TUP BULLETIN

速報408号 イラクからの2つの手紙 04年11月19日

投稿日 2004年11月19日

FROM: Schu Sugawara
DATE: 2004年11月19日(金) 午前11時49分

人間でありつづけるということ!再びイラクに向かうマルハーンが呼びかける
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現在イラクでは米軍を主とする占領軍が、ファルージャに総攻撃をかけていま
す。これと同様なファルージャ包囲網作戦がおこなわれた4月に、救援活動の
ためファルージャにむかい、その帰途ムジャヒディンに一時拘束されたオース
トラリア人ドナ・マルハーンが、近いうちにまたイラクに向かう予定です。イ
ラクの現状を憂い、イラク入りの資金集めに奔走する彼女が、二人のメールを
紹介し、命の大切さと米軍の撤退を訴えます。

(福永克紀/TUP)
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ドナ・マルハーン

お友達の皆さんへ今週イラク現地から送られてきたふたつのメッセージを、皆
さんにお伝えしたいと思います。
最初のものは、私が以前バグダッドにいたときに知り合った若いアメリカ人女
性のシーラからのものです。人権問題に取り組む「クリスチャン・ピースメー
カー・チームズ」に属していて、一時帰国のあと先週バクダッドに戻った彼女
からの報告です。
もうひとつのものは、イラク人男性からのもので、友人を通じて私のところに
届きました。ファルージャの戦いに対する彼の思いを伝えています。

「人間どうし」2004年11月 1日シーラ・プロベンチャー クリスチャン・ピー
スメーカー・チームズ からの報告

昨日、バグダッドに戻ったら、ユーシフ夫妻 [*原注]――二人ともバグダッド
生まれでバグダッド育ちのイラク人クリスチャン――が、私にケーキを下さっ
た。白い花模様のトッピングがあるチョコレートケーキに、緑色の字で、「よ
しこそ、バグダッドへ」(訳注:原文は Wellcom、正しくは Welcome)と書か
れていた。「ごめんなさいね、ケーキ屋さんが字をまちがっちゃって」と、ウ
ム・ユーシフ婦人が微笑んで言った。「でも、ともかくあなたに会えて、本当
に『よし』だわ」

不幸なことに、ここでは「よし」といえる状態からかけ離れている。彼女は家
からは一歩も外には出ない、食料品の買出しにさえ行かない。暴力と誘拐の恐
怖が渦巻いているのだ。「一向に良くなりそうには思えないんです、たとえ、
選挙が終わってもね」と彼女は言う。「アメリカが出て行ったら、初めて変わ
るでしょうね。たいがいの人は、米軍がいることに耐えられないんです。もし
米軍が出て行ったら、戦う人などいなくなります。数ヶ月のうちによくなるか
もね」。そして、一息ついてこう続けた。「でも、アメリカ兵やその家族の方
たちのことが心に浮かぶんです。多くの人が殺されました。彼らも人間なんで
す。私たちは、みな、人間なのです」

一ヶ月前、グレーハウンド社(訳注:米国の長距離バス会社名)の長距離バス
発着駅で、私は一人の米兵と出会った。一人の人間としてのジョージ・Hに。
彼はベトナムで戦い、1982年まで兵役についていた。ジョージは心的外傷後ス
トレス傷害の治療を求めて、セントルイス在郷軍人局病院に行くために、次の
バスを待っているところだった。私が彼と出会うことになったのは、彼がイラ
ク問題で別の旅行者と激論を戦わせていたからである。「同じことなんだよ」
と、彼は言いつづけていた。

彼がベトナムで戦っていたのは「17歳か18歳」の頃である。親友が手榴弾で真
っ二つにされるのも見た。しかし、彼にとって一番こたえたのは、自分自身の
手で人を殺してしまった経験であった。

「わたしは、まだほんの子供だったのです」と、彼は語った。「だれも殺した
くはなかった」。彼の顔はゆがみ、泣き出してしまった。「本当に、だれも殺
したくはなかったんだ」いまや、週に3回ほども悪夢にうなされて目がさめる
という。鬱状態の毎日を過ごし、結婚も破綻してしまった。午前7時30分に、
もう酒くさい息をはき、アルコールと悪戦苦闘しているのはまちがいない。彼
の心には何よりも、人を殺してしまった体験が取りついて離れないのだ。「イ
ラクでも、同じなんだよ。同じことなんだよ」彼の肩越しに、バス発着駅の一
画でビデオゲームに興じている少年二人が見える。

「ターゲット:テロ」というゲームだ。その子らが、おもちゃの大きな赤い銃
で画面にねらいを定め、木っ端微塵にしているのは、街の通りのだれとも知れ
ぬテロリストたちである。

人間であるのに。ジョージがベトナム人を殺すことができたのは、彼らを人間
として見るな、「汚いもの」と見ろと教えられたからだ。イラクで誘拐沙汰を
やっている者には、マーガレット・ハッサンらは人間としては見えていない、
道具として、質草としてしか見えていない。ファルージャを攻撃しようとして
いる米兵や戦闘機パイロットが人々を殺せるのは、彼らを「反乱分子」とか民
間人の「付随的損害」としてしか見ないように訓練されているからに他ならな
い。わが国政府も私たち自身でさえも、国軍の人間を「軍隊」(訳注:troops
語源は「群れ」)とか「損耗人員」(訳注:casualties 一般には事故や災
害の死傷者・犠牲者をさす言葉だが、軍では死傷・病気・捕虜・行方不明など
で戦力とならなくなった兵士を「損耗人員」と言う)と表現している。

