TUP BULLETIN

速報410号 リバーベンドの日記(11月16日) 11月20日

投稿日 2004年11月20日

DATE: 2004年11月20日(土) 午後0時54分

吐き気がする――アルジャジーラが放送したビデオが頭を離れない。 =


戦火の中のバグダッド、停電の合間をぬって書きつがれる24歳の 女性の日記『リバーベンド・ブログ』。イラクのふつうの人の暮らし、 女性としての思い・・・といっても、家宅捜索、爆撃、爆発、誘拐、 検問が日常、女性は外を出ることもできず、職はなくガソリンの行列 と水汲みにあけくれする毎日。「イラクのアンネ」として世界中で 読まれています。すぐ傍らに、リバーベンドの笑い、怒り、涙、ため 息が感じられるようなこの日記、ぜひ読んでください。(この記事は、 TUPとリバーベンド・プロジェクトの連携によるものです)。 (TUP/池田真里) http://www.geocities.jp/riverbendblog/


2004年11月16日 火曜日

アメリカの誇り・・・

吐き気がする――文字どおりの意味で。アルジャジーラが放送したビ デオが頭を離れない。 http://story.news.yahoo.com/newstmpl=story&cid=535&ncid=535&e=2&u=/ap/20041116/ap_on_re_mi_ea/fallujah_prisoner_shot

一面にイラク人のからだが散らばったモスク――じっと動かないのは、 お祈りや瞑想をしているのではない。死んでいるのだ――膨張している ように見えるものも・・・若者に寄りかかられた老人・・・そこら中に 脚、足、手、血・・・濁った日の光が窓から射しこんでいる・・・音も ない、動きもない恐ろしいところ。と、突然静けさが破られる。死体に 銃口を向けた警戒の姿勢で、海兵隊員が入ってきた。モスクに粗野なア メリカ兵の声がこだまする。ころがったイラク人についてやりあってい る。死んでる? 生きてる? 私は彼らが何をするだろうかと緊張して 見守った。いかにも海兵隊員らしいおなじみの仕打ちをするものと思っ ていた。ごつい軍靴で、うめくかどうか蹴っとばしてみるんだろう。が、 そんなことではすまなかった。突然、モスクに、銃音が響き渡った。海 兵隊員が、死んでいるように見えた男性を撃ったのだ。続いて、「こん どこそ死んだぞ」と声がした。

「こんどこそ死んだぞ」。 海兵隊員は、歌でも歌っているような口 調で、こともなげに言い捨てた。私は心底ぞっとした。回りの隊員たち は気にもとめなかった。モスクをそ知らぬふうに歩き回って、死体の数 々をひきずり回し始めていた。彼らにとって、何ほどのことでもないと いうことが見て取れた。ごくありふれた出来事だったのだろう。

目の前に繰り広げられた光景の恐ろしさに凍りついて身動きできなか った。イードの3日目だ。やっと家族の顔を揃えることができたところ だった。いとこ、その妻と二人の娘、叔母二人、年老いた叔父も含めて。 E(弟)といとこは、2日間も行列して燃料を手に入れ、そのおかげで 年老いた叔父を、わびしく過ごしていたイードの最後の日に訪ねること ができたのだ。ビデオが終わる頃には、部屋は静まり返っていた。アン カーの声と叔母のすすり泣く声だけが流れていた。いとこの小さな娘は すくみ上がって、スプーンを落とした。顔はショックで硬直し驚きで目 を見張ってテレビに釘づけになっていた。「死んでしまったの? 殺し たの?」 私は、喉につかえたかたまりのようなものを飲み下そうとし ながら、懸命に涙をこらえた。いとこは、娘を見るにしのびなくて、両 の手に顔を突っ伏していた。

「なんと話すべきだっただろうか」 1時間後、二人の娘たちを台所 の祖母の手伝いに行かせてから、いとこが聞いた。「何て言えばいいん だ? 『そうだよ、殺したんだ。アメリカ人たちは、負傷者を殺したん だよ。彼らは、この国を占領していて、人を殺してるんだ。で、私たち はここで食べて飲んでテレビを見てるってわけさ・・・』とでも?」 いとこは頭をふった。「この子たちは、いったいどれだけこんなことを 見たらいいんだ? これ以上、何を見せつけられるんだ?」

アメリカ兵は、負傷者を殺した。信じられない。まったく抵抗するす べのない人間を殺した。まるで疫病持ちの動物か何かのように。以前に もこれと同じことがあったという記事を読んだことがあるし、話にも聞 いていた。負傷した一般市民が道路端に投げ捨てられたり、撃たれたり していると。しかし、テレビで目の当たりにすることは、想像を絶して いた。怒りで発狂しそうだ。

さて、これからどうなる? 撃った海兵隊員一人だけが刑事捜査され る? アブグレイブ刑務所の惨劇のときとまったく同じように? 数人 が責任を負わせられ、真相は、軍お抱えの心理学者、軍事評論家、ペン タゴン当局、広報担当などばか者どものたわごとで葬られ、忘れられる のだろう。結局、記憶に残るとしたらせいぜい、一人の海兵隊員が、イ ラク人「暴徒」を一人銃撃して殺したということだけ。それで話は終わ りだ。

いつものアメリカのやり口だ。暴虐非道な行為は、すべてある一人の 個人をやり玉にあげることによって、もみ消され隠蔽されけりをつけら れる。人々の目から隠されているのは、軍全体がこのような精神病質者 の巣だということだ。この一年というもの、数々の殺人犯、拷問犯、外 国人嫌悪症患者たちが戦車に乗り銃を構えて走り回るのを見てきた。何 が彼らを暴虐非道に駆り立てるのか、はどうでもいい。緊張か、恐怖か、 「敵」だからか、理由はなんとでも。殺人なのだ。私たちは、人殺しに 占領されているのだ。私たちはイラク人として、まったく同じプレッシ ャーにさらされている。私たちは、こういう状況に耐えるような訓練は 受けてこなかったけれど。それだのに、ものわかりのよいお人好しであ れと要求されているばかりか、感謝して当然とされている。私は、うち のめされ怯えながら、吐き気をこらえている。何というべきかわからな い・・・やつらは人間ではないのだ。思いやってやる余地などまったく ない。

それなのに、なぜ、世界の人々は、この世に斬首事件しかないように 騒ぎ立てるのか? どこがどう違うというのだ。もちろん違う。斬首を 行っているのは、過激派で、刑務所で拷問したり負傷した捕虜を撃ち殺 したり、つまりイラク人を虐殺しているのは、「アメリカの誇り」たち だ。本日はおめでとうございます。さぞ誇らしいことでしょう。

Mykeru.comで写真が見られる。 http://www.mykeru.com/weekly/2004_1114_1120.html#111604

ちょっと失礼させて。吐きそう。

午後9時37分 リバー

(翻訳:TUP/リバーベンド・プロジェクト:池田真里)

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