DATE: 2005年8月29日(月) 午前2時43分
息子の命を奪った崇高な使命とは何なのか? 全米を揺るがすシーハン No5
オーストラリア人女性ドナマルハーンは、2003年春イラクでの「人間の盾」 に参加し、2004年春には米軍包囲下のファルージャに入り、その帰路地元レジ スタンスによる拘束を経験、2004年冬から翌年春にかけてイラク・パレスチナ を旅して現地から報告してくれました。そのドナが、今度はアメリカから、 2004年4月にバグダッドのサドルシティで戦死した米兵の母親、シンディ・ シーハンのことを報告しています。シーハンはなぜ息子が死んだか答えて欲し いと、今月6日にテキサス州クロフォードのブッシュ大統領私邸に向かい、 ブッシュの牧場の外で警察に止められ、ならば大統領が会うまで帰らないと キャンプを張り続けて面会を要求しています。全米から支援者が続々とかけつ けるなか、日本のマスコミも報道するようになりました。ドナからの報告第5 弾です。 (翻訳:福永克紀/TUP)
クロフォード、キャンプケーシーの生活 ドナ・マルハーン 2005年8月17日
お友達の皆さんへ
日差しの強いテキサスからこんにちは! 皆さんにお伝えしたい話はいっぱい ありますが、まず最初にこの日誌/ブログのようなものを送って、ここクロ フォードとキャンプケーシーでの生活がどんなものか知ってもらいたいと思っ て……
これはものすごく意義深い出来事です、それに暑くて埃っぽいけれども、私は ここに来て完全にワクワクしているのは間違いありません!
クロフォードの町
状況説明――クロフォードはダラスの南方、テキサス農業地帯のこぎれいな所 に位置する小さな田舎町です。最も近い都市はウェイコで、そこは私にとって はカルト集団、CIA、多くの人の悲劇的な焼死を暗示する町です。ですから、 ウェイコの町を車で通り食料品店に立ち寄った時はそれ自体で不思議な感覚 だったと認めなければなりません! でも、ウェイコからクロフォードへのド ライブはとても素敵でした――みずみずしく茂った緑の草に覆われた緩やかな 起伏に、食肉用の肥えた蓄牛がいて木々が群立つ農耕地です。この地域は牛の 放牧地として知られており、私たちがテキサスに持つイメージより驚くほど 青々として肥沃なのです。 [訳者注:悲劇的な焼死 1993年の2月から4月にかけて、テキサス州ウェイコ で、ブランチダビディアンという教団に非合法銃器所持の容疑で当局が急襲し たが、教団側の抵抗にあい、その後当局が周囲を完全包囲した上、メディアを 締め出し、水も電気も食糧供給も止め、赤十字代表の面会も拒否し、結果51日 間の立てこもりとなり、最終的に銃撃戦の末、大火のもと子供を含む80人余が 焼死した事件を指す。事件の真相は、教団がCIAのコンピューターに侵入し、 教団に隣接する飛行場を使用して行っていたCIAの麻薬裏取引などを調査して いたため、それを隠蔽するためにFBIが米軍エリートのデルタ・フォースまで 投入して、信者たちを皆殺しにしたのだという説もある]
クロフォードの町自体はとても地味で質素な所です。道は悪くて、家は小さく て古く、多くはぼろぼろです。実際に貧しい地域のようですが、町を出てキャ ンプに向かう途中にある農場内の家々は、すごく大きくて派手です。クロ フォードには「繁華街」はあまりありません、事実10秒ほどで車で走り抜けら れるほどです。レストランが1軒と郵便局があって、たまたま地元住民ふたり が米国大統領とファーストレディという事実に乗じて骨董品や低俗な土産物を 売る店が数軒あるだけです。
