TUP BULLETIN

速報719号 エイミー・グッドマンによるマイケル・ムーアのインタビュー

投稿日 2007年7月20日

FROM: Kana Koto
DATE: 2007年7月21日(土) 午前3時26分

マイケル・ムーアが語る映画「Sicko」制作の背景
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エイミー・グッドマンによるマイケル・ムーアのインタビュー
(2007年6月18日)

アメリカ国民の税金を湯水のように使ってイラク戦争を続行するブッシュ政
権。世界一裕福なアメリカですが、先進国では世界で唯一国民健康保険制度
がありません。6月下旬にマイケル・ムーアによるドキュメンタリー映画
「Sicko(病人)」が初公開され、福祉制度の破綻に苦しむアメリカ庶民の
実情が赤裸々に暴露されました。

またもや全米に大旋風を巻き起こしているマイケル・ムーアに「デモクラシ
ー・ナウ!」のエイミー・グッドマンが6月18日(月)に一時間のインタビ
ューを行いました。そのトランスクリプトの翻訳をお届けします。

このインタビューの映像の日本語版を、デモクラシー・ナウ!ジャパンのサ
イトで近日中に紹介する予定です。どうぞご覧下さい
http://democracynow.jp

また朝日ニュースターでは多分8月18日(土)にこの番組が字幕付きで放送が
予定されていますので、ぜひご覧ください。

ちなみに「Sicko (病人)」は日本では8月25日に公開が予定されているそう
です。公式サイトは http://sicko.gyao.jp/

翻訳:TUP・宮前 ゆかり

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エイミー・グッドマン:マイケル・ムーアは多忙な毎日を過ごしています。
アカデミー賞受賞映画監督の彼は、水曜日に米国連邦議会で証言を行い、そ
の後国のヘルスケア システムについて民主・共和両党の大統領候補たちの関
心を喚起するためにニューハンプシャー州に向かいます。

さらに、彼の最新ドキュメンタリー映画「Sicko(病人)」が来週何千もの映
画館で初上映されることになっています。この映画は米国ヘルスケア システ
ムを猛烈に告発するものです。この作品が焦点を当てているのは、健康保険
を持たない4千万人以上の国民ではなく、実際に健康保険を持っているにも関
わらず、何十年も支払いを続けてきた健康保険企業そのものに多くの人々が
裏切られた2億5千万人以上の国民です。

昨日ここニューヨークのトリベカ・シネマ映画館でマイケル・ムーアにお話
を聞きました。ここではグラウンドゼロ有毒汚染環境で作業した後に病気に
なった911作業者たちのための試写会がで開催され、その後不法行為改革推進
グループ Center for Justice and Democracyの基金調達イベントを終えた
ばかりの彼に、まずこのフィルムに取り組むことになったきっかけについて
質問しました。

 マイケル・ムーア:実はね、僕は90年代に「TV Nation」というテレビ番
 組をやってたんですけれど、レースをやったら面白いんじゃないかと考え
 たんです。それでフォート・ラウダデールの救急治療所、トロントの救急
 治療所、ハバナの救急治療所にそれぞれカメラチームを送り込み、誰か骨
 折した人が担ぎこまれるのを待って、その人が受けた手当がどれだけ質の
 良い手当だったのか、どれだけ速かったか、どれだけ安かったのかを追跡
 するというわけです。これをヘルスケア・オリンピックと名づけ、その実
 況放送をスポーツ・キャスター、ボブ・コスタとアフマッド・ラシャッド
 にやってもらうことにしました。つまり米国、カナダ、キューバのレース
 だったわけです。長い話をはしょると、結局キューバが勝ったのです。彼
 らは一番迅速で、質の高い手当を提供し、一銭もかからなかった。

 その週にNBCに番組を送ったのですが、そしたら検閲から電話がかかってき
 ました。その部署は「検閲」とは呼ばれてなくて「公認標準と実践慣例」
 と呼ばれています。で、そこの女の人から電話があった。彼女は「公認標
 準と実践慣例」部署のトップで、某博士という人でした。名前は忘れてし
 まいましたけど、とにかく「博士」が名前についていましたね。で彼女か
 ら電話で「キューバは勝てない」と言うんですよ。僕は「え?」と言った。
 「キューバは勝てません」「でも、彼らが勝ったんですよ。勝てないって
 どういう意味ですか。彼らは勝ったんですから」「だめです。NBCではそ
 ういうことは言えないのです。うちではキューバが勝ったとは言えないの
 です」「だけど、彼らは勝ったんですよ。一番迅速な手当を提供し、一番
 安かった。しかも患者が喜んでました。骨折も直ったんです」「だめです。
 うちの規制に違反します」僕は「そう、でも僕は変更しませんから」と言
 いました。

 それなのに、彼らはそれを変更したんです。彼らが変更したんですよ。2日
 後に放映されたときには、カナダが勝ったことになっていました。カナダ
 は勝たなかったんです。もうちょっとで勝つところだったのですが、患者
 が帰る直前に松葉杖の分を15ドル請求しましたから。本当はキューバが
 勝ったのに、何が起きたか知らないけれどNBCでそれを言うことが禁止され
 ているばかりに、今でもあの番組で「カナダがヘルスケア オリンピックに
 勝ちました」っていう部分を見た人たちがいると思うだけで、僕はすごく
 いらつくんだよね。

 というわけで、僕はこの問題についてあの頃初めて考え始めたわけなんだ
 けれど、その後「The Awful Truth」という次の番組で、健康保険を持っ
 ていたのに、その健康保険会社から命をとりとめるために必要な手術を承
 認してもらえない人物を追跡したんです。ケンタッキー州ルイスヴィルの
 HMO、Humanaの本社に彼を連れて行って、そこの重役に会いに行った。で
 も彼らは僕らを門前払いにしたのです。それでそこの芝生に出て、彼の前
 で彼自身のお葬式を行いました。司祭、お棺、お棺を運ぶ人たちにも来て
 もらい、バグパイプで「Amazing Grace」を演奏して、正式のお葬式を始
 めたんです。それをビルの上から見ていた重役たちがびっくりして、これ
 が全国のテレビで放映されることになったらとんでもないことになると
 思ったのですね。3日後に彼らはこの人に電話で「手術を承認します」と
 言ったのです。おかげで彼は今も生きています。

 その時僕は「うわ〜、たった10分の番組で人の命を救えるんだったら、2
 時間の映画なら何ができるだろう」って考えた。と、まぁ、それがことの
 始りですね。この映画は一人一人の命を救う複数のお話という形にはなら
 なかったけれど、でもこれをやり始めて、実際のシステムそのものについ
 て考えるもっと大きなストーリーになっていったわけです。

 エイミー・グッドマン:911作業員たちについて、そして病気になったこれ
 らの人々と関わることになったいきさつについてお話してください。放映
 の映画の公開初日に先立ち、最初の試写会が病気になった911救急事態応
 答員たちを対象に開催されましたが、今私たちはそこから出てきたところ
 です。

