FROM: tup_bulletin
DATE: 2008年4月10日(木) 午後7時12分
イラン攻撃はありえない話ではない
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ブッシュ政権の対イラン武力行使を排除しない姿勢に最も強く反発していたとさ
れる米中央軍のファロン司令官が、さる3月11日に事実上更迭されたとき、さ
まざまな外交専門家が、米国によるイラン攻撃の可能性が高まっていると警鐘を
鳴らした。米軍がイラクで多くの犠牲をはらっている今の状況で、さらに隣国に
先制攻撃をしかけるなど常識では考えられないことではあるが、多くのウソを重
ねて戦争行為を続けてきたブッシュ&チェイニーのこと、「可能性はゼロ」と楽
観できないことも確かだ。
今週、首都ワシントンでの公聴会に出席するために帰国したイラク駐留米軍のペ
トレイアス司令官についてのいくつかの記事が発表されたが、その一つをここに
訳出した。訳者は昨年、10日間ほどイラン国内を旅行して、その親切で良心的
な国民性にふれる機会が幾度もあった。訳者が住むこの米国が、新たな愚行に走
らないよう、ただ祈るばかりである。
(翻訳 パンタ笛吹/TUP)
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ペトレイアス司令官の証言は、イラン攻撃の合図になるか
ポール・クレイグ・ロバート
2008年4月7日
4月5日、ロンドンの新聞テレグラフ紙は、以下の記事を掲載した。
「昨日、英国政府高官は、イラク駐留米軍のペトレイアス司令官が今度の公聴会
で、『イランが、米国が援助するイラク政府に対して戦争をしかけている』と宣
言するだろうと警告した。イランによるイラクへの干渉に関してのこのような強
気な発言は、米軍によるイラン軍施設への攻撃のお膳立てとなりえると英国政府
は査定している」
ネオコンの召使いとなったペトレイアス司令官は、チェイニー副大統領に書いて
もらったこの筋書きを今度の公聴会で発表するだろう。その片棒を担ぐのは、バ
グダッドでグリーンゾーンの主を務める戦争好きのネオコン、ライアン・クロッ
カー大使だ。もう一人のネオコンの宣伝マンであるキンバリー・ケイガンが、
「イラク国内で、イランが米軍に対して本気で代理戦争を仕掛けていることを米
国は認識するべきだ」と述べたように、イラン攻撃への道はウソで着々と塗り固
められている。
だが米議員たちに平和への舵取りを期待してはいけない。彼らはイラン攻撃をそ
そのかしこそすれ、反対はしそうにないからだ。4月3日付けのヘラルド・トリ
ビューン紙は、上院議員やその代理人たちが、国防企業に合計1億9千6百万ド
ル(約200億円)を投資して、すでに何百万ドルもの利益を貪ったと報じてい
る。
下院軍事委員長である民主党のアイク・スケルトンはすでにイラン攻撃に乗り気
である。英テレグラフ紙はスケルトン委員長が、「イランは他人の迷惑も考えな
いで乱暴だ。政治的だろうと軍事的にだろうと、イランはあらゆる意味において
イラクのシーア派グループと繋がりがあるようだ」と語ったと記している。
スケルトン委員長は、戦争犯罪を犯しているブッシュ政権から言われるままにそ
れをすべて鵜呑みにしている。もしイランが、イラクのシーア派とそんなに深い
繋がりがあるのなら、ワシントン政府はイランを脅すのをやめてもっと友好的に
なり、イラクの安定化に協力してもらうのが筋であろう。そうすれば米国はイラ
クの悪夢から解放されるのだから。
4月4日付けのテヘラン発ロイター伝によると、マリキ政権の後ろ盾であるイラ
クイスラム最高評議会のリーダー、アブデュル・アルハキムの息子モーセン・ハ
キムは、「テヘランのイラン政府は、イラクへの影響力を積極的に使い、混乱を
平和的に解決する橋渡しをしてくれている。バスラでの戦闘が終結できたのも、
イラン政府の努力のおかげだ」と述べている。
ところが、外交的に仲裁に入ってイラクに安定をもたらしてくれたイランに対し
て、ブッシュ政権は感謝するどころか、軍事攻撃をしかけてその悪夢を拡大しよ