クロフォード・ピースハウス
クロフォードの目玉は間違いなくピースハウスです。ここはこの最近の抗議行 動がなくても、色鮮やかな横断幕や幟がすべての通行人を歓迎し際立っている ことでしょう。
平和・活動・黙想の旅をするどのような人々をも援助する場所として2年前に オープンしました。この簡素な寝室3部屋の小屋の壁には、平和のメッセージ やいろいろな伝説の霊感的な引用を伝える美しいポスターが掲げられていま す。数百人もの反戦アメリカ人が練り歩く(今のような)事態でなければ、静 寂や静穏をかもし出す特別な雰囲気のところだろうと想像できます。
すごいのは広々とした庭で、そこには河岩で作られた複雑なパターンの大きな 循環迷路があります。私たちの多くはこの迷路を瞑想しながら歩き、気を緩め たり再び集中したりするのです。
裏庭には、人々が食事や話に集まるテーブルに日陰を作るために大きな張り出 し屋根が二つ作られました。今やピースハウスには食料や必需品の寄付が殺到 して、誰でも立ち寄ってちょっと食べていくことができるのです。
ピースハウスの前庭は、プラカードや色々なお知らせの掲示板に加えて、冷た い飲み物用のクーラー・ボックスがいくつか置いてあって、ゴチャゴチャして います。家の周りの通りは多くなりすぎた車で混雑し、ボランティアの交通整 理が人々をあちこちへと誘導しています。
ハウスの雰囲気は、どんな人でも歓迎する平和と友情あふれるすばらしいもの です。
キャンプケーシー
キャンプケーシーは、町から車で約15分の、交差点につながる3本の道にテン トや防水シートやキャラバンや自動車が並んでいる所です。この交差点の真ん 中の広い土地は、所有者が抗議行動に使われるのを拒否したため、あき空間に なっています。
平和退役軍人会、戦争に反対するイラク戦争退役軍人会、コードピンクなどさ まざまなグループがテントを張っています。他にもキャンプ参加者に日陰と飲 食料を提供する共用テントもいくつかあります。いたるところにプラカードや 横断幕が掲げられ、参加者がどこから来たかを示した大きな米国地図がありま す。オーストラリアは今や地図の一番下に書かれています! こんなに多くの 人たちがキャンプケーシーにやって来て、一体どれほど遠くから来るか、どれ ほど違う背景を持った人が来るかに興奮気味の様子です――共和党支持者を公 言する(そして幻滅した!)人さえ来たのです。
テントやバンや乗用車は道脇の狭い草地にあって、そこは簡単に言ってしまえ ば浅い溝です。今や見渡すかぎりの長い色鮮やかなテントが連なっています。
だが、キャンプケーシーで最も注目される所は、イラク戦争中に戦死した米軍 隊員の冥福を祈るために作られた記念碑でしょう。
特定の個人の写真とその下に名前が書かれたものがいくつか掲げられていて、 他の者たちの名前はそれぞれ白い小さな木製十字架に書かれ、道端の草地に整 列して植え込まれています。
それは、強烈で心が張り裂けるような光景です。イラク人犠牲者すべての記念 碑はどこのどんな道端の広さでも足りないだろうことを考えれば、さらに心が 張り裂ける思いです。
昨夜、この記念碑に腹を立てたようで、怒ったウェイコの男性がキャンプケー シーに小型トラックでやって来て後ろにチェーンとパイプをくくりつけ十字架 の上を走ったのです。スピードを上げて逃げていく前に、少なくとも350の十 字架をなぎ倒し破壊しました。しかしその時たまたまキャンプに居合わせた地 元の警官がすばやく彼に追いつきました。十字架が小型トラックの車輪に挟み 込まれタイヤがパンクしてしまったのです!