 マイケル・ムーア:はい。そのとおりです。ここニューヨークにいる私た
 ちは皆十分承知のとおり、911の救援作業のためにここにかけつけてくれ
 た作業員の多くの人々は市の職員でもないし、州の職員でもなく、単にボ
 ランティアの人たちだったわけです。わざわざニュージャージーから救援
 に駆けつけてくれた人たちもいます。ニュージャージーのボランティア消
 防員の人たちもいれば、ボランティアの救急医療技術者の人たちもいまし
 たが、皆救援のために来てくれたのです。その中には回復作業のために、
 現場に何ヶ月も滞在した人もいます。そして彼らは皆似たような病気にな
 り、特に呼吸器官の病気で、それはここで呼吸した何かが原因なのですが、
 そんなときに、EPAとか、ジュリアーニとか、ここではすべて大丈夫だ、
 なんて宣言していたわけです。平気でどんどん吸いまくれば、ってな具合
 のことを言ってたわけ。実際には、今になって僕たちが知ったことですけ
 ど、ここは非常に有毒な環境だったのです。何百人、何千人もの人たちが
 あのときの有毒な空気を吸ったことが原因で病気になっているのです。

 そんなときに、僕たちの政府自体がですよ、そして911基金が、彼らが市
 の職員じゃなかったからといって、これらのボランティアの人たちに何の
 手も差し伸べない、それって一体どういうことなんですか。彼らはあらゆ
 る病気に悩まされ、中にはお医者にかかる費用や手術費用を払えない人た
 ちもいる。必需品を買えない人たちがいる。クスリを買えない人たちがい
 る。健康保険を持っていないからです。で、彼らはもう仕事もできない、
 身体障害になっしまった。そうすると今度はメディケイドをもらうために
 また途方もない煩雑で無意味な手続きを繰り返さなければならない。これ
 は何なんですか。彼らに何度も無理な試練を押し付けるなんて、こんなひ
 どい話はないですよ。というわけで、彼らのうち何人かと知り合いになり
 ました。

 そんなこんながある同じ時期に、僕はC-SPANで見たんですけど、フリスト
 上院議員がグンタナモに出かけていたということで、わが国は拘禁者たち
 を非常に大切に扱っていて、そこでは最上級の囚人待遇が施されているっ
 ていうことを伝えたいからなんだそうです。そこでフリスト氏が特に強調
 したがっていたのは、ヘルスケアがどれだけ素晴らしいことかっていう点
 だったんです。

 エイミー・グッドマン:フリスト医学博士。

 マイケル・ムーア:はい。失礼しました。もちろんですとも。フリスト医
 学博士ね。で、そこにはもう一人別のお医者さんがいました。彼はそこで
 これだけの結腸内視術が行われていますよというリストをずらーっと掲示
 したんですよ。それを聞いて僕がまず思いついたのは、「結腸内視だって
 ?おいおい。あそこに収容されている拘禁者たちはほとんどが20歳代から
 30歳代の人たちじゃないか。結腸内視術なんて50歳を過ぎるまで必要じゃ
 ないわけだよ」これこそグンタナモで何かおかしなことが起こっているこ
 とを示唆する最初の手がかりになったはずです。でもね、エイミー、彼は
 拘禁者たちにどれだけの歯の掃除や根管治療をしたかというリストを持っ
 ていたのです。栄養カウンセリングもやってる。

 エイミー・グッドマン:絶食中の囚人たちに強制的に食餌を施している事
 実については話がありましたか。

 マイケル・ムーア:うん、そうだね、もちろんだ。それこそが彼らの言う
 「栄養カウンセリング」なんだよね。とにかく、彼はどんなに素晴らしい
 待遇があそこで施されているかって事を大々的に強調して、だから彼らの
 ことを心配する必要はないと言っていた。もちろん、こういう皮肉は皮肉
 の上にさらに皮肉が重なる状況を生み出すわけです。それで僕は考えた。
 ここにはヘルスケアをまったく受けることのできない911の救援作業員た
 ちがいるというのに、あそこでは無料の完全ヘルスケア、歯の治療から目
 の治療まで、そして栄養カウンセリングまで拘禁者たちに提供している。
 じゃあ、911の作業者たちをグアンタナモに連れて行って、そんなに自慢
 している無料ヘルスケアの一部でもやってもらえるかどうか試してみよう
 じゃないかって考えたのです。というわけで、映画で観るように、ネタを
 ここで全部明かすのはやめたいんだけど、とにかく僕たちはそれを実行す
 ることになる。

 エイミー・グッドマン:どうやってそこへ行ったのですか。

 マイケル・ムーア:う〜ん。話ができればしたいところだけどね。ご存知
 のように、僕がキューバに行ったということで、ブッシュ政権はこの旅行
 のことに関し現在僕を捜査しているわけだけど、僕はアメリカの領土であ
 るとされるグアンタナモ湾に向かっていたわけで、実際にはアメリカから
 一歩も出ていないんだよね。僕たちは船に乗ってマイアミを出発し、アメ
 リカの海域だとされているグアンタナモ湾に入ったわけです。もちろん、
 その、ご存知のとおり、結局は、僕たちは実際にはキューバの国にたどり
 つくわけですけれど。映画でご覧になるように、僕が連れ出した911救援
 作業員たちはキューバのお医者さんたちやキューバーの医療システムから
 素晴らしい治療を受けるんです。それなのに、僕は今や政府の捜査の対象
 になっちゃったんですよ。

 ね、あなたも同じ目にあったでしょう。あなたも民事および刑事訴訟をつ
 きつける手紙を受け取ったことがありますよね。

 エイミー・グッドマン:ありません。

 マイケル・ムーア:え〜っ。それはいくらなんでも不公平じゃないですか。
 あなたはエイミー・グッドマンでしょう。一番先に手紙をもらうべきじゃ
 ないですか。なんで僕のこといじめるわけ?というわけで、こういうこと
 に巻き込まれている身の上なので、実際にどうやってあそこへ行ったかを
 公にしたくないんですけど。でも映画で僕は実際に船に乗って、実際にグ
 アンタナモ湾に行きました。きっとグアンタナモ湾に乗り込んでいく人間
 を実際に見たことのある人は誰もいないと思いますよ。だから、この映画
 で初めてそれを見ることができます。それに、僕が船長なんですよ。

 エイミー・グッドマン:地雷とか地雷かもしれないと思われるようなもの
 について怖くはありませんでしたか。

 マイケル・ムーア:はい。実際のところ、僕は湾内管轄線の米国側にある
 監視タワーから僕たちに銃口が向けられていることのほうがもっと怖かっ
 たですね。ここではっきり言えることは、キューバ政府はグアンタナモ湾
 に船で乗り込んでいくと言う僕のアイデアについてははた迷惑だと思って
 いたという点ですね。なぜなら、アメリカを挑発したり、アメリカがキュ
 ーバを攻撃する口実を与えるような事故があっては困るからです。特に
 僕っていう人間をブッシュ氏があまり好きではないとキューバの人たちが
 感じているので、突如僕がグアンタナモ湾で彼らの鼻をつまむようなこと
 をしたら、何が起きてもおかしくないですから。それで湾内のアメリカ海
 域に近づくためにキューバ側の海域を使わせてもらえるように、キューバ
 の人たちによくよく説得をしました。

 エイミー・グッドマン:その地域には地雷がしいてありますか?

 マイケル・ムーア:ええ、そのように言われていますね。そうですね。彼
 らによればキューバ人がそこへ近寄れないように、アメリカがそこに地雷
 をしかけたと信じていますね。キューバの人たちについては知りませんが。

 エイミー・グッドマン:キューバ人はグアンタナモの牢獄に侵入しようと
 しているのですか?

