FROM: hagitani ryo
DATE: 2006年8月5日(土) 午前1時08分
権力者たちが、今一番やってほしくないことを
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2005年11月5日に配信された
速報559号 劣化ウラン反対運動
http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/605
の続編をお届けいたします。
くり返しますが、この提言の意図は「反DU(劣化ウラン)運動を分裂させる」こ
とにあるのではなく、むしろ「多くの人々が知らぬ間にすでに分裂させられてい
る反DU運動を統一させ、すでに私たちが持っている武器を使って『今、DUを止め
る』という目的のために、私たちの力を100%活かせるようにすること」にありま
す。
文責: 千早/TUP翻訳メンバー
情報提供: カレン・パーカー弁護士
ダグ・ロッキー退役米陸軍少佐
May Earth be Filled with Peace and Happiness!
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1) カレン・パーカーの申し立て
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まず最初にカレン・パーカーたちが米州機構に提出した申し立てを少々ご紹介し
ます。一昨年これに関するプレス・リリースを訳したときは”petition”という英
語を「嘆願」と訳したのですが、
2004年11月28日配信
TUP速報412号 米州機構への正義の嘆願
http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/441
今回この件で色々見直しをしている内に、これは「訴訟」と言うべき性質のもの
で、「申し立て」と訳すべきだったと気づきました。
<申し立て>
人権弁護士協会より
米州機構米州人権委員会に提出
生死を問わず、ファルージャ総合病院とトラウマ診療所の名もなき無数の患者と
医療スタッフに成り代わり
アメリカ合州国に対して
申立人代理
カレン・パーカー
<目次>は省略
<当件の概要>
2004年11月7日(日)、米軍特殊部隊所属の兵士たちはイラクのファルージャにあ
るファルージャ総合病院を占拠しました。病院にいた患者たちは病室から追い出
され、床に横たわるよう命令されて両手を背中のうしろで縛られました。この件
以外にも診療所が攻撃され、医師20名と無数の患者が殺されたという信頼できる
報告もあります。生存者たちは緊急に手当てなどを必要としています。組織的申
立人は、米州人権委員会の訴訟規則25条に規定されたように、この申し立てを緊
急案件として提出いたします。
組織的申立人は、当該病院と診療所の現況とともに患者や医療スタッフに対する
攻撃の影響に関する報告が真実であるならば、25条に規定された救済が正当化さ
れ、米州機構第9回国際会議(1948年)の人間の権利と義務に関するアメリカ宣言
(以下、アメリカ宣言)の1条(生命、自由と個人の安全に関する権利)、5条
(個人の生命に対する、虐待のような攻撃を受けない権利)、11条(健康と幸福
を守る権利)、そして25条(独断的な逮捕・拘留から守られる権利)に違反する
ものであると主張いたします。
アメリカ合州国は米州機構の一員であり、それゆえにアメリカ宣言を守る義務を
負うものであります。
(後略)
<組織的申立人>
<組織的申立人、23条の条件を満たす>
<25条、予防措置の要請>
は省略
<(米)国内の救済手段が適用されない事由>
申立人は、本件が規則25条による緊急を要するケースであることから、規則31条で
要求されている国内法による救済手段の適用を免れるものであると主張いたします。
また申立人は、軍事衝突の際に起きる人権法違反による被害者に対し、米国内法は
なんらの救済措置も準備しないことを断言し、委員会の求めがあれば、その立証も
いたします。
<事実>
(前半略)
医療施設の近辺でおこなわれた攻撃にエイブラムス戦車が使われたとの明白な証拠
があり、この戦車が劣化ウランを含む兵器を発射するのに使用されることから、患
者や医療スタッフに更なる危険を与え得る可能性があります。劣化ウラン兵器は放
