TUP BULLETIN

速報865号 戦争終結を求め、内部告発者を支持する平和運動の共同声明

投稿日 2010年12月13日

◎ウィキリークスに応える市民の行動―――――――――――――――――――――――――――――――――――


ウィキリークスが暴露した米政府外交公電について、チョムスキーは、米国の体制エリートの民主主義に対する軽蔑が表れていると言っています。公電でサウジアラビア国王が米国にイラン攻撃を求めたとされたことに関して、H・クリントン米国務長官は、イランが各国から脅威と見られていることを裏付けるものだと強弁しましたが、ブルッキングズ研究所によれば、アラブ諸国での世論調査で主な脅威と見られているのはイスラエル(88%)、米国(77%)なのに対して、イランを主な脅威と見る人は10パーセントとされ(*)、アラブ市民は明らかに戦争など求めていません。“国家”つまり官僚・軍機構は市民を軽視し、秘密主義のベールの影で政策を遂行してきました。以下は、こうした秘密主義が破られることを求めるとともに、現在も行われているイラク、アフガニスタン、パキスタン、イエメンの戦争終結を求め、アラブ諸国・イラン・米国をはじめどの国の市民も反対する新たな戦争を許さない、市民平和運動の声明です。


(前書き・翻訳:荒井雅子/TUP)

(*) 2010 Arab Public Opinion Poll


凡例:[ ]:訳者による補足

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ウィキリークスを出発点にどこへいくのか
――平和運動は応える
シンディ・シーハン
2010年12月1日
 
ウィキリークスによる米政府機密文書暴露を受けて、平和運動グループとして、戦争終結の要求を強めるとともに、内部告発者への支持を表明します。
 
ウィキリークスによって公開が予定されている米政府外交公電のうち、これまでに目にすることができるようになったのはごく一部ですが、すでに引き出せる結論があります。今回の公電と[10月公開]イラク戦争現場報告、[7月公開]アフガニスタン戦争報告によって、米市民は米国政府の正体をありのままに見る機会を得ました。
 
見えてくるのは、世界のあらゆる地域に影響を及ぼし自国の市民を欺く地球規模の軍事・スパイ帝国を支配する、米国政府の姿です。秘密主義とスパイ行為と敵意が米国政府全体に染みつき、外交部門はCIAと軍の一部門と化しています。だからこそアフガニスタンでの非軍事的取り組みを率いるリチャード・ホルブルックは、そうした取り組みを「軍に対する支援」と言ったのです。
 
秘密裏の戦争計画、隠された戦争、そして戦争に関する嘘は日常茶飯事になっています。米国はイエメンで、秘密裏かつ違法に戦争を行い、それについて嘘をつくよう同国政府を説得しました。ホンジュラスでは、クーデターを支援し、それについて嘘をつきました。
 
対テロ戦争がテロを減らすのではなくむしろ増大させるということは、ずっと前からわかっていました。今回の暴露によって、サウジアラビアが最大のテロ支援国家であること、同国の独裁者アブドゥッラー国王が、収監者の処遇に関して米国政府ときわめて緊密な関係にあることがわかりました。国王はグアンタナモ収容所から釈放される収監者にマイクロチップを埋め込んでおくよう米国に要請しました。国王はまた、米国が国際法に反してイランを侵略攻撃することも求めています。米議会は、米国史上最大の武器売却となる、サウジアラビアへの600億ドル[約5兆円]の武器売却を直ちに差し止めるべきです。議会はまた、憲法に違反してさらなる戦争を開始することを大統領に認めている、2001年の武力行使許可の「更新」という考えを一切捨てるべきです。同盟国が米国大統領に求めるのが
どんな類いの戦争なのか、わかっています。
 