 マイケル・ムーア:侵入ね。う〜ん。おいおい、米国軍隊の行動を僕に説
 明させるような質問はしないでくれよ。キューバのことはよく知らないの
 で、こんなことを言いたくはないのですが、僕たちがあちらにいる間の経
 験では、アメリカが実際にまた彼らを侵略したとしても、最低限あのルー
 トに関しては、キューバにそれほど巨大な防衛力があるようには思えませ
 んでしたね。でももしアメリカがそんなことをしようとした場合に備えて、
 何か計画はあるだろうと思いますけれどね。

 エイミー・グッドマン:あなたがキューバに連れて行った救援隊員の人た
 ちですが、あちらでのヘルスケア システムについてお話ください。

 マイケル・ムーア:彼らが「町のどの一角にも必ずお医者が一人いる」と
 いうのは単なる宣伝文句ではありません。いや〜、ホントに、キューバで
 は本当に僕たちよりもたくさんのお医者さんがいるんですよ。アメリカで
 はもう長いことお医者さんが不足していますが、それはAMAが医学校の学
 生を増やしたくないからにすぎません。つまり、お医者さんの数を少なく
 しておけば、お医者さんがもっとお金儲けができるからで、もっとたくさ
 んのお医者がいると分け前が減るからなんですね。

 それに比べ、キューバのお医者さんたち、キューバのヘルスケア システム
 には感激しました。僕たちがあそこに連れて行った人たちは皆受けた治療
 についてとても満足していましたよ。でも彼らは予防にもっと力を入れて
 います。そうすることによってヘルスケアにそれほどお金をかけなくても
 すむからなのです。彼らはお金はそれほどありません。ご存知のようにと
 ても貧しい国ですから。それでも僕はとても感動しましたね。ヘルスケア
 システムで使える力が本当にわずかでありながら、僕たちよりずっと長生
 きしています。彼らは僕たちの国より乳児死亡率が少ないのです。様々な
 面で僕たちと同等か上なのです。

エイミー・グッドマン:オスカー受賞映画監督マイケル・ムーアでした。ブ
レークの後、彼は候補者について、民主党大統領候補たちとヘルスケアに対
する彼らの立場についてお話してもらいます。

[ブレーク]

エイミー・グッドマン:アカデミー賞受賞映画監督マイケル・ムーアのイン
タビューに戻ります。彼の新作映画「Sicko」は来週から何千もの映画館で初
公開されることになっています。私は彼に米国のヘルスケアの質が世界で37
番目である点について質問しました。

 マイケル・ムーア:そうです。僕たちの国はコスタリカの下ですがスロバ
 ニアよりは上です。これは世界健康組織によるランク付けです。地上で一
 番豊かな国が37番目に位置するなんて、まったくどうしようもないですね。

 エイミー・グッドマン:マイケル・ムーアさん、あなたは3カ国、いや、
 実際には4カ国の調査をしましたね、フランス、イギリス、キューバで時
 間を過ごした後、カナダの親戚を訪問したのですね。

 マイケル・ムーア:そうです。

 エイミー・グッドマン:これらの地域について、それぞれ何があるのかお
 話してください。例えば、あなたはイギリスの国会議員、トニー・ベンに
 話を聞きました。彼らの持つシステムは何か、そしてそれはどのように始
 まったのか、話してください。それから私たちのシステムがどのようにし
 て現在の形をとるようになったのか話を進めましょう。

 マイケル・ムーア:OK。そうですね。カナダ人。彼らは国民全員が保障さ
 れる非常に優秀なシステムを持っていて、あそこの人々はとても満足して
 います。基本として、何も払わなくていいのです。自分でお医者を選ぶこ
 とができますし、病院に行く必要がある場合は、自分で病院を選びます。
 選択の自由があるのです。ここでカナダのシステムを批判する人たちがよ
 く使うセリフがあるね。「あ〜、カナダ人かぁ、あんたらは膝の手術する
 のに長い列を作って何週間も何週間も待たなければならないんだろう。ア
 メリカでは全然待たなくても済むんだぜ」僕がこういうセリフを聞いて思
 うことは、皆で分かち合うためには、時には待たなくてはならないことも
 あるんだってこと。待つということは、アメリカ人の考え方にはないのか
 もしれない。「今すぐ欲しいんだっ!」でもね、僕も前から言っているよ
 うに、皆でパイを分け合うためには、一番最初のスライスをもらって待た
 なくて済むこともあれば、三番目のスライスをもらうまで、または最後の
 スライスをもらうまで待たなくてはならないかもしれないっていうことな
 んだと思う。でも大切なことは皆がスライスをもらえるっていうことなん
 だよ。それはこの国ではありえないことなんだね。

 イギリスのシステムは政府が所有しているシステムで、政府が病院を所有
 し経営し、政府がお医者を雇用しているんです。彼らは政府の仕事をして
 いるわけなので、イギリスでは国が所有し経営し規制するプログラムなの
 です。これもまたすべて無料なわけです。映画で病院が出てきますけど、
 人々は非常に満足しています。これらの国に旅行したことのある人で、カ
 ナダの病院やイギリスの病院に行かなければならない経験をしたことのあ
 る人を知っているなら聞いてみたら良いでしょう。この映画に出てくる女
 性も言ってますが、彼女は汚らしいひどい病院、ディケンズの小説に出て
 くるような、ソ連かどこかのような暗い場所を想像していたのに、行って
 みたら「あら、素晴らしいわ」

 フランスは一番優秀なわけではないかもしれないけれど、僕たちが見た中
 では最優秀に近いでしょう。

 エイミー・グッドマン:イギリスですが、クリップを見てみましょう。

   マイケル・ムーア:この人は足首をくじいたんです。どのくらいかか
   るのでしょうか。終わったらものすごい請求書が来るのでしょうね。

   国民健康システムの病院事務員:ここではそんなことはありません。
   すべて無料です。

   マイケル・ムーア:僕は病院代について聞いているんですよ。あなた
   は笑ってるんですか。

   保険があったとしても、どこかで請求書が出るはずでしょう。

   その赤ちゃんはいくら請求されましたか?

   新しい父親:全然なしです。すべて国民健康システムでまかなわれて
   いるんです。

   新しい母親:これは国民健康システムですから。

   新しい父親:アメリカじゃないからね。

   マイケル・ムーア:では、ここは病院での滞在を終えた人たちが請求
   書の支払いに来るところなんですね。

   国民健康システムの病院事務員:いいえ。ここは国民健康システムの
   病院ですから、請求の支払いはありません。

   マイケル・ムーア:請求書の支払いをしなくてもいいなら、なぜ
   「キャッシャー」窓口がここにあるのですか。

   国民健康システムの病院事務員:ここは交通費を払い戻しする場所だ
   ということです。

   マイケル・ムーア:イギリスの病院ではキャッシャーの窓口にお金が
   入っていくのではなく、お金が出てくるわけです。

 マイケル・ムーア:そうなんですよ。僕がイギリス人たちに、これやらあ
 れ、何でもどのくらい払うのかと聞くたびに、火星人か何かを見るような
 目つきで僕を見るんですよ。

 エイミー・グッドマン:マイケル・ムーアにお話を伺っているところです。
 この国のシステムがどのような経過をたどって今のようになったのかお話
 してください。

 マイケル・ムーア:そうですね。僕の祖父は田舎のお医者だったんです。
 彼はカナダの出身でした。彼は1800年代後半に医学校に行きましたが、当
 時はそれは1年間だけだったんですよ。当時知っていることはそれくらい
 だったのでしょう。それを1年で教えることができたわけです。というわ
 けで、僕が育ったのは小さな村で、僕の母も祖父もそこの出身なのですが、
 そこではお医者への支払いは卵や牛乳、ニワトリとかそういうものだった
 のです。お医者というのは当時大きな収入にはなりませんでした。地元の
 お医者だから、適当に豊かではあったけれど、コミュニティ内でのお金持
 ちではなかった。

