TUP BULLETIN

速報636号 英国女王vsドナ・マルハーン裁判??  061009

投稿日 2006年10月9日

DATE: 2006年10月9日(月) 午後8時17分

パイン・ギャップ軍事基地民間査察裁判始まる


 オーストラリア人女性ドナ・マルハーンは、2003年春イラクでの「人間の 盾」に参加し、04年春には米軍包囲下のファルージャに入り、その帰路地元レ ジスタンスによる拘束を経験、04年冬から05年春にかけてイラク・パレスチナ を旅して、05年8月アメリカからシンディ・シーハンのキャンプケーシーにつ いて報告してくれました。オーストラリアに帰国したドナは自国のテロを見据 え、05年12月に米国主導のイラク戦争・占領にオーストラリアが最も貢献して きたアリス・スプリングス近郊のパイン・ギャップ軍事基地に向かい民間査察 を強行して逮捕され、最高7年の刑期を課せられるかもしれません。  その裁判が10月4日に、始まりました。その当日のドナからの報告です。 (翻訳:福永克紀/TUP)


クイーン VS ドナ・マルハーン――1日目 ドナ・マルハーン 2006年10月4日

「クイーン対ドナ・マルハーン……」

火曜日の法廷でこの言葉が読み上げられるのを聞いた時、思わずニヤーッとし てしまいました。

この日、私は女王になにか反対するつもりもなかったのですが、エリザベスII 世への言及と、スーツケースとファイルをいっぱい携え長い黒のガウンを羽 織ってまじめくさった顔をした人々の光景で、日常の現実から北部準州最高裁 法廷のシュールな世界に即座に引き戻されました。もし誰かがウェーブとカー ルのかかった小さな鬘《かつら》を被っていたら、それが重要な人物だと分か る世界に。

頭半分の鬘なのに、その鬘頭たちが3時間も複雑な防衛(特別事業)法を熾烈 に論じ合い、そうやって私たちを今後自由の身にするかどうかを論議している のを、真剣に聞くのは難しいものです。

訴訟手続の初めに起立を要請され、私に対する起訴内容が朗読され、続いて罪 状認否となりました。自分は「無罪」だと宣言したこの瞬間は、この主張の背 後には、この法廷から遠く離れたところに由来する大きな物語があることを 思って胸が熱くなりました。多くのテロと、血と、嘆きの話が。やがて、この 法廷で私が話したいと願う話が。

警官が両端に陣取る最前列に座っているのは、「パイン・ギャップを暴露」と 書かれたTシャツを着ているアデル、それにブライアン、ジム、私です。私た ちのうち3人は無罪を主張しました。しかし、私たちの主要トラブル・メー カーであるジム・ダウリングは靴も履かず、死亡したイラク少女が描かれ「解 放されたイラク」と書かれたTシャツ姿で、この法廷に彼を裁く権利があると は認めないと宣言し、有罪とも無罪とも申し立てをしないと言いました。それ から彼は、彼の行動は政府に戦争犯罪の責任を取らせるためにニュルンベルク 原則に基づいておこなったものであるという説明を続けたのです。

法廷内の「鬘」陣営には気詰まりな沈黙がただよい、青ざめていく陪席判事の 顔が彼女は今までこんな事態に直面したことがないことを示していました…… 裁判長は何食わぬ顔で審理を続けました。

その日の朝早く、約30名の人々がアリス・スプリングスの中央街にあるトッド ・ストリート・モールに集合しました。そこには、オーストラリア中から集 まってくれた支援者たちがスタッフを務めてくれている露店が2日前からあ り、パイン・ギャップと昨年12月の「全てのテロに反対するクリスチャンた ち」の市民査察の情報やバナーが置かれています。

裁判が始まる前の30分間に、私たちは行列を作り「パイン・ギャップを裁判に かけろ」などのメッセージが書かれたバナーやポスターを掲げながら、裁判所 に向かって街中を静かに行進しました。

裁判所の階段の下に到着した私たちは、「ウイ・シャル・オーバーカム」の数 節を歌い、メディアの写真撮影にポーズをとり、それからブライアンが群集に 向かって、イラク戦争と、イラク戦争での政府の嘘と、パイン・ギャップに関 する政府の嘘について演説しました。

私の共同被告であるアデルは、裁判を受けに中に入ろうとするとき、すすり泣 き始めました。地元の人がひとり、私たちに祝福をささげてくれました。オー ストラリア連邦警察官たちが写真を撮ります。背広姿の男たちが人目につくの を避けながら携帯電話で連絡を取っています。これは、普通の裁判以上のもの ものしさでした。

木枠作りの法廷内の傍聴席は、地元や各州からの支援者や各種の警察やメディ ア、それにジムの子供たち(7人もいるのです!)で満席でした。

私たちの真後ろには、ケンが座っていました。私たちを、これまで抗議に来た 人のなかで一番いい人たちだと言ったことのあるパイン・ギャップの警備責任 者です。私たちが逮捕された朝には、彼は確信を持ってはそう言えなくなって いました。今、彼がどう思っているかは私には分かりません。彼、そしてオー ストラリア連邦警察の私たちのお友だちは、これからのこの裁判という旅を私 たちと一緒にすることになるでしょう。

弁護(私たちの側です)は、意見陳述から始まりました。私たちの法律家チー ムは、元連邦裁判官ロン・マークル勅撰弁護士、メルボルンを本拠とするロ ウィーナ・オー法廷弁護士、リーガル・エイドの弁護士でもあるラッセル・ ゴールドフラムで構成されています。今回ロン・マークルが海外にいるという ことで、ロウィーナがメルボルンからのビデオ・リンクで出廷しました。 [訳者注:リーガル・エイド Legal aid 低所得者などに、無償か安価で法 的扶助を提供する組織]

