DATE: 2007年6月24日(日) 午後2時31分
市民査察で基地が一時機能不全に。その日イラクではミサイル爆撃は無かった
オーストラリア人女性ドナ・マルハーンは、2003年春イラクでの「人間の 盾」に参加し、04年春には米軍包囲下のファルージャに入り、その帰路地元レ ジスタンスによる拘束を経験し、04年冬から05年春にかけてイラク・パレスチ ナを旅して、05年8月アメリカからシンディ・シーハンのキャンプ・ケーシー について報告してくれました。オーストラリアに帰国したドナは自国のテロを 見据え、05年12月に米国主導のイラク戦争・占領にオーストラリアが最も貢献 してきたアリス・スプリングス近郊のパイン・ギャップ軍事基地に向かい民間 査察を強行して逮捕・起訴されました。 そして、最高7年の刑期を科せられるかもしれない裁判がついに始まりまし た。連日行われてきた裁判は、3週間目に入り最終段階に近づいてきた6月13日 (水)には検察・被告双方の最終弁論が終わりました。あとは、14日(木)に 予定される陪審員の評決と判事による判決の言い渡しだけとなりました。13日 の裁判閉廷後の夕刻に送られてきたドナの報告です。 (翻訳:福永克紀/TUP)
あなたの人間性を捨てなさい、判事が勧告 ドナ・マルハーン 2007年6月13日
お友達の皆さんへ
今日は、裁判所まで最後の行進をしてから、道路を挟んだ公園で歌と霊感を与 えてくれる朗読をする最後の集いで始まりました。
みんなで意気揚々として裁判所に入り私たちが法廷に着くと、公正な裁判を受 けることができなかったという理由で私がこの裁判の無期限延期を申請しまし た!(裁判が永遠に終わった状態になることを意味します)。判事はこれを認 めませんでした(求めることしかできないのです!)、しかしそうして理由を 述べておくことが大事なのです、こうすることでもし上訴するなら私たちの論 点すべてはその道を開かれていることになるのですから。
それからデンボ検察官の最終弁論がありました。私はその無味乾燥さに少し がっかりしました。彼が私たちを激しく非難するだろうと待ち構えていたので すが、かわりにいつもの台詞を持ち出すばかりでした。「誰も法律を自分の思 うようにすることはできないのです」とか、変革の手段としては議会の処理を 活用すべきであるとか、それから付け加えて、私たちの計画は「冷酷に計算さ れた」ものだと、そのうえ私たちは「それを自慢する厚かましさ」まで兼ね備 えていると言いました。
それからブライアン、ジム、アデル、そして私が最終弁論を行いました。これ らの清書謄本を早く手に入れたいと思いますが、今のところ私が陪審員に何を 話したか要約しておきます。
最初に彼らに、こんなにも一生懸命に身を入れて私たちの話を聞いてくれたこ とに感謝を述べました。
この訴訟は世界中から関心を持たれていることを話し、今朝は全オーストラリ アばかりでなく6ヶ国からも支持のメッセージを受け取ったことを話しまし た。
私の真剣さや動機、信念や行動を彼らが理解するための手助けができたと願 い、祈ったことを述べました。
「平和的な抗議行動が用を足さなかったときには、更なる行動が求められるの です。歴史がこれを証明しています、私の信仰がこれを求めるのです、私が人 間であること、その立場がそれを命ずるのです」
「お分かりでしょうが、私は議員たちに手紙を書きました、それでもパイン・ ギャップの人工衛星はまるで巨大な掃除機のようにデータを収集しました」
「デモにも参加しました、でも情報はリアルタイムで米軍に中継されました」
「世界中の何百万人という人々が民主的権利を行使して抗議行動を行い、街頭 に繰り出しました」
「しかしそれでも、パイン・ギャップのおかげでミサイル標的座標が整えら れ、ミサイルが落とされたのです。そして、もっとミサイルが落とされ、更に もっとミサイルが」
「私が行なったどんな合法的なことも、役に立ちませんでした」
