◎東日本大震災による原発震災発生
日本の地震災害で最も恐れられていた「原発震災」がついに現実のものとなっ
てしまいました。
「日本の原発は耐震性は世界一で、さらに日本及び周辺海域で発生するあらゆ
る地震に対して耐えられる対策をとっている」と国も事業者も豪語していまし
た。しかしもろくもこの神話は崩壊しました。
原発震災が起きれば取り返しのつかない事故になると、日本中の市民が警告を
発し、裁判を起こし、浜岡や志賀原発訴訟では勝訴してもいました。しかしそ
んなことを意に返さない国や電力は、警告を一切無視し続けました。それが今、
原発震災を引き起こした最大の原因です。誰もそのことに触れないことも異様
です。
現在、原子炉内部の水が無くなり、冷やし続けることが出来なくなったため、
燃料が溶け出す「メルトダウン」の危険性が刻々と迫っています。これが起き
てしまうと今以上の大量放射能放出事故になってしまいます。
しかしながら日本で行われる報道は極めて限られた情報に依っているため、本
当のことが分からなくなっています。
突如として起きた「水素爆発」を「爆発的事象」などとあり得ない日本語にし
てみたり、福島第一原発1号機は建設以来40年たつ日本で最も古い原発のひと
つであることには触れないし、福島第一原発3号機はプルトニウム燃料を入れ
ている原発で、そのために安全性は他の原発よりも低下していることもいわな
い。
政府広報と代わり映えのしないテレビの解説や、本当の危機を正確に伝えない
メディアに存在意義はないばかりか、むしろ有害でさえあります。
私たちTUPでは、エジプトやガザで起きていたことを現地報道や論説などで紹
介してきましたが、今度は日本で起きたこれまでで最悪の原発震災が英国では
どのように伝えられているかを紹介します。
海外メディアにとって異様なのは日本の記者クラブ制度など報道の閉鎖性です
が、今回のような事件では閉鎖性が官民一体となって実行されているように感
じているのだろうと思います。
私個人も先ほどフランスの国営放送「フランス2」の取材を受けてきました。
日本で起きた原発震災に世界は注目しています。(前書き:山崎久隆)
原発事故に関して日本政府は事態を小さく見せようとしているのではないか
[翻訳ノート] 今朝(3月13日)、英国放送BBCのウェブサイトに掲載された記
事から、福島第一原発の事故に関する部分のみ抜粋翻訳しました。特に新しい
情報があるわけではないですが、BBCの東京特派員クリス・ホッグは、外国の
メディアのジャーナリストたちが共通して口にする不満と疑いーー日本政府は
国民に知って欲しくないことがいろいろあるのではないかーーをストレートに
問いかけています。
BBC24(デジタルニュースチャンネル)は、この地震が発生した11日金曜日朝
(英国時間)からほとんどぶっ通しで日本の地震について報じており、特に原
発の危機が伝えられてからはたくさんの専門家や学者がスタジオに招かれ、多
くの時間を割いて報じています。
今朝も専門家が福島第一原発3号炉の爆発の可能性と、もし爆発するとすれば
どのようなものになるかについて予想を立てるよう求められていましたが、日
本政府の発表の内容が貧弱なので正確な予測を立てることができないと言って
いました。
また、さきほどもBBCの環境問題解説員のロジャー・ハービンが、枝野官房長
官による3号炉冷却作業の進展についての報告を聞いたあとで、BBCのニューズ
リーダーが「良い報告ですか?」と尋ねたのに対し、「この発表を聞くと良く
なっているように聞こえるが、出てきている情報が少な過ぎるので判断しにく
い」と答えていました。
これに続けてハービンは大筋で以下のようにコメントしました。
「昨日(12日)水素爆発した1号炉にしろ、いま危機にある3号炉にしろ、冷却
装置が働かなくなった理由がまったく説明されていない。地震によってダメージ
を受けて働かなくなったのか、あるいは、それ以前から問題があったのか、そう
いう点についての情報が何も出ていない」
「地震が起きた際に原発が稼働停止になるように設計されているのはまったく正
しいが、原発は停まってもすぐには冷えないので、かなりの長時間にわたって冷
やし続けなければならないことはわかっている。にもかかわらず、冷却装置が停
まってしまうのは異常事態であり、その原因を知ることが大事だ。日本の政治や
科学者だけの問題ではない。この原発(福島1号原発)は科学者から問題をいろ
いろ指摘されてきた原発だ。冷却装置の問題もそのひとつなのではないか」
大災害のあとの日本政府の采配と自衛隊の献身的な活動、また人々の落ち着いた
行動に対して、BBCだけでなく外国のメディアはいずれも最大級の賛辞を惜しみ
