DATE: 2005年5月22日(日) 午後10時31分
パンタ笛吹の帝国現地レポート(32)
5月19日、今日はスターウォーズのシリーズ最終作「シスの復讐」の公 開日です。 運良く前売りチケットが手に入ったぼくは、さっそく見てきま した。
アメリカ中の映画館が「お祭り騒ぎ」でごったがえしているとのこと。 ぼくが行ったシネコンも、24スクリーンのうち、7つのスクリーンでスタ ーウォーズを上映しており、大人も子どもも興奮のるつぼでした。
映画は、期待を何倍も上回るメチャ面白さでしたが、米空軍がいよいよ 現実のスターウォーズ、宇宙軍事独占に乗り出したニュースを翻訳した直後 だったので、その不気味な符合に、宇宙船地球号の平和を祈らずにはいられ ませんでした。
(パンタ笛吹/TUP)
★ブッシュ大統領は、ダース・ベーダーか?
闇の帝王が引き起こす戦争が、スターウォーズ「シスの復讐」の主な筋書 だ。 カンヌ映画祭の聴衆は、そのストーリーをブッシュ大統領のテロとの 戦いやイラク侵攻と比べながら受けとめている。 映画の中のセリフを二つ紹介すると・・・
「満場の割れんばかりの喝采の中で、(開戦が決まり)こうして自由が死ん でいくのです」・・・パドメ・アミダーラ
アナキン(後のダースベーダー)が、オビワン・ケノービに言ったセリフ 「もしあなたが私の味方でなかったら、あなたは私の敵だ」
・・・この言葉は、ブッシュ大統領が9/11の後に世界に向けて発した最 後通告、「あなたがわが国の味方でなかったら、あなたはテロリストの味方 なのだ」に共通している。
ジョージ・ルーカス監督は、この映画のシナリオを、ずうっと以前に書い たという。 カンヌ映画祭でのインタビューに、ルーカス監督は笑いながら こう答えた。
「私がこの映画の筋書きを考えているころは、イラク戦争はまだなかったん です。 当時、米政府はサダム・フセインに大量破壊兵器を与え、彼を援助 していました。あのころ、サダムはアメリカの敵ではなかったのです。
米政府はイランをやっつけたかったので、サダムを利用して代理戦争をし てもらっていたのです。ちょうどベトナム戦争の時のようにね。 それにしても、いまわれわれがイラクでやっていることと、以前ベトナム でやらかしたことが、信じられないほど類似しています。
このスターウォーズの映画のような結末が、アメリカで現実にならないよ うに望むばかりです。 たぶんこの映画は、人々が、いま米国が置かれている状況に『目覚める』 きっかけになることでしょう」
デイビッド・ジャーメイン AP通信 5月17日 http://www.commondreams.org/headlines05/0517-07.htm
★宇宙もアメリカがひとりじめ
米空軍は、ブッシュ大統領に、宇宙空間を防衛や攻撃目的で軍事利用する ことを認める国家安全保障令を承認するよう要求した。
米空軍はこの4月に、他国の軍事用偵察衛星や通信衛星を妨害するための 能力を持った小型実験衛星(XSS―11)をすでに発射している。
宇宙の軍事利用には巨額の費用がかかる問題に関して、ロード将軍は去年 9月、空軍の会議で次のように語った。 「そんな予算の壁くらいで、空軍の宇宙進出計画をはばむべきではない。 軍事的な優勢は生まれつき備わっているものではなく、それはわれわれの運 命的な目標なのだ。 宇宙の軍事的優勢に向かって毎日努力することがわれわれの使命であり、 宇宙の支配こそがわが空軍の未来の姿なのだ」
それに対して、政策分析を行う国防情報センターの副所長、テレサ・ヒッ チェンズは先月開かれた外交委員会でこう反論した。
「国際法や国際条約では、宇宙空間は世界共通の自由使用区域になっていま す。他国から殺人衛星(デス・スター)と見られるような宇宙兵器を米国が 開発するのを、すんなり受け入れる国はありません。
もし中国が、地球上のどのターゲットに対しても、90分以内に攻撃でき る殺人衛星を開発して、四六時中、軌道上を巡らせるようになったら、米国 はとてもじゃないけど、いい気持ちはしないと思うのです」
ティム・ワイナー ニューヨークタイムズ紙 5月18日 http://www.nytimes.com/2005/05/18/business/18space.html?th&emc=th
★石油ナショナリズムの時代が来た
もう何ヶ月もの間、日本とロシアの政府高官はシベリアからサハリン島ま で続くパイプラインの建設を協議してきた。 しかし、もしパイプラインを 中国側にひく案を中ロが合意すれば、いわゆるサハリン・パイプライン構想 は放棄される。
日本は、イランとの天然ガス開発協議を、アメリカの圧力によりうち切ら なくてはならなかったので、サハリン構想の断念はより飲み込みがたい痛手 となるだろう。 米国の日本への圧力の理由は簡単だ。イランの核兵器開発疑惑をめぐって 論争が行われている最中なので、米政府は日本に「裏切りと見られるような ゲームはしない方がいい」と分からせたのだ。
日本がイランのガス油田開発から手を引いたので、そこには空白が生じた。 その空白に大急ぎで駆けつけたのがインドなのである。 数ヶ月前、イランとインドは両国間に天然ガスパイプラインを建設する計 画を発表した。そのパイプラインは、なんとインドの数世代にわたる敵、パ キスタン国内を通して作られるのだ。
ル・ドヴォワール 5月16日 http://www.ledevoir.com/2005/05/16/81901.html
