TUP BULLETIN

速報374号 軍産複合体の権化 04年9月20日

投稿日 2004年9月20日

FROM: Schu Sugawara
DATE: 2004年9月20日(月) 午前11時34分


☆軍事優先ドクトリンを支える政治構造★
テロに対する地球規模の戦争を標榜し、有志連合の結束を名分とし、国際世論と国連を無視して、戦争を遂行するブッシュ政権の軍事優先ドクトリンには、それを支える本国内の政治基盤があるはずです。世界的な視野から“アメリカ帝国"の行動をウォッチするチャルマーズ・ジョンソンが、みずから居住する、連邦下院議会の地元選挙区の実情を、ミクロの目で報告し、軍産複合体を支える政治構造を明らかにします。/TUP 井上
/凡例:(原注)[訳注]

「軍産複合体の権化」
アメリカ地方政界の光景――または、どこの選挙区にもいる“公爵”
――チャルマーズ・ジョンソン
—————————————————————-

アメリカ政治に少しでも関心を寄せる人にとって、連邦議会がもはや人民に応
えていないことなどは、めずらしくもない話である。現職続投が実にうまく慣
行化しているので、選挙は概して意味をなしていない。攻撃用銃器と自動小銃
の個人所有について、犯罪者に使われることのほうが多いという全米の警察の
嘆きにもかかわらず、国民の65パーセントに達する禁止賛成の世論にもかか
わらず、殺人被害者の親族たちの禁止を求める切なる願いにもかかわらず、下
院議会の院内総務トム・ディレイ(Tom DeLay)はこれを是認している。この
件に関しては、全米ライフル協会(National Rifle Association)が議会を牛
耳っているようだ。

軍需製造業についても、同じような状況がある。兵器産業が各地域の現職議員
を次々と買収してきたが、有権者は彼・彼女を退陣させることもできないでい
る。B2ステルス爆撃機開発といった本格的な大規模プロジェクトの場合には、
各地域の連邦議員が、新たな大量破壊兵器はアメリカに必要ないと思うだけで
も、自分の地区の雇用を失うのではないかと脅えるように仕向ける保険として、
機体の各部分毎の請負業務が、米本土48州に配分されている。その結果が、
年4250億ドルの国防予算(プラス、別枠でイラク・アフガニスタン戦費7
50億ドル、核兵器予算200億ドル、退役軍人・傷病者手当て2000億ド
ル)であり、これが戦後史上で最悪の連邦財政赤字に直結している。おそらく
破産だけが、アメリカ帝国の怪物を阻(はば)むということのようだ。

筆者が居住するサンディエゴ郡(San Diego County)北部のカリフォルニア州
第15下院議員選挙区は、これが地方レベルでどのように機能しているのかを
見るための恰好の事例になっている。第15区の選挙民は、これまでの14年
にわたり、軍産複合体の申し分ない子飼いの共和党現職ランディ・“デューク
(公爵)”・カニンガム(Randy “Duke” Cunningham)を、ワシントンで了見
違いの代表に据えている。

人口の多い第15下院議員選挙区は、裕福な(そして共和党支持の)地区、ラ
ンチョ・サンタフェ(Rancho Santa Fe)、ラホーヤ(La Jolla)、リベラル
な沿岸部の都市や町、サンディエゴ市の北部、デルマー(Del Mar)、エン
シーニタス(Encinitas)、カールズバッド(Carlsbad)、それに内陸部のヒ
スパニック労働者階層の地区、エスコンディード(Escondido)、ミラメーサ
(Mira Mesa)といった地域からなる、奇妙なゲリマンダー[*]混合体であ
る。選挙区はラホーヤの大部分を含んでいるが、カリフォルニア大学のキャン
パスは抜けているので、そこに住み、勤務している研究者たちは除外されてい
る。ここは、近年、バイオテクノロジー研究者、その他の専門職が大量に転入
し、サンディエゴに元から存在した高学歴ホワイトカラー層に加わっているの
で、性格が変化してきている地域である。第15区では、現に居住している人
びとの政治観と政治的利益とをより良く代表する、新しい議会代表が切に求め
られている。今年初めて、優れた素質の候補者が、カニンガムに対抗して名乗
りをあげ、こちらの政治的見解は――周知されさえすれば――カニンガムが代
表を自認する人びとの利害と価値観とに、よりはっきりと適っていると分かる。
[gerrymander=党派の利益のために、恣意的に線引きした不自然な区割り]

