TUP BULLETIN

速報780号 イラク・アフガニスタン帰還兵の証言 No.3 ジェイソン・ウォッシュバーン

投稿日 2008年8月31日

DATE: 2008年9月1日(月) 午前1時09分

イラク・アフガニスタン帰還兵の証言(3) 交戦規則(3)

ジェイソン・ウォッシュバーン

翻訳 福永克紀/TUP冬の兵士プロジェクトチーム


──今こそ魂が問われる時である。夏の兵士と日和見愛国者たちは、こ の危機を前に身をすくませ、祖国への奉仕から遠のくだろう。しかし、 いま立ち向かう者たちこそ、人びとの愛と感謝を受ける資格を得る──

トマス・ペイン、小冊子「アメリカの危機」第1号冒頭 1776年12月


メリーランド州シルバースプリング公聴会 2008年3月13〜16日
ジェイソン・ウォッシュバーン 画像出典:IVAW 証言ビデオ
ジェイソン・ウォッシュバーンです。合州国海兵隊の伍長でした。退役するまで の4年間にイラクに3度派遣されています。最初の2回は第4海兵連隊第1大隊C中隊 に、3回目は第1海兵連隊第3大隊兵器中隊に配属されました。イラク侵攻が始 まったときから参戦して、やがて侵攻が終わると、ヒッラに駐留することになっ た。それが2003年のことです。04年から05年にかけてはナジャフに、05年から06 年にはハディーサに駐留していました。

私が3回派遣されていた間、交戦規則はたびたび変わりました。まるで、振り向 くたびにいつも交戦規則が変わっていると思えるほどだった。その地域の時々の 状況に応じた脅威のレベルがどのように想定されるかによって交戦規則を変える のだ、というのがいつもの説明でした。そして脅威のレベルが高いほど、凶暴に 反応することを許可され、また期待されるのです。

たとえば、侵攻している間は、どんな相手とやりあう場合でも、まず目標識別を 行なうようにと言われました。しかし、もし目的とする町や都市に脅威があると 分かっていたら、以前にその地区を通過した部隊があって多数の犠牲者を出して いたなら、基本的にというか、何であれ撃っていいとされていた。自由発砲地帯 とみなされるのです。それで、私たちは町なかを走りぬけ、見たもの何でも、見 えたものすべてを相手にし発砲したものです。まったく規則なんかなかった…… いやつまり、侵攻している時には、標的に対して武力をどれほど使っても、それ を制限する規則はありませんでした。

通りがかりのひとりの女性のことを覚えています。大きな袋を持っていて、こち らに向かってくるように見えた。で、私たちは彼女に向けMk19自動擲弾銃をぶっ 放したのです。そして粉塵が収まると、その袋には食料品がいっぱい詰まってい ただけだと分かりました。彼女は私たちに食べ物を届けようとしていた。それな のに、私たちはこの人をチリヂリの肉片に吹き飛ばしてしまったのです。

侵攻が終わってブッシュが「任務完了」を宣言したあとでは、交戦規則が劇的に 変わりました。住民を服従させるために実際に発砲するのではなく、いろんな接 近戦というか、直接格闘するタイプのもの、単に取っ組み合いをするような暴力 を使うようになりました。徒歩でパトロールする機会が多くて、それで、だれに も隊列を横切らせてはならないと命令されていました。ですから、警戒心もない 住民が隊列を通り抜けたり横切ったりしようとすると、銃の床尾で打ちのめした り、銃口で突き倒したり、蹴り上げたり、何でもしたものです。そうやって、隊 列から放り出してしまうんです。またある時、かごにいっぱい食料を積んだ自転 車に乗った男がやってきて、彼は、そう、ただ走り抜けようとしたんです。それ で、私たちは、彼にラリアットをかまし、自転車をぶち壊してしまった。なぜっ て? もちろん隊列を通り抜けようとしたからです。そして……、しかしこれ が、私たちがやるように求められていたことなのです。

それから、別の例ですが、燃料補給所の警備を命じられたことがありました。一 日の任務が終わって、何事もなかったようなので、皆でトラックに乗り込みまし た。ちょうど出発しようとしていた時のことです。大勢の人が、イラク人が、燃 料を手に入れようと燃料ポンプのところに押しかけてきました。それで、分隊長 が本部に指示を求めた。返答は、無線から流れた返事は、「どうするかだと? わかったことだ。やっちまうんだ!」 お気づきだと思いますが、実際にはもっ と毒々しい言葉でした。それで、私たちはトラックから飛び降り、イラク人に突 撃し、ライフルや拳や足や、ありとあらゆる物でこてんぱんに打ちのめしまし た。そして、彼らが逃げ去るか、けがをして血を流し意識不明でぶっ倒れたら、 トラックに乗り込みその場を去ったのです。そこで誰かを拘束するようにとか、 尋問するようにとか、命令されることはまったくなかった。めちゃくちゃにして しまえと言われただけでした。