射性物質であり、(使用された)地域にいる人間の生命や健康に破壊的な影響を与
え、戦闘が終了したのちも長期にわたって致命的な影響を及ぼすものであります。
この理由により、1996年に国連人権促進保護小委員会は、この兵器の使用は現存の
人権や人道法の基準とは相容れないものだと判定いたしました。
状況の緊急性は、この件に関連して声明を発表した国連人権高等弁務官の訴えにも
示されております。
(「申し立て」よりの引用終わり。
<事実>以下の項目は省略しています)
原文
PETITION
http://www.humanlaw.org/petition.html
このように、カレンたちは劣化ウランが使われた可能性についても訴えています。
「ダール・ジャマイルのイラク速報11月23日」にも、包囲攻撃から一年経ったファ
ルージャからの声として
デラジもうなづいて、「多くの新しい病気、特に子どもたちや攻撃期間中にファルー
ジャ市内にとどまった人々にガン(癌)が発生している」と言った。
(URUK NEWS イラク情勢ニュース
http://www.geocities.jp/uruknewsjapan/
2005/11/27より引用)
という記述が出てきます。
このような証言や画像、映像は皆さんの多くも目にされていると思います。
また、
[きくちゆみの地球平和ニュース]Global Peace News vol.003
ファルージャで化学兵器を使った米軍
http://blog.mag2.com/m/log/0000172015/106629233
や、拙訳、
速報476号 米映像作家、マーク・マニングのファルージャ報告
http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/516?expand=1
ほかでも紹介された白リン弾(元々日本では「黄リン弾」と呼ばれていた)やナパー
ム弾(今回米軍は「ナパームではない」と主張するために別の名称を使っています
が、実質的には同じ)、また広く知られているクラスター爆弾の使用も含めて、カ
レンはこの訴訟を起こしているのです。
尚、この申し立てには「追加事項」が出ており、申立人や犠牲者と犠牲になった施
設の追加が提出されています。
SUPPLEMENTAL SUBMISSION
http://www.humanlaw.org/supplemental.html
(英文)
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2) グレナダに関しての勝利
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前回の速報配信後、直接質問をしてきた仲間のメールには「そんな訴訟をしても、
勝ち目などないのでしょう?」という声がありました。それに対しては、彼女が過
去に担当したグレナダの件に触れたいと思います。1983年10月、カリブ海南東部に
ある島国グレナダに米軍が侵攻し、その際破壊された精神病院に関しカレンが米州
機構に出した申し入れです。その結果を端的に述べた文章をお読みください。
<グレナダ>
この成功裡に終わった行動は、人権法における判決のなかで幾多の理由によって画
期的な一件だった。
1)あらゆる人権関連の場で、米国を相手取ってはじめて認容された事件だった
2)米州機構において、はじめて犠牲者が第三国を相手に訴えた事件だった
3)米州機構において、はじめて人道法を人権訴訟に取り入れた事件だった
4)その結果として米国は、破壊したものに代わる最先端の施設を建設し、技術面の
援助を与え、物品や賠償に400万ドル以上も捻出しなければならなかったのだ
(後半略)
原文
GRENADA
http://www.humanlaw.org/grenada.html
このように、カレンたちには米国を相手取って米州機構に訴えた結果として、勝訴
の前例があるのです。グレナダ侵攻については国連でも米国に対する非難決議が採
択されましたが、こうした処罰・賠償を強制できたのはこの申し入れだけではない
でしょうか。米州機構のメンバーである国々の多く、つまり中南米の諸国は過去に
米国にひどい目に遭わされた経験があり、その怒りがこの訴訟でも反DU側に有利に
働くと彼女たちは見ています。
また「被害国が米州機構に属していないのに、裁判権は存在するのか?」というご
質問が出るかもしれません。が、カレンからはその点「米州機構そのものや欧州人