全米で屈指の信用がある世論調査企業デシジョン・リサーチ社(Decision
Research)が、7月12日から14日にかけて、選挙区内の登録有権者440
名を対象に電話による世論調査を実施した。その結果、判明したことのひとつ
が、妊娠中絶、学校バウチャー制度[*]、環境保護、イラク戦争、軍備費、
その他多くの問題についてのカニンガムの投票記録が知らされていれば、彼の
リードは、18ポイント差から4ポイント差(誤差4.7パーセント)へと縮
少するということである。彼に対抗する民主党候補は、域内の町で教育委員会
の委員を務めたフランシーヌ・バスビー(Francine Busby)であり、どちらか
と言えば無名だが、特に女性有権者向けの強力な宣伝活動を効果的に進め、カ
ニンガムが地域の福利を特定の団体に売り渡している手口に注意を向けさせて
いる。
[school vouchers=生徒の入学希望校に政府発行の券を持っていく制度]

[本稿で用いる]カニンガムについての情報の出所は、連邦選挙管理委員会
(Federal Election Commission)に提出された同陣営および敵側陣営による
報告であり、それに連邦議会を監視する無党派のシンクタンク3団体、ワシン
トンの「反応する政治」センター(Center for Responsive Politics)、モン
タナ州フィリップスバーグの政治資金情報(Political Moneyline)および
「賢い投票」プロジェクト(Project Vote Smart)がまとめた、カニンガムに
関する記録の評価である。

まず資金から見てみよう。2004年6月30日時点で、カニンガムが集めた
次回選挙のための献金が60万8977ドル、これまでに使った額が38万2
043ドルであり、手持ち資金は、驚くべき額の89万0753ドルである。
これに対してフランシーヌ・バスビーは、同時点で、献金が6万4449ドル、
使ったのが3万2937ドル、手持ちが3万1511ドルである。カニンガム
の資金のほぼ46パーセントは、いわゆるPAC(政治活動委員会=
political action committees)から出ていて、49パーセントは個人献金で
あり、彼個人が用意した資金はゼロである。バスビーの資金は、2パーセント
がPACから出ていて、個人献金は86パーセント、彼女個人が用意した分は
6パーセントである。カニンガムの資金の出所は、約68パーセントがカリフ
ォルニア州内だが、32パーセントは州外からである。バスビーの乏しい資金
の97パーセントがカリフォルニア州内からのものであり、3パーセントが州
外からだ。彼女は資金を短期間に集めているが、それでもカニンガムが使う金
の方が、8対1の割合で勝(まさ)っていて、彼は、自分の選挙区は安泰であ
り、この秋、ジョージ・W・ブッシュの応援に時間を惜しまないと公言してい
る。

誰がどれだけの資金を誰に献金したのかを調べると、本当の違いが姿を現わす。
2004年8月2日付の連邦選挙管理委員会の資料にもとづき、産業部門別に
見れば、カニンガムに対する上位献金業界は、国防関連エレクトロニクス(6
万6550ドル)、国防関連航空宇宙産業(3万9000ドル)、院外活動団
体(3万2500ドル)、雑多な国防関連産業(2万9200ドル)、航空輸
送(2万6500ドル)、保健医療専門職(2万4700ドル)、不動産(2
万3001)ドルである。バスビーの上位献金者分類は、「退職者」と記載さ
れている。カニンガムの資金援助企業の筆頭は、サンディエゴのタイタン社
(Titan Corporation)であり、同社は彼に1万8000ドルを献金している。
この企業は、陸軍にアラビア語通訳要員を派遣し、その一部は、バグダッドの
アブグレイブ監獄で拷問にかかわったらしいと名指されて、最近、ニュース種
になった。ペンタゴン契約業務は、下院歳出委員会の国防小委員会による承認
を必要とし、カニンガムは同小委員会の委員なのであり、これに該当するタイ
タン社の6億5700万ドル分の業務が、同社にとって、たったひとつの最大
収益源であるので、これは、政治的見返りの明白な実例である。

