TUP BULLETIN

速報661号 ドナより イラク戦争4年──今こそ真実を語る時  070328

投稿日 2007年3月28日

DATE: 2007年3月28日(水) 午後7時16分

最大の犠牲、それは真実。外国軍がイラクを去って初めて癒しが始まる


 オーストラリア人女性ドナ・マルハーンは、2003年春イラクでの「人間の 盾」に参加し、04年春には米軍包囲下のファルージャに入り、その帰路地元レ ジスタンスによる拘束を経験、04年冬から05年春にかけてイラク・パレスチナ を旅して、05年8月アメリカからシンディ・シーハンのキャンプケーシーにつ いて報告してくれました。オーストラリアに帰国したドナは自国のテロを見据 え、05年12月に米国主導のイラク戦争・占領にオーストラリアが最も貢献して きたアリス・スプリングス近郊のパイン・ギャップ軍事基地に向かい民間査察 を強行して逮捕・起訴され、最高7年の刑期を課せられるかもしれません。  その本公判の予定日5月29日を前に資金集めに奔走し、「パイン・ギャップ の4人」の募金CD「立ち上がれ、真実を語るんだ」のキャンペーンにも忙しい ドナが、イラク戦争4年を振り返りイラク撤兵を訴えます。 (翻訳:福永克紀/TUP)


イラク戦争4年──今こそ真実を語る時 ドナ・マルハーン 2007年3月20日

お友達の皆さんへ

今週発表されたイラク人世論調査では、大多数が今はフセイン政権時代より悪 くなっていると考えていることが明らかになりました。どうして、そのような 結果になったのでしょうか? オーストラリアおよび各国政府がこぞって真実 を認め語ろうとしないことが、その核心にあります。

イラク戦争4周年をむかえて私が書いた感想を、下記に書き写しておきます。 これは今日のキャンベラ・タイムズに載った記事で、裾が血だらけの白いシャ ツを着たジョン・ハワード首相が血まみれの両腕をかかげた挿絵がついていま す。 http://canberra.yourguide.com.au/detail.asp?class=your%20say&subclass=general&story_id=567571&category=Opinion

私が大変気に入った大見出しでした。「イラク最大の犠牲、それは真実。外国 軍がイラクを去って初めて癒しが始まる」

[訳者注:以下、キャンベラ・タイムズの記事]

「虚偽で固められた時代に、真実を述べることは革命的行為となる」とは、 ジョージ・オーウェルの警告です。気がつけばそんな時代になってしまってい るオーストラリアには、勇気を持ってイラクの真実を語る指導者が求められて います。

イラク侵略はかの国をもっと良い国にはしなかった、これが事の真実です。世 界をもっと安全にはしませんでした。オーストラリアをもっと安全にもしませ んでした、いや、あらゆる意味でまったく逆に危険にしたのです。

それは、軍事的にも人道的にも一大惨事であり、おそらくわが国最大の外交政 策のしくじりです。そうではないと装うことは、私たちすべてをはずかしめ傷 つけることです。

ジョン・ハワード首相が折に触れブッシュのあらゆる「戦争路線」を復唱する たびに、オーストラリア人は、恐れをなして独自の外交政策を確立できない太 平洋諸島の国々と同レベルにまで国際政治の舞台では孤立化し、縮み上がって きました。

4年間もの意味のない混乱なぞ、もうたくさんです。それは私たちのうんざり した耳にも痛ましいばかりでなく、イラク全土の野原に散らばる米軍のクラス ター爆弾でいたいけな生身を裂かれる子供たちの傷に塩をすり込んでいる毎日 なのです。

2003年に戦争に反対して行進した約100万人のオーストラリア人は真実を語っ たものの、集合的に退けられ怒りや落胆とともに置き去りにされました。

しかし、戦争が引き起こす被害を心配した人々が抱いた懸念は正しかったので す。嘘や欺瞞を疑ったことは正当だったのです。戦争の動機に疑念を持ったこ とは道理にかなっていたのです。その余波に対する関心事は現実となってしま いました。

4年後の今、これらの問題は何ひとつ消え去ってはいません。政府は嘘をつ き、幾千人もの子供たちが死にました。明日にはもっと死ぬでしょう。ハリ バートン社は富をなした。何百万ドルもの援助金がどこかに消えた。イラク人 は車にガソリンを満たすために2日間も並ばなければならない。それが、私が バグダッドでじかに目にした真実です。

このため私たちは、心底からのフラストレーションと深遠なトラウマを引き ずっています。そして、かつて以上の最も恐れる更なる懸念を抱くのです── またこれから同じことが起こるのではないでしょうか?