ません。しかし、その一方で、原発事故に関する情報開示の少なさに疑問や不満
が述べられているのも事実です。
危機管理のために政府が情報を出し惜しんでも、かえって間違った情報が出回る
ことを助長するだけです。国民の冷静な判断と冷静な行動を信じて、適切な情報
が適切なタイミングで正直に開示されることを日本政府に望みます。
英国時間2011年3月13日11時20分現在(翻訳ノートと本文:藤澤みどり)
*原発事故に関する情報を以下のブログで更新しています。
http://newsfromsw19.seesaa.net/
*2月24日に速報配信したばかりの<TUP速報892号 TUP論説:ニュージーラ
ンドの地震から教訓を読み解く>もあわせてお読みください。
https://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=924
日本は二番目の原子炉爆発の危機にある(抜粋)
2011年3月13日8時51分[英国時間]更新 BBCウェブサイト
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地震に襲われた福島[第一]原発で二番目の爆発の危険があると日本の役人たちが言っ
ている。
しかし、枝野幸男内閣官房長官は、施設は衝撃を耐え抜くことができるので原子炉
本体は損傷されないだろうと述べた。
土曜日に起きた1号炉の建屋での爆発に続き、技術者たちは3号炉を冷やそうと奮闘
している。(中略)
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放射能汚染された蒸気
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日本政府は、福島[第一]原発での放射能漏れの危機を、たいしたものではないように
見せようと努めている。
しかし、この原発の運営者である東京電力 (Tepco)は、原発の周囲の放射能レベルは
許容範囲を超えたと発表した。
約17万人が原発付近から避難している。
3号炉のメルトダウンは他の原子炉よりもっと深刻かもしれないと、BBCのクリス・
ホッグが東京から伝えた。なぜなら、この原子炉はウラニウムだけで運転する他の原
子炉とは異なり、プルトニウムとウラニウムを燃料としているからだ。
当局が炉心にある燃料棒を水に浸けておくことができる限り、ひどい被害は避けるこ
とができるだろうと専門家は言っている。
緊急作業員が燃料棒を冷やすために海水をポンプでくみ上げて[注入して]いるが、燃
料棒の上の部分が、短時間ではあるが露出していたとする報告もある。
技術者たちは、三号炉の圧力を減らすための賭けに出て、バルブを開けて放射能に汚
染された少量の蒸気を逃がした。
技術者たちは、[爆発した]最初の原子炉でも、原子炉が入っていた建屋を破壊する爆
発が起きる数時間前に、同様の措置を実施した。(後略)
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クリス・ホッグの報告 BBC東京特派員
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現在、3号炉でも問題が発生している。過熱についての心配だ。今現在、海水をポン
プでくみ上げて注入しいてる。これは、この問題を解決するための普通ではない、
何というか、革新的な方法だ。しかし、これほどまでに奇妙な方法を実用に移してい
るという事実が、この問題がいかに深刻であるかの暗示になっている。
これは日本政府にとってたいへん難しい問題だ。必要とするエネルギーを得るために
日本が大いに頼っている原子力発電所の安全性については、地震が頻発する国として
ずっと心配されてきた。
また、パニックを引き起こすようなことにならないようにも警戒している。土曜日に
は、この原発の避難地域がしだいに広められるのを見た。最初はわずか数キロ[の範囲]
から、今ではもっと広くなっている。しかし、避難地域が拡大すればするほど、人々
をその外に出さなければならなくなるのは明らかだ。不必要なパニックを起こさない
ことが重要だと政府は言うだろう。これが、政府が起きていることをできるだけ小さ
く見せようとしている理由だ。
原文
Japan fears second reactor blast(抜粋)
13 March 2011 Last updated at 08:51
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-pacific-12724953