世界最大の兵器メーカー、ロッキード・マーチン社(Lockheed Martin)は、
1万5000ドルの大金をカニンガムに渡している。カニンガムの第三の大口
資金源は、ワシントンDCのMZM社であり、同社の政府関係取引先には、ペ
ンタゴンに加え、“アメリカ諜報部門”“海外テロリスト追跡特務機関”およ
び本土安全保障省が含まれている。MZMはランディ(カニンガム)の尽力の
代償に1万1000ドルを支払った。これに続くのが、サンディエゴのキュー
ビック社(Cubic Corporation)であり、同社は、「現実的戦闘訓練システ
ム」および航空機搭載型の監視・偵察器機をペンタゴンに納入する数百万ドル
規模の莫大な金額の契約を得ている。同社はランディに1万ドルを与えた。ゼ
ネラル・ダイナミックス社(General Dynamics)は議員のために1万ドルを決
裁したし、サンディエゴでSAICの略称で知られるサイエンス・アプリケー
ションズ・インターナショナル社(Science Applications International
Corporation)の献金も同額である。SAICの群を抜いて最大の顧客はアメ
リカ政府であり、証券取引委員会の同社に関する資料によれば、政府向け取引
きが同社総売り上げの69パーセントを占めている。(SAICはイラクで親
米テレビ・ラジオ放送網を整備することになっていたが、仕事でひどいヘマを
やってしまった) カニンガムに対する他の献金企業を一覧すれば、ノースラ
ップ・グラマン社(Northrup Grumman)が9500ドル、レイセオン社
(Raytheon=トマホーク巡航ミサイルのメーカー)が8000ドル、クアルコ
ム社(Qualcomm)が8500ドル、ボーイング社(Boeing)が7000ドルと
続き、さながら死の商人の名鑑である。これらすべてが、一議員のために注ぎ
込まれている。

バスビーが受け取った上位大口献金は、ウェブサイトをデザインする「ブ
ルー・ホーネット社(Blue Hornet)」という名の企業からの2000ドル、
カーディフ(Cardiff)教育委員会の委員たちからの1835ドル、ミラコス
タ大学(Mira Costa College)職員たちからの1080ドルである。

アメリカの政治システムにおいて、いかにお金が人間に取って代わっているか
の度合いを見るための巧みな方法のひとつに、郵便番号で分けられた地区毎に、
各候補が得た個人献金額を集計する「反応する政治センター」考案の手法があ
る。カニンガムにとって個人献金額が第一位の地区は、きわめて裕福な人びと
の、美しく人口が少ない住宅地としてよく知られ、住民に外国人が多い町、郵
便番号92067=ランチョ・サンタフェで、ここの金額は6万2795ドル
である。これに次ぐのが、92037=ラホーヤであり、ここも貧しくはない
町で、カニンガムに2万4000ドルを貢いでいる。次の2ヵ所は、2000
3および20007であり、ふたつともワシントンDCの郵便番号である。カ
ニンガムは、92065=カールズバッドからはもっとも少ない献金を受け取
った。バスビーのは、カニンガムのとは正反対である。 バスビーにとって、
もっとも良い郵便番号は92007=彼女の居住地カーディフであり、その献
金額は8415ドルだった。これに、92009=カールズバッド、9201
4=デルマーと続き、最下位は92091=裕福なフェアバンクス・ランチ
(Fairbanks Ranch)であり、ここの献金額はたったの1000ドルだった。
カニンガムの資金の出所を多い順に並べてみると、サンディエゴ、ワシントン
DC、ニューヨーク市、カリフォルニア州オレンジ郡(Orange County)だっ
た。バスビーのは、全部がサンディエゴ大都市圏からだった。

