DATE: 2006年3月10日(金) 午後0時52分
イラクのスーパースターの勢ぞろい
戦火の中のバグダード、停電の合間をぬって書きつがれる若い女性 の日記『リバーベンド・ブログ』。イラクのふつうの人の暮らし、女 性としての思い・・・といっても、家宅捜索、爆撃、爆発、誘拐、検 問が日常、女性は外へ出ることもできず、職はなくガソリンの行列と 水汲みにあけあけくれる毎日。「イラクのアンネ」として世界中で読 まれています。すぐ傍らに、リバーベンドの笑い、怒り、涙、ため息 が感じられるようなこの日記、ぜひ読んでください。(この記事は、 TUPとリバーベンド・プロジェクトの連携によるものです)。 http://www.geocities.jp/riverbendblog/ (TUP/リバーベンド・プロジェクト:池田真里)
2006年3月6日月曜日
さあ、オスカーの受賞者は・・・
再びオスカーの季節がやってきた。この一カ月ほど、私たちはオスカーのプロ パガンダに砲撃されている。 MBCとOneTV(アラブ首長国連邦のチャンネ ル)は1月からオスカーをライブ中継すると約束している。ここ1週間のインタ ビューというインタビュー、プログラムというプログラム――バーバラ・ウォル ターズ、オプラ、インサイド・エディション、エンターティンメント・トゥナイ ト――は、何かしらオスカーに関連しているようで、オスカーにノミネートされ た人やらその分析やらが絶え間なくつづく。
さて、候補者を見てきて――毎年同じ顔ぶれだけど――私はイラク人にも授賞 式が必要だという結論に達した。 ハリウッドのスターたちはけっこうなエンタテ イナーだけど、イラクのスーパースター、ハキム、ジャファリ、タラバニ、アラ ウィなどなどは、“すばらしい"エンタテイナーだ。この一年のあいだ、我らが 政治的指導者は、いくつかのドラマを繰り広げて私たちを釘づけにしてきた!
なので、バーバラ・ウォルターズとオプラー・ウィンフリーに負けない、バグ ダードバーニング・オスカースペシャルをお届けしよう!! ただし、私たちの授 賞式をよりイラク的で親しみやすくするために、オスカーの小さな彫像の名をち ょっと変えることを提案しよう。 (オスカーという発音はアラブ語で酔っぱら うという「Iskar」にとても近いので、「オスカー」というと、“敬虔な" サドル私兵に授賞式を乗っ取られる恐れがあるので、「サイード」賞というのは いかがでしょうか!)[訳注:サイードは一般に男性に対する敬称]
それではみなさま、2006年サイード賞にノミネートされた方々をここにお 届けしましょう!
最優秀男優賞候補:
“正統"イラク政府の無宗派、無党派の首相という役柄に挑戦した、「イラク自 由選挙」のイブラヒム・アル・ジャファリ。
本編「イラクの自由作戦:大量破壊兵器」、「イラクの自由作戦:イラクの解放 」に続く三番目の作品「イラクの自由作戦:テロとの戦争」のジョージ W. ブッ シュ。ブッシュは世界初の精神的欠陥のある大統領を説得力ある演技でみせ、ノ ミネーションされました。
一連の拷問ハウスのスキャンダルで、ショックを受け、怒れるイラク内務大臣 を国際級の演技でみせた、「拷問ハウス」のバヤーン・バーキル・スラフ。
イランにいるご主人様から自立しているふりをしている、敬虔なムッラー、 「メン・イン・ブラック(ターバン)」のアブドゥル・アジズ・アル・ハキム。
見せしめにされた親米協力派が突如として反戦争・反占領に変わる、注目すべ き演技の、スンニ派政治家、「移り気」のムフサン・アブドゥル・ハミード。
最優秀主演女優賞候補:
イランの原子力開発計画(イラクにおけるイランの支配にもかかわらず)を止め る振りをする悪の国務長官、「ビバ、イラン!」のコンディ・ライス。
最優秀助演男優賞候補:
新しいイラクの “正統"な指導者を演じようとした彼の挑戦に。「カカ・プレ ジデント」(’カカ’はクルド語で「兄弟」)のジャラル・タラバニ(彼は実際に この映画のスターですが、この一年は首相がうまく彼の人気をさらってしまった ので、彼を最優秀“助演"男優賞候補に選びました)。
忠実で、頭のいかれた副大統領という役柄とイラクではすべてがうまく運んで いるという彼の執拗な主張に、「イラクの自由作戦:テロとの戦争」のディック・ チェイニー。
すべての災いからイランを守り、スンニ派とシーア派に相互に寛容であれと働 きかけるのに熱心な(彼のサドル軍団がスンニ派と世俗主義者に対する破壊と攻 撃の実行犯であるにもかかわらず)、若くて、カリスマ的で、黒いターバンを巻 いた武装集団の精神的指導者、「ビバ、イラン!」のムクタダ・アル・サドル。
ホワイトハウスの記者会見で報告を読み上げるあいだ、真面目な顔を保つ能力 でよく知られる、「イラクの自由作戦:テロとの戦争」と「否定」のスコット・マ クレラン。
特殊効果部門候補:
今年のイラクの政治シーンから堂々と蒸発した、「消滅ショー」のアフマド・ アル・チャラビ。チャラビさんは、目くらましのかなりのマスターであり、「ペ トラ銀行スキャンダル」でのヨルダンからの蒸発で、昨年もノミネートされてい ます。
最優秀製作部門:
「イラクの自由作戦:テロとの戦争」(原題「父の戦争」):ラムズフェルド、ウォ ルフォウィッツ他、ワシントンネオコン製作。
「イラク自由選挙」:アブドル・アジズ・アル・ハキムおよび彼の大軍勢(文字 通り)の支持者たち(バドル軍団員)製作(および演出)。
最優秀作品賞:
「イラクの自由作戦:テロとの戦争」:主演―― ジョージ W. ブッシュ、ディッ ク・チェイニー、コンディ・ライスほか。目が離せないドラマの舞台はイラク。 「G(だまされやすい人)」指定および「R(共和党員)」指定映画。[訳注: ふつう、G 指定 は「一般向け映画」、R指定は「成人向け映画」。ここでの GはGullibilityを、RはRepublicanを指している]
「イラク自由選挙」:主演――アブドル・アジズ・アル・ハキム、イブラハム・ アル・ジャファリ、ムクタダ・アル・サドル。外国の占領下での自由投票という 無茶な論理のブラックコメディ。
「やらせ裁判」:主演――サダム・フセイン、バラザン・ハッセン、様々な裁判 官、検察官、および弁護士。
特別賞:
まず最初の特別賞はブッシュのスピーチ・ライターへ。演説するジョージ・W・ ブッシュが偉大な人物ではないし、善良な人物でもないという印象を与え、なお かつなんとか“及第"という演説原稿を書くのは、世界一難しい仕事に違いない。 また、最大2音節だけの単語を使用しスピーチを書くのは、困難でもやりがいが あることは疑いない。次にスンニ過激派とワッハーブ派の支援に対しサウジアラ ビア人へ、シーア過激派の支援に対しイラン人へ、そして混乱の維持に対しアメ リカ人へも特別賞を。
そして、われらがグリーンゾーンのセレブが偉大な勝利を祝うために駐屯基地 へ引き揚げると、イラク人は、次にどんなすばらしい映画が用意されているのか 知りたがる。大ヒット作が製作中であるとの噂でもちきりだ――今年の最も期待 される心理スリラー「イラクの内戦」が試写寸前まで完成しているという噂で。
午前2時50分 リバー
(翻訳:リバーベンド・プロジェクト:金克美)
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