DATE: 2005年5月17日(火) 午後11時37分
パンタ笛吹の帝国現地レポート(29)
アメリカの商業ラジオ局のトーク番組は、ブッシュ大統領を讃えて、リベ ラル派をこきおろす番組が大部分を占めています。 ぼくの住んでいるボルダーには、市民がスポンサーになっているすばらし い公共ラジオ局KGNUがあるのですが、商業ラジオの分野でも、リベラル な局ができて、気を吐いています。
このプログレッシブなラジオ局のキャッチフレーズは、「やつらが自分た ちのトーク番組を持っているのだから、こっちもやってやろう」です。 中でも人気番組は、反戦コメディアンが主役の「アル・フランケン・ショ ー」で、胸のすくようなネオコン批判のジョークの連発は、ついつい笑って しまいます。
ところが、これほどブッシュ政権を批判するラジオ局でも、ひんぱんに流 されるのが、米軍志願兵のコマーシャルなんです。 よほど兵士がたりない のでしょう。
(パンタ笛吹/TUP)
★テロ警報は、ブッシュ政権の思い通りに
ブッシュ政権は、テロリストによる攻撃の危険性を示す警戒レベルを、と るに足らない証拠しかないのに、上げたり下げたりしていたことが、国土安 全保障局の元長官、トム・リッジの発言で明らかになった。
2月1日にすでに辞職したリッジ元長官は、こう語った。 「政府側が警戒レベルを、より高い危険度を示すオレンジ色にしたいと要請 してきた時、私は、そんな危険性が増した証拠などないからその必要はない と断ったが、そのたびに政府に押しきられ、警戒度を上げざるを得なかった。
ある時期など、ある高官たちは、テロ警戒レベルを上げようと、精力的に 圧力をかけてきた。私たちはよく『また何のために?』と言いあったものだ」
ミミ・ホール USAトゥディ紙 5月10日 http://www.usatoday.com/news/washington/2005-05-10-ridge-alerts_x.htm
★人類を4500000000年間、苦しめ続ける犯罪
イラク戦争で「最もうまく隠された秘密」といわれるのが、何百トンにも およぶ違法な劣化ウラン弾使用の事実である。 リバプール大学の放射線学の専門家、クリス・バスビー博士は、劣化ウラ ン弾による被害はイラクだけに留まらず、世界全体を苦しめる、と警鐘を鳴 らす。
「私は恐れおののいています。イラク人や米英の兵士やジャーナリストは、 最も恐ろしい被爆に身をさらしているのですから。 劣化ウラン弾による放 射能は、文字通り、地球上のどこにでも到達します。その放射能は、世界中 のおおぜいの子どもたちの命をうばうことでしょう。
われわれ学者はみんな、放射能がどれだけ遠くまで流れてゆくか知ってい ます。サハラ砂漠の赤い砂が、ときどきイギリスにいるあなたの車の上に積 もるように、チェルノブイリの放射能は、ウェールズまで飛んで来ました。
劣化ウラン弾は、人々を死に至らしめるさまざまな粒子を放出します。 それらの大量の放射性粒子は、砂嵐に巻き上げられたり、貿易風に運ばれた りして世界中の隅から隅まで、安全な場所は一つもないくらいに散らばるの です。
それらの放射性粒子は、ガンや脳腫瘍や腎臓病や先天性奇形などを引き起 こし、これから何世紀にもわたって、何百万人という人々を殺していくので す。 というのは、劣化ウラン弾による毒性放射能は、45億年にわたって、 人類に害を及ぼし続けるからです」
ジェイムス・デンバー ヴィヴ・ル・カナダ紙 4月29日 http://www.vivelecanada.ca/article.php/20050429121615724
★バグダッドでは、タクシー料金が350万円
去年の11月、警備コンサルタントのディビッド・コーンが、バグダッド から空港までタクシーに乗ったが、たったの10キロ乗っただけなのに、 60万円(1ドルを百円で計算)もチャージされた。 ところが今年に入って、タクシー代がもっと値上がりした。ニューヨーク タイムズ紙の現地駐在員、デクスター・フィルキンズは、米国NBCテレビ のインタビューにこう答えた。
「バグダッドの中心から空港まで通じる道路は、『死の道』と呼ばれていま す。全長が約10キロしかないのですが、道路わきに仕掛けられた爆弾や、 武装勢力の攻撃が恐いので、普通のタクシーは行ってくれません。
でもバグダッドには空港への送迎を専門にするタクシー会社があるんです。 防弾仕様の車で、警備員もいっしょに乗ってくれるんですが、片道で350 万円もするんです。 飛行機に乗り遅れたりすると、帰りの分もチャージされるので、700万 円かかるわけです」
アリ・バーマン ザ・ネイション 5月2日 http://www.thenation.com/blogs/outrage?bid=13%C0%03d=2361
★立ち上がった132人の市長たち
ホワイトハウス環境問題審議会のマイケル・マーチン広報室長は、もし米 国が京都議定書に従ったら、500万人が失業し、ガソリン代がもっとあが るだろうと言う。
ブッシュ政権のそんな態度に業を煮やしたロサンジェルスやニューヨーク などの、132の市長たちが、自分たちの町だけでも京都議定書にそって、 2012年までに、二酸化炭素レベルを1990年の7%以下まで減らそう と誓い合った。 35州にまたがるこの132都市の人口を合計すると、2900万人だ。
ハワイのマウイ郡のアラン・アラカワ市長は、ブッシュ政権が、「地球温暖 化は人為的な活動が引き起こしている」という科学的なコンセンサスをなかな か認めようとしないので、自分は共和党員だけど、132の市長の仲間入りを したという。