罪もなく殺された人たちのほとんどは、私が実際に目撃した経験から言えば、運 転中のドライバーで、たいていはタクシー運転手です。このような人たちが、た だ運転していたというだけで殺された現場に10数回は居合わせています。3度目 の派遣の時には、軍隊の車列が来たら通りすぎることができるように、全てのイ ラク車両は道端に停車しなければならない規則がありました。もし従わなかった り、道路に戻るのが早すぎたりすると、彼らは撃ち殺される。もし検問所にむや みに近づいてきたり、速度が速すぎたりすると、撃ち殺されるのです。

また、車両のIED、つまり車の手製仕掛け爆弾に警戒するよう何度も教えられま した。こういう車に気をつけろというその描写は、どれもイラクのタクシーの特 徴にぴったりと当てはまる。いいですか、パネルドアがオレンジ色でフロントが 白、あるいはその逆の組み合わせの車には警戒せよと言われる。これじゃイラク のタクシーが一台残らず当てはまる。まったくこの通りの外見なんだから、車両 爆弾かもしれなくて、警戒しなくちゃならない車なのです。ですから、私たちが 警戒するようにと言われているのと似ている車に乗っていたというだけの理由 で、たくさんの男たちが撃ち殺されました。

もうひとつの例ですが、ハディーサ近郊の私たちの作戦地域にある町で、射殺さ れたのは、実は町長だったという事件がありました。司令官がこの事件の写真を 私たちに見せました。中隊の全員が集合させられていた場で、事件の全容を、つ まりどういうふうだったかを示す何枚もの写真を見せたのです。それからこう強 調して言いました。なぜ写真を見せるかというと、フロントガラスの一箇所に集 中したすばらしい弾痕があるからだと。そして、海兵隊の射撃はこうあるべきだ と、中隊の前で宣言したのです。しかし、殺されたのは、その町の町長だった。 事件の後で、家族に謝罪し補償金を支払う役目を担わされたのが私の分隊でし た。しかしやることは、ただ出かけて行って、いくらか金を渡して、立ち去るだ けだった。「まあ、大したことじゃない」と言わんばかりの態度で謝罪すればい いと思われていた。まるで冗談みたいな話です。

そのほかにも、ほとんど暗黙の了解のもとで勧められていたことがあります。証 拠として残していくための武器を持参することです。3度目の派遣時にはシャベ ルを持参することになりました。つまり、武器かシャベルを常に持参していれ ば、うっかりと市民を撃ち殺してしまった場合に、ただその武器を死体の上に放 り投げておくだけで、彼らを反乱分子のように見せかけることができるからで す。もしくは、私の友人たちがここで証言したように、3度目の派遣時には、も しイラク人がシャベルを持っていたら、または重そうなバッグを持っていたら、 もしどこかを掘っていたら、特にそれが道路のそばだったら、彼らを撃っていい と教えられました。ですから、実際にこのような道具や武器を車に積んで運んで いて、うっかりと罪もない市民を撃ち殺してしまった時には、彼らの死体の上に 放り投げておいて、こう言えるのです。「なーに、あいつは掘っていたんだ。交 戦規則の範囲内さ」。これは、ひろく勧められていたことですが、陰でこっそり とだけでした。確かにおおっぴらに命じるようなことではありません。しかし、 そうです、とても一般的に行われていたのです。


2008年9月、反戦イラク帰還兵の会(IVAW)、冬の兵士の証言集を全米で刊行。

仮題『冬の兵士証言集──イラク・アフガニスタン帰還兵が明かす戦争の真相』
編集アーロン・グランツ

Winter Soldier: Iraq and Afghanistan: Eyewitness Accounts of the Occupations, by Iraq Veterans Against the War, edited by Aaron Glantz,
(Haymarket Books; September, 2008).
>>Haymarket Books
>>amazon.com

★岩波書店より刊行予定。現在、TUPにて邦訳作業中。

 イラク戦争を追いつづけてきたジャーナリストが『証言集』の書評を書いている。

───────────────────────────────────

  • TUP冬の兵士プロジェクト 証言の一覧
  • ジェイソン・ウォッシュバーンの証言ビデオ
    http://www.democracynow.org/2008/3/18/winter_soldier_contd_us_vets_active
    http://ivaw.org/wintersoldier/testimony/rules-engagement-part-2/jason-washburn/video
  • 反戦イラク帰還兵の会 公式サイト
    Iraq Veterans Against the War
    http://ivaw.org/
  • 反戦イラク帰還兵の会「冬の兵士」特集ページ
    Winter Soldier: Iraq & Afghanistan
    Eyewitness Accounts of the Occupations
    http://ivaw.org/wintersoldier
  • KPFAラジオ プロジェクト"The War Comes Home"
    http://www.warcomeshome.org/