DATE: 2006年3月2日(木) 午前9時59分
これが内戦?
戦火の中のバグダード、停電の合間をぬって書きつがれる若い女性 の日記『リバーベンド・ブログ』。イラクのふつうの人の暮らし、女 性としての思い・・・といっても、家宅捜索、爆撃、爆発、誘拐、検 問が日常、女性は外へ出ることもできず、職はなくガソリンの行列と 水汲みにあけあけくれる毎日。「イラクのアンネ」として世界中で読 まれています。すぐ傍らに、リバーベンドの笑い、怒り、涙、ため息 が感じられるようなこの日記、ぜひ読んでください。(この記事は、 TUPとリバーベンド・プロジェクトの連携によるものです)。 http://www.geocities.jp/riverbendblog/ (TUP/リバーベンド・プロジェクト:池田真里)
2006年2月27日月曜日
一触即発の日々・・・
外出禁止令が出ているにもかかわらず、ここ数日、不安で暴力的な状況が続 いている。私たちは家に留まり、ただこの状況が変わり、好転することを待ち 望んでいる。電話は通じないし電力事情もよくならない。でも、今の私たちに とっては、電気や電話や燃料のことなんてちっぽけな悩みに思える。近頃はこ うしたことについて文句を言うことすら、イラク人には手の届かないぜいたく なことになってしまった。
発砲と爆発の音はたいてい夜明けに始まる。少なくとも私が最初に音を感じ るのは夜明けからだ。その音は夜遅くまで絶えることがない。一昨日、私たち の住む地区の近くにある大通りで小さな銃撃戦があった。けれども、地域のモ スクが襲撃され、夜明けに死体一体が3つ先の通りで見つかったのを除けば、 状況は比較的穏やかだ。
近所の人たちは、男たちが地域の警備をするかどうか議論を続けている。地 域の警備は戦争中や戦争直後の混乱期にもやったことだ。今回やっかいなのは、 モスクや家やお互いを攻撃しているフードをかぶった黒装束の男たちと同じく らい、イラク治安部隊を恐れなくてはならないという点だ。
ここ数日、スンニ派とシーア派の人々がすばらしい連帯を見せているので、 これが内戦だなんて思えない。私は法学者や狂信的な人々や政治家ではなく、 ごくふつうの人たちのことをいっている。うちのあたりはスンニ派とシーア派 が混じり合って住んでいるが、スンニ派の人もシーア派の人も一様にモスクと 聖廟が攻撃されたことに激怒している。電話が通じなくなっているので、私た ちはすこぶる原始的な通信手段を取り決めた。この地域のどこかの家が襲撃さ れたら宙に向かって3回空砲を撃って知らせるのだ。もし空砲を撃つという手 段がとれなければ、そのときはその家の誰かが屋上にあがって事態をまわりに 知らせなくてはならない。
モスクも苦境に陥った際の合図を用意している。それは、攻撃を受けた場合 には、祈りを呼びかける役目の人が「アッラーフ アクバル[全能のアッラー ほど偉大な方はいない]」と3回叫ぶというものだ。それを聞いた地域の人々 が、モスクや巻き込まれた人を守るためにかけつけるというわけだ。
昨日、スンニ派とシーア派の聖職者がモスクで一緒に祈りをささげるようす がテレビに流れた。力づけられる光景ではあったが、私は怒りを抑えることが できなかった。なぜこの人たちは、自派の私兵集団に対してひとこと、撤退し ろといわないのか。モスクやフサイニーヤ[訳注:シーア派のモスクの一種。 ※2005年2月18日の記事参照]への攻撃をやめろといわないのか。人々 を恐怖に陥れるなといわないのか。テレビに映し出された光景はあまりに嘘っ ぽく、空っぽに見えた。まるでよその国の平和な情景のようだった。イラク政 府はうろたえているようなふりをするばかりで暴力と流血に歯止めをかけるた めになにもしていない。外出禁止令を出しただけ。それに、アメリカ人たちは この中でいったいどこにいるの? 手をこまねいて成り行きに任せているだけ ―たまにヘリコプターがあちこち飛んでいるけど―でも、だいたいは知らん顔 してる。
私はひたすら読み、聞いている。内戦の可能性について。可能性、だ。けれ ども私はこれが内戦っていうものかもしれないと思ったりもしている。それが 現実のものになったのだろうか? 1年、2年・・・10年・・・くらい経っ てから、私たちは後を振り返って「2006年の2月にそれは始まった・・・」 というようになるのだろうか? まるで悪夢のようだ。そのさなかには悪夢を 見ていることがわからないのだから―はげしく動悸し、暗闇の中に一点の光を 探し求めて目覚めた後になってはじめて、ああ、自分は悪夢を見ていたと気づ くのだ・・・
午前2時27分 リバー
(翻訳:リバーベンド・プロジェクト:いとう みよし)
——————————————————————–
TUP速報 配信担当 萩谷 良 電子メール: TUP-Bulletin-owner@y… TUP速報の申し込みは: http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/