◎海外基地維持の重圧で米帝国は破産する。基地をたたむ時だ
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世界制覇の”使命感”に取り憑かれた米国は世界中に展開する米軍基地に巨額の
運用費を垂れ流し続けています。そこへ自国領土を基地のために占拠されてい
る国々からの代価の請求が出始めました。米国経済はもうもたなくなるでしょ
う。
日本政策研究所所長としてアメリカ帝国主義の不条理を告発し続ける米国の政
治学者チャルマーズ・ジョンソンが、海外基地は早く精算すべきだ、占拠者に
多額を貢ぎ続ける日本よ目を覚ませと訴えています。
(邦訳と前文:藤谷英男/TUP)
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アメリカ基地帝国とどう付き合うかー占拠地への控えめな提言
チャルマーズ・ジョンソン
トムディスパッチ 2009年7月2日
毎年1,020億ドルを費やすアメリカ基地帝国は、すでに世界で最も高価な軍事
組織体となっているが、今後はさらに高くつくことになった。まず、国務省が
パキスタンのイスラマバードに新しい「大使館」を建設しようとしていること
が5月27日分かった。建設費7億3,600万ドルは史上2番目の高額であり、予算
超過がなくても、ブッシュ政権がバグダッドに作ったバチカン市規模の大使館
に400万ドル及ばないだけだ。
国務省はさらにアフガニスタンとの国境に近いペシャワールに、領事館とその
職員の生活空間として、プールまで付いた五つ星のパール・コンチネンタル・
ホテルの買収を計画していると報じられていた。その計画にとって不幸なこと
に、6月9日、パキスタンの武装組織がトラックに爆発物を満載してそのホテル
に突入し、ホテル内にいた18名が死亡、少なくとも55名が負傷して建物の一翼
がそっくり破壊された。国務省がその後もなお買収計画を進めているのかどう
かについては何も伝えられていない。
このどちらの建造物も、経費がどれほどのものになろうとも、すでに膨大な我
が国の軍事予算には含まれないことになっている。本来の大使館、すなわち住
民がビザの申請に訪れ、館員が国の貿易や外交的利益を代表する所としては計
画されていないにも拘わらずである。その代わりに、これら大使館と称するも
のは、実際には中世の要塞よろしく城壁を廻らせた建造物群となって、そこで
は米国の諜報員、兵士、情報局員、外交官らが、戦闘地域の敵性住民に目を光
らせようとしている。そこに海兵隊の大部隊が駐屯し、屋上には緊急脱出用の
ヘリパッドを備えることは目に見えている。
ある程度の物理的防護があることが分かれば、危険な場所で勤務する国務省職
員にとっては心強く感じられるかも知れないが、同時に自分たちがあからさま
なアメリカ帝国の進出の一翼であることが、彼ら自身にも、また勤務地の国の
住民にも明らかになるに違いない。どれほど強固に護られていても、基地型の
大使館は大きな軍事基地よりも与し易い標的の一つだと、米国を攻撃をする武
装勢力が考えても驚くには当たらない。
ところで、世界中で800カ所近くにもなる他人の国に点在する基地に対して、
一体何がなされているのだろうか。銀行救済、新しい医療保険、公害対策など
の極めて必要性の高い出費をめぐって議会とオバマ政権が論議を戦わせている
今でさえ、嫌われ者で金食い虫の帝国占拠地を幾らか畳めば良い節約になりそ
うだとは誰も言い出さない。
それどころか海外基地は更に高くつくことになりそうだ。中央アジアの旧ソ連
構成共和国であるキルギスは去る2009年2月、(アフガニスタン戦争の兵站地
として2001年から使用されている)マナス空軍基地から米軍を追い出すつもり
だと発表したが、説得の結果引き続き我が国の使用が認められるようになった
ことが6月23日分かった。しかし罠がある。その厚意の見返りに米国が払う基
地の賃借料年額が1,740万ドルから6,000万ドルへと3倍以上になり、その上、
約束した空港施設の改善やその他の経済的便宜供与のためにさらに何百万ドル
もを払うことになった。すべてはアフガニスタンでの戦争を拡大すると決めた
オバマ政権が、物資の貯蔵と中継のためにこの基地が必要だと納得したからだ。
私にはこの展開が、米国を占領者として嫌っている他の諸国の注意を引かずに
済むとは思えない。たとえばエクアドルは我々に対し、来る11月までにマンタ
基地から撤退するようにと言い渡している。もちろん彼らも自尊心は捨ておけ
ず、コロンビアやペルーでうろつく米兵を疎んじていることは言うまでもない。
それでも多分、彼らも、使える金をいくらか増やすことになるだろう。
では、自国の土地に米軍基地を迎え入れて57年以上もの間大金をつぎ込んでき
た日本はどうなのか。最近日本は、海兵隊の一部を沖縄の基地から米領のグア
ムへ移転させることで米国と合意した。しかしその過程で、海兵隊の転出経費
のみならず、移転先のグアムでの新しい施設の建設費用まで搾り取られた。日
本がキルギス政府に倣って米軍に自弁で退去せよと言い渡すことはあり得ない
ことであろうか。あるいは、少なくとも、一カ月に二人ほどの割合で日常的に
日本女性を強姦し、沖縄の38カ所の基地周辺のすべての住民の生活を悲惨なも
のにしている、その同じ米軍人と軍関係者のための資金拠出をやめることは考
えられないだろうか。これは実に、1945年に我々が沖縄に入って以来沖縄住
民が切望し祈願してきたことである。
実際私は、自国領土に米軍基地を置くことにうんざりしている諸国に対して提
案がある。手遅れになる前に始末をつけるようにと。借料をつり上げるか米軍
に退去を求めるがよい。そう勧めるのはアメリカ基地帝国が早晩祖国を破産さ
ると確信しているからである。金融バブルやねずみ講の場合と同様、投資家な
らば引き揚げられるうちに資金を引き揚げた方がよい。
これは無論、米国債に投資している中国その他の国に起こっていることである。
ただこれらの国はまだ自分たちが大量に保有しているうちにドルを暴落させな
いように、静かにゆっくりと引き揚げているだけなのだ。しかし間違ってはな
らない。出血が急速か緩慢かはともかく、我が国は出血しているのだ。軍事帝
国とそのすべての基地にしがみついていたら、やがては我々の知っている米国
の命脈は尽きるだろう。
何十年か先、米国の未来の世代が世界を旅する時には、何億ドルもの「大使館」
が点在する風景を目にすることはないはずだ。
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[「トムディスパッチ」編集者トム・エンゲルハートによる著者紹介]
チャルマーズ・ジョンソンは「ブローバック」(2000年)、「帝国の悲劇」
(2004年)、「ネメシス」(2006年)(いずれもメトロポリタンブックス
刊)のブローバック三部作の著者。以下で「アメリカ基地帝国に関するジョン
ソンへのトムディスパッチによるインタビュー(音声)」が聞ける。
http://tomdispatch.blogspot.com/2009/07/interview-with-chalmers-johnson.html
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原文:”How to Deal with America’s Empire of Bases
A Modest Proposal for Garrisoned Lands”
By Chalmers Johnson
TomDispatch
2009年7月2日
http://www.tomdispatch.com/post/175091/chalmers_johnson_baseless_expenditures
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