 僕たちは正しいことだから人々に治療を施すんだという考え方から遠ざ
 かってしまったのです。僕が生まれた病院は尼さんたちが経営していまし
 た。尼さんたちは収益をあげてウォールストリートに投資するためにその
 仕事をしていたのではありません。彼女たちは病院を開いて赤ちゃんの出
 産を手伝うことで神に仕え人類のために奉仕するのが自分たちの義務だと
 考えて仕事に取り組んだのです。僕たちはそのような考えからものすごく
 遠ざかってしまいました。どこかで利益と欲がこの世界に入り込んでし
 まったのです。

 この映画ではHMOが実際に生まれたある日付を突き止めました。とても
 ラッキーだったと思います。この映画のために僕の事務所で仕事をしてく
 れた23歳のリサーチャーがいたんですが、彼は確かジェレミー・スケーヒ
 ルから推薦された人物だと思うので、この映画も今に至るまでデモクラシ
 ーナウ!とのつながりがありますね。とにかく、彼はあるウォーターゲー
 トのテープを発見したのです。これはウォーターゲート自体とは全然関係
 ないのですが、アーカイブ、国立アーカイブで見つけたニクソンのテープ
 の一部で、ニクソンとエーリッヒマンとがHMOの考え方を支持するかどう
 か相談している部分なのです。エーリッヒマンがニクソンにこう言ってい
 るんですよ。「きっとお気に召すと思います。これは私有企業の事業です
 から。これは無料サービスとは違います。」ニクソンはそれに対し「そう
 か。それはいいな。説明してくれないか」するとエーリッヒマンが「HMO
 はこういう仕組みになっています。これは治療の提供を減らすことでより
 多くの利益をあげるわけです。患者に提供する治療を減らす分、会社が儲
 かるというわけです」ニクソンはそれに対し「おお、悪くないな。」そう
 いうやりとりが全部テープに収まっていたのです。

 エイミー・グッドマン:彼らはカイザー・パーマネンテのことを話してい
 るんですね。

 マイケル・ムーア:そう。

 エイミー・グッドマン:ニクソンはカイザーに会ったと言ってます。

 マイケル・ムーア:そうそう。エドガー・カイザー。

 エイミー・グッドマン:説明してもらうために彼はカイザーを招待したの
 ですね。

 マイケル・ムーア:そうです。彼を招待して、すべて、どういうふうにこ
 の計画が実行されるかを説明してもらったわけです。エーリッヒマンとニ
 クソンは両手をすりあわせるように「これは、いいぞ」と期待を示してい
 た。その直後、次の日にニクソンは新しいヘルスケア プログラムを発表
 したのです。もちろんそれにはカイザー パーマネンテが望んでいたよう
 なHMOが含まれる内容でした。この様子がすべてこの映画に入っています。
 ジョージ君がこれを見つけてもってきたとき、僕は「なぜ、何もかもがニ
 クソンに由来するわけ?」って思いましたね。いろんなことの責任がニク
 ソンの足元につみあがっているのは本当だけど、HMOでさえもそうなの?
 究極的には、彼が今僕たちが真っ只中にある利益追求の強欲地獄を作った
 張本人だっていうわけなの?答えは「そのとおり」。

 これらの健康保険会社は、もう、健康関連企業のハリバートンだと言える
 でしょう。彼らは人殺ししてものうのうとしていられるんだからね。どれ
 だけふっかけてもいいわけだし、政府の規制もないし。率直に言って、こ
 ういう私営の保険企業をすっかり排除しない限り僕らのシステムを正すこ
 とはできないですよ。ホント、彼らを実際に排除する必要があります。彼
 らの存在そのものがこの国では許されるべきではないのです。

 エイミー・グッドマン: 健康保険会社に指を向けた、いえ、自分の指を提
 供したアメリカ人について話してください。

 マイケル・ムーア:そう、実際に指そのものです。

   マイケル・ムーア:これはリックさんです。

   リック:僕は木の板を切っていた最中にここをつかんだときにノブを
   押してしまったんです。

   マイケル・ムーア: 彼は二本分の指先を切ってしまいました。

   リック:それはあっという間の出来事でした。

   マイケル・ムーア:最初に考えたことは?

   リック:僕は保険がないので、いくらかかるのかなって。

   マイケル・ムーア:病院は彼に選択肢を提示しました。中指を接続す
   るには6万ドル、薬指だったら1万2千ドル。ロマンチストのリックは
   指輪をはめる薬指のためにバーゲン価格の1万2千ドルを選びました。
   彼の中指の指先は今オレゴン州の埋め立てゴミ処理場を新しい住処と
   していることでしょう。

   リック:よく年寄りが指を外すふりをしてみせるトリックがあるけど、
   あれをホントにやってみせることができるよ。

 マイケル・ムーア:まったく、もし彼が2、3時間北に行ったカナダに住
 んでいたとしたら、そういう選択を求める質問はまったくされなかったで
 しょう。彼は決してそういう決断を下す必要はなかったはずです。この映
 画の後のほうに出てくる場面がありますが、指を5本とも切ってしまった
 カナダ人がすぐに全部の指の接続手術をして、それには一銭もかからない
 んです。これも多くの皮肉な状況の例のひとつにすぎないわけですが、世
 界で一番豊かな国に住んでいる僕たちがこんな苦難を経験しなければなら
 ないのです。

 エイミー・グッドマン:この国の人たちはどうして他の国で提供されてい
 るシステムについて理解できないのか、このような状況が不自然だという
 ことをなぜ理解できないのでしょうか。本来当たり前のことなのですし、
 現状を変える方法もあるのに。政府やメディア、そして保険会社はどのよ
 うにして代替システムから国民をこれほど隔離しているのでしょうか。

 マイケル・ムーア:強制的に押し付けられた無知ですね。「アメリカ人を
 無知無能にしておく」という方針です。教育システムにせよ、主流メディ
 アにせよ、他の国で何が起きているのかをアメリカの国民には絶対知らせ
 ないようにしているのです。僕らはアメリカ以外の世界で何が起きている
 のかまったく知らない。ごく最近になって、カナダやメキシコに旅行する
 にはパスポートが必要になったけど、それまではこの国の80%以上の国
 民がパスポートを持っていなかったんですよ。この国の人は一般的に旅行
 をしないから、ほとんど何も知らないんです。僕の映画でも指摘している
 んだけど、高校卒業生に地球儀で英国がどこにあるか探せと言うと、65
 %の高校生がそれを見つけられなかった。65%が英国を地球儀上で見つ
 けられないんですよ。11%がアメリカ合衆国を地球儀の上で見つけられ
 ない。18歳から25歳までの人口の11%がですよ。ナショナル・ジオグラ
 フィックの調査の結果です。OK、あの〜、僕らは問題のある国を抱えてお
 ります。だって僕らは世界のほかの国のことを知ろうともしないんだもの。
 例えばね、普通のアメリカ人にカナダの首相が誰か聞いてみてごらん。本
 気で。いえ、僕はどこかの僻地に住んでるぼんやりした田舎者たちに質問
 しろって言っているのではないんですよ。普通の人たち、例えば、ほら、
 今この部屋にいる人たちを見回してみて、この連中ね、もちろんこの人た
 ちは意識も高いし、ニュースも追っているし、あなたと仕事しているわけ
 だからね。でもね、ここで僕にカナダの首相が誰かという質問に応えられ
 る人がいますか?

