日本は子供を守らないのか
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放射能に曝されつづける日本の子供たちの未来を憂い、政府による速やかな避難対策を願う人々は世界中にいる。ボルダー市内や近郊に毎年桜の木を植え続けているパンタ笛吹氏が、特に「子供の日」のために力を注いだ速報をお届けする。(宮前ゆかり/TUP)
埼玉に住んでいる友人の娘さんからメールが届いた。まだ幼い子どもを連れて岡山の実家に移ったので、そのお知らせだった。彼女の妹は妊娠しているので、もっと離れた九州まで疎開しているとのことだった。
ここコロラド州でも、飲み水や牛乳に微量の放射線物質が検出された。それが日本に比べて数千分の一にすぎなくても、「放射線に安全といえる基準値はない」と主張する科学者の話をよく聞く。
4月29日、小佐古敏荘・東大教授が、小学校の年間被曝量の基準が20ミリシーベルトなど「とんでもない高数値、1ミリシーベルトにすべき」と涙ながらに訴え、内閣参与を辞任した。
大気中の放射性物質における米国の汚染基準は日本の133分の1と、とても厳しい。米政策研究センターの上級学者であるロバート・アルバレス氏も、「子どもに対して20ミリシーベルトなど、とんでもない」と警鐘を鳴らす。
翻訳・ 前書き:パンタ笛吹
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こどもの日を手放しでは祝えない放射線の恐怖
著者:ロバート・アルバレス
2011年4月29 政策研究センター(IPS)
日本では5月5日は「こどもの日」、子どもたちの幸せを祝う国民の祝日だ。しかし今年のこどもの日は、放射能汚染が影を落とす暗い一日となりそうだ。
福島第一原子力発電所の壊れた原子炉からたなびく放射性物質の道すじに住む日本の子どもたちは、おそらくこれから体になんらかの影響が出てくるだろうが、日本政府が最近とった対策はその問題をさらに悪化させるだけだ。
4月19日、日本政府は福島県内の学校や校庭での放射線被曝限度を、年間2000ミリレム(年間20ミリシーベルト)と急激に引き上げた。
日本の子どもたちは今、1時間につき自然放射線量の165倍、米国環境保護庁(EPA)によってアメリカ国民に許容されている基準の133倍の放射線の被曝が許容されている。
日本の学童たちは、国際放射線防護委員会(ICRP)が原子力発電所の放射線業務従事者に薦める基準と同じレベルまで放射線被曝してよいというわけだ。放射線業務従事者と違って、子どもたちは自分らがどれだけ被曝したら避難するかどうか、選べる立場にはない。
日本政府が決めたこの放射線被曝限度は、何千人もの子どもたちを無情にも傷つけることになる。
専門家の意見によると、放射性ヨウ素にさらされた場合、子どもの方がずっと弱いので、大人の10倍から20倍もガンを発症する可能性が高くなる。
というのは、子どもたちは成長期にあるため、分裂中の細胞は放射線の悪い影響を受けやすく、ガン細胞に変化しやすいからだ。この理由から、胎児に対する定期的レントゲン検査は、世界中で行われなくなった。米国ではガンが今でも、子どもの死因の第一位を占めている。
4月12日、日本政府は福島第一原発事故は、1986年に起きたチェルノブイリ事故と同じくらい重大だったと発表した。マグニチュード9.0の地震と津波から数週間以内に、第一原子力発電所の4つの事故原子炉から膨大な量の放射性物質が大気中に放出された。
日本の原子力安全・保安院(NISA)は、4月初旬までに、それ以前に見積もられていた公式数値をはるかに越える1千万キュリーから1千7百万キュリー(270,000 – 360,000 テラベクレル)もの放射性物質が大気中に放出されたと発表した、と読売新聞は報じた。
大気中に放出された放射性物質のほとんどは海に向かって風で流され、放射線量が急激に減ったように見えるが、原子力安全・保安院の報告によると、事故を起こした原子炉からは今でも、一日に約4,200キュリー(154 テラベクレル)のヨウ素131とセシウム137が大気中に放出されているという。
この数値は、今は廃炉となり停止しているコネチカット州のヤンキー原子力発電所から1年間に放出される放射性物質の放射線量の32万倍近くに匹敵する。福島原子力発電所の4つの壊れた原子炉には放射性物質の発生源が数多くある。それらの発生源から濾過もされず、計測もされずに周囲の環境に漏れ出した多量の放射性物質を考慮すると、原子力安全・保安院がはじきだした放射線量は、最も低めに見積もっていると言わざるを得ない。
4月27日、福島第一原子力発電所の放射線測定値が、地震以来、最も高いレベルまで上昇した、とブルームバーグニュースは伝えた。
ヨウ素131の半減期は8日半だが、乳製品などにたちまち影響が表れ、人間の甲状腺、特に子どもたちの甲状腺に素早く吸収される。
セシウム137は30年の半減期を持ち、特に危険な外部放射線を放出する。セシウム137はさまざまな食品に濃縮され、人体全体に吸収される。
ヨウ素131は、約3ヶ月間たつと安全なレベルにまで減衰するとみなされているが、セシウム137の場合は数百年間に及び危害を及ぼす可能性がある。
4月上旬、小学校、中学校、保育園、など1600校の校庭で測定された放射線量をみると、子どもたちが定期的に高い放射線量を被曝し続けていることが分かる。
校庭の上空1メートルで測定された放射線量は、数百校に及ぶ学校の生徒たちが、自然放射線量の43倍から200倍も被曝していることを示している。
これらの数値は、福島第一原子力発電所近くに住む地元民がすでに避難した対象地域の範囲外にある学校で測定されたものだ。日本の文部科学省は、福島市、伊達市、郡山市にある13校に、屋外活動の制限をするよう通知を出した。
長期的な汚染の程度についてはまだ完全には知られていないが、私たちを不安にさせる証拠が浮上してきた。
福島第一原子力発電所から40キロ離れている地点での測定値を見ると、放射線量の累積値が9.5レム(95ミリシーベルト)にまで上昇しているのである。この数値は、国際的に通用している、放射線業務従事者が1年間で被曝が許される限度レベルを5倍近くも越えている。
30キロの避難地域よりも遠くにある地域の土壌からは、1平方メートルあたり2,200キロベクレルのセシウム137が検出された。この値は、チェルノブイリ周辺の避難指定地域よりも67パーセントも高い。
生徒たちは4月5日に新学期を迎えたが、福島県内で測定された学校のうち4分の3は、放射能レベルがあまりにも高すぎるので、子どもも大人も学校に入ってはいけない状態だ。
原文リンク:
http://www.ips-dc.org/blog/japans_nuclear_catastrophe_leaves_little_to_celebrate_on_childrens_day
http://www.asahi.com/politics/update/0430/TKY201104300115.html