TUP BULLETIN

速報451号 ハワード・ジン:われらが兵士たちを擁護し、彼らを家に帰せ 050128

投稿日 2005年1月28日

FROM: liangr
DATE: 2005年1月28日(金) 午後0時23分

「方向を間違えたとわかったら、速度を倍加すればいい」!?
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昨日(1月26日)届いたイラクのスレイマンからのメールには、

「私たちはみんな家の中でも外でも、病人みたいに見える……私たちにとっ
ては、まるでこの世の終わりが来たようだ。これがどんな選挙だって言うん
だろう?」

とありました。以前はこの選挙に期待していた彼をもう励ます言葉もなく、
胸が締め付けられるようで、返事に困りました。また、メルボルンのピース
・ネットワークのサイトに紹介されていた米兵の本音。

「おかしくて時々笑っちゃうんだけど、テロリストも僕らも望むことは同じ
なんだ。僕らはここにいたくなんかないし、彼らは僕らにここにいてほしく
ないのさ」
(第5海兵隊、第2大隊下士官 ジェイミー・サットン イラク、ラマディに
て)

「もし俺たちがここでやったことの半分でも国でやったとしたら、刑務所行
きだよ。イエス(キリスト)が一体どこで『政府のためなら人を殺してもOK
です』って言ったんだい? そんなことを言う牧師がいたら、絶対信頼でき
ないね。
(匿名の海兵隊軍曹、従軍牧師と話したあとで。イラク、バクバにて)

始まる前から“あんなに”止めたくて、もうすぐ2年にもなろうというのに
いまだに止められない、不当で違法な侵略と占領。両サイドからの嘆きを聞
くたびに、自分の非力がなんとも悔しくてたまりません。

そんな私の言いたいことを、きっぱりと述べた記事をみつけました。

千早/TUP翻訳メンバー

May Earth be Filled with Peace and Happiness!

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われらが兵士たちを擁護し、
彼らを家に帰せ
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ハワード・ジン
マイアミ・ヘラルド紙
2005年1月22日

私たちは、イラクから私たちの軍を引き揚げさせなければいけない。それも
早ければ早いほどいい。理由は簡単だ――イラクに私たちがいることがアメ
リカ人にとってとんだ災難であり、イラクの人々にとってはもっと大きな災
難でしかないからだ。

ワシントンのお偉方の多くが言明する「イラクを侵略するのは間違いだった
が、われわれがあそこに留まることは正しい」というのは奇妙な論理だ。最
近、ニューヨーク・タイムズの社説は現状を正確に要約していた。

「アメリカの侵略開始から21ヶ月ほどたち、合州国の軍隊は、予見し得る将
来に決定的な成功を収められるというなんらの明確な見込みもなく、拡大す
る一方と見られる反乱軍と、実質的にただ一人で闘っている」

だが、とてつもなく不合理な結論として、

「他国が自主的に名乗りを上げずにいる以上、唯一の答は米兵の増強と見ら
れる。それも現在計画されている春までにとどまらず……兵力は新兵補充の
強化によって拡大されることを必要としている」

と述べた。この論理には欠陥がある。「この侵略において、私たちは世界の
中で孤立している。反乱軍は拡大の一途だ。成功の見込みは全くない。だか
らもっと兵士を送ろう」って? 「狂信」を定義すると、こんなぐあいだ
――「方向を間違えたとわかったら、速度を倍加すればいい」。

これらすべての中には「軍の勝利は、成功を作り出す」という、検証されて
いない前提がある。

莫大な兵器を所持するアメリカは、多分最終的にイラクのレジスタンスを壊
滅するかもしれない。でも代価は膨大だ。すでに何万、いや何十万人もが命
を失っている(もし全人類が「生きる権利」を平等に持っていると信じるな
ら、「彼らの」犠牲者と「我々の」犠牲者を区別してはならない)。それは
「成功」だろうか?

1967年に、私たちが今耳にしているのと同じ議論がベトナムからの撤退に関
して行われていた。米国は、その後6年も兵を引き揚げなかった。その間、
戦争は少なくとも100万ものベトナム人と、3万ほどの米軍人を殺したのだ。

「私たちはイラクにとどまらなければならない。そうすれば、あの国に安定
と民主主義をもたらすことができる」と、何度もくり返し言われている。だ
が、もうすぐ2年になろうという侵略と占領のあと、認識できる民主主義の
名に値するものなどはまるで見当たらず、私たちがあの国にもたらしたもの
は混乱と、暴力と、死だけだということは明白ではないのだろうか?

街を破壊し、爆弾を落とし、人々を自分の家から追い出すことで民主主義が
育まれるとでも言うのか?

私たちがいなくなったらどうなるかは、定かではない。しかし、私たちがい
るが故の結果については疑問の余地もなく確かである――両方の側の死者が
増えるだけだ。

イラク市民の死亡者数は、殊に衝撃的である。英国の医学雑誌ランセット
は、この戦争の結果10万人の市民が死に、その多くは子供だったと報告して
いる。アメリカ側の犠牲者数には1350人以上の死者と、何千もの障害を負わ
された兵士――手足を失った者や視覚を失った者――が含まれている。加え
て、何万人もが(戦争の)後遺症として心理的な損傷にさいなまれている。

被占領者たちを助けるフリをしただけの「帝国の占領」という歴史から、私
たちは何も学ばなかったのだろうか?

「偉大な帝国」の最新版である米国は、私たち自身の過去を含めて歴史を忘
れ、多分これまでで一番ひどく自分自身を欺いているのだ。その私たちの歴
史とは、50年に及ぶフィリピンの占領、ハイチの長期的占領(1915年〜1934
年)、またドミニカ共和国の(1916年〜1924年)。そして東南アジアにおけ
る軍事介入やニカラグア、エル・サルバドルとグアテマラでくり返された介
入だ。

私たちの軍隊がイラクにいることは、私たちをより安全にするのではなく、
より危険にしている。中東の人々を怒らせ、それによってテロの危険を拡大
させている。ブッシュ大統領が主張した「ここで闘うより、向こうで闘う」
どころかこの占領は、激怒した侵入者たちがここアメリカで私たちを攻撃す
る可能性を増大させているのだ。

撤退にあたり、スンニ、シーアとクルドの間の調停役となる、主にアラブか
らの国際的な交渉チームを組織させ、それぞれのグループにある程度の自治
を持たせる連邦主義を達成すれば、平和と安定の可能性を改善することがで
きるだろう。サダム・フセインと米国占領軍の双方から解放されたイラクの
人々の、「自分たちの未来を築いていく能力」を決して過小評価すべきでは
ない。

しかし、まず第一歩は「サポートする(支援、擁護する)」という言葉が持
つ本当の意味で兵士たちを支えること――彼らの命を、四肢を守り、そして
正気でいられるように保護するのだ。彼らを家に帰すことによって。

(翻訳・千早/TUP)

[ハワード・ジンは、ベスト・セラー『民衆のアメリカ史』の著者]

<筆者より、TUP速報配信許諾済み>

原文URL:
http://www.miami.com/mld/miamiherald/news/opinion/10705669.htm?1c