 ジョン・ハミルトン:ハーパー。

 マイケル・ムーア:うわ〜、それはいい。

 エイミー・グッドマン:それに、ここにいるカナダ人には質問しませんで
 したからね。

 マイケル・ムーア:そう。僕はカナダ人の目を避けてました。ところで、
 カナダ人と目を直接合わせるのはご法度なんですよ。分かりましたか?そ
 れにしても、このラジオを今聴いている人たち、テレビを見ている人たち
 のほとんどが、「う〜ん、知らないや」って多分言っているんじゃないか
 な。アメリカ人のほとんどが隣の国に住んでいる人たちのことを知りませ
 ん。こういう簡単なことも知らないとしたら、その国のヘルスケアシステ
 ムのことなど知るはずがありません。そしてもし何か知っていることがあ
 るとしたら、カナダ人、イギリス人、フランス人などについて押し付けら
 れてきた真っ赤な嘘ばかりです。

 エイミー・グッドマン:あなたはヒラリー・クリントンについて、彼女が
 ビル・クリントン大統領のもとで試みようとしたことについて触れていま
 すね。彼女が何を試みたのかを説明してください。

 マイケル・ムーア:そうですね。彼女は14年前にとても勇気のあることを
 試みたと思います。彼女は皆のためのヘルスヘアがあるべきだ、既存症状
 に対する制限をなくすべきだ、収入の高低によらず、職種によらず、なん
 であれ皆が保障されるべきだと発言しました。彼女の行動は大変大胆なも
 のでした。その結果として彼女はめちゃくちゃにされてしまったのです。
 いいですか、彼女をくいとめるために彼らは1億ドルのお金をかけたんで
 すからね。

 エイミー・グッドマン:それでも巨大な保険会社は気に入っていたわけで
 すよね。なぜなら彼女はビッグ・ファイブ企業を保護しようとしたからで
 す。彼女が保険会社をすっかり排除したら、単一支払い制度をアメリカ国
 民にもっと明確に説明することができたはずだという意見があります。

 マイケル・ムーア:それが彼女の間違いだったのです。彼女は丸ごと取り
 組むことを怠った、この問題でやらなければならないことすべてを最後ま
 で追求しなかった。実際に、同じ問題だったわけです。もうひとつの例を
 あげるなら、民主党がね、もう、ドリルでももっていって奴らの、この、
 もう、何かしてやりたくなっちゃうでしょう。だって、彼らの心は、まぁ、
 まともなところに行っているんだけど。分かる?それとおんなじで、ヒラ
 リーの心も正しいところにあると思う。ね、彼女はアメリカ国民みんなを
 保障したいと考えているんだけど、でも保険企業を根本的に排除すること
 ができないんだったら、じゃあ、ちょっとした取引でもしましょうか、と
 いうわけですよ。それって今エドワードが提案しているのに似ています。
 それはアル・ゴアが2000年の選挙で、フロリダ州全体の票を数えるように
 要求する代わりに、民主党のカウンティの票だけ数えようとした、そうす
 れば自分たちに有利な票が取れると思ったのでしょうけど、そういうこと
 とおんなじです。いい加減にしろってんだ。何で、いつも、こういう中途
 半端なことするんだろうね。そのおかげで僕たちの事態がもっと悪くなっ
 てしまったんだよ。

 とにかく、ヒラリーのことでちょっと話を先へ飛ばすけど、彼女は、少な
 くとも去年の議会で、リック・サントロムに次いでヘルス企業から受け
 取っている献金金額は第二位を占めていました。彼はもういませんから、
 現在彼女がナンバーワンかもしれません。彼女はこのように、企業が彼女
 のポケットに入り込み、彼女が彼らのポケットに入り込んでいる、そのよ
 うな姿を見るのは残念でなりません。彼女にはあまり期待していません。

 エイミー・グッドマン:代替案を押し出しているとあなたが感じるような
 大統領候補はいますか?

 マイケル・ムーア:う〜ん。そうですね。まず、エドワード以外は誰も特
 に何かはっきりした実際のプランを出していませんからね。エドワードの
 計画は良くないですし。オバマの計画は特にはっきりしていませんし、エ
 ドワードやヒラリーの古い計画と同じような欠点がたくさん盛り込まれて
 いるんです。クシニッチのが正しいアイデアに一番近いと思うけど、でも
 彼はまた「非営利」とかそういう言葉を使ってますからね。僕はその言葉
 はもう使いたくないです。デニスもそれを使わないでほしいな。なぜかと
 いうと、カイザー・パーマネンテは非営利組織です。ブルークロスは非営
 利組織です。

 エイミー・グッドマン:実際にあなたを批判している「サクラメント・
 ビー」紙によると「カイザー・パーマネンテは非営利組織だということが
 分からないのか。なぜこれが営利企業だというのだ」と書いていますね。

 マイケル・ムーア:う〜ん。いや、確かにそうなんですよ。営利組織だと
 かそういうことだけじゃないわけです。だから僕は究極的には、それが営
 利組織か非営利組織かを問わず、私営保険会社には一切関わって欲しくな
 いという言い方をするんです。なぜかというと「利益」という場合、外見
 は非営利のふりをしていながら実は金儲けが目的の巨大な非営利組織があ
 るからです。彼らは自分たちと重役たちのための金儲けだけが目的で、彼
 らの収入は汚らわしいくらいなんですから。だから僕はすべての私営保険
 会社の全面的排除を希望するわけです。クシニッチがそこまで行くかどう
 かは分からない。これまで読んだ法案のどれも、私営保険会社が何らかの
 形で関わることを許すようなコンポーネントが入っているので、僕の考え
 るところまで達するかどうか分からない。

 エイミー・グッドマン:あなたは単一支払い方式のことを言っているので
 すね。

 マイケル・ムーア:そうです。

 エイミー・グッドマン: 単一支払い制度と普遍的保障制度とは違いがある
 のですか。

 マイケル・ムーア:そうです。もちろん、違いがあります。なぜならば、
 まず、言わせてもらうとですね、彼らはすべて普遍的保障制度だと言うで
 しょう。選挙の季節になって、一時選挙の頃には、すべての民主党候補た
 ちがその言葉、皆のための普遍的保障制度、皆のための保険、をうたい文
 句にしていることでしょう。でもね、彼らの計画はすべて、彼らのするこ
 とはすべて、僕らの税金のお金をこれらの保険会社のポケットに入れるこ
 となのです。

 僕らはここで仲買人を切り離さなくてはいけないんです。政府はこのプロ
 グラムを運営できる能力があるんです。他の国々でかなりうまく運営され
 ていますしね。上位25カ国を取り上げてみて、これら25カ国のうち僕らの
 国だけがやっていないことについて、他の24カ国のやっていることは間
 違っているって、それで僕らが一番賢いんだって主張できると思う?僕は
 そうは思わないね。

 例えば、カナダの国を見てみようか。彼らの一般経費、国のプログラムを
 運営するためにかかる彼らの管理コストは予算全体の1.7%未満です。とこ
 ろがこの国の平均的な保険会社では、一般経費、管理経費、事務処理、官
 僚体制費用が全予算のだいたい15%から30%ほど占めているんです。それ
 を政府がやればかなり経費を軽減することができるわけです。でも、もち
 ろん、共和党とか、民主党の一部も、政府は悪い、政府は何でも間違いを
 犯す、ということをアメリカの国民の頭に叩き込むのにこれまで十分成功
 してきました。何週間か前にアル・フランケンが言ったせりふを僕も聞い
 たんだけど、政治家連中は政府が悪い、政府が間違いを犯すっていう
 プラットフォームで選挙活動をやり、当選したら4年間それを証明してみ
 せるわけだってね。

エイミー・グッドマン:マイケル・ムーアでした。彼の新作映画は「Sicko」
です。ブレークの後、彼がイギリスの病院へ行き、お医者の自宅を訪問した
時の様子をご紹介します。そしてこの映画が公開されるにあたり彼がやって
いること、オプラやYouTubeそしてMoveOnなどとの企画、議会での証言、そ
の他についてお話していただきます。では。

[ブレーク]

エイミー・グッドマン:アカデミー賞受賞の映画監督マイケル・ムーアとの
インタビューを終えるにあたり、このセグメントでは、映画「Sicko」のク
リップをご覧いただきます。ここで彼はイギリスのお医者をNHS – 全国健康
サービスが運営する病院のオフィスと彼の自宅に訪問します。

   マイケル・ムーア:あなたは開業医として診療所を経営されているん
   ですか?

