TUP BULLETIN

速報555号 ドナより 白い人の呪い、黒い人の癒し 051007

投稿日 2005年10月7日

DATE: 2005年10月7日(金) 午後10時51分

白い人ドナが、黒い人アボリジニの郷、アウトバックへと向かう


オーストラリア人女性ドナ・マルハーンは、2003年春イラクでの「人間の 盾」に参加し、04年春には米軍包囲下のファルージャに入り、その帰路地元レ ジスタンスによる拘束を経験、04年冬から05年春にかけてイラク・パレスチナ を旅して、05年8月アメリカからシンディ・シーハンのキャンプケーシーにつ いて報告してくれました。オーストラリアに帰国したドナが、今度は自国のア ウトバック、先住民族の地へと巡礼の旅に出ました。白い人たちから土地を奪 われ、文化を壊され、聖地を侵され、酒という呪いをかけられた黒い人たちア ボリジニの郷で、白い人ドナ・マルハーンは何を思うか。 (翻訳:福永克紀/TUP)


白い人の呪い、黒い人の癒し ドナ・マルハーン 2005年9月29日

「ちゃんとした白い人の肌をしてるね」と、小さなマデリンが私の白いお腹の 肉を見てささやきました。

彼女はもっとよく見えるように私のTシャツをそっとめくり上げ、腰の周りを 腕で囲み、その黒褐色のほほを私のお腹に押し付けました。

「うん、これが本物の白い人の肌ね」

彼女を見おろしながらその褐色の頬を私のお腹で捉えたとき、私の人生でこん なに美しく見えたり感じたりしたことを他に思い浮かべることはできませんで した。彼女は、私のお腹にキスをしてから他の子供たちと遊ぼうと走り去って いきました。

8歳のマデリンは、西オーストラリア州の東キンバリー地区の奥地にある、 ターキークリークとしても知られる当地ワルムンのアボリジニ・コミュニティ に住む夫婦の娘です。

ここは、銀行やスーパーなどの店がある町カナナラの中心から2時間半以上の ところですが、小さくとも活気に満ちたコミュニティです。

ターキー・クリークは特に何もないところですが、すばらしい学校が1校あり ます。地元の子供たちに2通りの教育、つまり、伝統的文化や言語と、新方法 である普通の学校のカリキュラムとを混ぜ合わせた教育をしています。この学 校がコミュニティの活動の中心となり、ここの文化を破壊する最大の脅威に対 し生き抜く精神を生み出しています――その脅威とはアルコールです。

私がボランティアをしているミリリンキ・スピリッチュアリティ・センターで は、年に3回、地元ではグロッグ・プログラムと呼ばれる薬物アルコール中毒 診療プログラムを開催しています。アルコールを断とうとしている人たちのた めに、コミュニティの長老アボリジニたちが音頭をとっています。

アルコールを断とうとしている人たちが、その多くはまだ週末の飲酒で二日酔 いになっていながらも断酒に挑む心構えを持ち、自分たちの生活を変革すると いう目的のプログラムの開始に集まってくるのを見るのは、とても感激するも のです。

この2週間、私は大人14人子供25人ぐらいの集団と一緒に生活して、彼らの身 の上話や人生の遍歴について聞いてきました。年配の人たちの中には、若い頃 キンバリー地方の牧場で働いたときの驚くべき話をしてくれた人もいました。 一日中激しく働かされ、しかし決して賃金は支払われることもなく、それまで 見たこともなかった砂糖、紅茶や小麦粉、タバコやハンセン病とアルコールな どに出会う羽目になったのだといいます。

キンバリー地方はオーストラリアで白人入植を経験した最後の場所に属するの で、長老たちの中には、祖父母が、探検者や牧畜業者として白人が最初に侵入 してきた頃を知っていたという人もいました。現在でさえも、近くのバラマン ディ・ドリーミングではダイヤモンド鉱山のために聖地をメチャクチャにされ ているように、白人の侵入はかつてと同様破壊的でひどいものです。

長老たちが土地の喪失と伝統的な暮らしの崩壊を悲しんでいるのを感じ取るこ とはできますが、絶望を感じ取ることはありません。彼らは、コミュニティの 若者がアルコールやその他の社会的病理から自分たちの生活を回復する基礎と して用いる岩盤のような役割を果たしています。

プログラムの間、長老たちがこの一団を森のキャンプへ連れて行きました。魚 取りと採取した自然の食べ物を食べ、原野で過ごした1週間後に戻ってくる と、心の平穏を感じ目的意識を高めたこの一団はにぎやかに幸せそうでした。

このプログラムの初日、マデリンの父親スティーヴンは大酒飲みだと認めまし た。ある段階になると、彼の収入の大半はコミュニティ外の町でペテン師たち がアボリジニの人たちにまとめ売りで150豪ドル[訳者注:約12900円]もの高 値で売る酒に費やされていると言いました。

プログラムの二日目には、アルコールの禁断症状でスティーヴンの体には劇的 な発作が起こりました。彼は倒れ、息がつまり、数秒間ビクビクと痙攣を起こ しましたが、それは数時間にも思えるものでした。

プログラムが終わる2週間後には、スティーヴンは輝いていました。ここ十年 で見た目も雰囲気もこんなにいい状態の彼を見たこともないと彼女の妻が言っ ていました。その2週間後に隣のロードハウス[訳者注:街道沿いの宿泊でき る酒場]で働いている彼を見たときも、まだ輝いて見えました。

先住民族コミュニティは怠惰で何もできないと責められる社会にあって、私は 中毒に立ち向かい勝ち抜くという、人間としてできうる最高に勇気ある困難な 仕事を見たのです。

しかも白い人からの援助によってではなく、優雅さと誇りを兼ね備えた法と夢 の文化を伝える長老たちの知恵によって。

2週間後、このグロッグ・プログラムの卒業生がキャンプファイアーとバーベ キューに集まりました――彼らの伝統的言語、キジャでおしゃべりしていま す、子供たちが走り回って遊んでいます――今もなお順調な道のりです。

皆さんの巡礼者

ドナより

追伸:帰ってからワルムンまたはターキー・クリークでの一ヶ月の話をもっと 書きたいと思います――週末にはシドニーに戻る予定です。

追追伸:シドニー住民で興味のある方は、週末からのブラック・スタンプ www.blackstump.org.au に参加してキリスト教の教えや音楽や芸術などに接 してみてください。土曜の夜6時〜8時セイクリッド・スペースで講演します、 それに日曜午後5時からマーズ・ヒル・カフェでのコーヒーとおしゃべりの会 に参加するつもりです。

追追追伸:昨年オーストラリアに来た私の友人であるイラク人ライドを知って いる皆さん、いいニュースがあります! 彼がオーストラリアに来て、地域社 会の家庭に知的ハンディのある人たちを招きともに生活する人々のグループ、 ラルシュで働くためのビザが取れたのです。彼は、バーウッドに住む予定で す。

追追追追伸:「私たちは白人の言葉をしゃべれるように学んできました。白人 が言うべきことを聞いてきました。聞いたり学んだりすることは、双方向であ るべきです。オーストラリアの人々には、私たちの言うことを聞いて欲しいの です。人々がもっと近寄りあうように望みます。私たちが望んできたこと、尊 敬と理解を切望し続けます」――ミリアム・ローズ・ウングンマー

原文:White fella’s curse, black fella’s remedy URL: http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/172

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