独裁者が戦争を強く求める一方で、政府の別の部門、市民、そして証拠となる事実は、戦争反対へ強く傾いていることがわかります。公電からわかったことによれば、今年二月、ヨーロッパを標的にできるミサイルをイランが保有しているという米国の主張に対して、ロシアが反駁しました。2009年9月の公電からは、米英両国が、事実と一致しようがしまいがおかまいなくイランの核開発を示唆する報告書を出させるために、当時国際原子力機関(IAEA)次期事務局長に選出されていた天野之弥に圧力をかけたこと、また国家安全保障担当大統領補佐官ジェームズ・ジョーンズ大将が、何の根拠もなしにイランの核開発計画を北朝鮮の核開発計画と結びつけるプロパガンダ戦略を提案していたこともわかりました。
 
戦争への圧力の多くは、米国内から来ているように見えます。米国を代表する人々は、スパイし、嘘をつき、搾取するべき敵として、全世界を扱っています。世界に対する米国の態度が変わるには、こういうふるまいを許す秘密主義を破る必要があります。オバマ大統領の公約である透明性の実現に貢献してきた人々は、仕返しを受けないよう保護されなくてはなりません。その一方で、外交上の信頼という立場を悪用して、スパイ行為と戦争計画の政策を推進してきた人々は、責任を問われる必要があります。
 
ウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジに居住資格と保護を申し出る国があるかもしれませんが、氏の仕事から最も恩恵を受けているのは米国です。米国の諸都市に、アサンジ氏の安全が確保される場所の提供を要望します。
 
米司法省は、侵略戦争、誘拐、拷問、暗殺、正当な権限のないスパイ行為に免責を認めてきた一方で、ブラッドリー・マニングに対してはウィキリークスに文書をリークしたとして刑事訴追を行っています。米国政府が、私たちを危険にさらしたのは国防総省ではなくアサンジの仕事だと主張し続け、アサンジの告発あるいは世界のどこかからスウェーデンへの引き渡し・移送を支持するのであれば、米国の道義的立場は、さらに最低に堕すことになります。
 
米国政府は、ジュリアン・アサンジに対して馬鹿げた刑事訴追を行うため、スウェーデンにそうするよう圧力をかけるため、またウィキリークスのサーバーに対する妨害を行うためにとっている行動を一切やめるべきです。リークを隠蔽すれば、一層大規模なリークとスキャンダルという形で裏目に出るという歴史が、米政府にはあります。米国務省は、外交と国際社会との互恵的連携に力を注ぐべきです。
 
市民を代表する政府と独立したメディアがするべき仕事を代わって行っている方々に、私たち署名者は感謝を表明します。私たちは、公然と行われている戦争と秘密裏の戦争のすべての終結、国務省職員および請負業者をスパイ行為や戦争行為に利用するのを禁止すること、そして、ウィキリークスの公電が明るみに出した事実の徹底的な調査を求めます。
 
12月16日午前10時にホワイトハウスで、現在の戦争に対する抗議行動が計画されています。私たちはそれを支持します。
 
署名者
 
シンディ・シーハン Cindy Sheehan’s Soapbox [子息ケーシーの2004年の
イラクでの戦死後、2005年8月ブッシュの牧場前にキャンプして戦争反対を訴えた]
メーディア・ベンジャミン [反戦団体]「コードピンク」
レスリー・ケイガン [反戦団体連合United for Peace and Justice]
ティム・カーペンター Progressive Democrats of America [ウィスコンシン州議会議員(民主党)]
ガエル・マーフィー United for Peace and Justice
デービッド・スワンソン WarisaCrime.org [イラク開戦に関する英労働党政権の秘密会議覚書「ダウニングストリートメモ」を紹介、ブッシュ、チェイニーの弾劾要求を展開した]
デブラ・スウィート [ブッシュの退陣を求めた]World Can’t Wait
ケビン・ジーズ Voters for Peace
アン・ライト Veterans for Peace [退役軍人・元国務省職員、イラク戦争に抗議して米国務省を辞任した]
 
 
原文
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The Peace Movement Responds
By Cindy Sheehan
December 01, 2010