TUP BULLETIN

速報621号 リバー・ベンドの日記 7月30日 レバノン、カーナーの虐殺 060801

投稿日 2006年8月1日

DATE: 2006年8月1日(火) 午後10時35分

無辜の子どもたちの死をなぜ世界は黙ってみているのか


 戦火の中のバグダッド、停電の合間をぬって書きつがれる若い 女性の日記『リバーベンド・ブログ』。イラクのふつうの人の暮らし、 女性としての思い・・・といっても、家宅捜索、爆撃、爆発、誘拐、 検問が日常、女性は外へ出ることもできず、職はなくガソリンの行列 と水汲みにあけあけくれる毎日。すぐ傍らに、リバーベンドの笑い、怒り、 涙、ため息が感じられるようなこの日記、ぜひ読んでください。(この 記事は、TUPとリバーベンド・プロジェクトの連携によるものです)。 http://www.geocities.jp/riverbendblog/


2006年7月30日 日曜日

カーナーの虐殺…

わたしたちが住んでいる中東の今の時期は、太陽が目がくらむほど輝いてい るというのに、最も暗い日々が続いている。

今朝わたしは、テレビに映し出される殺戮と破壊の光景で目が覚めた。一瞬 イラクの映像かと思ったけれど、数秒たって、それがレバノンのカーナーであ ることがわかった。イスラエルが空爆した町々のうちで、一番最近のものだ。 映像は凄惨といった言葉ではすまないものだった。そこでは、何トンという瓦 礫の下からバラバラになった肢体や身体が引っぱり出されていた。そして愛す る者たちを捜して嘆く身内や友人たちの姿・・・人道機関によれば、今までの ところ、34人は子どもだったとのことだ。あいつらは避難所で眠っている子 どもたちを爆撃して殺したのだ―1991年のアミリヤシェルターでの虐殺に そっくりだ。(注:アミリヤシェルターについては、2004年2月13日 のブログを読んで下さい)  http://www.geocities.jp/riverbendblog/0402.html

反応がなく異様にひん曲がった子どもたちの屍骸がテレビに映し出されてい た。子どもたちの顔に凍りついたまま残っていたのは苦痛とショックの表情だ った。わたしはテレビの真ん前に座り込んだまま泣き崩れていた。イラク人に とって毎日の現実になってしまっているこのようなことに対して、こんな悲し みをまだ感じるなんて思わなかった。これはイラクではないけれど、同じこと なのだ。一般市民が殺人攻撃に晒されている。そして、占領に対して闘ってい る。

あまりの絶望感に、わたしはまともにものを考えることができなくなってい る。怒りで爆発しそうだ。イスラエルに対して、アメリカ、イギリス、イラン、 そして殆どのヨーロッパの国々に対して。無辜の者たちへの虐殺を許し傍観し た罪で、世界は地獄へ堕ちるだろう。ああ何ということか、34人もの(ほん とにこれだけ???)子どもたちを。国連は無能以下だ。彼らは世界を良くす るための国々の連合から(かつてそうあったとしてだけど)、墓堀人夫の寄せ 集まりになり果てている。せいぜい、廃墟となった建物からバラバラになった 身体を掘りだし、それが誰であるかの確認をし、合同墓地に犠牲者を葬るのを 手伝っているだけだ。虐殺を止めようともせず、反対の声をあげようとさえせ ず、めちゃめちゃになったところに来てきれいにするのを手伝うだけなのだ。 アラブ人の生命の重さは、そんなに軽いものなの?もしこれが、アメリカやイ ギリスやフランスや中国で起こったことなら、だれかさんがとっくの昔に原子 爆弾を落としていることでしょうね・・・どうしてこんなことが起こっている の?

安全保障理事会はどこにいるの??? なぜ彼らはイスラエルを止めさせな かったの? エフード・オルメルト(イスラエル首相)は、このあいだコンデ ィ(コンドリーザ・ライス米国務長官)に、殺戮にはまだ10日か14日が必 要だと言った―それに対して、何の対抗手段もとられていない! アラブの役 立たずな指導者たちはどこにいるの? アメリカ寄りの腰抜けの首長たちは、 もういい加減に黄金の宮殿から這いずり出て、この殺戮を糾弾したらどうなの? 我らが大統領や指導者たちは彼らの石油樽の深さ分くらいは影響力があるのに。

これでも、世界の人々はどうして「テロリスト」が生まれるのか、わからな いのだ! 15歳のレバノン人の少女が、カーナー空爆で5人の兄弟姉妹と両 親と家を失った・・・エフード・オルメルトはただちに、彼女も殺した方がい いことになる。なぜなら、この少女が彼や何であれ彼に代表されるもの全てに 対して憎しみのかけらもなく成長すると考えているとしたら、それはとんだ勘 違いというものだからだ。

この破壊行為というのは、どちらがやるかによって、テロリズムにされるか 自国防衛にされるかが決まるのよね? 民兵や反乱分子や抵抗勢力の兵士であ れば、それはテロリズムとされる(もちろん、民兵や反乱分子や抵抗勢力がC IAに特別に資金提供されている場合を除いてだけど)。もしそれが、イスラ エルやアメリカやイギリスの軍隊だったら、先制攻撃か、「テロに対する戦争」 ということになるのよ。何百もの無辜の生命が奪われることなどは問題ではな いの。昨夜のように子どもたちの命が奪われたとしても―どうせ彼らは、たか がアラブ人なんだからいいじゃないかってこと、そうなんでしょ?

ちがう?

午後10時16分 リバー

(翻訳:リバーベンド・プロジェクト:ヤスミン植月千春)