FROM: gitani
DATE: 2005年8月20日(土) 午後0時10分
イラクの次はイラン戦争-21世紀になってもアメリカ主導の争いは続いている
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現在起きているイラク戦争の背後には石油利権獲得、経済のグローバ
ル化(多国籍企業進出)などがあり、多くの犠牲者を出していること
はもはや周知の事実となっていますが、これらは民主主義国家が行っ
ていることです。私たちはその民主主義の意味をもう一度考え直し、
行動する必要があります。イギリス人記者のダン・プレッシュ氏はこの
記事のなかで、イラン戦争に絡む先進諸国の利害性とイギリスの位置
について私たちに示してくれています。
(TUP/ 小林)
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ブッシュはイランとの戦争でどのように利益を得るか
アメリカには攻撃する能力も理由もある-英国が巻き込まれないと見
るのは無理 --ダン・プレッシュ
ガーディアン2005年8月15日付(掲載サイト:コモン・ドリームス)
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ブッシュ大統領はイランの核兵器製造防止の名目で軍事的な行動をと
る準備があるということをわれわれに印象付けている。先週末のイス
ラエルテレビで、イラン政府が国際的な要求に応じない場合のために
「あらゆる選択肢を検討している」と彼が明言したのだ。
ブッシュの政府高官たちはEUと国連のイランに対する外交術を密か
にあざけっている。ブッシュが2002年にイランを”悪の枢軸”呼
ばわりして以来、アメリカの政府高官たちは戦争の準備を優先して進
めてきた。これはもう一度、英国の支援を受ける戦争になりそうであ
る。
もっともらしい筋立てとしては、国際社会がイランの説得に失敗した
からには米英が行動しなければならず、これはイスラエルによる攻撃
を避けるための責任ある行動になる、といったところだろう。一般常
識から見るなら、たとえ外交が失敗したとしても、アメリカはイラク
で泥沼にはまったのでイランと対戦することはできないと思うだろう。
しかし、そう考えるとブッシュ政権の手腕と意向を誤解してしまうこ
とになる。
アメリカが攻撃すれば、大量破壊兵器の関連が疑われている場所のみ
に標的が限定されないだろうし、また、国土を占領するための地上軍
の侵攻に踏み切るとまでは言えないようだ。おそらく空襲攻撃では軍
事力や政権、そして(石油関連を除く)経済基盤の破壊が目論まれる
だろう。それにより、国家としての機能を失ったイランはさらに内戦
の勃発によって弱体化することとなるだろう。イラン政府は、北西部
に多く居住しているアゼリー人のうちの分離主義勢力をアメリカが支
援していると主張し、イラン国内のクルド人居住地域における戦闘も
増加している。
イランへの攻撃によって起こるであろう悪影響は、よく知られている。
それはテロの拡大、イラクのシーア派の暴動、ヒズボッラー(イスラ
ム教徒の政治・軍事組織)とイランによるイスラエルへの攻撃、ペル
シャ湾沿岸の石油設備への攻撃と原油価格高騰による景気後退である。
主戦論者たちは、もしイランの核開発が許可されるのなら、アメリカ・
イスラエル両国の権益に対するこれらの脅威のすべてがさらに増大す
ると言いたてている。この論理でいけば、どんな悪影響を持ち出して
も、即イランへ攻撃しなければという口実に転化する-イランが機能
不全になれば、これらの脅威は少なくなる、というわけだ。
イラク情勢が選挙の行方の鍵を握る。これは-著述家のボブ・ウッド
ワードが言うように、ひょっとすれば-チェイニーを大統領に据えて
今後10年間も権力を維持しようというブッシュ一派の目論見に対す
る脅威である。来春のイランに対する戦争がブッシュ・チームの中間
選挙の勝利と、現在はイラクを巡って部分的な反抗の動きがある共和
党内部の指導力の維持をもたらすであろう。
一部の人たちがじっさいに戦争が勃発するか疑う理由になっているの
が、原油価格の高騰と後に続く景気後退である。しかし、イランの石
油は、アメリカの長期のライバルである中国に供給が決まっている。
だがブッシュ・チームは、ロナルド・レーガンがかつて1980年代
初期の景気後退を「悪の帝国」というキャッチコピーで乗り切ったこ
とを熟知している。
アメリカが自分たちの思い通りに突っ走り、あれこれ言い立てても、
トニー・ブレアはイラク戦争の物議の再来を望まないので、英国は巻
き込まれないだろう。しかし英国軍はすでに戦域に駐屯していて、バ
スラ周辺で国境をはさんでイランと向かい合っているし、イランの対
アフガン前線に近接して展開するNATO軍をまもなく主導すること
となっている。英国の領地であるディエゴ・ガルシア島は基幹的な米
軍の基地である。
英国がアメリカの動きに関与しないとは考えにくい。首相は、イラン
が大量破壊兵器を保持しているという考えをかつてのイラクの疑惑の
ように支援するわけにいかない、という意向を明らかに示している。
イランの場合にはより実質的な証拠がある。イラン政府には核エネル
ギーの開発計画が確かにあり、これまでその事実に嘘をついてきたこ
とである。とにかく、ブレアはこれからもイギリスが血の犠牲をアメ
リカに捧げ続けなければ、米国はトライデント潜水艦の貴重な後継艦
を譲渡してくれそうにないとおそらく気づいている。保守党の獲得票
が申し分ない「国民の結束」を示すことになり、労働党の造反者を駆
逐できるかもしれない。
そのような憂鬱なシナリオを阻止するためには、新しい切り口が必要
である。大量破壊兵器にまつわるブレアとブッシュの取り組みが、十
分すぎることではなく少なすぎることに問題があるのだ。欧米の核兵
器はさておき、インドやパキスタン、イスラエルやエジプトには言及
せずになぜイランなのか?ゴルバチョフ・レーガン時代、政治的な意
志により、多様な型の大量破壊兵器を今なお有効に規制している条約
や協定が生みだされた。もしそれらが改訂されるなら、そうした条約
や協定は世界的に規制を設けるための基礎になるだろう。イランを個
別の問題として対処してはいけないのだ。
イランに対する論争が明らかになるにつれ、われわれはもはや疑いな
く内閣統合情報委員会(JIC)について知ることになるだろう。わ
れわれはJICの会議に当然のように参加しているアメリカ政府情報
高官たちを取り払うため、同委員会の元委員長であるサー・ポール・
レバーの忠告に従うべきである。レバーが言うことに、この方法での
み、英国人が自分自身で熟慮した考えをもつことができる。
われわれの国会議員たちがイランに対する攻撃を支持する権限を握っ
ているのではないことをハッキリさせる必要があるのだ。選挙キャン
ペーン中、イランが攻撃されるのではないかという疑念を、政府はす
べてバカバカしいデマとして退けた。ブレアがブッシュに対し、イギ
リスはイランの核兵器を「どんなことがあろうとも」未然に防ぐつも
りだと話していたとしても、われわれはそれに負けずに、ただ選挙の
結果のみが攻撃を決定する権限を与えられるのだということをはっき
りさせなければならない。
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[筆者]ダン・プレッシュは”The Beauty Queen’s Guide to World P
eace-Money,Power and Mayhem in the Twenty-First Century ” の著
者。
[原文]How Bush Would Gain from War with Iran
By Dan Plesch
CommonDreams,
http://www.commondreams.org/views05/0815-33.htm
C 2005 Guardian 著者によるTUP配信許諾済み
(翻訳:小林祐子/TUP)