「しかし、私がパイン・ギャップに行った数時間で、基地は活動停止し、イラ クに情報は中継されませんでした、そしてその日はミサイルは落ちなかったの です」
「私たちの行動は成功したのです」
「皆さんが私を無罪とされるよう求めます――同様の裁判で世界中の陪審員が 判断したように」
「これはあなたがたの権利なのです。皆さんが決定権を握っているのです」
「皆さんがたが、母として、兄弟として、娘として、夫として、父として、そ の良心に従って決定されるようお願いします」
「もうひとつ皆さんにお願いがあります。ちょっとの間、私が履いているブー ツのことを考えていただきたいのです」
「これは、アル・シューラ市場がミサイル攻撃を受けたあと、私がそこで履い ていたハイキング用ブーツです。人の肉が地上に散らばり、いたるところが血 の海でした」
「私のブーツには血の跡があります、その場に居合わせた人間の血です、それ はパイン・ギャップの標的座標決定のためです」
「私のブーツに付いた血の、その人の人間性を皆さんが尊ばれますようにお願 いします」
「彼らの死を無駄にしないようお願いします」
「彼らの命のために、赤ん坊のヌーラや、私の子供たち、アーメドや、ファリ スや、ムスタファや、セイフのために、私が世話するバグダッドの家族たちの ために」
「真実のために、皆さんの人間としての権利を行使され、自分が正しいと信じ る決定を下されるようにお願いします」
「私は皆さんが私を無罪とされることを求めます」
これは簡略化した報告ですが、要点は押さえたものだと……
午後の残りは、判事から陪審員に裁判全体の要約説明がありましたが、それは 非常に長々とした退屈なものでした。
それから彼女は陪審員に説示して、もし彼らが私たちに賛同するなり、私たち に共感するなり、イラク戦争に強い感情を抱いたり、更には私たちはもっとパ イン・ギャップのことを知らされるべきだと同意したりしたとしても、それは 自然な人間の反応だ、と言いました。
そして、それを無視しなさいと彼らに勧告しました。
容疑の要素についてだけ判断しなさい、良心に従って判断してはならないと勧 告しました、そしてデンボ検察官同様それを幾度も強調したのです。
それで今日の午後は陪審員は解放されて、明日午前9時に戻りもう10分間の説 示を裁判官から受けることになりました。
それから彼らは審議に入り、全員一致でひとつの結論に達したときに評決を下 すことになります。
少なくともひとりの陪審員が自らの良心の声を聞くように祈り続け、願い続け てください。
私たちは全員元気です、それに今夜は「模擬裁判」をおこない、法廷で質問す ることを許可されなかったパイン・ギャップ問題の鑑定人であり、わざわざ裁 判のためにアリス・スプリングスに来てくださったRMIT大学(王立メルボルン 工科大学)のリチャード・タンター教授に証言してもらいます。
明日、ことが分かったらニュースを送ります。
愛と感謝を込めてすべてかたへ ドナより
以下は、メディア・リリースです。
パイン・ギャップ裁判――法廷報告アップデート 2007年6月13日 イラク人の血、法廷に
本日、北部準州最高裁で行なわれたパイン・ギャップの4人の裁判の終局場面 で、イラク人の血痕が付いたハイキング用ブーツが陪審員の前に持ち出され た。
ドナ・マルハーン被告は最終弁論で、自分がいま法廷で履いている血痕の付い たハイキング用ブーツのことを考えてほしいと陪審員に要請した。彼女は米軍 ミサイル攻撃を受けた直後のイラクの市場でそのブーツを履いていた。
「今この法廷の中で、私のブーツにその血が残っています。人間の血です、そ れはパイン・ギャップが目標を決定したからです」と彼女は陪審員に言った。 「この人の血の記憶を皆さんが尊ばれますようにお願いします……真実のため に、あなた方の人間性のために。私は皆さんが私を無罪とされることを求めま す」
ジム・ダウリング被告は、検察側はあらゆる場面で真実を隠そうとしてきた、 と述べた。「連邦の手は、イラクの人々の血に染まっている」と言った。
