TUP BULLETIN

速報372号 コスタリカが動いた  04年9月14日

投稿日 2004年9月14日

FROM: Schu Sugawara
DATE: 2004年9月14日(火) 午後10時01分

◎コスタリカ憲法法廷が、政府のイラク戦争支持に違憲裁定

==常設軍隊放棄を憲法に謳っている点で、コスタリカはしばしば日本と比較さ
れます。しかし、警察予備隊以来一貫して軍隊を維持してきた(どころか世界
第四位の軍事費を誇る)日本と、実際に軍隊を放棄して半世紀を経たコスタリ
カとでは、現実の政治外交に大きな違いがあります。そのコスタリカでも、2
002年のパチェコ大統領就任以来、たとえばアメリカのイラク戦争に支持を
打ち出すなど、従来のコスタリカ外交に比べると「反動的」な動きが目立って
いました。コスタリカには憲法法廷が存在し、国の政策が憲法に沿うものかど
うかしばしば判断を下します。今回、憲法法廷が、政府の現状に釘を刺す裁定
を出し、政府が直ちに反応しました。

現地の英字新聞A.M.コスタリカのニュースをお伝えします。
※なお、このニュースは、9月10日付きの朝日新聞国際欄でも報道されたそう
です。
TUP 坂野 /凡例 (原注)[訳注]
=====================================================================

「憲法法廷、パチェコ大統領のイラク戦争支持を非難」

A.M.コスタリカ編集部

コスタリカ、サン・ホセ発、
2004年9月9日(木曜日)第4巻、179号

[コスタリカ最高裁]第四法廷[Sala IV](憲法法廷)は、水曜日、アベル
・パチェコ大統領および行政府が米国と連合国の対イラク政策を支持したのは
違憲であると裁定した。

数時間後に発表された外務大臣談話によれば、明日早くにも、国として米国宛
てに外交文書を送り、連合国の一覧からコスタリカを削除するように求めるこ
とになる。

今回の憲法法廷の裁決は、全員一致で下された。7人の判事が揃って、200
3年3月19日のパチェコ大統領と外務大臣による合意事項は、コスタリカ憲
法、コスタリカの永世中立宣言[*]、国連憲章と国際法に違反している、と
判断した。この日付は、すなわちイラクで戦争が始まった日である。
[訳注:コスタリカは、1983年に永世・積極的・非武装中立宣言を行なっ
た。]

法廷は、ホワイトハウスのウェブページにある連合国の一覧からコスタリカの
名前を削除させるために必要な手続きをとるよう、行政府に命じた。

今回、第四法廷においては、ホセ・マヌエル・エチャンディ・メッツァがオン
ブッズマン[*]として、またコレジオ・デ・アボガドがコスタリカ弁護士会
として、加えて一人の市民も、参加した。
[訳注*:直訳は「住民保護官」。]

外務および宗務省は、水曜日に、裁定はコスタリカと米国の外交関係に影を落
とすようなものではない、との談話を発表した。談話では、民主主義において
は、行政府の決議は法を超えるようなものではなく、また、世界のどこでテロ
が起こっても、今後とも、コスタリカは犠牲者と連帯していくと言う。

また、談話では、法廷は政府がイラクに宣戦布告したとも、戦争を支援したと
も述べていない、と指摘し、実際、政府はそうしたわけではなかった、と付け
加えている。

ホワイトハウスのウェブページ(*)では、確かにコスタリカは49カ国の連
合国の一員として掲載されていて、また、これら連合国の貢献は、軍事行動へ
の直接参加から兵站(へいたん)活動、情報収集支援、[戦闘機などの]領空
通過の許可、人道的支援、再建援助、政治的支援まで多岐にわたる、と述べて
いる。
(原注 http://www.whitehouse.gov/infocus/iraq/news/20030327-10.html )

またホワイトハウスのウェブページ(*)では、パチェコ大統領とロベルト・
トバール・ファーハ外務大臣による次の言葉を掲載している。
(原注 http://www.whitehouse.gov/infocus/iraq/news/20030326-7.html )

「わが国の平和を目指す使命は、無関心やテロリズムを前にしての寛容と解釈
されるべきではない。加えて、平和とテロリズムの衝突において、わが国は中
立ではない。コスタリカは、平和、自由、民主主義、そして国際法の尊重を求
める人々にとって、誠実で、揺るがない、毅然(きぜん)とした同志であるし
、これからもそうであり続ける。」

パチェコ大統領は、コスタリカはテロリズムに反対しており、必ずしも戦争に
賛成ではない、と述べており、その意味でも一貫した態度を取っている。

—————————————————————
[原文] A.M. Costa Rica (コスタリカの英字新聞)”Sala IV raps Pacheco
for joining Iraq War coalition”By the A.M. Costa Rica staffSan Jose,
Costa Rica, Thursday, Sept. 9, 2004, Vol. 4, No. 179
http://www.amcostarica.com/thursday.htm#3
TUP翻訳配信許諾済

※コスタリカに関しては色々な書籍やウェブ上の読みものがある。
「コスタリカの人々と手をたずさえて平和をめざす会」の資料集(リンク集、
書籍リスト)を参考に挙げておく。
http://www.jca.apc.org/costarica/siryo/
===============================================================
[翻訳]坂野 正明/TUP、 協力:竹村卓(富山大学)