カニンガムは、誰か金を出しているのか、何を出資者は期待しているのかを的
確に知っている。日本人が好んで言うように、芸者にあれこれ指図する必要は
ないというわけである。彼は、「生まれる権利」全米委員会(National Right
to Life Committee=彼は女性に生殖選択権を与えることに頑として反対して
いる)、私有財産有権者連盟(League of Private Property Voters)、クリ
スチャン連合(Christian Coalition)、商工政治活動委員会(Business-
Industry PAC)から100点の評価を与えられ、「アメリカ銃器オーナーの会
(Gun Owners of America)からは80点を与えられている。これまでの10
年間で、彼は全米ライフル協会から4万4600ドルの献金を受けていて、こ
れは、アラスカ州選出下院議員ドン・ヤング(Don Young)のそれを除き、連
邦議会で誰のよりも多い。第15区内には、狩猟に出かける場所がなく、ウー
ジー(Uzi=イスラエル製短機関銃)、AK47(カラニシコフ)を使える場
所となれば、なおさらである。

カニンガムの投票記録も、国家主義のネオコンおよび軍需産業が彼を抱き込み、
手札にし、縛っているという事実を反映している。彼は、おおかたの予想にた
がわず、「おちこぼれ防止」法案[No Child Left Behind=エリートと大衆を
選別する方針の教育政策法案]および「愛国者」法案に賛成した。彼が「イエ
ス」と言った他の案件を列挙すれば、「部分分娩中絶[妊娠中後期の中絶法]
禁止」法案、「富裕層のための3500億ドル減税」案(2003年5月23
日に、賛成231票、反対200票で採択)、「製品が犯罪に使用されたさい
の銃器メーカー・販売業者の責任を問う訴訟を禁止する」法案、「メディケア
[高齢者医療制度]処方薬」法案(03年11月22日未明に、賛成220票、
反対215票で採択)、「緊急戦時歳出補正」法案(03年4月3日採択、イ
ラク戦争経費625億ドルを含む)といった具合だ。

カニンガムは、やたらと愛国心を口にし、国家を最優先にしているが、200
3年中の記録を見れば、ブッシュ大統領の求めに98パーセントの賛成票を投
じたのとは対照的に、1999年の間で、クリントン大統領を支持する投票は
20パーセントにすぎなかった。クリントンに反対することは、共和党のカニ
ンガム一派の仲間内では、もちろん「愛国心」に対する職務上の定義にほぼ匹
敵し、些細な罪で大統領の弾劾をめざしても、ブッシュ大統領が犯している大
罪、とりわけ、虚偽だらけの根拠にもとづいて、国をイラクに対する戦争に導
いた罪の証拠は意に介したりはしない。

カニンガムは、院内で予算委員会・国家安全保障小委員会(軍産複合体が思い
のままに影響力を振るっている討論会)および諜報常設特別委員会それぞれの
委員を兼任している。後者の委員長は、フロリダ州選出議員ポーター・ゴスが
務めていて、ゴスは元CIA工作員であり、最近、ブッシュ大統領によって次
期CIA長官に指名されている。この監督委員会は、輝かしい業績を上げてい
るとは、これっぽちも言えたものではない。CIAが、9・11攻撃について
国家に警告し損ねたり、議会と国民をイラクとの戦争に欺き導いたりしたにも
かかわらず、その活動をこの委員会が是認したのだから。