(訳注:マーガレット・ハッサンは、アイルランド生まれの英国人で、イラク
人男性と結婚しイラク国籍も保有。30年以上もイラクに住み、1990年代前半か
らは医療支援などを行なっている。非政府組織 (NGO)「ケア・インターナショ
ナル」現地代表。10月19日にイラクで拉致された。11月16日にアルジャジーラ
が彼女の殺害場面のビデオを入手したというが、放映はされていない)

「父なる神よ、私たちは自分たちが何をしているか分かっていないのです」ど
うか、私たちがお互いを見ることができるように、お助けください。
見ることができるように、お助けください。

*[原注]: すべての人名は仮名です。
クリスチャン・ピースメーカー・チームズ (CPT)は、歴史的平和教会の流れを
くむ全世界的な暴力廃絶プログラムです。世界中の人命の犠牲をともなう紛争
のある地域に、訓練された平和活動家のチームが行って、そこに住んでいます
。 CPTは、2002年10月以来、イラクで活動を続けています。
CPT について詳しく知りたい方は、www.cpt.org へ。
プロジェクトの写真は、www.cpt.org/gallery へ。
(訳注:シーラ・プロベンチャーからの報告――ここまで)

「奪われるファルージャ」(イラクからの報告)

ファルージャの誰もが、そのすべてが 奪われようとしている女も、子供も、
家族も歴史も、人間性も、平和も

なのに世界は米軍がどんなふうに市民を殺すのかを軍用機がどんなふうに使わ
れるのかをただ見ているだけ

ファルージャに今度はどんな兵器が使われるのかを

世界はまるで死体のように感情も持たずなんらの反応も示さない

ファルージャが何を意味しているのか、わかるだろうか?
それは世界のどこにでもある町のことそれは広島であり、カブールでありファ
ルージャは、人類の暗黒の未来であり民主主義と平和の名における殺戮だ

ファルージャは、ファルージャの民のものにとどまらず今日の世界の象徴とな
っている大きな魚が小さな魚に食らいついている 今の世の

沈黙していれば、次はあなたの街の番が来るだろうあなたの歴史が 次の餌食
となるのだ最新のテクノロジーがいかに安易になんの罪もない子供や、力のな
い人々を殺せるか見ているがいいそうしたら次はあなたたちの番だ

今日の犯罪に目をつぶっているすべての人々は歴史と人類の前に この犯罪の
共犯者となるだろうそして、誰も卑怯者や臆病者を許しはしないだろうシェイ
クスピアが「生きるべきか、死ぬべきか」と言ったように(注:「今こそ『決
断と行動のとき』だ」と言いたいのでしょう)

ファルージャは、泣いてくれることを期待などしていないファルージャは、強
烈な悲鳴を必要としているすべての良心を叩き起こすための悲鳴を(訳注:「
奪われるファルージャ」(イラクからの報告)の訳は、「TUP速報403号
ファルージャを見捨てるな04年11月8日 翻訳 千早/TUP翻訳メン
バー」より)

皆さん、いわゆる有志連合軍が4月と同じようにファルージャ総合病院を掌握
したことが、今夜のニュースで分かりました。これは、今度の戦闘で負傷した
どんなイラク人も、そこでは治療を受けられないということを意味します。

彼らは、自分の街で、床や通りに転がって死ななければならないということで
す、この前と同じように。

ファルージャの町と人々に、行動と共感を集中しましょう。そして、良識と理
性の到来を祈りましょう。

あなたたちの巡礼者

ドナより

追伸:シドニーの方々へ:もし、次の木曜日の募金キャンペーン集会にこられ
るつもりの方がおられたら、正確な人数を知りたいので、今週中に電話くださ
い。さあ、みんな集まろう! (訳注:ドナは数週間後に再びイラクに戻って
活動するための資金集めに取り組んでいる)

追追伸:富くじの賞品がもっと必要です――職場のボスをうまく言いくるめて
賞品になるものを持ってこれる人はいませんか?? (訳注:賞品のあたる富
くじを買わせて資金を集める)

追追追伸:「平和のメッセージ」をありがとう。すばらしい反応です。特にア
メリカの友人たちからのものがすばらしい。あなたもやってみましょう、もっ
と「平和のメッセージ」が messagesofpeace@y… に届くように続けま
しょう。(訳注:ドナは、イラク戦争に反対する人の声をイラクの人たちに知
らせようという企画を進めている。自分の思いや心の丈を、自分や家族の写真
といっしょに[ 英語かアラビヤ語で ]書いて messagesofpeace@y… に
送ると、彼女がバグダッドの仲間に送り、そこで翻訳・印刷して多くのイラク
人に見てもらうという企画)

追追追追伸:「人間でありつづけよ」――マイケル・フランティ

原文 URL: http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/116