   NHSの医師: はい。NHSの開業医です。9人の医師でNHSの診療所をま
   かなっています。

   マイケル・ムーア:政府からお給料をもらっているんですね。

   NHSの医師:政府からお給料をもらっています。はい。

   マイケル・ムーア:政府に雇用されているわけですね。

   NHSの医師:はい。そうですとも。

   マイケル・ムーア:あなたは政府からお給料をもらっているお医者さ
   んなんですね。政府に雇用されているということは、公共交通機関を
   使っているんですね。

   NHSの医師:いいえ。僕は車を持っていて、それで通勤しています。

   マイケル・ムーア:古いポンコツ車なんですね。

   ちょっと危なっかしい地域に住んでいるのかな?

   NHSの医師:あの〜、僕はすごく豪奢な地域に住んでますよ。グリー
   ニッチと呼ばれています。きれいな家です。三階建ての家です。

   マイケル・ムーア:それを買うのにどのくらいしたんですか?

   NHSの医師:だいたい55万くらいかな。

   マイケル・ムーア:ポンドで?

   NHSの医師:はい。

   マイケル・ムーア:ということは100万ドルですね。

   NHSの医師:はい。そうですとも。

   マイケル・ムーア:ということは、アメリカのお医者さんは普遍的な
   ヘルスケアをそれほど怖がらなくてもいいということですね。

   NHSの医師:全然。もし、200万ドル、300万ドルの家と4台、5台の高
   級車と6台、7台の豪華なテレビが欲しいっていうなら、それだけ稼
   げるところで商売しなくちゃならないかもしれないけれどね。

 マイケル・ムーア:この国のAMA(アメリカ医師協会)は、全国のお医者さ
 んたち皆に、社会医療制度になると、すごく貧乏人になるんだぞというふ
 うに吹き込んでいるんですね。でもそれは嘘なんです。カナダで会ったお
 医者さんたち、イギリスやフランスで会ったお医者さんたちはみんな快適
 な生活をしています。あなたがおっしゃるように、僕はイギリスのお医者
 さんの一人の自宅にも訪問したんです。彼は100万ドルの邸宅に住んでい
 て、アウディを乗り回している。彼はヤッピーの生活を送っているんです。
 僕の映画を観にいくお医者さんたちは、映画館を出たときに「少なくとも、
 僕たちの豊かな暮らしは社会医療制度になっても守られるんだな。」とい
 うことをわかって欲しいな。彼らの大邸宅を奪うようなことは誰もしたく
 ないですからね。

 エイミー・グッドマン:「ドヤ街」についてはどうですか?マイケル・
 ムーアさん。

 マイケル・ムーア:そうそう。お医者が住む大邸宅の正反対の場所。ご存
 知のとおり、というか、あなたもこの問題を取り上げたことがあると思う
 んですけれど、病院でかかった費用を払えないロスアンジェルスの患者さ
 んたちのことです。ここしばらくの間起きていることですが、病院は彼ら
 をドヤ街に置き去りにしているんですよ。患者さんたちを病院から連れ出
 して、時には夜中に、病院用室内着を着せたまま、タクシーに乗せて、タ
 クシーの運転手に「ドヤ街に連れて行ってそこで降ろしてきてくれ」と言
 いつけるわけです。時には、タクシーの運転手が彼らを車から無理やり押
 し出さなければならないこともあるのです。

 エイミー・グッドマン:ビデオテープにそれを撮ったのですね。

 マイケル・ムーア: はい。カイザーの患者さんがカイザーに雇われたタク
 シーの運転手によって道端に置き去りにされるところを実際のセキュリ
 ティ・カメラで撮られた映像があって、この女性は靴も履いていない、病
 院用の室内着のまま道のど真ん中に放り出されるという、もうひどい映像
 なんです。それをここで座ってそれを見ながら、これが実際にアメリカ合
 衆国の姿だとは信じられないわけですよ。これがこの国の国民に対する扱
 いなんです。まったく、もう。この映画を見た人たちはきっと、もういく
 らなんでもここまで来たなら許せない、何とかしなくっちゃて思うだろう
 と僕は考えるんですけど。

 エイミー・グッドマン:マイケルさん、この映画であなたはAMAのことを
 話していますし、製薬企業、保険企業のことを話していますね。あなたの
 ウェブサイトでは、あなたの映画の上映に備えて彼らの対応準備について
 特集を組んでいましたね。彼らは「Socko」上映にどのように対応してい
 るのですか?

 マイケル・ムーア:そうですね。最初はね、う〜ん、彼らについて話す前
 に、僕がこの映画を始める前の時点に戻って話しましょうか。まず、最初
 から、どの保険会社も、僕やこの映画に対する保険をかけてくれないとい
 う時期があったんです。この映画が保険についての映画だということが知
 れ渡っていたのでね。それで、このプロジェクトに対して保険をかけるの
 に苦労しました。その後、彼らはいくつか対策を練って、社内で従業員に
 警告を出しました。「マイケル・ムーアとは話をしないこと。マイケル・
 ムーアと話をしたら、深刻な結果になるだろう。」実際、彼らはどうやっ
 て僕に対応するかと言うトレーニング・セッションをやったんですよ。僕
 が彼らの会社に現れた場合に備えてね。ファイザーはマイケル・ムーア・
 ホットラインを設けました。彼を見かけたらこの番号をダイヤルするよう
 にってね。もう、とにかく、こういうクレージーなことがたくさんあった。

 エイミー・グッドマン:ダイヤルしてみましたか?

 マイケル・ムーア:もちろんですとも。実際のところ、僕は2、3年前だっ
 たか、それをインターネット上に掲載して、この番号をダイヤルするよう
 にって皆に言ったんです。ファイザーのマイケル・ムーア・ホットライン
 ですよって。そこに電話して「彼が社内に侵入しています!彼が建物内に
 います!」て電話口で言ってくださいとね。あまりにもたくさんの人たち
 が電話をかけていたずらしたんで、そのうちそのラインをシャットダウン
 しなくちゃならなかったみたいだね。

 エイミー・グッドマン:では、彼らは何と言ったのですか。これらの社内
 メモでは、あなたとどのように対応するように指示したのでしょうか。

 マイケル・ムーア:走るな。逃げるな。カメラを手でさえぎるようなこと
 はするな。ある会社では心理学的性格判断専門家を雇い、僕という人間が
 どういう考え方をするかをCEOに話したんです。つまり、どうすれば僕の
 話をそらすことができるかということです。もし僕が突然マイクを手に現
 れたら、その心理学的性格判断専門家によれば、デトロイトのスポーツ
 チームについて話題をそらせば、HMOについて僕が質問するのを止めるこ
 とができるというわけです。これを読んで、僕は「さすがだ、ずいぶん当
 たっているな」と思いました。