★背に腹はかえられない、印パ・イランの皮算用
インドもまたイランから石油や天然ガスを得たがっている。 この1月、インド・ガス公団は年間七百五十万トンにのぼるLNG(液体天 然ガス)をイランからインドに移送する30年契約を、イラン国営ガス輸出 公社と結んだ。 500億ドルの価値があると見積もられているこの契約には、イランの天 然ガス田開発へのインドの参加もともなっている。
注目すべきは、両国が30億ドルをかけて建設しようと話し合われている 天然ガス・パイプラインが、カシミール紛争などで長年敵対国にあるパキス タンを通過することだ。 もしそれが完成すれば、パキスタンは自国領土通過料として年間2億〜5 億ドルを受け取ることになる。
パキスタンのショーカ・アジズ首相は、「このガスパイプラインは、イラ ンとインドとパキスタンの、3国すべてが恩恵にあずかるすばらしい提案だ」 と宣言した。
この魅力的なパイプライン計画に対して、インドを訪問したライス米国務 長官は、ニューデリーでこう釘をさした。 「われわれはインド政府に、イランとのパイプライン建設に対して懸念を抱 いていると伝えた」
実際、米政府がイランに経済的利益をもたらすどんな計画も支持しないこ とは、つとに知られている。 しかしそれでも、インドはこのパイプライン 計画を中止するつもりはない。
マイケル・クレアー トム・ディスパッチ 4月11日 http://www.tomdispatch.com/index.mhtml?pid=2312_
(英語原文)
India is also keen to obtain oil and gas from Iran. In January, the Gas Authority of India Ltd. (GAIL) signed a 30-year deal with the National Iranian Gas Export Corp. for the transfer of as much as 7.5 million tons of LNG to India per year. The deal, worth an estimated $50 billion, will also entail Indian involvement in the development of Iranian gas fields. Even more noteworthy, Indian and Pakistani officials are discussing the construction of a $3 billion natural gas pipeline from Iran to India via Pakistan ツャ an extraordinary step for two long-term adversaries. If completed, the pipeline would provide both countries with a substantial supply of gas and allow Pakistan to reap $200-$500 million per year in transit fees. "The gas pipeline is a win-win proposition for Iran, India, and Pakistan," Pakistani Prime Minister Shaukat Aziz declared in January.
Despite the pipeline’s obvious attractiveness as an incentive for reconciliation between India and Pakistan — nuclear powers that have fought three wars over Kashmir since 1947 and remain deadlocked over the future status of that troubled territory — the project was condemned by Secretary of State Condoleezza Rice during a recent trip to India. "We have communicated to the Indian government our concerns about the gas pipeline cooperation between Iran and India," she said on March 16 after meeting with Indian Foreign Minister Natwar Singh in New Delhi. The administration has, in fact, proved unwilling to back any project that offers an economic benefit to Iran. This has not, however, deterred India from proceeding with the pipeline.
★遅かれ早かれ、イランに攻め入るのか?