カニンガム当人によれば、彼の生涯でもっとも重要な業績は、20年にわたる
海軍パイロット勤務であり、ベトナム戦争中の空中戦では、一日に3機の共産
主義者側ジェット戦闘機を撃墜し(戦争中の合計で5機撃墜)、彼自身も地対
空ミサイルで撃墜された。1972年5月10日に、彼は東シナ海からヘリコ
プターで救出された。カニンガムはこの武勇伝をさんざん宣伝したので、ある
コメンテーターが「英雄インフレ」呼ばわりしたしまつであり、シェークスピ
アのヘンリー5世もこれを「都合の良い記憶」と呼んでいる。カニンガム本人
としても、自分の空中戦は戦争全体の流れにはたいした影響を与えなかったと
承知しているのにもかかわらず、今、彼は、みずからを名誉勲章[*]に値す
る英雄だったと主張している(実際には授与されなかった)。カニンガムは
「トップガン・エンタープライズ社(Top Gun Enterprises)」という名の会
社を創設し、自分のパイロット服姿の石版画を販売し、海軍での手柄を並べ立
てた本を執筆した。彼の会社のウェブサイトは、トム・クルーズ主演の映画
『トップガン』の実際のモデルは、ランディ・“デューク”・カニンガムであ
ると主張している。
[Congressional Medal of Honor=戦闘員の犠牲的殊勲に対し, 議会の名にお
いて大統領が親授する最高勲章]

議会議事録に残るカニンガムの発言は、彼自身のベトナム戦任務と軍隊に大き
く偏重している。例えば、2004年4月22日の下院議会における彼の発言
は次のとおりである――「議長、わたしは北ベトナム上空で撃墜されました。
わたしは、その時の怒りと、われわれの軍務に対してなされた、ジョン・ケ
リー(John Kerry)の見くびったような発言を忘れられません。彼による誹謗
が、われわれ皆に引き起こした憤激を、わたしは憶えております……今日にい
たっても、ジョン・ケリーは、国防、米軍、退役軍人に対して、それにわが国
男女の[戦場からの]無事の帰還を助けるはずの諜報法案に対して、反対票を
投じております。われわれは、ジェーン・フォンダ(Jane Fonda)を最高司令
官に選びかねない人物を必要としてはおりません」

彼は、ケリーの愛国心をそしる、このような攻撃を一貫して続け、2004年
8月17日のラッシュ・リンボー[*]によるインタビューでは、とりわけ名
を馳せた。ここに抄録しておこう――
[Rush Limbaugh=カリフォルニア州からニューヨークに移って頭角を現わし
た、ABC系列放送網トーク番組の右派コメンテーター]

デューク――「これはベトナムについてではありません。彼が1971年にや
ったことについてなのです。われわれ皆に酷いことを言って、戦争犯罪人呼ば
わりしました。上院議員になってからこのかた、これが彼の投票行動なのです。
国防と諜報の弱体化のために奔走し、最初の貿易センター爆破[*]の後に、
諜報予算の90億ドル削減をめざしました。これは、わたしの家族、わたしの
娘たち、わたしの息子、わたしの妻を、これからの何年間か、誰が守ってくれ
るかにかかわることなのですし、わたしには、それは、ケリー上院議員ではな
いのです。ラッシュさん、ケリー上院議員が共和党の候補だったとしても、わ
たしは彼に反対するでしょう」
[1993年2月26日、世界貿易センタービル地下2階駐車場に仕掛けられ
た爆弾が爆発、6人が死亡、少なくとも1040人が負傷。アルカイダが絡ん
だ犯行とされる]

ラッシュ――「議員、お電話、ありがとうございます。お声を拝聴できて、本
当に名誉なことです。わたしはあなたの経歴を存じておりますし、非常に感銘
を受けておリます。あなたがワシントンにいらっしゃるということで、攻撃さ
れることも多いでしょう。あなたは受けて立っていらっしゃいますし、わたし
どもはそれを高く評価します。ありがとうございました」

デューク――「人生は素晴らしい、ラッシュ」

ラッシュ――「本当に…。ただいまのは、カリフォルニア州選出下院議員デ
ューク・カニンガムでした。ベトナムにおける第一級のエース戦闘機パイロッ
トであり、ミグを5機撃墜しました」

