えばアマゾンのようなハイテク企業も基本的に政府にクラウドサービスを提供することで予算を拡大していることです。

ホアン・ゴンザレス:そうですね。アマゾンが政府機関のクラウドサービスに及ぼしているあまりに大きいインパクトについてお話ていただけますか?

ヤシンタ・ゴンザレス:ご存じのように、2010年にはアマゾンや他の多くのハイテク企業が政府に、すべてのファイルをデジタル化できるようにクラウドサービスを利用するべきだとロビー活動を始めていました。彼らが基本的にやったことは非常に有利な契約を確実にすることでした。政府のために情報を保管するためには、FedRAMP(訳注1)の認証を受けなければいけません。これが政府の情報を保管できるのは自分たちだという言い分です。グーグルなど他の企業が30件未満しか認証を取得してないのに比べて、アマゾンは204件の認証を取得しています。私たちはアマゾンがこの業界を独占してきており、戦争と、移民をめぐる戦いからとてつもない利益をあげていることを確認しています。

訳注1:FedRAMPとはクラウドサービスに対するセキュリティ評価、認証および継続的モニタリングの標準的アプローチを評価する、オバマ政権が2011年に策定した認証。

エイミー・グッドマン:現在進行中の強制送還のシステムから、誰がICEに資金を提供し、誰が支え、誰が利益を得ているのか、あなたが発見した個々の企業の詳細について話してくださいますか。

ヤシンタ・ゴンザレス:私たちが特定した主要企業の1つはパランティアという企業でした。パランティアは文字通りCIAとピーター・ティールが資金を投資し創設した企業です。多くの人がご存じのようにピーター・ティールはトランプの強力な支持者です。そのティールがデータ処理、データ・マイニングができるこの会社を創設しました。彼はケンブリッジ・アナリティカを含む複数の国際的なスキャンダルに関わっており、ICEの基礎的なバックボーンを作り出しています。この会社は ICEが移民を追跡し、監視し、最終的には追放を体系的にできるようにするための調査事例管理システムを作成しています。私たちが目にしていることは、パランティアはこの技術を開発して移民を襲うことができるのに、どういうわけか国境で子供らが親と引き裂かれると、それを見失い、親がどこにいるか見つけることができないということです。このことから技術を通して彼らが現に優先順位をつけていること、誰がこの背後にいるのかを知ることができます。それはCIAです。それはピーター・ティールです。彼らがトランプの課題を拡大しようとするのはビジネス上の利益からです。

ホアン・ゴンザレス:あなたの報告が伝えていることの1つに、多くのハイテク企業が自社の従業員から押し返しを受けていることがあります。彼らは自分が勤める企業がICEや政府のその他のストレージ プロジェクトに大きな役割を果たしていることを心地よく思っていません。それについて、また、アマゾンがこの分野でもどのように突出しているか話していただけますか?

ヤシンタ・ゴンザレス:はい。 エキサイティングなことのひとつは、企業が移民関税執行局から何億、何十億ドルも稼いでいるのをみても、その企業で働く人たちが良心を持ち「私たちはこれで良いと思っていない。 雇い主に反対するために組織づくりをしています。私たちには自分たちが何を構築する手助けをしているのか表明する権利がある」と言っていることです。また、企業の内部で労働者が請願書に署名し、CEOたちと対話し、 決定を下す権限を持つ人々と対話するのを見てきました。 セールスフォースのような企業の内部でこのようなことが起こっているのをみてきました。アマゾンのような企業の中でそれを見てきました。 パランティアの内部で実際に起こっているという噂を聞いています。

私たちは組織化しようとしている労働者たちを、こういうことに声をあげようとしている労働者たちを実際に励ましたい。なぜなら中立でいるときではないと分かっているからです。誰もが知っているように、トランプの使命が、ジェフ・セッションの使命が何であるかははっきりしています。彼らは攻撃したい。移民を投獄したい。強制送還したい。それにどう反応するかは私たち次第です。 そして本当に、人々が言いなりにはならないこと、このようなインフラ整備を手伝っている企業の内部が言いなりにはならないこと、人種差別的な執行体制を押しつけられていることに言いなりにはならないことをはっきりとさせたい。 私たちにはそれを変える方法があります。

エイミー・グッドマン:メキシコ政府とバイオメトリック情報の共有について、これらの企業がしていることをお話いただけますか、ヤシンタさん?

ヤシンタ・ゴンザレス:ええ。実際に技術を開発し、メキシコとデータを共有する契約を結んでいるデブ・テクノロジー(Dev Technology)のような多くの企業があります。いくつかのレベルで見ることができます。メキシコ入国管理局内部が情報を共有していることもありますが、もっと気にかかる契約はメキシコの投票者の記録、投票者IDカードから得られた情報を共有できるようにしようとしていることです。米国がメキシコに課してきた別の軍事化計画であるメリット計画「プラン・フロンテーラ・シュール」を通じて、移民の追跡と管理が可能な技術開発に何百万ドルも投資してきたことがわかりました。それがいまある危機を導いているのです。人々が自国で尊厳のある生活を送ることができるように、政府が地域社会にそれを提供できるように投資する代わりに、米国は政治に介入し軍事化に投資しています。それが不安定化を招き、人々を移住させていることがわかります。

ホアン・ゴンザレス:ヤシンタさん、もう一分ほどしか残っていませんが、サウジ政府によるジャーナリスト暗殺に関して何が起きているのかに焦点をあてた「シリコンバレーのサウジアラビア問題」という最近のニューヨークタイムズの記事についてお聞きしたいのですが。このサウジアラビアが日本のソフトバンク社を通じてシリコンバレーに大きく投資している、全体的な問題ですが。

ヤシンタ・ゴンザレス:そうです。 私たちが目にしていることは今まで以上に誰よりも多くのパワー、多くのお金、多くの情報を蓄積している企業がシリコンバレーや世界中にあることです。アマゾンは文字通り、現時点であなたの好みのブレンダーのタイプを知っており、あなたの警察のファイルを全部保持しているのです。私たちはこれらの企業からより多くの説明責任を果たしてもらわないといけません。企業が基本的人権を尊重することを確実にする必要があります。 政府がそれをやり遂げる意欲がないなら、内部の労働者が連帯して立ち上がるだろうということは周知の事実ですし、一般の人々もそれを後押しすることができます。しかし、ますます多くの企業が国際政治に影響を与え始めていることもわかっています。

エイミー・グッドマン:ミヘンテのヤシンタ・ゴンザレスさん、どうもありがとうございました。