米国がイラン攻撃の準備を整えるなかで、たしかなことがひとつある。 それは、ブッシュ政権は、イランと戦争を始める理由として「石油」という 言葉をぜったいに持ち出さないということだ。
イラク戦争と同じように「大量破壊兵器」がイラン侵略を正当化する主な 理由となるだろう。 ブッシュ大統領が2003年に行った演説・・・ 「われわれはイラクによる核兵器の製造を、指をくわえて見のがすわけには いかない」 ・・・このイラクの部分を、イランに替えればいいわけだ。
イラン攻撃の準備計画は、間違いなく、米国防省高官たちの優先順位の上 位に位置する。 この1月、著名ジャーナリストのセイモア・ハーシュは、雑誌ニューヨー カーにこんなすっぱ抜きの記事を掲載した。
「国防総省はイラン国内で秘密偵察活動を行ってきた。その目的は、将来 (米軍の)空爆やミサイル攻撃対象となるようなイランの核やミサイル関連 施設に関する情報だと思われる。 私はインタビューした軍高官から、『次の戦略上のターゲットは イランだ』 と繰り返し聞かされた」
この記事のすぐ後、ワシントンポスト紙は次のような秘密を暴露した。 「米国防省は、イラン上空に無人偵察機を飛ばして、軍事基地の位置を確認 したり、イランの対空防戦能力をテストしている。 このような空からのスパイ行為は、米軍が遅かれ早かれ空爆を始める時に する定番の準備行動だ」
また、「米国が裏でサポートして、イスラエルがイランのミサイル基地を 攻撃する計画が練られている」という報道もいくつかなされた。
これらの報道に対して、イラン政府高官のモフセン・レザイは、3月1日 こう警告を発した。 「もしイランが攻撃されたなら、それはサウジアラビアやクウェート、いや 中東の石油全体に被害を及ぼすのと同義だ」
そんな警告を、米国防省は真摯に受けとめている。国防情報局局長のジャ コビー副大将は、2月16日に行われた上院諜報特別委員会でこう証言した。
「イラン軍は主に空軍と海軍、そして陸上部隊の力を合わせて、ホルムズ海 峡を一時的に封鎖する能力を持っていると、われわれは判断しています」
(訳者注:ホルムズ海峡・・・世界の石油輸出の40%は、この狭い海峡を 航行するタンカーによって運ばれる)
マイケル・クレアー トム・ディスパッチ 4月11日 http://www.tomdispatch.com/index.mhtml?pid=2312_
★コーランに放尿、その上に排便
グアンタナモ米軍基地での囚人生活を生きのび、釈放された5人のモロッ コ人のうちの一人が、モハメッド・マズースだ。 彼はインタビューに答え、こう証言した。
「いちばんひどかったのは、米兵が犯したコーラン冒涜行為の数々です。 彼らは私たち囚人の前で、コーランのページを引きちぎったり、ハサミで切 り刻んだりし、その上に小便をかけたりました。 ある時は、彼らはコーランに排便し、それを私たちの顔に塗りたくったこ ともあります。
ある日、赤十字の職員が訪問していたのに、米兵は監獄にあるすべてのコ ーランを寄せ集めて、私たちの目の前で破り捨てました。 それらに抗議すると、私たちはひどい拷問を受けました。こんな時のため にうろついていた軍用犬に、囚人たちを激しく噛ませたのです。 私たちはみな、気が狂いそうでした。
ケイジプリズナーズ・ドットコム 2005年4月11日 http://www.cageprisoners.com/print.php?id=6862
(参考ニュース)
マクレラン報道官は17日、米誌ニューズウィークに対し「何が起こり、 どうして間違ったのかを説明すべきだ」と述べ、記事によって生じた被害、 特にイスラム圏内での対米イメージ回復に役立つ検証報道をすべきだと要求 した。 政府高官が記事撤回後の措置にまで言及するのは異例。
アサヒ・ドットコム 5月18日 http://www.asahi.com/international/update/0518/006.html
★むやみに発砲したがる米兵に、英将校が苦言
イラク駐留の英軍高官は、「米軍が採用している戦術的行動のいくつかは、 英軍の指揮官が許可しないような荒々しいものだ」と、苦情を述べた。
「米部隊は、まず撃て、訊問はあと、という態度を取っている。それがどん な小さな危険でも、彼らは自分が危ない目にはあいたくないのだ。
私は米兵に『そんな乱暴な戦術をとっていると、市民から嫌われて、武装 闘争をこれから先10年も延ばすことになる』と忠告し、英国式のもっとお だやかな交戦規則を説明した。しかし不幸なことに、米兵たちはただ笑った だけだった」
英国 テレグラフ紙 5月15日 http://news.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2005/05/15/wirq15.xml