ネブラスカ州ベルビュー市のジェフリー・ライアン市長もまた共和党員で、 ブッシュ大統領の熱烈なサポーターだ。しかし彼は、ブッシュ大統領は地球温 暖化への対応を、テロとの戦いと同じような熱心さで取り組むべきだと考えて いる。
「地球温暖化が、ほんの少しでも脅威になる可能性があるかどうか、自分自身 に尋ねてみるべきだ。もしその答えがイエスなら、今から行動を始めなくては ね」とライアン市長は語った。
ニューヨーク・タイムズ 5月14日 http://www.commondreams.org/headlines05/0514-02.htm
★兵隊になり手が足りない
イラクとアフガニスタンの戦争が長びくにつれ、米陸軍に志願する若者の 数が、急激に減っている。4月の募集では、募集目標に2800人も足りず 目標の58%しか集まらなかった。
この絶望的な状況を改善するため、陸軍は入隊祝い金を80万円から10 0万円に、大学の奨学金を500万円から700万円に増額した。しかし、 入隊希望者の親たちは、自分の子供を戦場に行かせたくないので、志願しな いように説得している。 新兵勧誘の戦いは、きびしさを増すばかりだ。
イラクに駐留している米兵の4割以上は陸軍の予備役か州兵だ。軍の高官 は、「この分だと、今年の終わりには、新しくイラクに送る十分に訓練され た兵士が枯渇してしまうだろう」と警告を発している。
ジム・ミクラズスキー NBCニュース 5月10日 http://msnbc.msn.com/id/7802712/
★地獄の黙示録を避けるために・・・
今日、アメリカの持っている核兵器は、どれくらい危ないのだろうか? 米軍の核弾頭は、平均して、広島に落とされた原爆の20倍の破壊力を持っ ている。 そして、8000基の現役で使用可能な核弾頭のうち、2000基が緊急 警戒態勢にあり、15分の警告の後に発射できる準備ができている。
では実際に、これらの核兵器がどのように使用されるのだろうか? 私はヴェトナム戦争時代に国防長官を7年間務めたが、それ以来、今まで、 米政府は一度も、「最初に発射する権利」を捨ててはいない。
たった一人の人間(米大統領)の決心一つで、相手が核兵器を持とうが持 つまいが、それらの核ミサイルを発射できるのだ。大統領が、核兵器の使用 が、わが国の利益につながると信じるだけでいいわけだ。
冷戦がすでに終わったのに、これ以上、核兵器を外交や政治の道具として 使うのは、人道に反するし、あまりにも危険すぎる。それは、悲惨なこの世 の終わりを早めるだけなのだ。
ロバート・マクナマラ元国防長官 フォーリン・ポリシー誌5・6月号 http://www.foreignpolicy.com/story/cms.php?story_id=2829
★貧乏人はいつまでたっても貧乏人
アメリカ最大の小売デパート、ウォール・マートでは、毎年、従業員の4 割が入れ替わる。40%の従業員が辞めるか解雇されるかしているからだ。 従業員の賃金は、とても安い。平均で、年収がたったの170万円だ。
ではウォール・マートの社長、スコット・リーの去年の年収はどれくらい だったかというと、17億5千万円なのである。この金額からすると、リー 社長は、2週間ごとに、平均従業員の「一生分の給料」をもらっていること になる。
ポール・クルーグマン ニューヨーク・タイムズ紙 5月13日 http://www.nytimes.com/2005/05/13/opinion/13krugman.html?hp
★お金持ちは、ますます大金持ちに
1973年・・・大会社の社長の年収は、社員の平均年収の45倍だった。
1991年・・・社長の年収は、社員の平均年収の140倍に増えた。
2004年・・・社長の年収は、ついに社員の年収の300倍になった。
ちなみに、ヤフーのテリー・シーメル社長の去年の年収は、230億円だ った。 1週間に5日間働いたとして、週給4億円以上である。
プロヴィデンス・ジャーナル紙 5月10日 http://www.projo.com/opinion/contributors/content projo_20050510_ctsklar.200d6ba.html
★床屋に行くのは、決死のアドベンチャー
イラクでは、床屋が客の髭を剃ったというだけで、イスラム原理主義者た ちから殺されたり殴られたり、店を閉鎖に追い込まれたりしている。 以前は床屋の主人だったモハメッド・ハッサンは、自分の経験をこう語っ てくれた。
「彼らから、客の髭を剃るなと警告された時は、最初は本気にしていなかっ たんです。ところがある日、6人組がトラックに乗ってやってきて、私をさ らっていきました。 彼らは12日間にわたって私を苦しめ、足と腕をへし折った後、やっと解 放してくれました。『もしヒゲを剃ったら、今度は手を切り刻むぞ』と脅さ れたので、仕方なく床屋を廃業しました」
イスラム原理主義では、ヒゲを剃るどころか、トリムするだけでも宗旨に 反する罪なのだ。一ヶ月くらい前から、バグダッドのほとんどの床屋に、 「ひげ剃りお断り」の看板が掲げられるようになった。
パトリック・コバーン インデペンデント紙 5月13日 http://news.independent.co.uk/low_res/story.jsp?story=637955&host=3&dir=75
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帝国現地レポート(28)で、「自爆テロ」と訳した部分が数カ所あり ましたが、「自爆攻撃」の方が適切な用語使いですので、ここに訂正して、 お詫びいたします。
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