権裁判所などの最高の専門家たちが、このケース(この申し立て)の裁判権に関し、
私を支持する文書を出してくれています」と教えてくれました。
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3) 国連での決議などの文書
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上述した「申し立て」の<事実>に述べられている文章、
「1996年に国連人権促進保護小委員会は、この兵器の使用は現存の人権や人道法の基
準とは相容れないものだと判定」
の意味、殊に
「人権や人道法の基準とは相容れないもの」
の意味は、人権や人道法という法律に違反したものだ。
つまり、それは違法行為だということです。
違法行為ということは、法律で禁じられた行為です。
いくつか存在する文書の一部をご紹介いたします。
まずカレンが1996年、最初に劣化ウラン兵器の存在を知って、すぐさま国連人権促
進保護小委員会に持ち込んだ際、英国の代表が殊に熱心に取り上げて同委員会が即
刻出した国連決議、
「生命のすべての権利に優先する、人権の享受のための必須条件としての国際的平
和と安全」
原文
E/CN.4/Sub.2/1996/16
International peace and security as an essential condition for the
enjoyment of human rights, above all the right to life
Sub-Commission resolution 1996/16
http://ap.ohchr.org/documents/E/SUBCOM/resolutions/E-CN_4-SUB_2-RES-1996-16.doc
途中からになりますが、そこには
申し立てられた大量、または無差別的破壊をもたらす兵器の軍人および民間人に対
する使用が、死や苦痛、障害を引き起こすことを憂慮し、
かような兵器が人命および健康と環境に対し与える、くり返し報告された長期的な
影響を憂慮し、
かような兵器が単体で、またはほかの兵器と組み合わせて使用された場合に生じる
破片が環境に与える物理学的影響と、汚染され、放棄された備品などが深刻な人体
への危険を生じることを更に憂慮し、
かような兵器の製造、販売と使用は国際的な人権と人道法とは相容れないものであ
ると確信し、
(引用終わり)
と明記されています。
くり返しになりますが、ここでも書かれた
「国際的な人権と人道法とは相容れないもの」
というのは、国際的人権や人道法という法律に違反したものである。つまり、それ
は違法行為であり、国際法で禁じられた行為だと国連が認めたということになりま
す――それら兵器の「製造、販売、使用が違法だ」と。
そして、ここで語られた兵器について
「人権と大量破壊兵器、または無差別的効果をもたらす兵器、または過度の被害や
不必要な苦痛をもたらす兵器」
SUBCOM 54th 27/06/2002 E/CN.4/Sub.2/2002/38
Human rights and weapons of mass destruction, or with indiscriminate
effect, or of a nature to cause superfluous injury or unnecessary
suffering
http://www.unhchr.ch/Huridocda/Huridoca.nsf/(Symbol)/E.CN.4.Sub.2.2002.38.En?Opendocument
の7ページ目、「兵器」という項目では
5.小委員会決議1996/16と1997・36に記載された特殊な種類の兵器とは、核兵器、
化学兵器、燃料気化爆弾、ナパーム、クラスター爆弾、生物兵器と劣化ウランを含
む兵器である。
(引用終わり)
と明記されています。
そしてこの国連人権保護小委員会は、国連において唯一の一般的管轄権の専門家組
織であるとカレンは言います。
カレンの弁、原文
“The Sub-Commission on the Promotion and Protection of Human Rights is
the only ‘general jurisdiction’ expert body in the UN.”
