DATE: 2005年12月11日(日) 午後8時31分
4人の外国人人道活動家がイラクで誘拐された。マルハーンの友人もその一人
2005年11月26日、イラクのバグダッドで、 クリスチャン・ピースメーカー・ チームズ(CPT:Christian Peacemaker Teams)の4人(カナダ人2名、米・英 国人各1名)が武装勢力に誘拐されました。誘拐グループは彼らは米英のスパ イであり、12月8日までに米国・イラク当局に拘束されている囚人をすべて解 放しなければ4人を殺害すると言っています。CPTは、イラクやパレスチナなど 世界の紛争ある地域に訓練された平和活動家が出向き、そこに在住しながら地 域住民とともに暴力廃絶を目指す運動体です。イラクでは多くの国際援助団体 が退去するなか、CPTはバグダッドに残り活動している数少ない国際援助団体 のひとつで、この4人もパレスチナ・イラクなどでの活動を続けてきた人たち であり、スパイであるはずなどありえません。この4人のうちの一人とは特に 親しい友人であるドナ・マルハーンからの報告です。 (翻訳:TUP/福永克紀)
平和のための世話人、ハルミート ドナ・マルハーン 2005年12月4日
お友達の皆さんへ
私が初めてハルミートに会ったのは、ヨルダン川西岸地区のラマラの町であっ た非暴力抵抗運動の講習会が始まったときで、彼はテーブルを挟んで座ってい ました。去年の12月のことです。私たちはどちらも、パレスチナの占領とそれ に抵抗するパレスチナ人の非暴力運動をどのようにして手助けできるかもっと よく学びたいと、国際連帯運動(ISP:International Solidarity Movement) のボランティアとしてパレスチナに滞在していたのです。 [訳者注:当時のドナの活動については、TUP-Bulletin の2005年1月から4月に かけてのドナの報告を参照]
美しい顔を思い出します。まるで妖精のようで、笑みと目のきらめきを絶やす ことがない人だと思いました。皆が「大きな声で話してください」と頼まなけ ればならなかったのも覚えています。彼の声はそれほど穏やかだったのです。 それは驚くほど優しい性格の現れでした。
パレスチナでの私たちの仕事に対する希望と不安について話しあったときのこ とも思い出します。私の不安は、忍耐の限界を超えてしまい兵士や入植者たち に怒ってしまわないかということでした。彼の不安は、自分はそんなに強くな いかもしれないということでした! それでお互いが補完しあえるのではない かと考え、彼がパレスチナにいた残りの期間はいつもふたりで一緒にいたのだ と思います。
ハルミートはザンビアで育ち、カナダで学び、現在はニュージーランドに在住 しオークランド大学で英文学を学んでいます。来年は開発・災害・紛争などの 分野で働ける手腕を身につけるため技術者向けの物流管理コースを取ろうと計 画していました。家族はカシミール出身で、祖父母はまだカシミールに住んで います。カシミール問題についての情熱と、自分がカシミールから受け継いだ ものを誇りに思っています。
彼がパレスチナから去ると、数日ごとにニュージーランドから私を励ますE メールを送ってきて、それにはこう書いてありました。「私の青いシャツから はまだパレスチナの香りがただよいます……ここにいる間も自分の義務を忘れ はしません……」
私が帰国してからも私たちは連絡を取り合いました――彼は、いろんな記事や 仏教の祈りや彼自身の人生のことなど、あらゆる種類の興味深い話を私に書い てよこしました。あるときには薬缶の写真(そうです、やかんです)を送って きて、「あなたを笑わせるもの」と書かれていました。ストーブの上に乗せら れた光り輝く優雅な古い薬缶の写真を見て、彼がどれほどこの写真を撮るのに 気を使ったか、またその簡素な美しさ、それを大切にしている彼の気持ち、そ してそれを私と分かち合いたいという気持ち、それらすべてが彼の意図どおり の効果をあげました――私は一日中、笑っていました。
ハルミートは、私が知るかぎり最も優しく感受性豊かな男性です。去る5月イ ラクで死亡した私の友人マーラ・ルジカのことを書き送った時には、このよう な返事がきました。 [訳者注:マーラ・ルジカ アフガン戦争・イラク戦争の民間人犠牲者の補償 運動などをした人道活動家アメリカ人。2005年4月16日バグダッドで自爆攻撃 に巻き込まれ28歳で死亡。参照:[TUP-Bulletin] 速報493号 ドナからの手紙 5月4日 マーラ・ルジカを悼む 050511 http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/536 ]
