FROM: minami hisashi
DATE: 2004年6月5日(土) 午前9時00分
◎アメリカ大統領への公開質問状
2001年9・11から昨年5月の空母エイブラハム・リンカーン艦上の「遠征任務達成」宣言のころまでは、ブッシュ大統領の演説には(ある意味で)力強さがありましたが、最近は、強弁と釈明が入り混じった空疎な印象が免れないようです。地球規模に展開する「基地帝国」戦略をウォッチする知日派研究者ジョンソンが大統領演説に注文をつけます。TUP 井上
大統領、お答えください!
今後は、イラク関連演説を力強いものに! 質問が12項目あります。
――チャルマーズ・ジョンソン
トム・ディスパッチ 2004年5月31日
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[1] イラクの「完全統治権」について、どのようにお考えなのか、詳しくお話しください。1972年、沖縄施政権を日本に返還しましたが、その後もアメリカは沖縄に38ヵ所ある軍事基地および米軍の配備と行動の排他的支配権は手放しません。イラクの主権は、これと同じようなものでしょうか?
[2] イラクをイラク国民に返還すると明言しているにもかかわらず、いまアメリカがイラクに14ヵ所の恒久基地を建設しているのは、なぜでしょうか?お答えください。
[3] 在イラク基地に駐留する米軍部隊の統制権はペンタゴンの手に残され、いかなる形のものであれイラク「主権」国家の法律の効力がおよばない治外法権になると予想されます。そのような取り決めは、通例では、領土内に米軍基地が置かれる政府にたいてい押しつけられる「軍隊の地位に関する協定(SOFA)」によって定められます。イラク側の誰がSOFAに署名するのでしょうか? その条項はどのようなものでしょうか? 来年、イラクの国民選挙を実施して、新しい政府を樹立したいと、あなたは願っておられるようですが、この協定は正統政府を縛ることになるのでしょうか?
[4] 統治権にまつわる議論の焦点は、主として、これからさきイラク国軍またはアメリカ軍の、どのような行動を、誰が統制するのかという問題にしぼられてきました。ところが、イラク政府の全「省庁」にアメリカ人顧問が配置されることになります。新政府は、法律や占領軍制定規則を裁可することも独断では許されず、廃止する権限ももたないのは明らかなことです。また石油関連を除く全経済部門は、すべての外国機関投資家に開放されたままになるでしょう。これでも「完全統治権」であると、本当にお考えなのでしょうか?
[5] イラク国民が望むのであれば、アブグレイブ監獄を解体するとあなたは明言しています。サダム・フセインの残虐行為だけでなく、アメリカの残酷行為の記念として、監獄を保存したいとイラク国民が望むとすれば、どうなさるおつもりでしょうか?
[6] 最近、あなたの政府は、ジュネーブ条約の効力はタリバンやアルカイダ戦士の捕虜にはおよばないが、イラクの囚人や捕虜にはおよぶと、あなたがた特有の判断基準にもとづき確認しました。アブグレイブ監獄内の行為はジュネーブ条約に違反していました。アブグレイブで服務するアメリカ兵たちに「より優れた」尋問技術を伝授するために、グァンタナモ収容所の司令官ジェフリー・D・ミラー少将によって、尋問専門家の複数のチームがキューバからアブグレイブに派遣されたと、わたしたち国民は今では知っています。これらの尋問技術がジュネーブ条約違反であれば、ミラー少将は裁判にかけられるべきではありませんか? グァンタナモ、その他の場所でのミラー少将の行為が、ペンタゴンおよび軍隊内指揮系統の上官たちによる指針および要請にもとづくものであれば、関係者も同列に扱われるべきではありませんか? あなたの見解をはっきり述べてください。
[7] アブグレイブ監獄における拷問行為の一部は、実はアメリカの請負企業の手配で送り込まれたイスラエルの諜報工作員たちの犯行だったという事実が知れ渡れば、アメリカの中東政策がアリエル・シャロン率いるイスラエルの政策とこれまで以上に混同されるのではないでしょうか? これが良策だったと本気でおっしゃるのでしょうか?