その専門家たちが、「劣化ウランを含む上に述べたような兵器は『違法である』と
いう事実」を明確に言及したのです。
素人の私がつけ加えて言いたいことがあります。
先日レバノンからの報道を、TVのニュースで見ていました。
現地に飛んだ国連職員にジャーナリストが「これは戦争犯罪ですか?」とイスラエ
ルの攻撃について尋ねました。その職員は一瞬考えてから「これは国際法違反です」
と答えました。
国連で「戦争犯罪」という言葉を決して使わないということではないと思います。
でもその際は厳密に調査や吟味をした上でのことになるでしょう。またカレンと話
したときの印象では、「違反」や「違反行為」を意味する”breach”や”violation”と
いう単語を「犯罪」”crime”より頻繁に使い、「戦争犯罪」”war crime”を意味する
ときには「重大な規律違反」”grave
breach”という表現を使うのが慣例のようでした。
ここで私が言いたいのは、国連という場(或いは法曹界)では私たちが普段使うよ
うな言葉遣いとは語彙がちょっと違うのではないか。それ故に、決議等で使われた
「国際法とは相容れない」という表現が、一般人である私たちからするとなんの威
力も拘束力もないように響くのかもしれない、ということです。
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4) 国連決議や監査調書の否定
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英国マンチェスターで2000年11月に開かれた「反劣化ウラン兵器国際会議」前後か
ら、カレンが国連に持ち込んだ結果出されたいくつかの国連決議や監査調書、事務
総長からの文書の内容を否定する人々が現れます。
その中の一人、エイヴリル・マクドナルドという女性の弁護士がいるのですが、彼
女の書いた文書をインターネット上でみつけたときに、正直私は驚きました。
2003年に開かれたシンポジウムで述べたと言われる劣化ウランの違法性に関する文
章には、こう書かれています。
既存のヘイグやジュネーブ条約をもって、劣化ウランの使用が明確に違法であると
断言することは出来ません。その使用が禁じられているということも、明らかな国
際的人道法の規定や原則に対する違反があるという状況でない限りは同様です。し
かしながら、劣化ウラン兵器が違法な形で使用されることは理論的には可能です。
劣化ウランが「対物兵器」としての性質をもって使われるよう作られたことを踏ま
えても、もしそれが格好の標的に対して以外の「対人兵器」として使われたとした
ならば、それは過度の被害や不必要な苦痛をもたらす兵器という原則により、違法
であると認識されるかもしれません。
(引用終わり)
原文
Depleted Uranium Brief Continued
http://www.psr.org/home.cfm?id=du2
皆さんにもちょっと考えていただきたい。
劣化ウランは敵の戦車や建造物を破壊する爆弾に使われると同時に、ライフルや地
雷にも使われています。そしてそれらがたとえ「対物兵器」と考えられたとしても
(「ライフル」が「対物兵器」ですか?)、敵の兵士が一人も乗っていない戦車だ
けを常に撃つのでしょうか? ファルージャでも破壊された病院や診療所に対する
攻撃は、一体どう考えればよいというのでしょう? それに、対物地雷やクラスター
爆弾がどれほどの人間をこれまで殺したり、負傷させてきたか想像していただけま
すでしょうか?
そういう犠牲者たちを見殺しにしたままで、
そうやって無残に殺されたり傷つけられた人々の補償を勝ち取ろうとする行為を否
定する。
それが「劣化ウラン反対運動」のやるべきことでしょうか?
それで「劣化ウランに反対している」と言えるのでしょうか?
このマクドナルドの記述に唖然とした私がダグにメールを送ったところ、ダグは
「彼女は兵器とか軍について、まったくわかっていないんだ」と書いてきました。
素人の私から見ても、こんな言い訳で「劣化ウランが違法だというのは間違ってい
る」と主張するのは絶対におかしいと思います。戦争や戦闘が殺戮と破壊でしかな
いことが、まるで見えていない。人を一人も殺さずに戦争や戦闘ができるものなら
まだしもですが、現実はそうではないのです。
しかし、ICBUWが推し進める国際条約に賛同する方たちは、
マクドナルドのこの論理に賛成しているということになりませんか?
ここで出てくるもうひとつの意見は「カレン・パーカーは、己の名声のために国連
決議などをひけらかして騒いでいる」というものです。これが「カレン対エイヴリ
ルの一騎打ち」であるかのような印象を与える意見です。
しかし、ここでエイヴリル・マクドナルドが否定したのはカレン一人にとどまらず、
国連の大ベテランである判事や人道法の専門家たちが下した判断なのだという事実
に気づいていただきたい。
マンチェスターの会議でこれらの決議等を否定する発言を始めたマクドナルドは、
当時まだインターン(研修生)だったといいます。かたやカレンは20年余にわたっ
て国連の人権関連機関で活躍してきた弁護士です。研修生の捉え方と、カレンや国
連の経験豊富な専門家たちが明言したことの、一体どちらを皆さんは信じるのでし
ょうか?