防衛(特別事業)法の欠陥に関する彼女の包括的かつ長時間(ゆうに1時間は 越えました)の意見陳述は、その内容は明確でありその口調は活気にあふれて いました。

パイン・ギャップがなぜオーストラリアの国防にとって必要なのかを証明する ことは同法の規定していることですが、「特別防衛事業(special defence undertakings)」や「布告(declarations)」や「官報集(gazettals)」や 「禁止区域(prohibited areas)」などの概念を検討して、検察にその証明を 迫った彼女の弁舌には、私は目もくらむ想いでした。

もし、彼らがこれを証明できなければ、私たちは無罪放免となるでしょう。

防衛(特別事業)法は、市民の移動の自由という基本的人権を制限している、 それゆえその適用に当たっては特に慎重でなければならないと彼女は陳述しま した。

それに比べて、検察側の灰色鬘弁護士ダンバー氏が、意見陳述中「あのう、そ のう」という調子で言ったことといえば、「彼らは単に法を鼻であしらうこと を選んで、このような違法行為を、あのう……、市民不服従、そのう……、そ れがどういう意味であろうが、あのう……」というようなものでした。

「これは、この法が明らかにしようとする類の危害なのです」と、彼は続けま した。

「あのような危害を許すことは、正義の実現をみることにはならないのです」

防衛特別事業法は過酷だという弁護士の主張に対する彼の反論は、「被告たち が被る困難は、自業自得なのです」でした。

私たちの弁護士は彼の議論を完璧に打ち砕き、全般的にこの日は勝利したと意 見が一致しました。

しかし、裁判長はそれほど確信を持てるようでもない様子で、判断を下しまし た。彼女は、来週の木曜日かそれ以降まで決定を保留したのです。

ところで、弁護側によるある文書の証拠開示請求の件と、私たちにかけられて いる秘密の制限命令について討議する件で、明日(木曜日)また法廷に出なけ ればなりません。この極秘命令については皆さんにお話しすることはできませ んが、気を悪くしないでください、母親にさえ話すことはできないのです!

てんてこ舞いの忙しさで時としてストレスを感じますが、ここにはたくさんの 支持者がいてくれます、深い目的意識を持って気持ちは弾んでいます。

更なるニュースは近いうちに 皆さんの巡礼者 ドナより

追伸:皆さんすべてのご支持とご厚情に感謝します――本当に、ありがとう!

追追伸:下記はABC(オーストラリア放送協会)オンライン・ストーリーのア ドレスです。 http://abc.net.au/news/australia/nt/alice/200610/s1754879.htm

追追追伸:下部に私たちのメディア・リリース文を付けておきます、どうか連 絡の取れるメディアに配るなり、投稿文を書く見本に使ってください。

追追追追伸:「虚偽で固められた時代に、真実を述べることは革命的行為とな る」――ジョージ・オーウェル

[訳者注:以下、メディア・リリース文] キリスト教平和主義者、最高裁でパイン・ギャップに挑戦 2006年10月4日

北部準州最高裁で昨日開かれた4人のキリスト教平和主義者の裁判で、オース トラリアにある米国軍事基地に対する世論の批判を沈黙させようとする政府の 企みに対する挑戦が繰り広げられた。

4人の被告、ジム・ダウリング、ブライアン・ロー、アデル・ゴールディー、 ドナ・マルハーンは、不法侵入で最長7年の投獄を科すことが可能な防衛(特 別事業)法1952年をわが国で初めて適用され起訴されている。

グループは、昨年パイン・ギャップ軍事基地を「市民査察」し、極秘施設の警 備をすり抜け基地に侵入を果たし、建屋に登り、バナーを広げ、写真撮影をし た。

被告側のロウィーナ・オー弁護士は、防衛(特別事業)法は、市民の移動の自 由という基本的人権を制限している、それゆえその適用に当たっては特に慎重 でなければならないと確信していると陳述した。

同法は、パイン・ギャップが外部からの侵略に対してオーストラリアの利益を 防衛していると立証することを政府に義務付けている、したがって、もしそれ ができないなら、被告たちは無罪とされるべきであると、オー女史は述べた。

判事は決定を保留し、10月12日(木)に宣告の日にちを設定した。被告たち は、10月5日(木)に再び法廷に戻り、被告たちにかけられた秘密制限命令と 闘い、検察側が提供しない国家情報を得るための開示命令を求めて闘わなけれ ばならない。

この起訴は明らかに政治的なものであり、政府の戦争計画に挑戦する市民を迫 害しようとする政府の意図の反映であると、被告人の一人、ドナ・マルハーン は語る。

「この裁判は政府が追求している規制のレベルが、過剰なものだということを 示しています、ですから、規制しようとする政府の動きを私たちが抑制してい かなければなりません」と、彼女は言う。

「私たちは、これまでの公式の見方に代わるものをオーストラリアの人々に示 します――超秘密米軍スパイ基地は、オーストラリアの安全保障の鍵などでは ないとね」

「私たちの安全は、より良い関係を築くことで生まれるのです」

パイン・ギャップとイラク戦争でのその役割に注目を集めるために今週アリス ・スプリングスで開かれる全国平和大集会に、国中から支援者の集団が集まっ てきている。金曜の夜には、アイルランドのシャノン空港で米軍機に2百万ド ル以上の損害を与えたが最近無罪となった国際的活動家キアロン・オライリー を招いて討論会が開催される。

同様に、土曜日午後2時に、パイン・ギャップ施設での抗議行動が計画されて いる。

詳しい情報およびインタビューの連絡先は、ドナ・マルハーンXXXX-XXXXXX、 ジェシカ・モリソンXXXX-XXXXXXまで。[訳者注:電話番号省略]

原文:The Queen versus Donna Mulhearn – day one URL: http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/190