連邦対パイン・ギャップの4人の裁判で弁論が終結し、彼ら4人の運命は今夜、 陪審員たちのひとりひとりにゆだねられている。その決定がどうであろうと法 的歴史が書き変えられることになる。
フィリップ・ラドック司法長官が、最長7年の実刑を科せるうえ適用されたこ とも無い防衛(特別事業)法1952年でこのグループを訴追した。この裁判には 参照されるべき判例法は存在しない。
2005年12月9日、ケアンズのブライアン・ロー、ブリズベンのジム・ダウリン グとアデル・ゴールディー、シドニーのドナ・マルハーンは、パイン・ギャッ プ基地のイラク戦争での役割を際立たせるためこの基地の市民査察を実行し た。
被告たちは、自分たちの行動の合法性を主張するために刑法典10条の3、4、お よび5(必然性、他者の防衛、その他)を論拠に使おうと計画していたが、昨 日サリー・トーマス判事により認められないと裁定された。
訴訟手続きは午前9時に再開され、判事からの短いコメントのあと、陪審員が 14の容疑全部について評決を審議することになる。
検察側は9人の弁護士や法律家を代理人に立てていたが、パイン・ギャップの4 人は代理人なしで弁護してきた。
今日の最終弁論でマルハーン氏は、「平和的な抗議行動が用を足さなかったと きには、更なる行動が求められるのです。歴史がこれを証明しています、私の 信仰がこれを命じるのです、私が人間であることが、それを求めるのです…… 私が行なったどんな合法的なことも、役に立ちませんでした。そして、私はパ イン・ギャップに行ったのです。そうしたら数時間のあいだ標的座標は中継さ れなかったのです、そしてミサイルは落ちなかったのです」と述べた。
サリー・トーマス判事は、「この裁判は、多大な感情を抱かせたものでした。 皆さんの何人かは、オーストラリアはイラク戦争に参加するべきではないとい う強い感情を持ったかもしれません……オーストラリア市民の一員として私た ちはパイン・ギャップで起こっていることをもっと知るべきだと感じたかもし れない……共感とか、感情移入とか、偏見かもしれないが、そういう感情を抱 くのは、普通の人間の反応です」と要約した。
「しかしながらこの件の審議に関しては、偏見や共感や感情移入を脇におい て、ご自分の知力を使って事件の事実だけを審査するよう皆さんに勧告しなけ ればなりません」
今夜グループは支援者たちと一緒に模擬裁判を開催し、裁判ではできなかった 鑑定人リチャード・タンター教授の証言を論ずる予定である。
イベントとインタビュー 今夜――6月13日模擬裁判 リチャード・タンター教授と共に タンター教授は、パイン・ギャップの本質に関する鑑定人として出廷する予定 だあったが許可されなかった。今夜の市民集会でその証言を紹介する予定であ る。
タンター教授は、RMIT大学ノーチラス研究所のフェローである。彼は、オース トラリア、日本、インドネシアで諜報と軍事問題関連書籍を広く出版してき た。
集会詳細 6月13日(水)午後7時 フリン・メモリアル・チャーチ・ホール アリス・ス プリングスのトッド・モール。タンター教授はメディアの取材にも応じる用意 がある。
被告たちとのインタビューは余裕ある通告ならば設定できる。被告人の写真撮 影、ならびに(個人およびグループの)写真および査察前のデモの動画なども 可能。
詳しい情報は、ジェシカ・モリソンXXXXXXXXX[訳者注:電話番号省略]に連 絡のこと。
6月13日午前8時30分 トッド・ストリート・モールから裁判所まで、支援者の「祝賀と連帯」のパ レード。
6月13日午前8時50分 被告たちとの写真撮影 アリス・スプリングスのハートリー通りの裁判所前階 段。 (すべてのイベントの写真はご要望によりお渡しできる)
原文:[The Pilgrim] Abandon your humanity, jury advised URL: http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/217