うとしているのだ。イラク駐在大使クロッカーは、前述のハキムの発言にすばや
く反論した。「バスラでは、イランが先に戦いを始めたのだ」とクロッカーは発
言したが、この主張のばかばかしさは明白である。ネオコンに影響された米国の
メディアでさえ、「バスラの戦闘は、米軍とマリキ政権がサドル師の率いるマフ
ディ軍を掃討するために開始した」と伝えているのだ。またおおかたの専門家は
この掃討作戦の実の目的を、「米軍がイラン攻撃に踏み切ったときに備えて、
クェートからバスラを経由してバグダッドに向かう米軍の補給路線をマフディ軍
の妨害から守り、前もってその脅威を取り除くためのものだった」と捉えている。
クロッカー大使はまた、バスラでの戦闘の最中にバグダッドのグリーンゾーンに
落とされたロケット弾は、2007年のイラン製だったと言い張っている。しか
しもしイランが本気でイラクの武装勢力に武器を与えようとしているのなら、抵
抗勢力は今ごろ最新鋭のハイテク対戦車砲や対空ロケット弾を持って米軍と戦っ
ていても不思議がないことくらい、無関心なアメリカ人にさえ分かろうというも
のだ。もちろん、イラクの武装勢力はそんなものは持っていない。
ネオコンが主張する「イランがイラクの武装勢力に武器を供与している」という
ウソは、サダムフセインが大量破壊兵器を持っているというウソや、アルカイダ
との繋がりのウソや、アフガニスタンのタリバーンが9/11のテロを仕掛けた
というウソと同じように、ブッシュ政権がつき続けてきたウソのひとつにすぎな
い。
ブッシュ政権は中近東で「仕事を終わらせる」ためには、どんなウソでもつき、
どんな暴挙でもうまくまとめあげるだろう。
では、「仕事を終わらせる」とは実際にどういうことなのか? それは、イラク
とイランとシリアがパレスチナ人に援助をする能力をぶちこわし、南レバノンの
ヒズボラがイスラエルの侵略行為に抵抗できないようにすることだ。もしイラク
とイランが混乱に陥ったなら、シリアは素直に抵抗をあきらめ、アメリカに依存
する親米国になるだろう。そうなればイスラエルは、ガザ西岸の残りの土地を奪
い取り、南レバノンの水利権も手に入れることができるだろう。これがすなわち、
「テロとの戦い」の本当の目的なのだ。
世界中がこの企みをすでに知っているから、米国やイスラエルは本当のところは
孤立している。米国があてにできるのは、金銭供与によって支持を得られる国々
だけだ。
4月4日にルーマニアのブカレストで開かれたNATO北大西洋条約機構とロシアの
サミットで、ロシアのプーチン大統領はこう語った。
「まさかイランが米国を攻撃するなどと、まじめに考える者は誰一人としていな
いだろう。だからイランを窮地に追いつめるよりも、イランが今よりももっと透
明で分かりあえる国になるために我々に何ができるかをともに考える方がよっぽ
ど賢明だと思うのだが」
もちろんその通りだ。しかし戦争好きのブッシュが欲しいのはそんなものではな
い。
たぶん英国政府は、米国によるイラン攻撃への道筋を回避させるため、前もって
テレグラフ紙に「チェニー副大統領が、ペトレイアス司令官やクロッカー大使の
下院議会での共謀の筋書きをすでにお膳立てしている」という情報を意図的に流
したのではなかろうか。
それとは裏腹に、米国のメディアは、真の意図を覆い隠したまま、ペトレイアス
司令官による、「イランがイラクで米兵を殺すために武装勢力に武器を送り続け
るのは、すでに米国に宣戦布告をしたも同然だ」という主張を高らかに吹聴する
だけだろう。
この木曜日には、ペトレイアス司令官とクロッカー大使によるつまらない見せ物
が議会とメディアでどう取り扱われるか知ることになろう。イランを攻撃するこ
とによりブッシュ政権がまたひとつ戦争犯罪に手を染めるかどうかが分かるのだ。
(原文)
Petraeus Testimony May Signal Iran Attack
by Paul Craig Roberts April 7 2008
http://www.antiwar.com/roberts/?articleid=12644