◎メガリークの衝撃:ロンドンで聞くエジプトの声 (その9)
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刻々と変化するエジプト情勢から目が離せず、
なしにしてウォッチングしています。
http://newsfromsw19.seesaa.
に掲載し、TUPのMLにも流したところ、
しようとの提案があってシリーズで速報することになりました。
速報します。
第一弾~第八弾(速報875号~)
https://www.tup-bulletin.org/
藤澤みどり/TUP
<第13信>
革命なう@エジプト 第17日 革命が来た!不発
民衆蜂起 第17日(2月10日)
第14日目の月曜日は、BBCのレポーターが「ニュー・ノーマル」と名付けた、すぐそこ
にプロテストのあるエジプトの新しい日常について、第15日目火曜日は、エジプト全
土で300万人が路上に出たとも言われるいままで一番大きなデモと、スエズの労働者の
無期限スト突入について、第16日目水曜日は、エジプト各地に広がった労働者のスト
ライキについて順を追って書いていたのだけれど……ああ、もうそんなことより、い
まじゃん。
18.10 GMT
夕方4時過ぎごろからたたみ掛けるように情勢が変わった。まず、ムバラク大統領が今
夜、国営放送でスピーチするとの報道があり、どうやらそれは辞任のスピーチではな
いかとのレポートにBBC24のニューススタジオは色めき立つ。その根拠として、軍の高
官が解放広場を訪れ、プロテスターに向かって「今夜、すべての要求が達成されるだ
ろう」と言ったとABCテレビが報じたというのだ。
そのころ、軍は意志決定のための最高会議を開いており、会議開始に先立って居並ぶ
軍高官の面々が国営放送の画面に映し出された。これはいまだかつてないことだそう
だ。本来ならそこにいるはずの最高司令官(大統領)の姿がない。ムバラクが辞任し
たあとの権力の移行期間に軍部のクーデターがあるかもしれないとの見方が広がる。
それからまもなく、またたく間に世界を駆け回ったムバラク今夜辞任のニュースに対
し、内閣のなんとか大臣が噂にすぎないと否定したとロイターが報じた。なんだよ~
と思いつつ、気を取り直し、では、明日は予定通り、いままでにない規模の街頭行動
を実施するまでだ(と、自分は行けもしないのにすっかりその気になっている)。明
日はアルジェリアでも巨大なデモが予定されている。
ところが、たいして間を置かず、やはり辞めるらしいとの報道。STEP DOWN ではなく
、STEP ASIDE という表現が使われる。STEP ASIDE(委譲)だって実質中身はいっしょ
じゃんと思うが、なにかこだわりがあるらしい。
再びツイスト。与党NDPの議長にBBCのキャスターがインタビュー中に、明日の朝まで
ムバラク大統領が同じ地位にいることはないとの発言が出る。また、BBCアラビア語放
送を聞いていた友人からの情報によれば、ムバラクはすでに国をあとにしたとの報道
があったとのこと。同じ情報を受けてか、BBCのキャスターが議長に「まことにつまら
ない質問なんですが、大統領はいまどこに?」と質問したところ、「知らない」との
回答。
*
17.30 GMT
アルジャジーラの画面が、エジプトの国営放送でいま放送されている画面に切り替わ
った。切り替わったと言っても、アルジャジーラと同様に解放広場の人混みを俯瞰し
ているだけだ。2時間ほど前から国営放送でこれを放送するようになったとアルジャジ
ーラのキャスターは言う。
この17日間の民衆蜂起の期間を通じて、国営放送が初めて蜂起の実体を国民に向けて
放送している。マイクを向けられると、広場で騒いでいるのはほんの一握りにすぎな
い、かれらは国を代表していない、と言っていたデモ不支持派の人々は、この光景を
見てどんなにか驚いているだろう。まだ路上に出ていないエジプト国民の脳みそに、
いま初めて消毒されていない革命の熱が注入されている。
アルジャジーラのすごいところは、中立なんてなんのそのと報道機関の「節度」をや
すやすと越えてしまうところだ。例えばいま、ムバラク大統領の演説が国営テレビで
放送されるのを待ちながら、だれもが気にしている次の動き、軍がどう出るかについ
てスタジオのキャスターと現場のレポーターが会話している。そして、軍の介入につ
いて、訳知り顔にいくつもの可能性を示してみせたりはせず、もしも、軍が市民に銃
口を向けたら軍にとってこれだけの不利益があると並べ立てている。
民主化を要求する丸腰のプロテスターに対して武力を用いるようなことがあったら、
世界に民主化を先導するアメリカに対して公然と異議を申し立てることになる。そう