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5) ウラン兵器禁止を求める国際連合(ICBUW)
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日本の「ウラン兵器禁止を求める国際連合(ICBUW)」に関わっている方たちの多く
は、私が仲間だと思っている人々です。訴えている事項に誤りがあっても「劣化ウ
ランなどの非道な兵器を止めたい」という想いは同じなはずです。そのサイトには、
「ウラン兵器は、地球を慈しむ人間的世界の創造とはとうてい相容れないことを、
私たち市民は諸国政府や国連に声を合わせて訴えなければなりません」
とあります。
しかし、この「ウラン兵器等が既存の国際法とは相容れない事実」はすでに国連が
明言したのです。ですから今からそれを訴えても、国連は何もしないだろうとカレ
ンは言います。
またICBUWは「『ウラン兵器禁止条約』を締結すること」
を要求事項に掲げています。
上の引用は
ICBUW国際キャンペーン
ウラン兵器禁止を求める国際署名用紙
http://www.nodu-hiroshima.org/canpain1.htm
前回の速報でも書きましたが、唯一の製造国であり使用国である米国と英国がICBUW
の目指す国際条約に署名するはずがないのです。自国が訴えられる事態を見越して
国際刑事裁判所に署名しないアメリカです。自分を有罪にする条約に、おとなしく
署名するはずがありません。
また、劣化ウランなどのように「既存の国際法に照らして自動的に違法とみなされ
る武器」と、「自動的に違法とはみなされない」が、「戦闘終了後に回収処理をし
ないのが問題」だった地雷とを比較するのは妥当ではありません。ある意味で地雷
は「地雷条約」を必要としたと言えるでしょう。それでも尚、その必然的に作られ
た地雷条約でさえ、多くの地雷製造・使用国がいまだに署名しないために中々根絶
はできないのが実態であることは、皆さんもご存知だと思います。
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6) 違法ということ
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日本語のサイトを眺めているときに、国連決議等で述べられた劣化ウランなどの違
法性を疑う意見がありました。「法的拘束力がない」というのです。
そう解釈された方には申し訳ありませんが、逆にお尋ねしたい。
その方は、国連が明言した事実「既存の国際法に照らしてこれらは違法である」に
「法的拘束力がない」と主張されているわけですが、署名した国々の間でのみ効力
を発する国際条約の、取り締まるべき“犯人”である米・英が署名しないときに、
どうしてその条約が彼らに対し法的拘束力を持てるのでしょうか?
過去に訳したデニス・クシニッチの記事
2004年3月8日配信
TUP速報270号 【訂正版】 劣化ウラン
http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/280
を読んでいただくとおわかりになると思いますが、劣化ウラン等の兵器は既存の国
際法によって違法とみなされます。
ここで、私なりに考えた説明を致します。
私たちの社会では、人を殺すことは犯罪です。
違法です。
禁じられています。
でも「どのように殺したら人殺し=犯罪とみなすか」は六法全書などには書かれて
いないと思います。ですから刃物で刺し殺そうが銃で撃ち殺そうが、殺意を持って
人殺しをすればそれは殺人罪等に問われることになります。
それとちょっと似ていますが、既存のジュネーブ条約等では「戦争とはいっても、
これこれこのように人を殺したり、こういうケースを生じる場合は違法ですよ」と