「お友達のマーラを亡くされてお気の毒に思います。ここ、私の部屋に、ろう そくがあります。すべての忘れられている人々への手向けとして、今夜それを 灯します、そして毎夜灯します」
彼の平和な人柄に私は触発されることが多く、近頃気がついたのですが、難し い状況に対処しなければならなくなると彼にアドバイスを求めているのです。 彼は悟りの心を持ち、32歳という年齢以上に賢明です。彼が誘拐される前日に イラクから送ってきたEメールでは、自分のことより私のことを心配し心遣い を寄せていました――典型的な彼の態度です。
8月にはオークランドに彼を訪ねてしまうことになりました。彼は私のために 講演会をいくつか手配をしてくれ、それは忙しいものでしたが、彼と一緒にす ごせるのはすてきなことでした。大学寄宿舎の彼の狭い部屋には、あらゆる種 類のすばらしいアフリカの美術品や仮面や工芸品が散らかっています。自分の 勉強に、コーチもしていたスカッシュに、キャンパスでのパレスチナ人に連帯 するグループの設立にと、彼の生活は忙しいものです。その忙しさにもかかわ らず、世界中の人たちと友情関係を保つべく多大な時間を費やしています。家 族のことやちっちゃな姪のことを、深い愛を込めて話します。私は希望と元気 をもらって、彼と別れたのです。
しかし、私は今回、昨夜のニュースでハルミートを見ることになりました。先 週以来他のCPTのメンバー3人と一緒に彼をバグダッドで拘束している「正義の 剣旅団」(Swords of Truth)からお菓子を与えられていた彼の顔は、青ざめ ていましたが、冷静な様子でした。
誘拐者たちはこの4人はスパイであると非難し、昨日、木曜日までに米国なら びにイラクの監獄に入れられているすべての囚人が解放されなければ4人を殺 すと脅しました。
バグダッドに旅したとき、私はCPTとともに行動しました、そして、彼らが現 地で勇気ある仕事ぶりによって成果を挙げていることに畏敬の念を抱いてきま した。多くの援助団体や人道団体がイラクを去ったのに、CPTは留まり拘留さ れているイラク人やその家族の支援を中心的におこなってきました。
私は捕らわれた4人のうち3人を知っています、とくにカナダ人のジム・ロニー が、私たちのストリート・チルドレンたちと一緒に過ごせないかと尋ねてくれ たことは、嬉しい思い出です。子供たちとよくサッカーをしてくれたり、ただ なんとなく立ち寄って、子どもたちとぶらぶらしたりしていたものです。私は 今夜の食事時に、この話を仲間内に全部話しました、するとエド神父がいみじ くも彼らがスパイである可能性は神父自身が窓から入ってこそ泥をする可能性 と同じくらいだと言ったのです。エド神父は、まあ、かなり大きな人で、私が 知るどんな窓でも潜り抜けることはできませんから、そんなこそ泥になること はまず不可能です。
この4人、ハルミート、ジム、トム、ノーマンは、同情と思いやりをもった ピースメーカー(平和のための世話人)で、抑圧された人々のために心を尽く し、自らの信念に基づいて活動してきた人たちであり、彼らがスパイであるこ となどありえません。
つまり、ここには誤解があるのです。
私たちの仲間であるアラブやモスリムの兄弟姉妹たちが、この誤解を是正し、 4人に支持を表明し、拘束者たちに訴えるため中東や世界中から結集してきて います。拘束された4人のうちの3人は、パレスチナの人々に連帯してパレスチ ナで活動していました。先週ラマラとヘブロンでおこなわれたデモでは、パレ スチナ人のモスリム聖職者の長であるムフティ・イクレマ・サブリの以下のよ うなメッセージとともに数百人の人々が通りに繰り出しました。「この救援活 動家たちはパレスチナ人に寄り添って活動してきた、だから今彼らに寄り添っ て立つことが私たちの義務であると拘束者たちに伝えよう」
そして、ハルミート、ジム、トム、ノーマンとその家族のために祈ると同時 に、4人を拘束した人たちのために祈ることもまた不可欠だと信じるのです、 つまり彼らの変容を、そして私たちすべてが「自分たちと彼ら」との分け隔て を越えて見ることができ、他の人々の中に人間性を認めることができるような 変容を祈るのです。
この状況下で私たちにできることが何かあるか考えるのは困難ですが、宗教を 持つかたには常に祈っていただきたいと思います。世界中でヴィジルがおこな われていますし、もし皆さんがヴィジルを執り行ないたいなら、CPTのサイト http://www.cpt.org で情報を入手できます。
回覧配布されている請願もあり、http://www.freethecpt.org で見つけるこ とができます。 [訳者注:http://www.freethecpt.org に接続すると http://www.petitionspot.com/petitions/freethecpt にジャンプし、前半に アラビア語の、後半に英語のCPTの緊急アピールがあります。これを、TUPのメ ンバーでもある山崎久隆さんが訳してくれましたので末尾に引用させてもらい ます]