 まぁ、そんな具合なんですが、でも彼らは的をすっかり外したんですよ。
 なぜかというと、この映画の意図は僕がジェネラル・モーターズとかファ
 イザーとかを追求するということではなかったし、もっと大きな構図で考
 えていたのです。だって、ひとつの会社を直したら、すべてが良くなると
 か、そういうわけではないんですから。この国で直さなければならない
 もっと大きなことがあるんです。実際、それはヘルスケアの状況などより
 ももっと大きな問題です。つまり僕たちが自分たちの社会をどのような構
 造にするのか、僕たちがお互いをどのように扱うのか、全員が自分だけの
 ことを考えればよいというアメリカの考え方そのもの、それをなぜ止める
 必要があるのかということ。「自分だけ」を主張する僕らの社会観を、
 「私たち」ということを考えている世界中の他の皆が生きている世界観に
 移していかなければならないのです。

 エイミー・グッドマン:映画の中に保険の請求を申請する人たちに挑戦す
 るために健康企業が雇った人物が登場しますね。彼が実際に何をするのか、
 彼はどのように人々を調査するのか、説明してください。

 マイケル・ムーア:健康保険企業は請求に対する支払いを嫌います。なぜ
 なら儲けにならないからです。利益を上げる唯一の道は手術費用を出さな
 いことです。あなたの手術費用やお医者の診断費用や薬代を払うと、彼ら
 はまったく儲けにならないわけです。ですから彼らの目標はできる限り少
 ない金額を払う努力をすることであり、そのこと自体、直ちに、いかにヘ
 ルスケアというものにとって保険会社は存在する余地のないものなのです。
 つまり、ヘルスケアは根本的に人々を助けるために存在するべきだからで
 す。決定内容は決してどれだけお金を節約できるか、どうすれば手術を拒
 否できるか、ということであってはなりません。

 とにかく、彼らはこれらのヒットマンを雇い、僕らは保険会社のヒットマ
 ンと呼んでいるんですけれど、彼らがですね、例えばあなたが足首をくじ
 いたとして、彼らがその請求書を見ます。「うわぁ、足首をくじいただけ
 で5000ドルだって。それは1000ドルくらいで済むべきだろう。全額など
 払いたくない」ということで、彼らは雇った調査員たちに、つまり保険会
 社には調査部門がありますね、それで彼らにこう命じるわけです。「君、
 エイミー・グッドマンの過去を調べてこい。彼女の健康保険申請書に彼女
 が10年前に起きたことで記入していなかったことがあるかどうか、探りを
 入れろ」彼らは実際にそういう記録を探してくるわけです。彼らはあなた
 の健康履歴についてものすごい調査を行い、あなたに対してこう言うわけ
 です。「あなたね、正直に記入しませんでしたね。あなたは以前からの症
 状があったではありませんか。私たちはそれを知りませんでした。だから
 あの手術費用のお金を返してもらいます。そうでなければ、支払いはいた
 しません」

 エイミー・グッドマン:この映画でも最もパワフルな要素のひとつは、こ
 れ以上この仕事を続けることはできないと言って、長いこと他人の調査を
 やめたというこの人物のように、告発を提供する多くの人々です。そして、
 リンダ・ぺノさんが登場しますね。

 マイケル・ムーア:そうです。この映画に登場する内部告発者の人たち、
 特にリンダ・ぺノさん。彼女はケンタッキー出身のお医者さんです。彼女
 は Humana 社で仕事をしていました。彼女はその会社の医療検査官でした。
 医師としての彼女の仕事は、保険の請求を見ながらそれを承認したり拒否
 したりすることだったのです。映画でも話してますし、議会での証言で、
 彼女は患者から提出された請求に対し、それが本当かどうかに関係なく一
 定率の請求を拒否することが期待されていたということを話します。会社
 側は彼らに例えば10%の拒否率を期待するわけです。保険会社の医者は、
 医療検査官として最も多くの請求拒否を行った医者は、大きなクリスマス
 ボーナスがもらえるのです。ホントに、まったく、信じられません。

 エイミー・グッドマン:彼女のお給料は週給二、三百ドルから6桁の給料
 にはね上がったのですね。

 マイケル・ムーア: 6桁になったのは、彼女が請求を拒否し続けたからで
 す。でも我慢ができなくなったのです。彼女の良心がそれを許さなかった。
 彼女は辞職したあと、議会に行って内部告発を行いました。その証言が映
 画に入っています。とてもパワフルな場面です。告発を行うことを決心し
 た彼女は勇気のある魂を持った人物です。

 エイミー・グッドマン:そのような反応を示した人たちは何人くらいいた
 のですか?あなたは2万5千人以上の人たちから健康保険会社との深刻な問
 題について報告する反応があったと言ってましたけれど、その他にこのよ
 うな人たちがいたのですね。

 マイケル・ムーア:そうです。製薬企業、病院企業、健康保険企業などを
 含む企業の内部にいる二、三百人くらいの人たちから、様々なことを僕ら
 に伝えたいということで手紙をもらいました。中にはカメラの前で話した
 いと言う人もいたし、そうじゃない人たちもいました。人によってはファ
 イルを送ってくれた人もいるし、とにかく、本当に驚くほど多くの人たち、
 良心がとがめている人たちがたくさんいるんですね。彼らはもう我慢でき
 なくなってしまったのです。

 エイミー・グッドマン:オスカー賞受賞映画監督、マイケル・ムーアにお
 話をうかがっているところです。これは「華氏9/11」とどのような関連が
 あるのでしょうか。「Sicko」という作品は、あなたの前の映画や「ボー
 リング・フォー・コロンバイン」とどのようにつながっているのでしょう
 か。

 マイケル・ムーア:それはよい質問だと思います。つながる線があるんで
 す。実際に、「ボーリング・フォー・コロンバイン」から「華氏911」
 そしてこの映画にむすびつく線がね。その一部は恐怖の利用ということ。
 僕たちの国にもっとよいシステムがない理由は、僕たちは社会医療制度、
 カナダのシステムなどを恐れるように強いられてきたということです。ア
 メリカ人を脅そうとする試みがあること、国の恐怖レベルを強化させるた
 めに無知を利用しているという点です。これらの映画は、「ロジャー・ア
 ンド・ミー」以来僕はずっとこの問題に取り組んでいるわけなんだけど、
 究極的には経済システムを取り上げていると言えるでしょう。僕が前から
 言っているように、僕らの国の経済システムは不正だし、不公平だし、民
 主的ではありません。ですから、究極的には、僕たちが資本との関わり方
 について別の形の経済を構築するまで、持たざる者たちが苦しみ、持てる
 者たちが強盗のように搾取すると言う、これらの問題がずっと継続するで
 しょう。

 エイミー・グッドマン:では、どのような組織を行っているのですか?こ
 の映画を来週全国の何千もの映画館で上映するわけですが、労働組合と協
 力し、YouTube と協力し、オプラとも協力し、議会でも証言を行うことに
 なっていますね。説明してください。

 マイケル・ムーア:はい。そうですね。なんだか奇妙な合流ですけど。で
 もね、なぜならば、この問題はアメリカ人全員に影響がある問題だからな
 んです。僕は今この問題に取り組みたいといういろいろな種類のグループ
 や人々から連絡を受けているんです。それから、カリフォルニア州看護士
 協会を通して、全国健康プランを支援する医師協会を通して、非常に強力
 な組織運動が広がっています。MoveOn も積極的に参加することになって
 います。左派の多くのグループや労働組合がこの問題について組織運動を
 しています。でも、あなたがおっしゃっているように、YouTube とかこ
 の問題について個人的にも非常に興味を持っていて、これを重要な問題と
 して取り上げようと考えているオプラのような人とかがいるんです。僕は
 二、三週間前くらいに彼女の番組に出たんですけど、彼女はこの映画が上
 映されたら、ヘルスケアの怖い話を彼女のウェブサイトに掲載するように
 彼女の番組のファンの人たちに呼びかけてくれました。秋にはこの問題に
 ついてタウンホールの集まりをやるそうです。

 エイミー・グッドマン: YouTube では何があるんですか?