なれば、アメリカから受けている莫大な軍事支援も、最新鋭の兵器も、最新鋭のジェ
ット戦闘機も、最新鋭の技術も軍事訓練も、すべて手放さなければならなくなる。そ
れら全部をみすみす手放すほど軍は馬鹿ではないでしょう、と(だいたいこんな内容
のことを言ってました)。
自発的な市民からなるプロテスターたちを「民主化要求派」「民主化支持派」と呼び
続けているのも、知る限りではアルジャジーラだけだ。他のメディアは「反政府派」
「反体制派」「反ムバラク派」「野党グループ(日本のメディア)」などを使い分け
ていて、「民主化要求派」とはあまり呼ばない。アルジャジーラだけがこの抵抗運動
の本質をつかんでいる証左だろう。(BBCのニューズリーダーのジョージ・アレガイヤ
も一貫してプロテスターを「民主化支持派」と呼んでいる。アレガイヤはスリランカ
系)
4月6日ユース・ムーブメントなどの若者主体のグループにとって、ムバラク辞任は目
標ではなく、もっとずっと遠くにある目標の第一歩にすぎない。だからここを譲るわ
けにはいかない、妥協できない。かれらはナイーブなのではなく、もっとずっと遠く
を見ている。
*
20.40 GMT
すでに人でいっぱいの解放広場に人々が続々と集まってきている。歴史的な瞬間を多
くの人々と共に喜ぼうとの一心で。
予定されていたスピーチの時刻を30分以上過ぎて、ムバラク大統領のスピーチの内容
がアル=アラビアで報じられたとロイターが報じた。国営放送で放映する前になぜ他
国の衛星放送のアル=アラビアにその内容がわかるのか疑問であるが、大統領のスピ
ーチが当初言われていたようにライブではなく録画であれば、その録画に立ち会った
人のリークだろう。あるいは攪乱情報か。それによると、ムバラクは蜂起のさなかに
命を落とした人に遺憾の意を表し、戒厳令を解除、大統領権限をスレイマンに委譲し
、自分は完全に手をひくと言ったとされる。
*
21.10 GMT(ムバラクの演説放送後)
Hugely disappointed!!!!!
録画みたいだったが内容は全然違うじゃん。
とうとうアメリカにまで公然と矛先を向けた。他国の意見は聞かないと。
*
1月25日に今回のプロテストが始まったときからずっと現場にいるエジプト系イギリス
人の俳優ハリド・アブダラーが、BBCの電話インタビューに答えている。声は暗い。(
かれについては速報878号<革命なう 第10日>をご覧ください)
https://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=910
「非常に失望した。そして、恐れてもいる。あの演説は明らかに挑発で、この挑発に
よって何か起こるのではないかと恐れている。かれは、われわれが何人死んでも何も
気にしないのがわかった。ムバラクもスレイマンも国民全体、それどころか世界全体
のなにものも気にかけていないのがわかった」
レポーターが問う。「ムバラクが去ったのち、スレイマンが大統領の座につくことに
ついてはどうですか」
「1週間前ならスレイマンにもチャンスがあった。でもいまは違う。(ムバラクの演説
を聞いているあいだ)先週の衝突で兄弟を殺された男がわたしの隣にいて、かれは演
説を聞いてその場にくず折れ、自分を抑えられなくなり、落ち着かせるのにずいぶん
時間がかかった。ムバラクの演説はかれにとってはひどい侮辱だ。周りでは泣き崩れ
る人も多かった」(先週の「親ムバラク派」によるプロテスターとジャーナリストへ
の攻撃は、スレイマンの指示であると広く信じられている。事実であろう)
*
解放広場が攻撃にさらされたその夜のことを、ハリドがガーディアン紙の記者に語っ
ている(記者のブログから)。
2011年2月3日10.19am カイロ・タハリール[解放]広場にて(ガーディアン紙のニュー
スブログから)
「わたしたちは勝利するだろう。暴力体制は断末魔の苦しみの中にある」とイギリス
人俳優ハリド・アブダッラーはタハリール広場でわたしに話した。
昨夜、かれはプロテスターが銃撃されるのを目撃した。
「銃創を負った男の額からかれの脳みそが流れ出るのを見た。真っ黒な夜だった」
しかし、ムバラクの戦略は機能していないとかれは言う。
「ここにいる人々は動揺していない。わたしたちは生業も宗教も年齢もばらばらの組
織化されていない人間の集団だ。社会的正義と政治的正義を切望する確信の強さこそ
が、わたしたちを結びつけている」
http://www.guardian.co.uk/news/blog/2011/feb/03/egypt-protests-live-updates#block-3%23block-13