イラク人たちはこの結果を微塵とも疑っていませんでした。バグダッド爆撃の 間、彼らが私に尋ねた最も一般的な質問は「本当にあの人たちは、こんなこと で何か良い結果を出せると思っているのですか?」というものでした。

いまや、イラク人には新しい独裁者が生まれただけです。彼らは、占領者を 「白いサダムたち」と呼びます。いまだに報復を恐れ、自らの政治見解を語る ことなどできません。少女たちは学校に通っていたが、いまやそれもできませ ん。女性たちはこの地域で最大の自由を満喫していたが、もう自由などありま せん。家庭には、電気が、燃料が、清潔な水がありました、しかしそれも今は ありません。

イラク人は、通りを歩くことができ、ある種の尊厳をもって生きることができ た日々を懐かしがっています。サダム政権下では、どうやって生き延びれば良 いのか分かっていました。いまはドアから一歩外に出ることが、生き残りのく じ引きを引くようなものです。残忍な独裁者・サダムが支配したイラクより もっと悪い状況を作り出してしまったのは私たちであるという事実が、私たち 全員を最大限に告発しています。

サダムでなくても、彼と同じように血に飢えて残忍であることができる──ア ブグレイブ刑務所の拷問や、不手際なサダムの処刑がその例──ことを私たち が証明してしまったおかげで、イラク人は自分たちにとってはたいして変わっ たわけじゃないと、むしろすべてが悪くなったと確信するばかりです。

ジョン・ハワードがイラク人の暮らし向きがよくなったといくら宣言しても、 イラク人100万人以上が新しいイラクから逃れ目下ヨルダンやシリアに押し寄 せ、自らの足でその真実を語っています。彼の言葉が、トラウマを受け途方に くれているこの難民たちの耳にどう響くか想像してみてください。

オーストラリア軍の撤退は、「尻尾を巻いて逃げること」になるだろうとジョ ン・ハワードは警告しますが、イラク人の見方は違っています。「銃とともに 母国に帰り、医薬品やセラピストや道具を私たちに送って援助してください」 と、心的外傷後ストレス障害子供プログラムを主導する児童心理学者アリ・ラ シード医師は要請しています。

首相は、軍隊の撤退はどのようなものであれ事態の悪化を招くだけだという予 測を立てています。今の止むこともない混沌とした流血の日々より悪くなるこ となど想像しがたいのですが、この予測は何に基づくものなのでしょう? 今 までの軍事作戦では、他の全てのことでも軍の戦略家たちは間違った判断をし てきました。今回もまた判断間違いをしていると思います。他国によるイラク 占領を終わらせれば、一夜にして暴力沙汰が発生する頻度は減るでしょうし、 日増しに減少するでしょう。現在のイラクにおけるほぼ全ての政治的暴力行為 の根本原因は外国占領軍の存在であり、その憤怒の元を取り除けばそれは自然 と減っていくものです。

たとえば、今日もバグダッドを走行中の米軍車列のいくつかは、道端に仕掛け られたたくさんの爆弾に狙われることでしょう。もしこれらの戦車がいなくな れば、兵士ばかりでなく飛び散る破片で死んでいたはずの子供たちも助かるこ とになります。イラク軍とイラク警察が実際にイラク人で運営されれば、「協 力者」であるとして狙われていたイラク人も、もはやそう目されることもなく なるでしょう──これだけでも1週間もすれば別の100人ほどの命が救われま す。確かに、権力欲にかられた男たちが指導権を張り合うかぎり、ある程度の 政治的暴力は残るでしょう。しかし、その暴力と、宗派間の暴力といわれてい るものとを混同しないでください、そんなものは侵略以前には存在しなかった のです。アメリカが片方を選び、武装させ、復讐をけしかけ、たたかうように 仕向けて初めて生まれてきたものです。それは宗派の問題というよりも、政治 と権力に関する問題なのです。