ピースキャンプはこの事件には動揺はしたものの、平静を保っています。今日 シンディは、この話を聞いたフロリダの支持者から送られた30ダースの茎の長 い赤いバラを受け取りました。
他にもいろいろな形で、キャンプケーシーに反対を表明されてきました――空 に向けて銃を撃つ、クラクションを鳴らし続けて走り去る小型トラック、「帰 れ!」と窓から叫ぶ運転手。今日は、プラカードを掲げて道の向こうにただ 立っている単独抗議者がいました。
キャンプへ続く道沿いにあるいくつかの家では、表の庭をたくさんの星条旗で 囲みどちらかと言えば面白そうな「ブッシュ支持」のプラカードを立てていま す。その他の地元民は大変友好的です――ある農家はキャンプ用に小牧場全体 を提供したくれましたし、地元の教会があふれた車を引き受けてくれていま す。
キャンプケーシーの状況
暑いです、本当に暑い。今朝8時30分には背中に滴る汗を感じました。周りに 日陰になる所はそんなにたくさんありません、ですから座るのに涼しい場所を 見つけるのは大変です。
ここにはわずかながら私たちに地元のオトモダチがいて、ハリアリ (fire-ants)と呼ばれています。かまれると、そうですね、燃えるように痛 いのです。またいくばくかの蚊とも争わなければなりません。
仮設トイレがいくつかあって水は豊富です。それに寄贈された食料や飲み物に 日焼け止めクリームや虫除け剤などの役立つものもたくさんあります。
私は、私たちの借りたレンタカーの後部座席で寝ています。車で寝たのは初め てです――とても快適な睡眠とは決して言えません、でもワクワクしています !
シャワーも浴びることができます、コーヒーも飲めるし、インターネットも使 えます、ピースハウスをいつでもうろうろすることもできます。一日中シャト ルバスが二つの拠点の間を往復運転しています。
私の感想
すごいです! この時期にこの場所に来ることができてまったく光栄です。こ こは特別な、歴史を作りつつあるような感じが……
ただ座ってこのアメリカ人たちのしゃべっていることを聞いているだけで、今 が分岐点なのだと思える大きな希望を持てます。この人たちは再び活力付い て、自分たちの政府の欺瞞に十分気づき、結集してきているのです。
シンディはすばらしい。心から温かく、愛情あふれる人です。挑発には乗ら ず、困難に対処するやり方は私たちの誰もがお手本にすべきものです。
今日、昨日よりたくさんの人が来ました。明日はもっと多いでしょう、そして 週末には大量の到来が予想されています。このことから何かが育つはずです、 何か恒久的なことが……
疲れ果ててはいましたが、昨夜は寝入ることができませんでした、それで夜半 まで静かに車の中に座って、野に降り注ぐ月明かりが白い十字架を照らしてい るのを窓から見つめていました。
私はこのひと時を褒め称えたいと思いました――歴史的なものでした。
皆さんの巡礼者
ドナより
追伸:写真を2枚添付しました。もっとたくさんの写真を見られるように以下 に掲げてあります。 http://www.donnaincrawford.photosite.com [訳者注:TUPでは写真を添付できません。この2枚の写真も上記アドレスにあ りますのでそちらでご覧ください。英語サイトですが、アルバムとスライドに なっていて感覚的に分かるものです]
追追伸:この続報では事実に即した話だけですみません(それに急いで書きま した)、しかし、ここでの特定の経験の個人的な話をお伝えする前に、状況を 説明しておいた方がいいと思ったのです。しかもそれがいっぱいあるのです!
追追追伸:この新しいサイトをチェックしてください。 http://www.meetwithcindy.org (英語)
追追追追伸:先月にこのピルグリムメーリングリストに新しく参加された皆さ んに、ようこそと言わせていただきます。個人的な感想と観察、それに加えて わずかばかりのイラクとパレスチナからの報告がが混合されたものを受け取る でしょう――つまり、スピリッチュアルなことと社会/政治的なことのコメン トが混合されたものです。どなたにも興味を持てる何かがあることを望みま す。
追追追追追伸:私がこの地にいることと、あんなにたくさんのオーストラリア 人がシンディに支持を表明していることに関して、マスコミむけの文章を書き 上げました。もし皆さんの地元メディア/グループ/ウェブサイト用にコピーを お望みでしたら、どなたでも連絡ください、送らせていただきます。
追追追追追追伸:「大衆は、小さな嘘よりも、より容易く大きな嘘の餌食にな るものだ」――アドルフ・ヒットラー
原文:Life at Camp Casey, Crawford URL: http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/166
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