定めてあるのです。ですから、それらの条件(のいずれか)に合致してさえいれば、
それは新たな法律などなくても違法になるのです。「刃物で殺した場合に殺人とみ
なす」と殺し方の詳細を定めた法律が存在しなくても、刃物で人殺しをすれば殺人
犯になるのと同じ。「銃で撃ち殺したら殺人罪だ」という法律がなくても、銃で殺
人を犯せばそこに法的拘束力が生じ、逮捕されるのです。
ですから、たとえ今後新たな兵器が作られたとしても、それが上の条件に合致して
いれば自動的に違法な兵器とみなされるのです。製造、販売、使用は禁止されるの
です。それは「劣化ウラン兵器」を「ウラン兵器」に変えても同じだということで
す。
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7) あらゆる犯罪が横行する現在
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9/11を皮切りに、私たちは無数の極悪犯罪を目の当たりにしてきました。
9/11の惨劇ゆえに国際社会からある程度以上の同情を買った「報復攻撃」のアフガ
ン爆撃も、9/11とはまるで関係のない人々をたくさん殺し、傷つけました。今も戦
乱は終わってはいません。その後のイラク侵略と現在も続く暴力的な占領は、明ら
かな国際法違反です。
でも、誰もつかまったりしていない。
無実の人間を暴力的に拘束し、虐待を加え、起訴する材料もないまま何年も投獄し
たグアンタナモやアブ・グレイブの内実も暴露されました。親玉ラムズフェルドが
最初から知っていたというより、「そういう手段を使え」と命令した事実を報道し
たドキュメンタリー番組すらありました。
それでも、下っ端は除いてただの一人も辞任することさえない。
最近では、グアンタナモで開かれる軍事裁判は違法であるという見解が米国の最高
裁によって出されたのにもかかわらず、この件でも関係者、責任者の誰もが逮捕さ
れずに忘れ去られていく。
こうした狂った状況に、私たちは麻痺してしまったのでしょうか?
いいえ、罪を犯した者たちは「逮捕して裁判にかけ、罪に応じた刑に服させる」の
が本来取られるべき行動なのです。
2003年6月のメルボルンでの講演でダグが言ったとおりです。
犯罪を犯した者は一人一人つかまえて、裁判にかけなきゃって。
参照
【報告】 Dr. Doug Rokkeのオーストラリア・ツアー
〜 劣化ウランの恐怖 〜
http://japan.indymedia.org/newswire/display/605/index.php
それをやろうとしているのがカレンの申し立てです。
また、カレンは決して一人ではない。
彼女は「資金さえ集められるのならば、私のように犯罪国家を訴えたい人権弁護士
は何人もいるのよ」と私に言いました。
彼女、彼らを経済的に支援すれば、そしてもっと多くの訴訟を起こせば米国や英国
は膨大な補償金の支払いに追われて、劣化ウランなどの兵器を諦めるしかなくなる
でしょう。
そこまで極悪犯たちを追い込みたいとは思いませんか?
『戦争中毒』の連中を、「戦争で大儲け」するどころか巨額の補償や非難の嵐の中
で戦争ができないようにさせたくないですか?
それとも、法的拘束力も何もない国際条約に金銭を含むすべてのエネルギーを無駄
に使いたいですか? 「嘘をついてでも使い続けられるようにしろ」と命令した米
軍トップや米政権首脳が、自らを非難する条約に素直に署名すると思うのですか?
どこまで彼らが「他人のことなんかどうなっても構わないし、法的にも処罰され
ずにやりたい放題やっている」不条理を見続けたら――この先、何人世界中で殺さ
れたらみんなの目が覚めるのでしょうか?
それより、劣化ウランを今すぐ止めるための大きな一歩を踏み出しませんか?
