TUP BULLETIN

速報384号 リバーベンドの日記(10月3日) 04年10月7日

投稿日 2004年10月7日

DATE: 2004年10月7日(木) 午後4時01分

サマラ炎上・・・「掃討」されているのは、ただの市民だ


戦火の中のバグダッド、停電の合間をぬって書きつがれる24歳の 女性の日記『リバーベンド・ブログ』。イラクのふつうの人の暮らし、 女性としての思い・・・といっても、家宅捜索、爆撃、爆発、誘拐、 検問が日常、女性は外を出ることもできず、職はなくガソリンの行列 と水汲みにあけくれする毎日。「イラクのアンネ」として世界中で 読まれています。すぐ傍らに、リバーベンドの笑い、怒り、涙、ため 息が感じられるようなこの日記、ぜひ読んでください。(この記事は、 TUPとリバーベンド・プロジェクトの連携によるものです)。 http://www.geocities.jp/riverbendblog/


毎日「掃討」が続いている。「掃討」されているのは、こどもをはじ めただの市民だ。市中での「テロ」も続いている。ここでも犠牲になって いるのはふつうの市民。背後にいるのは誰か? 「もしかしたら・・・」 とリバーは言います。誰でしょう?(TUP/池田真里)


2004年10月3日日曜日

サマラ炎上・・・

はりつめた苦しい日々が続いている。軍がサマラ攻撃を繰り返すのを見、 一家で避難してきた人たちやサマラ方面から来た人々の話を聞くと、戦争 のあいだ感じていたやりきれない怒りがそのまま甦ってくる。死体が臥し 重なるのを目にし、かつて家であった煉瓦や鉄材の下から人々が愛する者 たちの亡骸を引きずりだすのを見守るのは、悪夢の中で見る恐ろしい夢の ようだ。

とどめの一撃として、イラク国民は、米軍広報担当者と我がイラクの新 任政策担当者が攻撃を正当化し、自分たちの言葉に心酔しきった様子で ‘暴徒’だの‘テロリスト’だのとしゃべるのを、見せつけられるのだ。 世界最新の軍事技術によって、毎日毎日何百人もの一般市民が虐殺されて いっているという事実はないかのようにしゃべるのを。

さらに、アラウィの得意げな口上とブッシュの虚(うつ)けた弁舌では まだ足りないとばかりに、パウエルやラムズフェルドのようなやつが“精 密照準攻撃"について説明するのを聞かせられるのだ。精密な攻撃ってい ったい何のこと? サマラのような町やバグダード外縁部のサドル・シテ ィのようなスラムで、どうやれば精密に正確にやれるのか。攻撃されてい るのは、数十年を経たみすぼらしい家ばかりの、狭くて人口稠密な地域だ。 サドル・シティでは、家々は建て込んでいて道は狭い。ミサイルやタンク で、いったいどうやって精密に正確にやるのか。わたしたちはアメリカの “精密兵器(スマート・ウエポン)"って何のことか体験で学んだ。占領 開始からほんの数ヶ月で1万人を超えるイラク人を殺すことができるくら い手際のいい(スマートな)兵器だってこと。

バグダードの爆音は相変わらずだ。数日前、およそ40人の子どもが爆 破され、微塵にされた。子どもたちは、下水処理施設の落成式で米兵が投 げ与えるキャンディを集めていたのだ(注:こんなふうにして、いつも惨 事は起こっている。それだのに、わたしたちは、イラクの下水処理施設が 再建されたといって祝わせられるのだ)。誰に対して、もっとも怒りを向 けるべきか、わからない。軍が参列する式典で子どもたちをはしゃぎ回ら せるのはいい考えだとしたばか者どもと広報担当に対してか、こどもたち を参加させた親たちに対してか。爆破を計画実行した者たちが地獄のただ 中で焼かれんことを。

誰が、数々の爆破事件や車両爆弾の背後にいるのだろうか。ビン・ラデ ィン? ザルカウィ? もしかしたら・・・しかし、単純すぎる。そんな のできすぎだ。ビン・ラディンがワールド・トレード・センターを直撃し たから、アフガニスタンが攻撃された。イラクは占領された。当初、爆破 も軍に対する攻撃もすべて、即“サダム忠誠派"と“バース党支持者"の せいにされた。すべてはサダムが糸をひいている、というわけだ。サダム が捕縛されるや、“イスラム過激派"とアルカーイダの仕業ということに なり、突如ザルカウィが登場してきた。ザルカウィが数ヶ月前に死んでい る、あるいはもともと存在すらしなかったということがわかったら、こん どは誰のせいにするのかしらね。誰であるにしろ、3音節以下の名前の持 ち主に決まってる。それ以上長くちゃ、ブッシュが発音できないでしょ。

1週間前、バグダードのアーダミヤ地区で、イラク治安部隊に4人の男 がつかまった。わたしの知るかぎり、テレビでもインターネットでも報道 されなかった。わたしたちは、全貌を知るある友人から聞いて知ったのだ。 4人の男は、住宅地で爆薬を仕掛けようとしていたところを住民に発見さ れた。一人は逃げ、一人はその場で殺され、二人は拘束され尋問された。 連中はバドル(ファイラク・バドル)旅団、つまりイラク・イスラム革命 最高評議会の民兵組織の一員だと判明した。もし、犯人たちが逃げおおせ て、爆薬が爆発していたら、ザルカウィの仕業ということになっていたか しら? そのとおり。

イタリア人人質の人たちが解放されて、心からほっとした。そして、ま だいわれなく捕らわれている人々も解放されますようにと願っている。イ ラク人の誘拐が続いていて、もう何千人にもなる。帰された人もいるけれ ど、殺された人もいる。それでも、大勢の外国人が誘拐されているのを知 るのは、つらい。家に招いたお客様が近所の猛犬に噛みつかれるのと同じ。 自分はどうしようもなかったとわかっていても、責任を感じてしまうのだ。

でも、ケネス・ビグリーの解放交渉に、イスラム・グループがロンドン からやってきたとき、わたしはそれほど同情してはいなかった。彼が生き て帰されることを本気で願ってはいた。しかし、ファルージャやサマラや サドル・シティやそのほか多くの場所が爆撃されているというときに、多 数あるイスラム・グループはいったい何をしているのだろうか。月に何百 人というイラク人が死んでいっているときに、どうしてたった一人の英国 人に係(かかずら)うのだろう。どうして、外国人がロンドンやワシント ンやニューヨークで爆弾を爆発させたら、‘テロ’なのだろう。外国人が なんら問題のないイラクの町々を爆撃すれば、‘解放’とか‘作戦’なの に。わたしたちは、それほどまでにどうでもいい存在なのか。

リバーによって掲示 午後8時3分

(翻訳:TUP/リバーベンド・プロジェクト:池田真里)

<お知らせ>  「リバーベンドの日記」が、『バグダッド・バーニング、イラク女性の占領 下日記』(アートン、税別1500円)として本になりました。5月22日の 日記まで収録されています。本には、事件、人名、文化などについて丁寧な脚 注がついていて、イラク戦争やイラクの生活について理解する助けにもなると 思います。あまり書店に並んでいないようですので、本について知りたい方、 また購入ご希望の方は、いちど「バグダード・バーニング日本語サイト」(下 記)をご覧になって下さい。 http://www.geocities.jp/riverbendblog/