 マイケル・ムーア:YouTube でも各自のストーリーをビデオテープに撮っ
 てYouTubeにアップするように呼びかけていて、特別なセクションを設置
 してあります。保険会社から個人的に、または家族や友達がどういう扱い
 を受けたか、薬の費用を払わなければならかったり、薬が手に入らなかっ
 た病院や製薬会社などのストーリーを集めたセクションです。

 こういう動きはいわゆるウイルスのような伝染効果があるだろうし、僕も
 それを望んでいます。これらの人々に発言する力を与えるものだから。そ
 うじゃなかったら彼らは全国各地のそれぞれの自宅で一体誰に話を聞いて
 もらえるんだろうって思いながらじっと我慢して苦しみに耐え忍んでいる
 わけですからね。僕のウェブサイト、カリフォルニア看護士協会、YouTube、
 そしてオプラのサイトやこの動きにこれから参加するその他の組織を通し
 て、アメリカ国民たちが本当にどんな体験をしているのか、聞く耳を持つ
 ことができるようになると思います。これから何か良いことが生まれるに
 違いないと信じています。そしてこの問題について候補者たち、特に民主
 党候補者たちに圧力をかけていくつもりです。

 エイミー・グッドマン:彼らを追い込む第二作目の映画を創るつもりです
 か?ニワトリの姿をした人物に彼らを追跡させるんですか?

 マイケル・ムーア:え〜っと、あなたは僕たちが昔やっていたテレビ番組
 に出てくる企業犯罪と戦うニワトリさんのことを言っているんだね。あの
 ニワトリを覚えてくれているなんて、うれしいなぁ。いいえ、でも今週末
 には実際にニューハンプシャー州に出かけるつもりです。そして大統領や
 公職の選挙に出馬する候補者たちがどれだけ買収されて支払いを受けてい
 るのか、情報を公に発表するつもりです。

 エイミー・グッドマン:彼らはどれほど買収され支払いを受けているんで
 すか?

 マイケル・ムーア:その答を聞くのは週末まで待たなくてはなりません。
 でもはっきり言っておくと、きれいな図ではありませんね。言いたくはな
 いですけど。あのね、僕は多くの候補者たちを、いろいろな理由で大変気
 に入っているんですよ。でもね、こういった問題について彼らが正しい立
 場をとるように圧力をかけずに、すぐに候補者を決めてしまったら、僕ら
 は何も達成することはできません。すでに民主党が11月の選挙以降それを
 証明してみせたでしょう。彼らはずるずるとできるかぎり本題に取り組む
 ことを渋るでしょう。それに、もうヒラリーがこの問題についてどういう
 立場を取るかについてはすでに分かっています。もちろん彼女の戦争に対
 する立場を考えれば、本来なら彼女に一票投じたい、最初の女性大統領に
 なってほしい、と考える人たちにとって、でも戦争をこれだけ長期にわ
 たって支持しており、しかもヘルス企業から非常に多額の献金を受け取っ
 ている候補者は絶対支持できない、ということで、彼女に投票することが
 とても難しくなるわけです。

 エイミー・グッドマン:マイケル・ムーアさん、この映画を作っている最
 中に何か意外なことに出会いましたか?

 マイケル・ムーア:はい。ずっと。特に気になったことのひとつですけど、
 イギリスの例のお医者さんにインタビューをしているときのことです。僕
 がどのくらいの収入があるか質問したとき、彼は年収が20万ドル未満なん
 ですが、彼がこう言ったのです。「でも、私のお給料はどれだけ良い仕事
 をしたかで決まるんです。今年私の患者さんの中でタバコを止める人が増
 えたり、コレステロールや血圧が下がったり血糖値が改善されたりすれば
 するほど、給料が上がるんです。つまり、私の患者さんたちがどれだけ健
 康かで決まるのです。だから、収入を上げるために実際に良い仕事をする
 という励みがあるわけです」

 僕はそれを聞いて、それってこの国とは逆じゃないか、と思いました。こ
 の国では、より多くの人がタバコを吸ったり、乱れた食生活をしてたりす
 れば、疾患や病気になるわけで、そうすると製薬会社にとって金儲けにな
 り、お医者さんたちにとっても金儲けになり、病院にとっても金儲けにな
 る。病気になれば皆が儲かるわけだ。

 それで僕は自分自身のことを、個人的に考え込んでしまった。というのも、
 あそこにいるときに僕が言ったことは、もしかして人に話すときに、シス
 テムを変えるひとつの方法は、というか少なくともこのシステムを変える
 には、自分のことをもう少し大切にするように努力しようじゃないかって
 いうこと。そしてそれを始めるのは、第一にこの自分なんだって思いまし
 た。それで、果物とか野菜とかを食べ始めるようになったんです。あなた
 はこういうものについて聞いたことがあるかどうか知らないけれどね、い
 ろんな色があって、歯ごたえがあって、ね、身体にいいんだよ。まだやっ
 たことがないんだったら、試してみたらいい。あなたのお母さんがあそこ
 に座ってらっしゃるけれど、彼女はあなたに果物とか野菜の大切な役割に
 ついてちゃんと躾のよい教育をしたんですね。

 エイミー・グッドマン:彼女は素晴らしい教育をしてくれましたよ。

 マイケル・ムーア:そのとおりです。それにあなたはとても素晴らしい子
 供だったと彼女が言ってましたよ。それはカメラに入りませんでしたけど
 ね。でも僕はお母さんが大人になったあなたのことをとても誇りに思って
 いるということを、あなたの視聴者たちにお伝えしたかったんです。

 それから、もうひとつは、僕は毎日散歩をするようになりました。毎日半
 時間から1時間ほど、僕は散歩にでかけるんです。もう100パーセント気
 分がいいですね。30パウンドも体重が減りました。心配しないでね。僕は
 ジェーン・フォンダ風のワークアウト・ビデオを作ったりはしないから。
 でも、ここで言いたいのは、僕たち、みんな、お互いにね、自分をもっと
 大切にするようなことをいくつかやれば、このキチガイじみたヘルスケア
 システムを避けることができるんじゃないかな。それに、そうすることは
 地球にとってもいいことだと思うよ。僕たちアメリカ人はあまりにもいろ
 いろな面で過度な浪費をしている。自分たちの行動について少し考えるべ
 きだと思うし、それは僕自身に言ってることで、僕から始めることだな。

エイミー・グッドマン:アカデミー賞受賞映画監督のマイケル・ムーアさん
でした。彼の最新作「Sicko」は来週から全国の何千もの映画館で上映される
ことになっています。今週彼はワシントンDCに向かい、この国のヘルスケア
システムに対する関心を喚起し、単一支払い保険制度を求めるために議会で
証言を行います。その後彼はニューハンプシャー州へ向かい、大統領候補者
たちに要求をつきつけます。

本文URL:
http://www.democracynow.org/article.pl?sid=07/06/18/1326235&mode=thread&tid=25#transcript