アメリカが両者間に楔を打ち込み片方に肩入れすることがなくなれば、この 「宗派間抗争」は政治的な合意と協定によって解決される可能性が生まれるで しょう、現にこの国の人たちが1400年以上もの間いく度もおこなってきたよう にです。彼らが必要とするものは、無知でしかも絶対的なこの介入を外国人た ちがやめることです。

「私たちは間違いを犯すかもしれません、でも、私たち自身で間違いを犯させ てください。今の私たちの状況より、一体どんな悪い状況になるというので しょうか?」と、アリ医師は言います。

イラクにおける内部抗争によって、オーストラリアが戦争に関与したことにつ いての真実が変わるものではありません。侵略は違法でした、占領は道義に反 しています、同時にオーストラリアを多大に傷つけてきました。オーストラリ アは撤兵する必要があります、なぜならそれがなすべき正しいことだからで す。

ジョン・ハワードが今週、テロリストを鼓舞するような行為について決まり きった文句で劇的な演説をおこなうでしょうが、それは誰の目に見ても明らか な事実を無視してのことです。イラク戦争がテロを増加させてきたのです。イ ラク戦争がテロを生み、増殖させてきたのです。他国によるイラクの占領は、 この事態が続くことを保証するでしょう。

テロリズムに対処すべき時の真実とは、あなたの安全はあなたの敵が友人に なった時に約束されるということです。隣人たちとより良き関係を打ち立てる 健全な外交政策があなたの防衛になるのです。あたなの人間愛があなたの安全 保障なのです。それが真実です。

[訳者注:キャンベラ・タイムズの記事、ここまで]

皆さんの巡礼者 ドナより

追伸:パイン・ギャップの4人の募金CD「立ち上がれ、真実を語るんだ」は、 ヒット・チャートの1位を取りそうな勢いです! 評論家たちが、60年代以降 の、いや史上最高の反戦歌集だと言っています! 初回版はほぼ売り切れで す。皆さんが注文されるには、皆さんの住所と、20ドルか優待料金15ドルプラ ス郵送料2ドルかを明記の上、私にEメールを送ってください。下記のいずれか の方法で支払いができます。(1)ショーン・オライリー(Sean O’Reilly)名 に小切手を切って、郵便でCD代金と明記の上、住所を 69 Kurumba St、 Kippa-Ring、QLD、4021 とし Sean O’Reilly(ショーン・オライリー)宛て に送る。(2)Sean O’Reilly(口座名ショーン・オライリー)、 Commonwealth Bank(コモンウェルス銀行)、Kippa-Ring(キッパ・リング支 店)、a/c number(口座番号)064166102 66104 に直接振り込む。

追追伸:これからの講演予定 3月30日(金) 午後7時15分 クエーカー・フレンズ・ミーティング・ハウス  キャンベラ ターナー コンダミン通とベント通の交差点 4月15日(日) 午後6時 セイント・メアリーズ・サウス・ブリズベン ブリ ズベン 4月16日(月) 詳細未定 ブリズベン

追追追伸:繰り返し書きますが、皆さんの何人かはご存知のように、私のイラ クでの経験を本にする仕事を昨年中やってきました。今は私には代理人もつい ており締め切りもあって、1週間かそこら誰にも邪魔されずに書ける場所が必 要です。ですから、もし誰か出かける方とか短期旅行に行くとか、または利用 できそうな空間、場所、隠れ家、洞窟などを持っていたり知っていたりする 方、どうかお知らせください。

追追追追伸:「あの像を倒したことを本当に悔やんでいます。あの独裁政権よ りアメリカ人のほうが悪いのです。毎日がその前の日より悪くなります。サダ ムはスターリンのようでした。しかし占領は、もっと悪いことが明らかになっ てきました」──カジム・アルジャボーリ 2003年先頭に立ってサダム像を破 壊したイラク人

原文:Iraq four years on – its time to speak the truth URL: http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/198

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