カニンガムのもっとも有名な海軍武勇伝が実際に生まれたのは、彼が海軍を退
役した後で、一年生議員のときだった。カニンガムは、海軍と海兵隊のパイロ
ットの現役、予備役、退役者、国防関係請負者、支援者で構成される民間団体、
テールフック協会(Tailhook Association)理事会のメンバーだった。(テー
ルフックの名は、航空機が空母に着艦するときに、滑走を止めるための装置に
由来する) 海軍は協会に対してサンディエゴのミラマー海軍航空基地
(Miramar Naval Air Station)内に無料の事務所スペースを提供し、ラスベ
ガスで開かれるテールフック協会の年次総会に、参加者を搬送するための旅客
機部隊を貸し出していた。ラスベガス・ヒルトンで開催された第35回テール
フック年次シンポジウム(1991年9月5〜7日)は、カニンガムが公式資
格で出席した会合だったが、国防総省監察官の報告によれば、酔っ払った娘っ
子たちに、海軍長官も加わって、体をまさぐりあい、ストリップし、ホテルに
いた83人ばかりの女性に怪我をさせた。

その時いらい、カニンガムは、あれは、なんらやましいところのないお遊びで
あり、男同士の絆の発露だったと、多大な時間とエネルギーを費やして論じた
てることになった。彼は、下院公聴会で、軍隊内におけるセクハラと性差別に
対処するための公式計画を切り崩そうとすらしたのである。1998年3月1
1日付サンディエゴ・ユニオン・トリビューン紙によれば、彼は、そのような
差別是正努力を指して、「ナンセンス」「政治的措置」であると断定した。1
998年に、彼が前立腺癌(ガン)の手術を受けた後、感想を取材され、「前
立腺の生体検査を楽しめるのは、バーニー・フランク(Barney Frank)だけ
だ」と述べた。彼の同僚議員、マサチューセッツ州選出・民主党のバーニー・
フランクは、公然のゲイであり、「カニンガムは、たいがいの同性愛者以上に、
ホモセクシュアリティに強迫観念を持っているようだ」と応じた。

カニンガムのマンドリンに張られている弦は一本だけ、もっぱら軍産複合体と
その利益である。不法移民、水資源、海洋汚染、農業、公共交通機関、更新性
エネルギー、失業の問題に関しては、彼は実質的になんの記録も残していない。
環境保護とか、教育とかの課題を論じる場合には、効果があるはずの連邦資金
を、ただ削ったり、阻んだりするのみである。第15選挙区の市民たちは、国
家安全保障に関心がないわけではないが、現在の代表の心に浮かぶものよりも
広い範囲の要求と関心を持っている。筆者は、カニンガムの選挙区の一有権者
として、サンディエゴ郡北部の地域社会について、いささかでも実状を知って
いる人物を連邦下院に送りたいと思う。この11月にフランシーヌ・バスビー
が勝利するならば、サンディエゴ郡政界の再編が促され、それは、オレンジ郡
の第46選挙区における、1996年の“B1爆撃機”ボブ・ドーナン(”B-
1″ Bob Dornan)に対するロレッタ・サンチェス(Loretta Sanchez)の勝利に
も匹敵することになるだろう。

[筆者]チャルマーズ・ジョンソン Chalmers Johnson
『日本政策研究所』( http://www.jpri.org )代表。屈指の沖縄米軍基地研
究者。カリフォルニア大学サンディエゴ校、国際関係論教授を退職。
◎既刊『アメリカ帝国への報復』集英社刊
◎新刊『帝国の悲劇』文藝春秋刊
◎TUPアンソロジー掲載論文――
第1集「地球を覆う米軍基地戦略」
第2集(近日発売)「駐留米軍地位協定と沖縄」
——————————————————————
[原文]The Military-Industrial Man
How Local Politics Works in America — or a “Duke” in Every District
by Chalmers Johnson, posted at TomDispatch website, September 14, 2004
http://www.tomdispatch.com/index.mhtml?emx=x&pid=1818
Copyright C2004 Chalmers Johnson TUP配信許諾済み
===================================================================
[翻訳]井上 利男 /TUP