—————————————————–
8) 人間の感情と、事実をみつめること
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「これが正しい」と信じて一所懸命にやってきたことを批判されるのは、とてつも
なく不快なことです。私は今、それをICBUWで頑張ってきた仲間たちに向かって書い
ています。
でもここで言わなければ、
「今、国際会議を開いているこのときこそ、軌道修正の好機だ」と信じて、キーを
叩いているのです。原爆を落とされた広島の地から、真に「劣化ウランを止める行
動」を起こしてほしいから。
どうか、私が皆さんを傷つけようとしてこれを書いているなどとは思わないで下さ
い。批判をされた不快感から、私がここに記した事実を見ないという選択をするの
だけはやめてください。
長年「建設する」と決まっていたダムだって、長野では計画を覆して取りやめまし
た。誰でもいつでも「本来進むべきコースを外れていた」とわかったら、その時点
で軌道修正をすることは不可能ではありません。
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9) 米軍内の命令
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長くなるので全部の詳細および訳は書けませんが、米軍内部には「汚染された地域
や人員を清浄しなければいけない」とか、「被曝した可能性のある人のバイオアッ
セイ(生物学的検査)や医療措置を施さなければならない」などの命令がいくつも
存在するのです。米軍自身が「劣化ウランは危険だ」と認めている証拠です。でも、
いや、だからこそ誰もそれに言及しない。そして軍部もそれらの命令を無視し続け
ている。
1997年頃から公に告発を始めたダグだけがずっと以前から広めようとしているので
す。その彼も、国際会議などに出るたびに担当者に資料として手渡しているのに、
会議の記録集にはそれらの命令が掲載されないと言います。それは何故でしょうか?
1993年8月19日付のエリック・K・シンセキ陸軍准将が署名した命令では
(1) Provide adequate training for personnel who may come in
contact with DU contaminated equipment.
(2) Complete medical testing of personnel exposed to DU
contamination during the Persian Gulf War.
(3) Develop a plan for DU contaminated equipment recovery during
future operations.
要旨:DUに汚染された備品と接触する可能性のある兵士には、それ相応の訓練を受
けさせること。湾岸戦争中にDUを被曝した者には完璧な医療テストを行うこと。将
来の任務ではDUに汚染された備品を回収する計画を立てること
とありますが、実際にはなされていない。
1996年7月に出された
TB 9-1300-278
Guidelines for Safe Response to Handling, Storage, and
Transportation Accidents Involving Army Tank Munitions or
Armor Which Contain Depleted Uranium
という命令書では、「第8章 汚染除去」の中に
i. Isolate all clean areas from contaminated areas. Clean areas
adjacent to those being decontaminated should be covered with taped
down paper, plastic, or other disposable material to prevent
recontamination.
要旨:(DUに)汚染されていない地域は、汚染された地域から隔離されなければい
け
ない。
とあります。
DUで破壊された戦車付近で遊ぶ子供たちの写真を覚えていますか?
あれも「命令に違反した行為が産んだ悲劇」です。
2002年9月16日付けの
Army Regulation 700-48
Logistics
Management of Equipment Contaminated
with Depleted Uranium or Radioactive Commodities
の、第2章
放射能汚染された備品の扱い
Chapter 2
Radiologically Contaminated Equipment Management
には、
2-5. Medical Surveillance
a. The MACOM(Major Army Command) commander has the responsibility
for determining the likelihood of significant exposure from
contaminated equipment to any individual. Individuals that the
command determines may have been exposed will be sent to a medical
treatment facility for appropriate screening(i.e., individuals did not
follow the personal protective measures outlined in DA PAM 700-48 and
AR 40-5 or any of the recommended handling procedures as outlined in
the relevant regulationhs and technical manuals).
b. Medical personnel will perform the appropriate medical
monitoring, which may include bioassay.
c. Medical documentation of RCE(Radiologically Contaminated
Equipment) exposed personnel is mandatory, use form SF
600(Chronological Record of Medical Care).
要旨:軍司令官は、汚染された備品が誰かに重大な放射能被曝を引き起こし得るか
を判断する責任があり、被曝したと司令官が認める個々人は、適切な検査をするた
めに医療施設に送られる。医療班はバイオアッセイを含む適切な監視をすること。
また、放射能汚染された備品や被曝した人員に関する書類を作成せねばならない。
ダグは、ここで出てくる「誰か、個々人」はアフガニスタンやイラクその他で被曝
した人々を含むと言います。ですから、米軍には敵対する国の市民や軍の人員であ
っても医療措置を施す義務があるのです。それも皆さんご承知のように無視された
ままです。
また、
Task number: 031-503-1017
“RESPOND TO DEPLETED URANIUM/LOW LEVEL
RADIOACTIVE MATERIALS (DULLRAM) HAZARDS”
STP 21-1-SMCT: Soldiers Manual of Common Tasks,
Headquarters Department of the Army, Washington, D.C.