[8] 連邦議会予算事務局によれば、米軍兵力13万人を投入しているイラク戦争・占領の経費は、いまでは月額50億ドル、年額にして600億ドルに迫っているそうです。アメリカの納税者の戦費負担は、直接軍事支出だけで既に1860億ドルになります。2005年度ペンタゴン予算の防衛関連政府支出として、さらに4250億ドル、イラク関連で750億ドル、新世代核兵器の開発費に250億ドル、それに金額はまだ明かされていませんが、軍人年金や退役者医療保証などの予算をあなたは要求しています。上記リストには、政府支出策定外の国防総省「闇の予算」活動は言うにおよばず、CIA、その他の諜報活動のために使われる天文学的な秘密経費は含まれていません。これほどのお金が、どこから出てくるのでしょうか? アメリカ政府がこれほどの金額の請求書を先送りして、未来の世代に負担させるのは、なぜでしょうか?
[9] 軍人年金・医療保証といえば、第一次湾岸戦争で従軍した将兵の30パーセントほどが、主として米軍による劣化ウラン砲弾使用に起因する疾病による、同地でこうむった障害の補償を求めていますが、お願いですから、この事実について言及なさっていただけないものでしょうか? (アメリカ側の当初死傷者数が比較的に容認できるものに、短期的には思えても)現代戦における長期的な危険の幾分かでも、論じていただけませんか? 今度の戦争の結果として、癌になる、あるいは異常出生児を生むと予想される将兵全員に対して、はたしてどのようにアメリカ陸軍病院は面倒を見ることができるのでしょうか?
[10] 2002年6月1日、あなたはウエストポイント陸軍士官学校で演説され、予防戦争と称する新ドクトリンを宣言し、体制変換政策の標的になる国家は60ヶ国あると言われました。それら60ヶ国のリストを、わたしたち国民のために読み上げていただけないでしょうか? それと、2期目でも、このリストに沿ってドクトリンを推進するのでしょうか?
[11] 新しく戦争を始めなくては気が済まないとおっしゃるなら、あるいはイラク戦争が長引き、再入隊する兵士の数が十分でない場合、徴兵制を復活なさるのでしょうか?
[12] 大統領はアメリカ国民に向かって語るはずですが、士官学校、基地、その他同類の、上官たちが出席と拍手喝采を命令する場所ばかりで、現役将兵男女だけを聴衆として演説するのが通例になってしまったのは、どうしてでしょうか? 今後の演説の一回ぐらいは、特に徴兵制を提案するつもりなら、大きな州立大学で発表なさってはいかがでしょうか?
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[筆者] チャルマーズ・ジョンソン Chalmers Johnson
『日本政策研究所』 http://www.jpri.org 代表。屈指の沖縄米軍基地研究者。1962〜92年、カリフォルニア大学バークレイ校アジア政治教授。
◎『アメリカ帝国への報復』(鈴木主税訳・集英社刊)は、9・11を予告していたと話題になり、2001年のビフォーコロンブス財団アメリカ書籍賞。
◎新刊『帝国の悲哀―軍国主義、秘密主義、共和制の終焉(仮題)The Sorrows of Empire: Militarism, Secrecy, and the End of the Republic』の関連論文『地球を覆う米軍戦略基地』は、新刊TUPアンソロジー『世界は変えられる』(七つ森書館、6月2日発売)に掲載。
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[原文] Twelve questions for President Bush Meant to Help Strengthen His Remaining Speeches about Iraq
By Chalmers Johnson posted May 31, 2004 at TomDispatch
http://www.nationinstitute.org/tomdispatch/index.mhtml?emx=x&pid=1468
Copyright C2004 Chalmers Johnson /TUP配信許諾済み
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翻訳 井上 利男 /協力 星川・萩谷 /TUP