ハルミートが今考えていることが私には想像できます、彼は、自分が受けた注 目に少しばかり当惑していていますが、この世界でさらに平和を推進するため にこの経験をどう生かせるか、深く思いをめぐらせているはずです。
ハルミートは、世界の忘れられている人への手向けとして彼が毎夜ろうそくを 灯したように、彼が記憶にとどめている人たち――イラク人やパレスチナ人や カシミール人や、すべての苦しむ人々――を、私たちも記憶するように望むで しょう、そしてこの世界にどうすれば平和を培うことができるのか自らに問う ことを望むでしょう。
すべてのかたに感謝します。
皆さんの巡礼者
ドナより
追伸:添付の写真は、ハルミートがパレスチナ人農家の子供たちと一緒に撮っ たもので、オリーブの木の植え付けを手伝っているところです。ジェニンの近 くのその農場は、隣接するイスラエル入植者に盗まれて数百本のオリーブの木 を失いました。近いうちにハルミートについてもっと書き送ります。 [訳者注:TUPでは写真の添付はできません]
追追伸:木曜のパイン・ギャップ行動のため、明日アリス・スプリングスに出 発します。この情報は、来週にもっと。
追追追伸:「私の姪は来週1歳になりますが、この子が成長した時に世界は一 体どうなっていることでしょう」――ハルミート 2005年1月
原文:Harmeet the peacemaker URL: http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/175
=====以下、緊急アピールの引用===== 緊急アピール:イラクで拘束されている私たちの友人を解放してください
クリスチャン・ピースメーカー・チームのHPより
去る11月26日土曜日、クリスチャン・ピースメーカー・チーム(CPT) の4人のメンバーがイラクのバグダッド市内で拘束されました。彼らはスパイ ではありませんし、いかなる政府のもとで働いてもいません。命がけで戦争に 反対するとともに、はっきりと公式にイラクへの侵略および占領に反対した 人々です。彼らは信頼すべき人々ですが宣教師ではありません。イスラムの信 仰やイラク人の自決権について深い敬意を持っています。
CPTは、2002年10月にはじめてイラクに来たときから米国の侵略に抵 抗し、占領下のイラクの人々と連帯してきました。それは今日も依然として変 わりません。米国が運営している刑務所および拘置所で拘留されたイラク人が 直面している多くの恐ろしい事態を世界に警告することについて非常に重要な 役割を果たしてきました。CPTは主要なメディアが報道するよりもはるか以 前に、アブ・グレイブ刑務所で行われている拷問について証拠を挙げて証明し た最初の組織の一つでした。メンバーは膨大な時間にわたるイラク人へのイン タビューをとおして、世界中に米軍による虐待および苦痛をもたらしている事 実と情報を発信し続けました。
イラクで拘束されている4人のCPTメンバー各人は戦争および占領の暗闇お よび苦難に抵抗することに彼らの生命を捧げています。彼らは戦争に反対して いるからと言って十分な安全が確保されることはないことを確信しており、外 国の占領によって引き起こされた不信感は、スパイあるいは宣教師と間違えら れる可能性があることも知りながら、イラクに行く困難な決断をしました。純 真な目的でそこに行ったのですが、それは不正の証人を買って出るとともに異 なった種類の文化および宗教との橋渡しの役割を果たすためでした。CPTの メンバーはイラク人の間で悪名高い「グリーン・ゾーン」以外の普通の場所に 住む危険をあえて快く引き受けました。イラクの人々の好意を信頼し、そして 彼らのために役立ち、武器や武装護衛による保護を求めませんでした。イラク 人の親切および歓待の行為は数え切れず、そしてCPTメンバーの無事と健康 を保証してきたのです。我々はその勇気こそが現在の状況を打破する道である と信じています。
彼らが証人および和平調停者(ピースメーカー)として重要な仕事を続けられ ように、私たちは彼ら活動家を無事解放するように訴えます。
http://www.petitionspot.com/petitions/freethecpt
2005年11月29日 (翻訳:山崎久隆) =====緊急アピールの引用終わり=====
TUP速報 配信担当 萩谷 良 電子メール: TUP-Bulletin-owner@y… TUP速報の申し込みは: http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/