という兵士用マニュアルにはDUで汚染されたと見られる地域にいる際、どのように
身を守るか、洗浄はどのようにすればよいか、視覚的情報から汚染がどの程度かを
判断する基準などが書かれています。更に、
NOTE: The only way to confirm DULLRAM(DU or other Low Level
Radioactive Materials) contamination is with a radiation detection
device.
訳:劣化ウランなどから備品、車両などの物質が低線量放射能に汚染されたと確認
できる唯一の手段は放射能探知機である。
NOTE: Contamination will make food and water unsafe for consumption.
訳:汚染は、食料や水を飲食に適さないものにしてしまう。
とあります。
これだけでも、カレン・パーカーや国連の判事たちが文書で示した「劣化ウランは
既存の国際法に違反している」という証明になっているのです。だから、ダグやカ
レンたちの持つ情報が多くのウェブページには紹介されず、メディアが取り上げな
いばかりか、会議などに持ち込んでも、一般に広く知られないように隠されてしま
うのでしょう。
日頃から、大手メディアや各国政権が様々な問題に関してどれほどの情報操作や隠
蔽をしているか、皆さんは否定なさるでしょうか?
他にも
2003年5月30日付の
Policy for the Operation Iraqi Freedom Depleted Uranium(DU) Medical
Management
2004年4月29日付けの
Medical Management of Army Personnel Exposed to Depleted Uranium(DU)
等々。
それらの命令はICBUWのサイトに載っているでしょうか?
今回会議に出席する湾岸とイラク戦争のベテランは、そうした事実を語ってくれる
でしょうか?
正直に申せば、「責められるべき人間たち」には私自身も含まれるかと思います。
つまり、もっと前からこうした事実を紹介すべきだったのです。でも個々人の能力
や事情、優先順位などが邪魔をして、中々伝えることができない。或いは書類(殊
にハンブルグ会議の報告本)が手元にあっても、眼を通す時間がないから知らぬま
まで終わってしまう。
それでみんながそうした情報を持たないまま間違った方向に突っ走ってしまうこと
は、一般的に人生で数多く見受けられる現象です。
でも知ってしまったら――事実に気づいたならば、知ってしまった者としての責任
は果たさなければ。
「劣化ウランは素晴らしい兵器だから、ずっと使い続けられるようにしろ」=「そ
のためには嘘でも何でもつけ」という命令のロス・アラモスメモには従うけれども、
自分たちで作った「清浄」や「手当て」に関する命令は無視しているのが米軍なの
です。しかもそれはイラクやアフガンの人々への医療措置をも含んでいる。
彼らに、そうした命令の存在を思い出させてやらなければいけません。
カレンたちのような人権弁護士の努力とともに、彼らを彼ら自身の命令に従わせる
よう要求するのも、もうひとつの「劣化ウランを止める」ための大事な手段でしょ
う。何故って、そのような手間暇かかる汚染物の除去や清浄、医療検査を命令どお
りに全部やったならば、とてつもない費用がかかるからです。
ここまで読んでいただいて、どうしても私の言うことが間違っているとおっしゃる
のであれば、ICBUWの目指す“米・英が決して署名しない国際条約こそが正解である”
と信じておられるならば、どうか私が納得いくまでその理由を説明してください。
多くの人々に劣化ウランの悲惨さを訴え、広く知ってもらう活動はとても大切です。
でもそれ以外の部分で間違った要求は修正し、今すでに私たちの手中にある武器を
使って劣化ウランを止めませんか? 今すぐ資金集めのイベントなどを開催してカ
レンたちの訴訟を経済的に支援し、大量殺人を犯し続ける責任者たちに罰を与えた
くありませんか?
彼ら極悪犯たちが一番やってほしくないことを
今、やるべきだと思います。
どうか、勇気を持って
無数の犠牲者たちのために。
(千早/TUP)
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